GKはそれぞれ古巣となるFC東京の林と鳥栖の権田、鳥栖の監督はかつてFC東京を指揮していたマッシモ・フィッカデンティ、その当時のコーチが現FC東京監督の篠田善之など戦前から因縁が絡み合う要素が盛り上がりを助長したが、試合はそんな要素など意味をなさないと思えるくらいの低クオリティ。互いに守備を基軸にしたチームながらもミスをし合って自滅の3失点。特にホームのFC東京は、前節の多摩川クラシコでの勝利を台無しにする勝ち点2を失った試合となってしまった。
序盤から鳥栖のプレッシャーを受け、豊田とイバルボへのロングボールにFC東京のCB陣、森重、丸山が競り合いに勝てず、後手の対応に終始。結果、開始早々にペナルティエリア内で森重がイバルボを後ろから倒したという判定でPKを与えて、失点。その後も鳥栖が主導権を握り、FC東京はシュートまでの形すら構築出来ない。
後半にFC東京は永井を東に、田邉をピーター・ウタカへ代えて、大久保、阿部、中島、ウタカと前線を厚くして反撃体制に。これが奏功し、70分に阿部のドリブル突破からのクロスをウタカが頭で決めて同点に。その5分後のCKでは、豊田のクリアが半端となり、豊田とボールを獲りにいったGK権田が交錯しかけてボールをロストすると、そのこぼれ球を橋本が決めて逆転。さらに、東京陣内からのロングボールに対し、権田とDFのキム・ミンヒョクとの呼吸が合わずに後ろへ逸らすと、詰めていたウタカが無人のゴールマウスへ流し込んで、3点目。16分で3得点を挙げて、残りは4分とアディショナルタイム。勝利は確実と思われた。
しかしながら、その安堵が自らに跳ね返ってくることになる。2対1と逆転しても押し込まれる展開にDFの吉本を入れて守り切ろうとしたFC東京だったが、幸運なことに相手のミスでウタカが得点して3対1とはなったものの、高い位置でボールをキープして主導権を握ることが出来ず、かえって鳥栖の反撃を受ける形を作ってしまう。その圧力に慌てたのか、自陣に攻め込まれるとGK林とディフェンス陣の連係がまずく、エリア内でボールロストしたところを鎌田に決められ3対2に。その僅か2分後には再びGKとディフェンス陣の対応の甘さから途中出場の趙東建のボレーで追いつかれ、おそらく互いが“勝てた試合”と評するだろう試合は、成果に乏しい痛み分けに終わることとなった。
FC東京は鳥栖のハードなコンタクトやハイプレスに後手を踏んだ。だが、それは自らが生み出したともいえる。まず、ボールを受ける時のトラップが大きく、球出しの判断が遅い。それは鳥栖の選手に容易にプレスをかけることを保証するようなもので、苦しくなってゴールに背を向けて横パスやバックパスを多用させられ、なかなか攻撃へのスイッチが入れられなかった。それに、相手のプレスよりも遅いパススピードとダイレクトパスがほとんど見られない状況では、守備を主軸とした相手陣内を突破するのは難しい。サイドチェンジも少なく、前半は永井のサイドで渋滞を起こしてボールロスト、ボランチの橋本、田邉のコンビもあまり有効なパフォーマンスが出来ず。田邉がなんとか自らボールを運んで動かそうとするも、橋本が最終ラインと前線との繋ぎに絡めない。守備を重心に置きCB陣のサポートに徹する訳でもなく守勢の対応は後手に走らされるため、一層前線との距離が生まれてしまい、前線、特に大久保の孤立を助長する結果となってしまった。ゴールを決め、運動量はあったかもしれないが、優勝を狙うというのであれば、現状のパフォーマンスでは橋本のボランチは厳しいと言わざるをえない。高萩の不在がより浮き彫りになったことを露呈したという意味では価値はあったかもしれないが。
とはいえ、チームの要所であるCBの不安定さがボランチの困惑を生んだともいえる。日本対タイでのパフォーマンスも精彩を欠いた森重だが、疲労の蓄積がコンディション不良となっているのではないか。パスミスも結果としてミスとなるも積極性に富むチャレンジであればいいが、この日のパフォーマンスではそのレベルにはなかった。それどころか丸山と共に、豊田、イバルボに終始手を焼き、従来の堅固はどこへやらの守れないCBへと没落。森重、丸山は確かに不動のレギュラーというポジションではあるが、このようなコンディションで先発させるのはいかがなものか。無理に出場させて結果が伴わず、さらに怪我などをされては、後々に響いてくる。この日は“守備固め”として吉本が投入されたが、これくらいのコンディションでも先発候補になれないサブしかいないのなら、早急に補強が必要となる。ベンチにはSBもCBもこなせる徳永もいた。他のポジション同様、切磋琢磨する状況にならなければいけない。
前線も中島は果敢に攻めていったが、シュートもGK正面が多く、引き出しに余裕がないゆえ、それほど脅威を感じさせない単調なものに。自身で決めようとする積極性は評価出来るが、大久保や阿部を活かすプレーをもっと織り交ぜてヴァリエーションを増やすことが求められる。今のままでは相手チームに対策が立てられやすいままだ。
そして、長いシーズンでは采配で負ける試合も出てくるだろうが、その試合はまさに今日の試合を言うのだろう。逆転したとはいえ、そこから受けて守り切るほどの内容的とは程遠かったが、最後の交代で吉本を選択。CBとGKの連係に不安を抱えていたところにCBを入れ、フォーメーションを変えたことでそれぞれの役割が不明瞭になり、かえって守備が崩れるという悪循環に陥らせてしまった。ここは前線でキープが出来る前田あたりを投入して、相手陣に近いところで時間を経過させる、あわよくばさらに追加点を狙うという姿勢が必要だったのではないか。前線でタメを作れない試合が多く、大久保を有効手段として活かせない状況が続けば、死活問題となりうる。
最後にサポーター。応援でチームを後押しするという意味では、今日のゴール裏は叱咤激励というサポートは出来ずに終わった。試合内容を吟味せず、3対1となった時点で気が緩み、歌われるチャントの選択ひとつにしても油断を誘因しかねないムードを作ったと言われても仕方がないだろう。FC東京はまだ本質的に強くなった訳ではない。チームとサポーターの判断の甘さが勝ち点2を失ったこの試合を肝に銘じて、次の札幌戦に臨みたい。
札幌はFC東京がJ2で優勝を決めた年の札幌ドームでの最終戦で痛い目に合い、結果札幌のJ1昇格も“アシスト”した経緯がある。今度はJ1の舞台でしっかりと借りを返さなければならない。ここでもたつくようでは、その次の浦和戦は目も当てられない状況にもなりかねない。危機感を持って挑め。
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【明治安田生命J1リーグ戦 第05節】
2017年04月01日(土)16:04 試合開始 味の素スタジアム
入場者数 19,669人
天候 曇晴 ／ 気温 11.4℃ ／ 湿度 62％
主審 三上正一郎 ／ 副審 前之園晴廣、林可人 ／ ４審 細尾基
FC東京 3（0-1 / 3-2）3 鳥 栖
≪得点≫
（東）： ピーター・ウタカ（70分）、橋本拳人（76分）、ピーター・ウタカ（86分）
（栖）： 豊田陽平（4分、PK）、鎌田大地（88分）、趙東建（90分）
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【FC東京 メンバー】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 02 室屋 成
DF 03 森重真人
DF 05 丸山祐市
DF 06 太田宏介
MF 27 田邉草民 → ピーター・ウタカ（58分）
MF 37 橋本拳人
MF 15 永井謙佑 → 東 慶悟 （46分）
MF 23 中島翔哉 → 吉本一謙（85分）
MW 44 阿部拓馬
FW 13 大久保嘉人
≪サブスティテューション≫
GK 01 大久保択生
DF 22 徳永悠平
DF 04 吉本一謙
MF 10 梶山陽平
MF 38 東 慶悟
FW 20 前田遼一
FW 09 ピーター・ウタカ
≪監督≫
篠田善之
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【2017明治安田生命J1リーグ FC東京 日程】
第01節 02/25(土)14:00〇FC東京 1-0 鹿 島（A・カシマ）
第02節 03/04(土)15:00〇FC東京 2-0 大 宮（H・味スタ）
第03節 03/11(土)19:00✕FC東京 0-3 Ｇ大阪（A・吹田Ｓ）
第04節 03/18(土)19:00〇FC東京 3-0 川 崎（H・味スタ）
第05節 04/01(土)16:00△FC東京 3-3 鳥 栖（H・味スタ）
第06節 04/08(土)19:00 FC東京 vs 札 幌（A・札幌ド）
第07節 04/16(日)14:00 FC東京 vs 浦 和（H・味スタ）
第08節 04/22(土)16:00 FC東京 vs 新 潟（A・デンカＳ）
第09節 04/30(日)15:00 FC東京 vs 広 島（H・味スタ）
第10節 05/07(日)14:00 FC東京 vs 仙 台（A・ユアスタ）
第11節 05/14(日)15:00 FC東京 vs 柏 （H・味スタ）
第12節 05/20(土)19:00 FC東京 vs 神 戸（A・ノエスタ）
第13節 05/28(日)16:00 FC東京 vs 甲 府（H・味スタ）
第14節 06/04(日)13:00 FC東京 vs 清 水（A・アイスタ）
第15節 06/18(日)18:00 FC東京 vs 横浜FM（H・味スタ）
第16節 06/25(日)18:00 FC東京 vs 磐 田（A・ヤマハ）
第17節 07/02(日)19:00 FC東京 vs Ｃ大阪（A・金鳥スタ）
第18節 07/08(土)19:00 FC東京 vs 鹿 島（H・味スタ）
第19節 07/30(日)19:00 FC東京 vs 新 潟（H・味スタ）
第20節 08/05(土)19:00 FC東京 vs 川 崎（A・等々力）
第21節 08/09(水)19:00 FC東京 vs 大 宮（A・NACK５）
第22節 08/13(日)19:00 FC東京 vs 神 戸（H・味スタ）
第23節 08/19・20・18※ FC東京 vs 浦 和（A・埼 玉）
第24節 08/26(土)--:-- FC東京 vs 横浜FM（A・日産ス）
第25節 09/09・10※ FC東京 vs Ｃ大阪（H・味スタ）
第26節 09/16・17※ FC東京 vs 仙 台（H・味スタ）
第27節 09/23(土)--:-- FC東京 vs 柏 （A・ 柏 ）
第28節 09/30・10/01※ FC東京 vs 磐 田（H・味スタ）
第29節 10/14・10/15※ FC東京 vs 甲 府（A・中銀スタ）
第30節 10/21・10/22※ FC東京 vs 札 幌（H・味スタ）
第31節 10/29(日)--:-- FC東京 vs 清 水（H・味スタ）
第32節 11/18(土)--:-- FC東京 vs 鳥 栖（A・ベアスタ）
第33節 11/26(日)--:-- FC東京 vs 広 島（A・Ｅスタ）
第34節 12/02(土)--:-- FC東京 vs Ｇ大阪（H・味スタ）
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