夜とはいえ、猛暑のなか行なわれた第22回多摩川クラシコは、お互いに点を取り合ってのドローで終えた。
結果としては、決して満足ではない。ただ、厳しい天候条件のなかで、諦めずにアウェイで勝ち点1を持って帰ったということは、評価出来るだろう。
失点シーンを振り返ってみよう。
東京は前半、主導権争いに勝ち、攻勢に出ていたが、シュートを打つ機会はあるものの、得点出来ず。そうしているうちに、エリア内で細かにボールを繋がれ、浮き球のボールをゴールへ向けて出されると、大久保がスルスルと抜け出し、権田との1対1を制して失点。
2失点目は、川崎にエリア右奥に進出を許すと、そこからクロス。大久保のヘッドは権田が弾いてポストに当たり跳ね返ったところに中村憲剛が詰めていて、押し込まれた。ボールウォッチャーとなったところもあったが、後半開始僅か30秒過ぎたほど。一番注意を働かせなければいけない時間帯での失点は、集中力の欠如と言われても仕方がないところだ。
共通しているのは、相手がボールを持っているときのプレッシャーの掛け方。つまり、ディフェンスでの判断が相手よりも遅いのだ。
1失点目は確かに大久保も巧かった。だが、自陣エリア内中央付近でごちゃついている時、サイドにはスペースが生まれ、そして浮き球を出させる時間と空間を作らせてしまっていた。相手の攻撃の予測、ボールへの意識の判断の鈍さが、守備での後手を生み、決定的な仕事をさせる機会を与えてしまっていた。
それは、2失点目も同様で、権田が弾いたボールを中村に押し込まれたのは致し方ないところもある。問題はその前で、サイドからクロスを上げられたところだ。ボールを持つ相手に対して、一気に詰めてプレッシャーを掛けるのをためらったのか、相手との間に微妙な距離を作られた。微妙なというより、ボールホルダーへのプレッシャーの判断が遅れたのだ。それで比較的楽にクロスを上げられたのだ。この時点で、失点の危険性はかなり高かった。
プレッシャーの遅さ、判断の鈍さという意味で、後半にも数回見られたのは、エリア付近へ進出してくる相手にに対し、正面のゴールへのスペースを開けてしまっていたこと。相手がミドルシュートを打たなかったのが幸いだったが、ディフェンスの連携が上手くいかなかったのか、パスを先読みし過ぎたのか、サイドを気にするあまり、ゴール正面へのディフェンスを怠っていた。あそこでミドルを打たれていたら……やや遅れて正面へディフェンスに入ったが、上位チームの得点源となる選手だったら、そういうタイミングを見逃してくれるとは思えない。このあたりをしっかりとと修正しないと、上位進出も連勝もおぼつかないだろう。
とはいえ、収穫だったのは、失点する流れや時間は悪かったものの、比較的早い時間で取り返したことだ。米本は献身的な守備もさることながら、渡邉へ供給した浮き球のアイディアは良かった。それを冷静に決めきった渡邉。ゴールランキングトップの調子の良さが見えたゴールだった。そして、太田のFK。これは太田のシュートももちろん素晴らしかったが、その前の徳永と長谷川のフェイクが絶妙だったこともある。そして、しっかりと枠へ飛ばす技術。FC東京が足りなかったところだ。
もちろん攻撃では不完全燃焼なところもある。ゴール前へ進出すると決まって切り返しのフェイクを入れたり、ゴール前で必要以上のパス交換を狙って結局シュートへ行けなかったり、パスを受けたトラップが大き過ぎて、充分な態勢でパスやシュートが出来なかったり(高橋や長谷川に多かった)……。もちろん、闇雲にシュートを打つのは策がないことだが、ゴールが見えたら、狙える瞬間があったら、素早くシュートを打つことも大切だ。1タッチやノートラップは、相手はついてこれない。そういう攻撃があってこそ、切り返しなどのフェイクも活きるのだ。ピッチングで言えば、基本のストレートがあるから、打者はボール球の変化球も振ってしまうということ。基本である、タイミングがあれば瞬時にゴールを狙う姿勢があってこその、フェイクなのだ。
2失点は悔やまれるものの、黒星がつかなかったのは良かった。次は上位の横浜。アウェイでは後半に3失点して敗戦するという苦い内容だった。マルキーニョス、中村俊輔ら調子のいい選手を揃えている横浜にはそう簡単に勝てないと思うが、前回の借りをしっかりと返さなくてはならない。そして、磐田、鳥栖の下位陣は当然のこと勝利しなければ、現在首位の広島(そして浦和)への挑戦権は勝ち取れない。この8月、厳しい試合が続くが、ここからがシーズンの分水嶺。ここで音をあげては、優勝戦線はおろか、ACL圏内も、賞金圏内も厳しいものになってしまうだろう。
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≪J1 第20節≫
【日時】2013/08/10 19:04
【会場】等々力陸上競技場
【観衆】17,864人
【天候】晴れ、弱風
【気温】33.3度
【湿度】58%
【審判】(主審)シモン・マルチニアク(副審)パベル・ソコルニツキ、ラドスラフ・シエイカ
【結果】
川崎 2(1-1、1-1)2 FC東京
【得点】
(川):大久保(33分)、中村(46分)
(東):渡邉(39分)、太田(56分)
【FC東京メンバー】
GK 20 権田修一
DF 02 徳永悠平
DF 03 森重真人
DF 30 チャン・ヒョンス
DF 06 太田宏介
MF 04 高橋秀人
MF 07 米本拓司
MF 18 石川直宏 → MF 36 三田啓貴(49分)
MF 08 長谷川アーリアジャスール
MF 49 ルーカス → MF 32 ネマニャ・ヴチチェヴィッチ(68分)
FW 09 渡邉千真 → FW 13 平山相太(90+3分)
GK 01 塩田仁史
DF 05 加賀健一
DF 16 丸山祐市
MF 19 大竹洋平
監督 ランコ・ポポヴィッチ
◇◇◇
03/02(土) ○FC東京 2-1 大分(A)
03/09(土) ○FC東京 3-0 柏 (H)
03/16(土) ●FC東京 0-1 C大阪(A)
03/30(土) ●FC東京 2-3 横浜FM(A)
04/06(土) ●FC東京 0-1 大宮(H)
04/13(土) ●FC東京 1-2 仙台(A)
04/20(土) ○FC東京 3-1 名古屋(H)
04/27(土) ○FC東京 2-0 川崎(H)
05/03(金) ○FC東京 3-2 鳥栖(A)
05/06(月) △FC東京 2-2 磐田(H)
05/11(土) ●FC東京 2-3 湘南(A)
05/18(土) ○FC東京 2-0 清水(H)
05/25(土) ●FC東京 2-3 鹿島(A)
07/06(土) ●FC東京 0-1 広島(H)
07/10(水) △FC東京 2-2 浦和(A)
07/13(土) ○FC東京 3-0 新潟(A)
07/17(水) ○FC東京 4-1 甲府(H)
07/31(水) △FC東京 0-0 清水(A)
08/03(土) ○FC東京 2-0 大分(H)
08/10(土) △FC東京 2-2 川崎(A)
08/17(土) FC東京 × 横浜FM(H)
08/24(土) FC東京 × 磐田(A)
08/28(水) FC東京 × 鳥栖(H)
08/31(土) FC東京 × 広島(A)
09/14(土) FC東京 × 浦和(H)
09/21(土) FC東京 × 名古屋(A)
09/28(土) FC東京 × 大宮(A)
10/05(土) FC東京 × 鹿島(H)
10/19(土) FC東京 × 新潟(H)
10/27(日) FC東京 × 甲府(A)
11/10(日) FC東京 × C大阪(H)
11/23(土) FC東京 × 湘南(H)
11/30(土) FC東京 × 柏(A)
12/07(土) FC東京 × 仙台(H)
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等々力競技場、改修中。

試合前、東京は“ユルネヴァ”中。

川崎はドラえもん入りの横断幕。

多摩川クラシコのアンセムが流れるなか、選手整列。

カズMAXゴール!!

ハーフタイム。ドロンパとフロン太、カブ……

太田同点ゴール!!!!!

試合終了後、ゴール裏のサポーターへ一礼する東京の選手たち。
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太田のFK(2点目)
これは素晴らしい。
太田がシュートを打つ前に、徳永が縦に走り出して、アーリアが蹴ろうとして壁を崩すという、助演男優賞モノのフェイクも効果的。(笑)
ただし、アーリアは余計なイエロー貰ったので、反省してくれないと。

