青銅鏡は何故凸面鏡なのかという事に関する疑問。
日の出観測に凸面鏡の銅鏡は、使われていたのだろうか、もし使われたとした場合、どのように使われたのか。
纏向石塚古墳で立春の日の出を確認するために日の出を見る時、三輪山の山頂からの日の出をどのようにして見て確認していたのか。また三輪山の影に対して、凸面鏡の鏡の反射光は、何らかの劇的効果を出していたのだろか。
八尾
纏向石塚古墳の後円部 太陽の位置 に立って日の出となったとき、凸面鏡はどう太陽光を反射して照らしだすのか。
凸面鏡から太陽光は広がり、三輪山の影の中を照らし出す、それはどのように見えるのか。
小さいものより大きな鏡の方が良いのだろうか、それはやってみないと分らない
巨大な凸面鏡なら日の出が素晴らしく演出できるのだろうか
太陽を見なくても日の出の反射光が影を照らし返すことで、日の出の位置が分るのだろうか
それは冬至または夏至の時のほうが効果的なのだろうか
日の出の時にかざした凸面鏡の効果について誰も何も言っていない
写真はお借りしました
引用ーーーーーー
三角縁神獣鏡に触ってみたことがありますか?椿井大塚山古墳のある京都府山城町のアスピア山城に三角縁神獣鏡展示室があり、椿井大塚山出土鏡のレプリカに触れることができます。
アスピア山城 三角縁神獣鏡展示室の展示とレプリカの鏡面
持ってみると、それは重く、鋭角の三角縁で手が痛みます。不快です。しかも凸面鏡なので、置くのにも困ります。裏面を上にしては安定しないし、鈕(ちゅう)の大きいものは、表面を上にしても、鈕が邪魔になって安定しないのです。
下の写真は権現山51号墳出土の側面図をもとしたCGに、同鏡のテクスチャを貼り付けてレンダリングしたものです。斜め上から見たらこのような形になっています。
権現山51号墳出土 張氏作銘 三神五獣鏡
さらに、この鏡を横から見たらこんな具合です↓。一般の展示会や書籍では背面の文様を見せることが主眼になっているため、この形状はよくわかりません。断言すると、
これは変な鏡です。
なによりも三角縁神獣鏡を中国鏡の文脈のなかに置いてみると、ともかく大きいのです。これは、魏の様式だとか呉の様式だとかいう以前の、本質的な問題です。
この大きさについて、魏鏡説では以下のように説明される場合があります。「卑弥呼が蛮族の王なので、蛮族好みの大型で威圧的な鏡を作った。」…しかし、だとすると、すでに日本国内の出土数はすでに『魏志倭人伝』に記録された100枚を大きく上回っていますから、朝貢のたびに、蛮族のためにわざわざ同じサイズの鏡を特鋳したことになります。それはあまりにも変です。(*1)
魏鏡であろうと、日本製の鏡であろうと、三角縁神獣鏡の本質は大型の凸面鏡
であるとまず理解するのが本スジではないでしょうか。
下図左側は、滋賀県の雪野山古墳から出土した5枚の銅鏡です。
内行花文鏡→ ←内行花文鏡
←だ龍鏡
だ龍鏡→ ←三角縁神獣鏡
←三角縁神獣鏡
三角縁神獣鏡→ ←三角縁神獣鏡
滋賀県 雪野山古墳出土鏡
左上からの照明による影に注目してください。手前3枚の影が大きいことに気づかれるでしょうか。この3枚が、三角縁神獣鏡です。右図は、これらの鏡の断面図です。(赤色が三角縁神獣鏡)
鏡背の「鈕」の部分に注目してください。黄緑色の断面の「内行花文鏡」と「だ龍鏡」の鈕は大きいです。これは鏡面を下にして置くことを想定しているといえるでしょう。
ところが、赤い断面の三角縁神獣鏡の鈕は小さいです。周囲の三角縁よりも低く作られています。これは逆に、鏡面を上にして置くことを想定しているようです。そうすると突出した三角縁によって安定して保管できるからです。
三角縁神獣鏡以外にも凸面鏡はありますが、それらはみんな小さいものです。10センチ程度なので凸面であっても取り扱いにはさほど困らないように思います。しかし、三角縁神獣鏡は直径23cm程度あるため、その大きさに比例して、鏡面中心部と外周部の高低差が大きくなり、この凸面鏡は取り扱いにくいものになります。
椿井大塚山古墳 入口 後円部から前方部を見る
近年福永伸哉氏によって、長方形鈕孔の共通性から、三角縁神獣鏡を魏鏡とする説が提出されています。氏は、長方形鈕孔は定められた仕様でなく、工人の癖があらわれやすい箇所と考え、この長方形鈕孔が魏の領域の出土鏡に多くみられることを根拠に、三角縁神獣鏡は魏の工人によるものだと主張されておられます。 しかしこの雪野山古墳の出土鏡を見ると、鈕穴が長方形であるという属性も、鈕の高さを低くするために考えられたものである可能性があるように思います。長方形の形状は「大型の凸面鏡」という仕様に応じて考案された、取扱いを容易にするための工夫だったと考えることもできるように思います。
三角縁も長方形鈕孔も、凸面鏡を安定して置いておくための属性だと考えることができます。三角縁神獣鏡は、なにより凸面鏡という本質が、形態を決定した鏡だと推測されます。
この推測が妥当なものなら、この凸面鏡という形態には、用途にあわせた明確な意味があったはずです。「呪術的な意味」というのでは答えになっていません。特殊な、しかし明確なある用途に使われた鏡であり、それは、中国鏡本来の「手鏡」を大きく逸脱した用途であったはずです。
問題は、その「大型の凸面鏡でなければならない用途」が見つからなかったことです。