つきなみな備忘録

個人的な備忘録です

『医者とはどういう職業か』を読んだ。

2017-01-08 10:54:07 | 

筆者の里見さんは医者であり、ご自分の経験に即して医者の現在の状況や今後の在り方を軽妙に語ってくれる。

医者はステータスがあるし、給料がいいというイメージがあるので、成績優秀な中高生やその親は医学部を希望しがちだが、実際の仕事はけっこう大変。

病気は医学によって完治できる、医者は病人を治すことができる、と、我々一般人はどうも、医者に対して過剰な思い込みがある。そんな過剰な期待を持たれるところが悲喜劇の根源である。

筆者は、将来的には医者よりもナースの方が重要になるのでは、と書いておられる。医者のステータスは急には変わらないだろうけど、医者の働く環境があまりに大変だと、働く上でのやりがいなんかはそうなるのかもしれないなあと思った。

医学部に進学を希望する中高生やその保護者は必読。

 

里見清一『医者とはどういう職業か』(幻冬舎新書 2016.9)


『裸はいつから恥ずかしくなくなったか』を読んだ

2017-01-04 23:16:23 | 

この本を読んで知ったこと

1,武家の子女など例外はもちろんあるが、江戸時代には裸に対して「恥ずかしい」という意識は一般的にはなかった。その証左としては、銭湯の混浴など普通のことで意識することは男女ともなかった。

2,明治時代に開国したことで、欧米の価値観が導入されたことで裸は「ハダカ」として性的なものとして隠すべきものとして意識されるようになった。

3,昭和10年代頃から洋装化が進み、女子がパンツをはくようになる。

4,昭和30年代頃からブラジャーが広まり始める。

 

例が豊富で、分かりやすかったし、納得できた。隠すことによって羞恥心が発生するのだ。隠しきれないのだから、オープンにして管理するという江戸期のやり方の方が、どうもよさそうだなあ。

 

 

中野明『裸はいつから恥ずかしくなったか 「裸体」の日本近代史』(ちくま文庫 2016.5)


原田マハ『暗幕のゲルニカ』を読んだ。

2017-01-04 08:42:02 | 

この作品は、ピカソの「ゲルニカ」を通して、人間が引き起こすあらゆる争いを否定するという内容。

争いは「ゲルニカ」によって二重に批判される。

一つは、その制作が、フランコ将軍によって起こされたスペイン内戦に対する、そしてヨーローッパ併合をもくろむヒトラーに対する抗議の意を含んだものだから。

ピカソと愛人のドラとの関係に、パルドという架空の資産家の息子を配して描かれる1937~1945年の世界では、パリ万博のスペイン館に出品するために「ゲルニカ」を制作して展示した後、戦禍を避けてアメリカのニューヨーク近代美術館(MoMA)に託す事情が描かれる。

もう一つは、反戦の象徴たる「ゲルニカ」を、テロで傷ついたニューヨークで展示することで、争いを否定する意を示すことになるから。

2001年9月11日の同時多発テロ、そしてアメリカのイラク戦争をきっかけに、MoMAキュレーターの八神瑤子さんは、ニューヨークでのピカソの展示を企画する。だが、「ゲルニカ」を所蔵するスペイン国立レイナ・ソフィア芸術センターでは、作品保護の観点や、テロ組織による妨害を懸念して承諾しない。瑤子さんは何度もくじけそうになりながらも、MoMAの理事長のルース・ロックフェラーの助けを得ながらもパルドの心を動かし、ついに「ゲルニカ」が貸出されることになる。

多くの人々の善意に支えられて、反戦の象徴である「ゲルニカ」が、制作以来、幾多の危難を乗り越えて受け継がれ、そして国々の統合の象徴である国連に飾られたのでした。

原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮社 2016.3)