みんなの碁盤を公開して1週間、おかげさまでだいぶ不具合もとれ、ユーザインターフェイスも改良されて使いやすくなってきました。ここに根付いた囲碁の木も、当初の果樹園構想とは少し違った形ではありますが、徐々に育ちつつあります。
参加は自由で、特に囲碁の木の閲覧だけならば、ごく気軽にすることができます。
現在の囲碁の木の重み(木に含まれる局面数)は約400で、囲碁の膨大な変化の数に比べるとあきれるほど微々たるものですが、今後1万、10万、百万、千万と育っていったときに何が見えてくるか、想像するだけでも楽しくなります。
初心者を含めたすべての囲碁愛好家を歓迎することから、木の質に疑問を持たれる方もいることでしょう。この疑問に答えるためには、みんなの碁盤における局面評価の仕組みを説明する必要があるのですが、まずひとこと、短い答えは、「囲碁とは(将棋やチェスと同じように)正しい手が生き残ることを、悪い手が邪魔することができないゲームである。」です。
みんなの碁盤における局面評価のしくみについては、そちらのサイトに説明がありますが、議論の必要上ここでも少し詳しく説明します。検討への参加者が行う操作は、主に次の二つです。
- 登録済みの(すでに木の中にある)局面に対して、黒勝、白勝、互角のいずれかを投票する。
- 登録済みの局面の子の局面で未登録のものを新たに登録する。このとき、三段階の評価のいずれかを選択する(最初の一票)。
局面に対する評価の票数は、参考にはなりますがあまり重要ではなく、特に子を持つ局面に対する評価は、検討の結論に全く影響を与えません。葉の(子を持たない)局面に対する評価が重要で、これに基づいて、すべての(子を持つものを含む)局面に対して暫定評価が定義されます。暫定評価は、基本的には現在の木をゲームの木としてみなしたときの標準的な木探索による評価です。つまり、子を持つ局面の評価は、現在の局面の手番のプレイヤーにとって最も有利な評価を持つ子の評価に等しいと定義されます。ただし、葉の局面の評価をどう考えるかが問題で、これについては下で述べます。こうして定義される評価は、木が発展途上であるために「暫定」です。
葉の局面の評価値は、すべての投票が一致していれば、もちろんその評価です。特に、登録時点では登録者の評価が採用されます。その後の投票で評価が割れた場合は、手番のプレイヤーにとって最も不利な評価を用います。これは、「評価が割れた場合、手番のプレイヤーにとって有利な判断をする評価者がその根拠を着手で示す責任を持つ」という考え方に基づいています。その局面が葉である限り、すなわち上記の責任が果たされていない限り、手番のプレイヤーにとって不利な評価を有効とします。
検討のプロセスのなかで、このしくみがどう働くかを例で見てみましょう。
囲碁の木を閲覧していて、暫定評価が白勝になっているが、納得が行かないという局面に出会ったとします。四つの可能性があります。
- この局面が葉ではなく、白番である。白勝の根拠となる子、すなわち暫定評価が白勝である子、があるはずなので、その子へとたどる。
- この局面が葉ではなく、黒番である。どの子の暫定評価も白勝であるので、そのうち白勝が信じられない子へとたどるか、あるいは登録されたどの子よりも黒有利と思う子を作り互角あるいは黒勝で登録する。後者の場合は、もとの黒番の局面の暫定評価は互角あるいは黒勝に変化する。
- この局面が葉であり、白番である。互角あるいは黒勝に投票する。この局面の暫定評価は互角あるいは黒勝ちに変化する。
- この局面が葉であり、黒番である。互角あるいは黒勝と信じる子を作り、その評価で登録する。黒番の局面の暫定評価は互角あるいは黒勝に変化する。
1、2で子をたどっていった場合、いつかは子にたどり着きます。2の後者の場合や、3、4の場合には、白勝を信じている参加者へ反論したことになります。そして、白勝支持の参加者にとって、納得できない暫定評価の局面が生じて、同様なプロセスによるさらなる反論をうながすことになります。もちろん、子をたどっていく過程で、白勝の評価に納得して登録や投票のアクションを全くとらないことも当然あり得ます。
このようなプロセスによって、誤った局面評価は正すことが可能です。実際に正されずに誤った局面評価が生き続ける可能性については、次回もう少し考えてみようと思います。
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