既報の如く、『菩薩戒作法』における伝戒儀軌と、『行持軌範』における授戒会差定の比較検討を行っていきたいと思います。
なお、ご承知の通り、『菩薩戒作法』自体が現代の授戒会における本道場(教授・正授道場)を対象にした内容となっておりますので、必然的に本企画も本道場を対象にした内容となる事をご理解願います。
また、今回の様に「巡堂遶匝」や「請拝式」なども取り上げていく予定でおりますが、それらはみな本道場を迎えるための重要な儀軌であり、要は全てが連動して本道場が成っている事も併せてご確認頂ければと思います。
この両者の比較検討作業により、実際の授戒会に携わる宗侶各位が、現行の授戒会(本道場)がどの様な変遷を辿り、且つ『菩薩戒作法』のどの部分に起因しているのかを知るだけでも、意味のある作業かと考えております。
なお、本企画における『菩薩戒作法』に関する引用は、『道元禅師全集』巻六(春秋社、小坂機融・鈴木格禅 校訂・註釈)から、授戒会に関する引用は『昭和改訂 曹洞宗行持規範』(曹洞宗宗務庁)からである事を明記し、簡単な凡例の代わりとさせて頂きます。
それでは、『行持規範』における授戒会(教授・正授道場)差定と『菩薩戒作法』における授戒儀軌とを対照させる様な形で比較検討をしていきます。
因みに、本企画では『行持規範』における差定順列に合わせて『菩薩戒作法』の該当箇所を抜粋・列挙しているゆえ、『菩薩戒作法』の原本と比較し、内容が前後している事を予めお断りをしておきます。
【 巡堂遶匝 】
〈 『行持規範』 〉
直壇は小食後、須弥遶匝等について口宣する。口宣が終わり、小鐘一会にて、四衆常のごとく巡堂し、戒弟が八尺間のところに来たとき、唱名を中止する。直壇は八尺間から堂内を幾重にも曲折して列を率き、頃合いを見計らい、大間の中央から須弥壇の前に進み、須弥の西側から背後に廻り東側に出で、列の最後尾の者の後ろに続き一円相となる。戒弟が須弥を遶匝し終わるを見て、戒頭のところから加行位に導き坐せしめ、終わって請拝式となる(この巡堂遶匝にて、直僚に今夜の本道場の習儀をさせる)
〈 『菩薩戒作法』 〉
次当日、受者沐浴清浄、著新浄衣。或無新者、浣濯旧者亦得。当日、或粥前、或斎前、或斎罷、焼香礼拝于諸堂。謂仏殿・祖師堂・経蔵等也。毎処焼香礼三拝。
〈 備 忘 〉
上の表を見ても分かる様に、『行持軌範』における記述は正授道場前に一円匝を作ることを主たる目的としております。
ここにも「一対一」の伝戒儀軌と「一対多(四衆)」の授戒会の違いが見受けられるものと思われます(詳細は別な機会にまとめて述べます)。
この部分で重要な事は、『菩薩戒作法』における「沐浴清浄」、「新浄の衣」という言葉に象徴される様に、戒弟は戒を受ける前に清浄でなければならないという事であります。
これらは戒を受けるに当たって至極当然の事で、『行持軌範』では敢えて触れておりませんが、授戒会でも可能な限り道場前に戒弟の方々に入浴してもらったり、正装で道場に臨んで頂く旨は直壇寮から通達しています。
諸堂巡堂に関しても、『菩薩戒作法』では「諸堂を焼香・礼拝す。いわゆる仏殿・祖師堂・経蔵等なり。処ごとに焼香礼三拝す」とある訳ですが、各所で「焼香礼三拝」する事は物理的に困難な場合があり、せめて口頭だけでも戒弟に本来あるべき巡堂のあり方を口宣する必要はあるものと考えます。
単なる諸堂拝観とは異なる旨を通達するだけでも、巡堂に臨む心構えは変わってくるのではないでしょうか。
また、一円匝を作る事に関しても、本来の師資一等の立場を鑑み、その精神を「一対多」の授戒会にも導入した経緯が見受けられます(これに関しても別な機会に後述)。
『伝法室内式』における種々の儀軌(超宗越格の拝【横継ぎの拝】、師資の坐具の敷き方等)同様、授戒会の一円匝に関しても「師資一等の論理」が導入されてきたものと思われますが、この部分に関する考察は今後の課題とさせて頂きたいと思います。
文中の人物名の敬称は省略させて頂きました
なお、ご承知の通り、『菩薩戒作法』自体が現代の授戒会における本道場(教授・正授道場)を対象にした内容となっておりますので、必然的に本企画も本道場を対象にした内容となる事をご理解願います。
また、今回の様に「巡堂遶匝」や「請拝式」なども取り上げていく予定でおりますが、それらはみな本道場を迎えるための重要な儀軌であり、要は全てが連動して本道場が成っている事も併せてご確認頂ければと思います。
この両者の比較検討作業により、実際の授戒会に携わる宗侶各位が、現行の授戒会(本道場)がどの様な変遷を辿り、且つ『菩薩戒作法』のどの部分に起因しているのかを知るだけでも、意味のある作業かと考えております。
なお、本企画における『菩薩戒作法』に関する引用は、『道元禅師全集』巻六(春秋社、小坂機融・鈴木格禅 校訂・註釈)から、授戒会に関する引用は『昭和改訂 曹洞宗行持規範』(曹洞宗宗務庁)からである事を明記し、簡単な凡例の代わりとさせて頂きます。
それでは、『行持規範』における授戒会(教授・正授道場)差定と『菩薩戒作法』における授戒儀軌とを対照させる様な形で比較検討をしていきます。
因みに、本企画では『行持規範』における差定順列に合わせて『菩薩戒作法』の該当箇所を抜粋・列挙しているゆえ、『菩薩戒作法』の原本と比較し、内容が前後している事を予めお断りをしておきます。
【 巡堂遶匝 】
〈 『行持規範』 〉
直壇は小食後、須弥遶匝等について口宣する。口宣が終わり、小鐘一会にて、四衆常のごとく巡堂し、戒弟が八尺間のところに来たとき、唱名を中止する。直壇は八尺間から堂内を幾重にも曲折して列を率き、頃合いを見計らい、大間の中央から須弥壇の前に進み、須弥の西側から背後に廻り東側に出で、列の最後尾の者の後ろに続き一円相となる。戒弟が須弥を遶匝し終わるを見て、戒頭のところから加行位に導き坐せしめ、終わって請拝式となる(この巡堂遶匝にて、直僚に今夜の本道場の習儀をさせる)
〈 『菩薩戒作法』 〉
次当日、受者沐浴清浄、著新浄衣。或無新者、浣濯旧者亦得。当日、或粥前、或斎前、或斎罷、焼香礼拝于諸堂。謂仏殿・祖師堂・経蔵等也。毎処焼香礼三拝。
〈 備 忘 〉
上の表を見ても分かる様に、『行持軌範』における記述は正授道場前に一円匝を作ることを主たる目的としております。
ここにも「一対一」の伝戒儀軌と「一対多(四衆)」の授戒会の違いが見受けられるものと思われます(詳細は別な機会にまとめて述べます)。
この部分で重要な事は、『菩薩戒作法』における「沐浴清浄」、「新浄の衣」という言葉に象徴される様に、戒弟は戒を受ける前に清浄でなければならないという事であります。
これらは戒を受けるに当たって至極当然の事で、『行持軌範』では敢えて触れておりませんが、授戒会でも可能な限り道場前に戒弟の方々に入浴してもらったり、正装で道場に臨んで頂く旨は直壇寮から通達しています。
諸堂巡堂に関しても、『菩薩戒作法』では「諸堂を焼香・礼拝す。いわゆる仏殿・祖師堂・経蔵等なり。処ごとに焼香礼三拝す」とある訳ですが、各所で「焼香礼三拝」する事は物理的に困難な場合があり、せめて口頭だけでも戒弟に本来あるべき巡堂のあり方を口宣する必要はあるものと考えます。
単なる諸堂拝観とは異なる旨を通達するだけでも、巡堂に臨む心構えは変わってくるのではないでしょうか。
また、一円匝を作る事に関しても、本来の師資一等の立場を鑑み、その精神を「一対多」の授戒会にも導入した経緯が見受けられます(これに関しても別な機会に後述)。
『伝法室内式』における種々の儀軌(超宗越格の拝【横継ぎの拝】、師資の坐具の敷き方等)同様、授戒会の一円匝に関しても「師資一等の論理」が導入されてきたものと思われますが、この部分に関する考察は今後の課題とさせて頂きたいと思います。


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