囲碁の果樹園(囲碁の木がすくすく育つユートピアを目指して)

人間とAIが集い囲碁の真理を探究する場の構築をめざして、皆様とともにその在り方を探っていきます。

局面の値付け

2017-08-11 07:45:56 | 基礎理論

いよいよ、局面の評価の表現法について述べます。局面の値付けという形をとります。あたいづけと読みます。

なお、この記事を読む前提として、以前の記事「ルールとコミ」、「囲碁の木(定義)」の記事に書いてあることは必須です。

局面の値付け:囲碁の木の中にある局面に対して、-1、0、1の三つの値のうちのどれかを割り当てることを言います。数学的に言うと、局面の値付けとは、囲碁の木の中の局面の集合から{-1, 0, 1}という集合への関数です。fという値付けが局面Sに割り当てる値をf(S)と表します。正確に言うと、値付けは部分関数です。f(S)が未定義であるようなSがあってもよいということです。実際、宇宙の原子の個数よりも多い、囲碁の木の中のすべての局面に対して値を割り当てることは、人間やコンピュータには不可能です。

完全な値付け:囲碁の木の中の局面すべてに対して値を割り当てるような値付けを完全な値付けとよびます。人間は完全な値付けを想像することしかできません。神のみが実際に完全な値付けを「持つ」ことができます。

値付けの意図:f(S) = 1は局面Sが黒必勝の局面であるという判断を表します。f(S)=-1は局面Sが白必勝の局面であるという判断を表します。f(S) = 0 は、最善の結果が黒勝ちとも白勝ちとも言えないという判断を示します。

終局正当な値付け:値付けfは、f(S)が定義されているような終局面Sのどれに対しても、「f(S)=1ならばSは黒勝ち局面、f(S)=-1ならばSは白勝ち局面、f(S) = 0ならばSは持碁引き分け局面である」という条件が成り立つとき、終局正当であると言います。

値付けの矛盾修正(8月27日、不等号の追加、余分な「も」の削除」)fを値付けとします。もし、黒局面Sとその子Tで、f(S)f(T)であるようなものがあるときも、fはSにおいて矛盾すると言います。 fを値付けとします。もし、黒局面Sとその子Tで、f(S) < f(T)であるようなものがあるとき、fはSにおいて矛盾すると言います。例を考えましょう。例えばSが黒局面でf(S)=0、f(T)=1であるとすると、Sにおいて黒がある手を打てば、黒必勝局面Tにできると信じているのに、局面Sで黒勝ちの判断ができないというのは矛盾です。f(S)=-1、f(T) = 1の場合や、f(S)=-1、f(T) = 0の場合も同じように矛盾であることがわかるでしょう。また、Sが白局面の場合の矛盾も同様に理解できるでしょう。

無矛盾な値付け修正(8月27日、字句修正)どの局面においても矛盾のない値付けを無矛盾な値づけと言います。fを矛盾無矛盾な値づけとし、黒局面Sに対してf(S)が定義されているとします。もし、Sが子を持ち、そのひとつに対してでもfが定義されているとすると、f(S)の値は、Sの子Tのなかで、f(T)が定義されているようなもののなかでのf(T)の最大値以上になります。例えば、Sの子のうち、T1、T2、T3、に対してfが定義されていてf(T1)=0, f(T2)= 0, f(T3)=-1であれば、f(S)≧0である必要があります。

飛躍した値付け:fを値付けとします。修正(8月27日、f(S) ≧ 0の条件の追加)Sをf(S)が定義されているような黒局面とするとき、 Sをf(S) ≧ 0であるようなような黒局面とするとき、Sの子Tで、f(T)≧f(S)であるようなものがひとつもないとき、fはSにおいて飛躍しているといいます。Sが白局面のときには、不等号を逆転して定義します。例えばSが黒局面でf(S)=1、であるのに、Sの子Tのどれに対してもf(T)≦0であったとすると、黒必勝の局面にする黒の手も知らずにただSが黒必勝と信じていることになります。

神の値付け:完全であり、終局正当であり、無矛盾であり、飛躍していない値付けを神の値づけと呼びます。

定理1:神の値付けが存在する。

定理2:fGodを神の値付けとする。fGod(S)=1であるような局面は黒必勝局面であり、fGod(S)=-1であるような局面は白必勝局面である。fGod(S)=0であるような局面は引き分け必至の局面である。

このふたつの定理自体は、ゲームの理論の初歩(MIN-MAX木)の焼き直しですが、あえて回りくどい定義を延々としたのには訳があります。それは、果樹園の参加者がそれぞれの(不完全で、矛盾したり飛躍したりしているかもしれない)値付けを持っていて、相互にコミュニケーションをしながら、矛盾や飛躍を取り除いて行く過程こそがまさに、果樹園のめざす活動であるからです。

参加者の総合的な値付けが、神の値付けに近づいていくことを保証するようなコミュニケーションとプロセスの設計は理論的な課題です。

次回は、ふたつの(二人の参加者の)値付けの「対立」について定義し、対立、矛盾、飛躍を解消するためのプロセスについて述べます。



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