
1、2巻を読んだときにも感じたことだが3巻を読んでそれが確信に変わった。
「この作品そしてこの作者は富士見ファンタジアの看板を背負う器だ」と────。
そんなわけで今月の富士見の新刊さっそく読みました。本作品は富士見ミステリー文庫が生んだ傑作Dクラッカーズの作者であるあざの耕平氏の新シリーズ。
主人公は「銀刀」の異名を持つジローとその弟コタロウという2人の吸血鬼。この2人が特区と呼ばれる人間と吸血鬼が共存する都市に入るところから物語は始まり、そこで彼らはミミコという人間と吸血鬼の間をとりもつ組織の調停員と出会います。ミミコは彼らを特区に住まわせることを決意しますが吸血鬼にとって「銀刀」の異名は特別な意味合いを持っていて、特区全体を巻き込んだ事件に発展していく────。
とにかく中身が濃いというのが第一印象。これでもかというくらい特区や主人公の過去についての謎や伏線が張り巡らされ、それが回収される過程でまた新たな謎が提示されます。息を吐かせぬ展開とはまさにこのことを指すのでしょう、止め時が見つからずに一気に読んでしまいました。
圧倒的な文章力も魅力。特に戦闘シーンはDクラッカーズで培われた力をいかんなく発揮しています。
名台詞を一つ紹介。↓
さあ行け、葛城ミミコ。
特殊能力なんかいらない。牙も爪も不要。ここが、お前の戦場だ。
調停員として、何より人間として吸血鬼であるジローと本気で向き合う場面。鳥肌が立ちました。
3巻で兄弟の特区上陸による動乱は一応の終結はみていますがまだまだ話は始まったばかりでようやく舞台は整ったかといった感じ。あとがきによると次は短編集のようで。ドラマガの連載は読んでないんでこちらも期待。今後さらなる盛り上がりを見せるであろう本作、未読の方は今すぐ全巻揃えるべし。