onelinedrawing

僕と彼氏と猫の日々

有病率は10%弱という説があり、男児が女児に比べ約10~20倍多い。

2007-08-12 | 日々
病院の入り口に置かれているガーゴイルの像と目が合ったせいで
検査が午前中と午後にまたがってしまった。
吹き抜けの待合室でマダガスカルに数頭しかいない象の絵を描いていると、
清掃員の姿が見えなくなっていることにふと気付く。
さっきまでは地図を持って計測する誘導係と
床をブラシで掃くブラシ係と
モップ用の薬剤を床にふきかける薬剤係と
モップで床を拭くモップ係と
工程をチェックする班長の四人が
横一列に並んで悪態をつきながら掃除していたはずなのに。
清掃用具はそのまま置き去りなのに。
アラビア語の館内放送で
待合室の午前中の取り壊しが始まることを知る。
あたりには誰もいない。
主治医に言われたとおり
コーラン一冊にはコーラン二冊分の中身が詰まっているという
解説図を描き始めたところで、
足元が濡れていることに気付く。
待合室にはグランドピアノがある。
ピアノを弾いてみようと、ピアノに近づくと
水の出所が鍵盤だとすぐにわかった。
鍵盤を叩いても音が出ない。
天蓋を開けると清掃員の持っていた地図が弦に打ちつけられていた。
その地図にはアラビア語が書かれていたが、
よく見ると僕の字だった。
電気が消えた。
暗闇のなか手探りで会計の人に聞くと、館内放送はアラビア語ではなくて
ヒンドゥスターニー語なんですよ、と教えてくれた。
実はその人は会計のふりをした患者なのだ。
いよいよ足首まで水に浸かってしまった。
一向に僕の番号は読み上げられない。
それも当然だ。
僕のカルテはマダガスカルの象と十六冊分のコーランに
占拠されているのだから。

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