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あなたのイメージとワタシのイメージ。
違っててあたりまえ、きっとなんとかなるさ。

おっそろしい話

2007-02-22 16:03:49 | Weblog
淡々と語る友人の心中やいかに。


先日、友人の遠方で暮らすお父上が71歳の若さで亡くなった。

10代や20代の頃ならば、自分が中年になった姿など想像もつかなかったし
70歳を過ぎれば老人だと思っていた。

だけど、40代になって分かった。
70代なんて何事もなければ、まだまだ若い。

心臓の状態がかんばしくなく、医師からも「覚悟をしていてください」と言われていたお父上。

ワタシには分かるが、その覚悟は1ヶ月経ち2ヶ月経ちするうちに慣れてしまうのだ。

「お父さんどう?」とワタシが尋ねても「あー相変わらず」程度になっていった。

お父上はたぶん『もう自分はダメなんじゃないのか?』と気づき始めたのだろう。
最期の1ヶ月あまりは「1度家に帰らせてくれ」と繰り返していたそうだ。

病状を考えると、それは実現不可能だった。

友人が「何か取ってきて欲しいものがあったら言ってくれれば・・・」と言っても
「いや、とにかく家に帰らせてくれ」の一点張りだった。

そしてお父上は天国へ旅立った。

1人暮らしのお父上、唯一の家族である友人。

親しい親戚たちとお父上のマンションで形見分けをし
あとの家財道具などは業者に処分を頼んだそうだ。

業者が来る前日、とりあえず家の中のものを1人でチェックした友人。

「父がどういう人だったかが、よ~く分かったよ」と友人が言った。

そりゃあそうだ。
そこで暮らしていたんだ。
そこには、お父上の日常があったんだ。

それにしても、お父上は何でも後生大事に取っておく性質の人だったらしい。

女性からの手紙、領収書、借用書、請求書などなど。。。年代物の書類。

しかも、生命保険の受け取り人はすでに別れた内縁の女性の名前。
もう連絡先も分からない他人が受け取り人ということで、保険会社に問い合わせてみるも
「受け取り人様からの請求がないとお支払いできかねます」で、おしまい。

「でもさ、親戚に見られなくてよかったと思うことにするよ」と笑う友人。

「そうだね、お疲れさまだったね」としか言えないワタシ。

「とくに、アレだけはね」

「ん・・・?」

「マンションのトランクルームにあったダンボール箱にね。。。
 タイトルを言うのもはばかられるようなエロビデオが、ぎっしり」

「あうっ」

「あとね、部屋の引き出しから、熟女専用のテレクラの会員証」

「うぅぅ」

じわじわと恐ろしさがこみ上げてきて、家の片付けをしたくなった。

やっぱり70代はまだまだ若い。

お父上の名誉を守った友人は、安堵の表情で苦笑いしていた。