JT65-HF 運用記/JA1DEQ

JT65-HF運用解説書をWebに公開しました。CQ誌2011年4月号に掲載したJT65-HFの紹介の続きです。

QSOの成立要件とShort Hand メッセージについて

2012-05-23 08:58:51 | アマチュア無線

 我々が楽しんでいる微弱信号通信JT65-HFは、Dr. Joe Taylor(米国のノーベル物理学賞受賞者/K1JT)が開発したWSJTを元に、より手軽に・より使い易くとの目的で、Mr. J.C.Largeが開発したソフトウエアであることは皆さんご承知の通りです。

 Dr. Joe Taylor のWSJTは、最初VHF/UHFを使った高速の流星痕反射通信、電離層散乱通信や月面反射通信向けに、極限的信号レベルや極限的時間条件のもとでQSOの成立要件を満たす通信方式として開発されました。従って彼は通信の原点に立ち返り「QSOの成立要件」を検討・整理されています。

 Dr. Joe TaylorはWSJTの“User's Guide and Reference Manual"の中で、「QSO成立の要件」として、1. Call Signの交換  2. Signal Report等の情報交換 3. 前2項の受取証明 が行われる事をあげています。

 また QSOを成立させる標準的操作手順として、(a) 両方のCall Signの何れか一方を受信した場合、両方のCall Signを送れ (b) 両方のCall Signを受信した場合、両方のCall SignとSignal Reportを送れ (c) 両方のCall SignとSignal Reportを受信した場合、RプラスSignal Reportを送れ (d) RプラスSignal Reportを受信した場合、RRRを送れ。(e)もしRRRを受信したならば公式にはQSOはこれで完了です。 しかしながら 相手局は完了したことを知らない可能性が有り通常の手続きとして73を送る。

 以上がQSOの成立要件ですが、微弱信号通信で極限的信号レベルや極限的時間条件のもとでのQSOの場合、上記の標準的操作手順で(c)、(d)及び(e)に対しそれぞれ「R0」(アールゼロと読む:貴局のCall Signと当局へのSignal Reportは了解したが、貴局へのSignal Reportは“ゼロ”の意)、「RRR」(相手の情報を全て承認する意)及び「73」(さようなら:QSO終了の意)のShort Hand メッセージが設けられています。

 従ってQSOの過程で信号レベルが例えば-25dB以下と低く、デコードできなくなるような場合、Short Hand メッセージを使うことで、標準メッセージで必要な信号レベルより約5dB位低くても相手局がデコードでき、QSOを成立させる可能性を高くすることができます。

 Short Handメッセージは受信局がマルチ・デコードではなくシングル・デコードの時のみ有効なメッセージですが、一般に信号レベルが-25dB以下のQSOではほとんどの局がシングル・デコードで運用していると考え、信号レベルが極めて低い場合や伝搬状況が急変し「尻切れ」の可能性が有るような場合は、大いにShort Handメッセージを活用すべきと考えます。

 なお JT65-HF ver.1.0.9.3ではShort Handメッセージの送信ができません。このことは2011年12月 Mr.J.C.LargeがNew Version(ver.1.0.9.4)を発行する際修正すること、及び速やかにRev.upする旨アナウンスしておりますが、5月23日現在まだver.1.0.9.4はレリーズされていません。(本件小生から5月17日Mr.J.C.Large あてe-mailで状況をお尋ねしていますが、今のところ返事がなくJT65-HF Google グループの最近の情報によれば健康問題があるとのこと、一日も早い回復を祈りたいと思います)

 従ってShort Handメッセージを使うような運用をされる方は当面プログラムとしての完成度が高いver.1.0.7を使われる方が良いと考えます。

 なお Mr.J.C.Largeの近況やJT65-HF ver.1.0.9.4のレリーズに関する情報をお持ちの方がおられましたら、ぜひご一報下さい。

 

 

「JT65-HF運用解説書」のURL : http://okdeq.lolipop.jp/jt65 

 

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