
東京で暮らす麻酔科医が自身の死に直面したことから、絶縁していた富良野に住む家族のもとへ戻っていく物語を通して、“生と死”を描くヒューマンドラマ「風のガーデン」(2008年10月9日スタート、フジテレビ系、毎週木曜、22:00~22:54、初回のみ15分拡大22:00~23:09)のクランクアップ会見がホテル日航東京で行われた。
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後列左から平原綾香、奥田瑛二、伊藤蘭、前列左から緒形拳、中井貴一、黒木メイサ、神木隆之介 ▼こんなドラマがまた作れるのだろうか、と思うくらい良い作品
「北の国から」、「優しい時間」の脚本家・倉本聰が3年ぶりに富良野を舞台に書き下ろしたのは、中井貴一演じる死期のせまった主人公が、絶縁していた家族のもとへ戻る物語を通して、近年希薄になってきた“家族との絆”や、“生と死”をみつめるヒューマンドラマだ。本作のために、約400種類の花々が季節ごとに咲き乱れるブリテッシュガーデンを2年がかりで造成。脚本に登場する花の開花時期に合わせて撮影を行い、9月28日にクランクアップを迎えた。一般的に連続ドラマは数名の演出家を迎えて撮影を行うのだが、今回11話すべての演出を担当した宮本理江子は、「撮影をしながら感動して泣いてしまい、なかなかカットがかけられないこともありましたが、中井さん、緒方さんたちに支えられて終えることができました。こんなドラマがまた作れるのだろうか、と思うくらい良い作品に仕上がったのでぜひ見てください」と話し、本作への自信をうかがわせた。
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「視聴率が25%を超えるとヨーロッパに連れて行ってもらえるらしいので、みなさん見てください(笑)」と会場を笑わせた中井貴一。 ▼大人が見ても子どもが見ても引き込まれるドラマ
主人公・白鳥貞美は、仕事も遊びも超多忙なバツイチの高林医大麻酔科准教授。その爽やかな容姿と明るい性格は病院内でも目立ち、派手な女性関係から妻を自殺に追い込んだ過去を持つ。病気の痛みを和らげる緩和医療のエキスパートでありながら、ある日、自分が末期ガンに侵されていることを知った貞美は、“これまで”を見つめ直す機会を得るのだが……。そんな貞美を演じる中井貴一は、「監督、スタッフ、キャスト全員が視聴者に向けて一丸となれた作品だったので、非常に濃密な撮影期間を過ごせました。大人が見ても楽しめますし、それを横から見ている子どもも引き込まれるドラマに仕上がっていると思います。視聴率がどうなるかはわかりませんが、我々は全力を尽くしましたので、よろしくお願いします」と、アピール。また、「花の開花時期にあわせての撮影だったので、このドラマが失敗したら『花のせい』ということで、お願いします」と会場の笑いを誘った。
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「私には姉しかいないので、今回の撮影で“岳”という弟を持ててうれしかったです」と笑顔を見せた黒木メイサ。 ▼初めて心の底からホッとできる現場でした
黒木メイサが演じるのは、21歳になる貞美の娘・白鳥ルイ。ルイは、イギリスで本格的なガーデニングを学び、母が遺したガーデンの手入れをしながら、祖父と弟と共に北海道富良野で暮らしている。母を自殺に追いやった父に対して複雑な感情を抱いている。黒木はこのドラマのストーリーについて、「幸い、私の血縁者で病気の人はいないのですが、このドラマで父親が病気という役をやらせていただいたことで、“死”について考えさせられました」と語った。撮影については、「もし、この作品をずっと東京で撮っていたら、スタッフや共演者の方々と接する時間も少なかったと思います。でも、富良野での撮影中、待ち時間やロケ終了後もみなさんとずっと一緒にいることができたおかげで、初めて心の底からホッとできる撮影現場でした。このドラマに参加できて楽しかったですし、とても幸せでした」と振り返った。
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「聞いたこともない花の名前や花言葉を休む間もなく言うのは、とても大変でした」と話した神木隆之介。 ▼大自然に囲まれての撮影はとても癒されました
神木隆之介演じる白鳥岳は、知的障害を抱えていて、父はすでに死んだものだと思っている14歳の貞美の息子だ。神木は、「今回、知的障害のある役を演じるにあたり、監督や倉本先生と話し合いをしながら役作りをしました。とても難しかったのですが、みなさんのおかげで岳を演じ切ることができました」と感謝の意を示した。また、岳には花の名前と祖父の考えた花言葉を記憶するという特技があり、劇中で花の名前と花言葉をいくつもそらんじる場面があるのだが、「岳のセリフはとても長いものが多く、聞いたことのない花ばかりで覚えるのに苦労しました」と苦笑い。「セリフに出てくるはずの花が咲いていなかったり、枯れてしまっていると、倉本先生が咲いている花で新しい花言葉を考えるので、撮影直前でセリフが変わったりして大変でした。でも、大自然に囲まれての撮影は、僕自身花が大好きなのでとても癒されました」と笑顔で話した。
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「私の孫を演じたふたり(黒木メイサ、神木隆之介)が、すごくかわいくて……」と表情をゆるませた緒形拳。 ▼親子3代にわたる深い“家族愛”が描かれています
「『風のガーデン』の撮影が始まってから身体に気を遣うようになり、三食玄米生活を送るようになりました(笑)」と話したのは緒形拳。緒形が演じるのは、貞美の父で、かつては札幌の大病院に勤め「神の手」と呼ばれたほどの腕を誇る手術の名手だったが、今は故郷・富良野で訪問医をしている白鳥貞三。浮気ばかりする貞美の性格に耐え切れず、子どもたちを連れて富良野に逃げてきた貞美の妻・冴子を引き取っていた。しかし冴子が精神を病んで自殺を図ると、貞美を勘当。現在は、二人の孫と暮らしている。緒方は本作のタイトルロゴを手がけており、「倉本先生に頼まれたら、嫌とはいえませんから(笑)。でも、結構いいなぁ」とにっこり。ストーリーについては、「本作には、親子3代にわたる深い“家族愛”が描かれています。脚本と監督に恵まれ、中井貴一の代表作となるドラマになるでしょう」と話した。
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「たった数分のシーンを1日がかりで撮影することを知り、びっくりしました」と初めてのドラマ出演で驚きを語った平原綾香。 ▼周りがリードしてくれたので緊張することなく演じられました
この作品で、本格女優デビューを果たす歌手・平原綾香が演じるのは、貞美の最後の恋人でホテルのラウンジなどで弾き語りをしながらデビューを目指す無名の歌手・氷室茜。のどの治療に訪れた病院で貞美と出会い、彼に想いを寄せるようになる。「天真爛漫で明るい性格。でも、最後まで貞美の死を知らないので、その明るさが逆に切ない」と平原は語る。そんな茜を演じることになり「電話でお話をもらい、最初は荷が重いとお断りしたのですが、倉本先生とお食事をしながら直接ストーリーを聞いて、お受けすることにしました。現場では周りがリードしてくれたので、さほど緊張することなく演じられました」と初めての現場を楽しめた様子。また、平原は主題歌と劇中歌も担当しており「主題歌は倉本先生から『クラシックがいい』と言われ、ちょうどデモテープがあったショパンの『ノクターン』に決まりました。劇中歌の『カンパニュラの恋』はカンパニュラというテーマがあり、物語に合わせて作らなければいけなかったので、そこが大変でした」と制作秘話を明かした。