昨年の暮れに書店で見つけて買った本。
もうね、この本の名前と帯を見たら、絶対泣くやつだと思った😅
『その犬の名を誰も知らない』 嘉悦洋著 北村泰一監修

いつもはこういう動物系の泣けそうな本は読まないのですが、この本のもう一頭!っていうところに興味を持ってしまい、買いました。
あの有名な第一次南極越冬隊のタロとジロの物語は日本の誰もが知っているお話。
その話を聞きに当時の事を知るのには最後の機会という事で、当時犬たちの世話をメインにしていた北村氏にインタビューに行くところから始まります。
その時に思いがけないもう一頭の話が出てきます。
タロとジロ、そしてもう一頭の話もさることながら、1957年(昭和32年)に行われた初めての南極越冬隊ではカラフト犬を北海道で集め、訓練し、南極で犬ぞりで活動しました。この大変な過程が淡々と語られていますが、そこでまず心動かされました。
その中心として関わっていた北村さんのお話や、著者である嘉悦さんの綿密な調査をもとに書かれているので、説得力があります。
1955年の技術では南極の低温下で雪上車が使えなくなるという事例が他の国の南極隊であり、犬ぞりを使うということになったとのこと。
当時、北海道の北部、利尻島などではカラフト犬が一頭引きの犬ぞりを使っている農家が結構多かったそうで、その犬たちを集めて訓練したそうです。
カラフト犬は寒さに強く、極寒の中でも外で過ごすことができ、力が強いのでソリを引くには最適の犬だったそうですが、そこからの訓練もまた大変。
色々な困難を乗り越えて南極に到着してからが、また壮絶です。
もうその苦労話と写真のソリと犬達を見るだけでグッときます。
人も犬も初めての試みの極限の中で大変な事をしていたんだな〜と。
そして、その後の犬達の運命が。。。。
もちろん図らずも犬達を残してしまったという結果については昔も今も様々な批判もあると思いますが、当事者が一番辛かったということは確かだと思います。
もう一頭の物語が最後に語られますが、もうそこまで行くまでにすでに泣きました。
でも、淡々と語られる中に犬達へのリスペクトが感じられるので、救われますし、読後感は悪くありませんでした。
60年以上も前のお話ですが、タロとジロの物語と一緒に他の犬の事や極限の中で越冬した人々のことも忘れないでいたいなと思いました。