FC東京 2024シーズン新体制始動

　2024シーズンこそ、“東京は青赤”の熱狂を。

　1月13日（土）14時より、FC東京の2024シーズンの新体制発表会「2024FC東京新体制発表会 supported by New Balance」が開催され、FC東京のオフィシャルYouTubeチャンネルにてライヴ配信。監督や選手たちの登壇を含めた新チーム体制や新加入選手の紹介に加え、新たなユニフォームの発表が行なわれた。また、FC東京のオフィシャルTikTokでは、「2024FC東京新体制発表会 東京TikTalk on TikTokLIVE」を開催。SNSフォロワー300万超のサッカー系インフルエンサーのウンパルンパ、本田圭佑のモノマネでも人気のYouTuberのマキヒカ、SNSフォロワー50万超で“可愛いサッカー女子”として人気のサッカー系女性インフルエンサーのしず、という3名をMCに、本編とは違った形で新体制発表会出演前後の選手たちも加わりながら、新体制発表会の裏側を届けた。

　新体制発表会は、FC東京の代表取締役社長・川岸滋也が2023シーズンをデータ分析とともに総括するほか、監督のピーター・クラモフスキーのシーズンへの意気込み、新加入を含めた選手のインタヴュー、CC（クラブ・コミュニケーター）からCG（クラブ・ジェネレーター）へ役職を変更した石川直宏、東京ドロンパなどの登壇で賑わいをみせた。MCはFC東京サポーターにはおなじみのフリーアナウンサーの日々野真理が担当。


　川岸社長からは、SNSにて、TiKTok配信におけるインフルエンサー出演について喧々諤々されたことについて、新規ファン・サポーター獲得へ向けたチャレンジであり、インフルエンサーへのリスペクトを持つような言及もなされた。ポジティヴな面として観客動員数がリーグ2位、売り上げが過去最高とビジネス面で効果をもたらした一方、ネガティヴな要素としては戦績の低迷を挙げ、フットボールラボのデータ数値を用いながらいくつかの項目での改善が必要だと説いた。それを踏まえ、2024年はフットボールの取り組みにフォーカスする1年とし、「+1 GOAL」（ワンモア・ゴール）で上位進出、フットボールスタイルの確立を目指すことを宣言した。よりゴールをというところで、攻撃的なタレントを補強し、得点力アップ（1.3／1試合平均）をマイルストーンにするとのこと。失点は1点前後を維持できると想定している模様。特にCBは森重も全盛期を過ぎていることもあり、目立った補強がなかったDF陣においては懸念を持つファン・サポーターも少なくないと思うが、連係や戦術などの関係性もあり、単なる人の入れ替えで終わる話ではないので、堅固な守備の再構築をどのように促すかが手腕の見せ所となりそう。以前の渡辺剛のように、明治大卒の岡などがポジションに定着する期待も込めているのかもしれない。

　また、23区内のファン・サポーター獲得を目論んでの国立開催の増加、TOKYO MXとの協力によるTV放映の増加のほか、ファミリー層の来場を見込んで低価格（ワンコイン）によるU-12チケットの増設といった思い切ったチャレンジにも踏み込むなど、クラブの成長が見込めそうな施策を打ち出していることは評価できるし、期待値も高そうだ。東京ヴェルディ、FC町田ゼルビアが昇格し、J1に東京をホームとする3クラブが集うことには、「東京は“青赤”だ」との矜持とともに戦い抜くと言及。その際、昨年の天皇杯にて東京ヴェルディとの一戦でのFC東京ゴール裏中心で行なわれた愚行についても触れた。端的に言えば、熱い応援を履き違えるなということだろう。前述のTiKTok配信への反応もそうだが、相手への“リスペクト”なきものは、クラブやサポーターの団結を阻害するということをFC東京ファン・サポーターは再認識し、改善した姿を見せていく必要があるのは確かだろう（YouTubeでのコメント欄は相変わらず低能、低俗な輩も少なくなかったが）。


　ひとまず、この段階でFC東京の2024シーズンの陣容がほぼ確定。“ほぼ”というのは、熊田直紀が契約未確定で、報道ではベルギー1部ゲンクへの買取オプションなしの期限付き移籍が濃厚とのこと。この日クラブからも移籍へ向けて準備を進めている段階との言及もあったため、今シーズンは海外でプレーすることが当確となった。新加入選手の背番号は、高が8番、小柏が11番、遠藤が22番、荒木が71番、明治大学より加入の岡が30番、ユースより昇格の小林が31番をつけることに。徳元は17番から出身の沖縄を意識した43（シーサー）へ、寺山、佐藤はそれぞれ17、23と若い番号へ変更した。山下は自らが望んで14に、ジャジャ・シルバは70となった。

　今季のトップチーム編成（選手）は次の通り。

〈ＧＫ〉
１　児玉　剛
13　波多野豪 △（長崎から復帰）
31　小林将天 ☆（FC東京U-18より昇格）
41　野澤大志ブランドン
〈ＤＦ〉
２　中村帆高
３　森重真人
４　木本恭生
５　長友佑都
30　岡　哲平 ☆（明治大学から加入）
32　土肥幹太
43　徳元悠平 ※（背番号17→43）
44　エンリケ・トレヴィザン
49　バングーナガンデ佳史扶
50　東　廉太 △（相模原から復帰）
99　白井康介
〈ＭＦ〉
７　松木玖生
８　高　宇洋 ☆（新潟から完全移籍）
10　東　慶悟
17　寺山　翼 ※（背番号26→17）
18　品田愛斗 △（甲府から復帰）
22　遠藤渓太 ☆（FCウニオン ベルリンから期限付き移籍）
23　佐藤龍之介 ※（背番号52→23）
33　俵積田晃太
37　小泉　慶
40　原川　力
45　安田虎士朗 △（栃木から復帰）
48　荒井悠汰
70　ジャジャ・シルバ ※（背番号20→70）
71　荒木遼太郎 ☆（鹿島から期限付き移籍）
〈ＦＷ〉
９　ディエゴ・オリヴェイラ
11　小柏　剛 ☆（札幌から完全移籍）
14　山下敬大 ※（背番号19→14）
28　野澤零温 △（松本から復帰）
39　仲川輝人



　ＧＫは、日本代表にも選出されている野澤大志ブランドンを軸に、昨季長崎でレギュラーを務めた波多野が復帰、精神的支柱の役割も担う児玉、新人の小林と陣容としては申し分ないだろう。野澤大志ブランドンが日本代表定着となれば、リーグ戦では波多野、児玉が争い、そこへ小林が挑む形でさらに競争と成長が見込める。

　ＤＦは、レギュラー確定となる選手はないと見ていい。ＣＢは森重、エンリケ・トレヴィザン、木本が中心だったが、ヴェテランの森重をサブに追いやるような状況が生まれると、層もグッと厚くなる。その意味では、新加入の岡、土肥、レンタルバックの東廉太がどれだけ食らいつけるかがカギとなりそう。SBは怪我明けの中村がフルで出場となれば大きいが、左右どちらでも出場可能な大ヴェテランの長友がフル稼働を強いられる状況だと厳しい。怪我がちなバングーナガンデも日本代表選出となれば、リーグを開けることになる。それゆえ、徳元、白井には昨季以上のパフォーマンスがより求められそうだ。小泉が右SBで出場する形は、チームとしての底上げが停滞していることになるか。

　ＭＦは最もレギュラー争いが激しそうだ。ボランチは松木と新潟から加入の高のコンビを予想する向きが多いだろうが、小泉、原川も実力の片鱗を見せた。松木は代表選出や夏の移籍でリーグへの出場数も限られることが予測される。小泉、原川とともに甲府から復帰した品田、ヴェテラン東慶悟、背番号を変えた寺山らがいかに切磋琢磨できるかが、チームの底上げの大きな部分を担っているといっていい。トップ下は荒木が期待されるが、状況によっては松木もあるか。佐藤はどれだけメンバーに絡んでいけるか。

　前線の両サイドは、左に俵積田、遠藤、ジャジャ・シルバ、右に仲川あたりがファーストチョイスとして見込まれそう。左に比べて右は、仲川も怪我が懸念されることもあって、やや層に課題が。野澤零温、荒井あるいは安田あたりの急成長を見たいところだ。
　順調ならば、ディエゴ・オリヴェイラの1トップは唯一確定といえるか。だが、昨季はチームとしてはディエゴ・オリヴェイラの調子如何で巧拙が決まることも少なくなかったため、ディエゴ・オリヴェイラ以外のタレントが本領を発揮できるかも大きなポイントになる。その一番手は札幌から移籍した小柏となるが、怪我には注意したい。開幕からは難しいとしても、昨季は苦汁をなめた山下がどの程度絡んでくるかも大きな要素。ボックス内での荒木と山下の連係でゴールを奪えるような絵が描けられると、得点力の増加にも期待は持てそうだ。今季はアダイウトンという絶対的な個の力がいないため、そのような連係の精度が重要だ。一皮むけたジャジャ・シルバの覚醒があれば、攻撃力はさらに上積みが見込める。

　第一に、全ての選手が怪我なく1年をフルスロットルでやりきることを願いたい。そのなかでいかなる選手がピッチで才能を輝かせられるか。それぞれ個人のせめぎ合いがチーム力に繋がり、結果として反映されていくことは自明の理だ。どのような組み合わせであっても、最後まで戦いを、走ることを止めず、勝利へ向かって貪欲に挑み続けるサッカーを展開し、さらなる興奮を呼び起こしてもらいたい。今季リーグ戦は2月下旬にアウェイのC大阪戦で開幕。3月2日あるいは3日の次節広島戦がホーム開幕戦となる。