
前節の勢い削がず、浦和にシーズンダブル達成。
前節・国立での名古屋戦に勝利し、ようやく低迷からの浮上のきっかけを掴んだFC東京は、アウェイの浦和に乗り込んだ一戦は、ラッキーな得点を重ねたFC東京がクリーンシートで勝利。埼玉スタジアムでの勝利は2020年以来だが、コロナ禍で入場制限があったこともあり、FC東京サポーターが埼スタで凱歌を響かせたのは、長きにわたって“鬼門”が続いていたこともあり、なんと2003年以来となった。その時はケリー(!)のゴールで勝利したと聞けば、いかに月日を重ねていたかが実感できるはずだ。
前節より再び浦和の指揮を執ることとなったマチェイ・スコルジャ監督と、こちらも古巣に途中加入した原口元気が、それぞれ埼スタのピッチへカムバックするという浦和サポーターにとっては期待の大きい一戦。浦和は2ヵ月半ぶりに勝利した前節同様にスターティングメンバーを継続。FC東京はエンリケ・トレヴィザンに代わって、木本が先発に。怪我人が多いFC東京は、京都戦の負傷で離脱した安斎がフェイスガードを付けてベンチ入りした。
FC東京は、自由自在にボールを供給する中盤のサミュエル・グスタフソンをいかに抑えるかが浦和戦対策のカギとなっていたと思うが、序盤はなかなか浦和の推進力を止められず。6分に大畑、ブライアン・リンセン、関根を経て、渡邊凌磨が左脚でポスト僅か左に外れるシュートを放つなど、浦和が攻勢。小泉慶、岡の本来のポジションではないSBの裏のスペースを狙いつつ、テンポよいパス回しでサイド、あるいはカットインなどでチャンスを演出していたから、この流れで失点していたら、試合結果は全く異なるものだったはずだ。
しかしながら、幸運がFC東京に巡ってくる。9分に左サイドから内へ切り込んだ俵積田が低めのライナー気味のクロスを上げると、井上がショートバウンドのタイミングでクリアしようとしたところ、クリアミスによって浦和のゴールマウスへの浮き球に。これが浦和・GK西川の頭上を越えてネットを揺らし、思いがけない形でFC東京が先制に成功する。
次第に主導権をイーヴンに戻し始めたFC東京は、右CKの好機にニアサイドへボールを供給。ニアサイドに飛び込んだ森重が頭ですらしたが、このボールが石原の左腕に当たり、オンフィールドレヴューを経てPKに。ディエゴ・オリヴェイラから譲り受けた荒木がPKを冷静に決めて、早い段階でFC東京が2点をリードした。
これで精神的な余裕も生まれ始めたFC東京は、ダイレクトやワンタッチでパスを動かし、リズムを作っていく。一方、浦和は27分にはブライアン・リンセンが負傷交代を余儀なくされ、チアゴ・サンタナを投入。ただ、FC東京が、浦和の焦りからくる攻め急ぎにつけ込み、カウンターを効果的に発動。シュートというフィニッシュまでをやり切ればよかったが、それが完遂しなくても、中盤でのボールの奪取も増えるなど、FC東京のペースで前半を終えた。
浦和は後半から石原を松尾にスイッチし、関根を右SBへ配置。幾度か連係でFC東京陣内へ攻め込む回数が増えるも、絶好機には至らず。その後、浦和は長沼、原口、さらには小泉佳穂と交代策を仕掛け、攻撃的な展開を生み出そうとしたが、FC東京も長友、遠藤、安斎、山下と投入。時間を上手く使いながら、浦和の攻め手を逆にってカウンターを仕掛けていく。
ペナルティエリアへの侵入が増える浦和だが、FC東京が森重、木本のCBコンビを中心にボールを跳ね返し続けると、さらに焦りと疲労が重なったか、精度を欠いたパスが散見。FC東京がボールをゆっくりと持ちながら試合をクローズドさせようとすると、浦和は素早いテンポで攻勢を強める。終盤はサイドからの速い展開でFC東京陣内へ侵入し、松尾や大畑、安居らが立て続けにクロスを送るも、FC東京の牙城は崩せない。小泉佳穂や松尾に決定機が訪れるも、FC東京・GK野澤大志ブランドンがビッグセーヴでゴールを割らせず。ラスト10分は攻める浦和、守るFC東京の構図で推移するも、スコアは動かずにタイムアップ。FC東京が6月の第19節の湘南戦、第20節の札幌戦以来の連勝を飾るとともに、浦和にシーズンダブルを達成した。
この日のFC東京のDF陣は岡、森重、木本、小泉慶が先発、リザーブにSBの中村、長友。エンリケ・トレヴィザン、土肥、白井が怪我で離脱するなか、SB岡、小泉慶というスクランブルな起用だが、これが名古屋戦同様に奏功。新たなオプションに加わった感はある。とはいえ、序盤はその裏を浦和が執拗に狙っていて、両サイドのポケットからピンチを生むこともしばしば。その時点で失点をしていたら、ゲーム内容は大きく変わったと思うが、浦和のゴール前の精度とともにFC東京が粘り強くゴール前で奮闘した結果、ラッキーゴール2得点でゲームの主導権を一気に引き寄せた。
その後はゴールが生まれなかったFC東京だが、ディエゴ・オリヴェイラと仲川、荒木との距離感も良く、それ以上に中盤、高や東慶悟が時にDFの中に、時に前線へと上下しながら、ダイレクトや素早いパスでボールを動かし続けたのが攻撃のテンポを生んでいた。浦和に奪い取られそうな場面もいくつかはあったが、球際で負けずにそれをさせなかったことで、危機回避に成功。運動量豊富な小泉慶と高さをもたらした岡の両SBは、攻守に健闘した。また、この日先発となった木本が浦和の攻め際で最後に立ちはだかりボールを奪った場面も大きかった。森重とともにハイボールを跳ね返し続けたことで、これまで不安定だった守備に安定をもたらしたといえる。
そして、名古屋戦の活躍で輝きを取り戻したのが仲川。巧みなドリブル突破は今後の脅威になりえる状態に。PKとはいえ久しぶりにゴールを決めた荒木、悩ましい時間が続いていた俵積田もオウンゴールへ繋がるクロスのみならず、縦への突破やカットインで浦和DFを苦しめた。あとはゴールが生まれると、一気に停滞から抜け出す予感もさせた。GK野澤大志ブランドンは、時折ゴールキックやロングフィードの精度を欠き、相手にプレスを掛けられた時のパス判断などで危ないシーンがまだ見られる。一方でビッグセーヴでゴールを守り続けているからパフォーマンスは好調。良い波が来ている時に前者の精度を高めることが、より一層攻守の強度を増すことになるはずだ。
この2戦は相手の質にも助けられた部分もあったが連勝。浦和戦はクリーンシートで終えたことも自信や活力に繋がったはずだ。課題はこの質や精度を継続できるかということ。その意味では次節のアウェイ横浜FM戦は格好の試金石となる。近年苦汁を嘗めることの多い横浜FM戦だが、連勝の勢いを崩さずに戦っていきたい。
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明治安田J1リーグ 第31節
2024年9月21日(土)19:04KO
埼玉スタジアム2002
入場者数: 41,379人
天候:曇一時雨 / 気温:24.4℃ / 湿度:86%
主審:谷本 涼
副審:熊谷幸剛、眞鍋久大
第4の審判員:佐藤誠和
VAR:鶴岡将樹
AVAR:浜本祐介
浦 和 0(0-2 / 0-0)2 FC東京
【得点】
(浦):
(東):オウンゴール(9分)、荒木遼太郎(17分、PK)
〈試合経過〉
09分 得点 東京 オウンゴール
17分 得点 東京 荒木遼太郎(PK)
27分 交代 浦和 ブライアン・リンセン → チアゴ・サンタナ
32分 警告 東京 岡 哲平
46分* 交代 浦和 石原広教 → 松尾佑介
61分 交代 浦和 大久保智明 → 長沼洋一 / サミュエル・グスタフソン → 原口元気
62分 警告 浦和 長沼洋一
66分 交代 東京 東 慶悟 → 長友佑都 / 俵積田晃太 → 遠藤渓太
76分 交代 東京 ディエゴ・オリヴェイラ → 安斎颯馬 / 荒木遼太郎 → 山下敬大
81分 交代 浦和 関根貴大 → 小泉佳穂
82分 警告 浦和 渡邊凌磨
84分 警告 浦和 大畑歩夢
90+4分 交代 東京 仲川輝人 → 野澤零温
【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 41 野澤大志ブランドン
DF 37 小泉 慶
DF 04 木本恭生
DF 03 森重真人
DF 30 岡 哲平
MF 08 高 宇洋
MF 10 東 慶悟
MF 71 荒木遼太郎
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ
FW 33 俵積田晃太
FW 39 仲川輝人
〈控えメンバー〉
GK 13 波多野豪
DF 02 中村帆高
DF 05 長友佑都
FW 14 山下敬大
FW 22 遠藤渓太
FW 28 野澤零温
FW 38 安斎颯馬
〈監督〉
ピーター・クラモフスキー

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【明治安田J1リーグ 2024シーズン FC東京試合日程】
第01節 02月24日(土)15:00△FC東京 2-2 C大阪(A・ヨドコウ)
第02節 03月02日(土)15:00△FC東京 1-1 広 島(H・味スタ)
第03節 03月09日(土)16:00✕FC東京 1-2 神 戸(H・味スタ)
第04節 03月16日(土)13:00〇FC東京 3-1 福 岡(A・ベススタ)
第05節 03月30日(土)15:00✕FC東京 0-3 川 崎(A・U等々力)
第06節 04月03日(水)19:30〇FC東京 2-1 浦 和(H・国 立)
第07節 04月07日(日)17:00〇FC東京 2-0 鹿 島(H・国 立)
第08節 04月13日(土)16:00△FC東京 2-2 東京V(A・味スタ)
第09節 04月21日(日)15:00✕FC東京 1-2 町 田(H・味スタ)
第10節 04月27日(土)14:00〇FC東京 3-1 新 潟(A・デンカS)
第11節 05月03日(金)15:00〇FC東京 2-1 京 都(H・味スタ)
第12節 05月06日(月)14:00〇FC東京 2-1 札 幌(A・札幌ド)
第13節 05月11日(土)17:00△FC東京 3-3 柏 (H・味スタ)
第14節 05月15日(水)19:00✕FC東京 1-3 名古屋(A・豊田ス)
第15節 05月19日(日)15:00△FC東京 1-1 横浜FM(H・味スタ)
第16節 05月26日(日)15:00✕FC東京 0-1 G大阪(H・味スタ)
第17節 05月31日(金)19:00〇FC東京 1-0 鳥 栖(A・駅スタ)
第18節 06月16日(日)18:00△FC東京 1-1 磐 田(H・味スタ)
第19節 06月22日(土)19:00〇FC東京 1-0 湘 南(A・レモンS)
第20節 06月26日(水)19:00〇FC東京 1-0 札 幌(H・味スタ)
第21節 06月30日(日)18:30✕FC東京 0-1 福 岡(H・味スタ)
第22節 07月06日(土)19:00✕FC東京 2-3 柏 (A・三協F柏)
第23節 07月13日(土)19:00〇FC東京 2-0 新 潟(H・国 立)
第24節 07月20日(土)18:00✕FC東京 1-2 鹿 島(A・カシマ)
第25節 08月07日(水)19:00△FC東京 0-0 G大阪(A・パナスタ)
第26節 08月11日(日)19:00✕FC東京 0-3 川 崎(H・味スタ)
第27節 08月17日(土)19:00△FC東京 0-0 東京V(H・味スタ)
第28節 08月24日(土)19:00✕FC東京 0-3 京 都(A・サンガS)
第29節 08月31日(土)18:30✕FC東京 2-3 広 島(A・Eピース)
第30節 09月14日(土)19:00〇FC東京 4-1 名古屋(H・国 立)
第31節 09月21日(土)19:00〇FC東京 2-0 浦 和(A・埼 玉)
第32節 09月28日(土)17:00 FC東京 ✕ 横浜FM(A・日産ス)
第33節 10月05日(土)15:00 FC東京 ✕ 鳥 栖(H・味スタ)
第34節 10月18日(金)19:00 FC東京 ✕ 神 戸(A・ノエスタ)
第35節 11月03日(日)14:00 FC東京 ✕ 湘 南(H・味スタ)
第36節 11月09日(土)14:00 FC東京 ✕ 町 田(A・国 立)
第37節 11月30日(土)14:00 FC東京 ✕ 磐 田(A・ヤマハ)
第38節 12月08日(日)14:00 FC東京 ✕ C大阪(H・味スタ)
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