つきなみな備忘録

個人的な備忘録です

水嶋ヒロの『KAGEROU』を読んだ

2010-12-23 12:18:46 | 

 俳優、水嶋ヒロの処女作。第5回ポプラ社小説大賞を受賞するが、賞金2000万円を辞退したということで話題になった作品。そのこともあって発売時で43万部の売り上げがあったそうで、印税も6000万とも1億とも言われています。なかなか商売上手ですね。

 リストラされ借金だらけになり、人生に絶望した大東泰雄(ヤスオ)という40男がビルから飛び降り自殺をしようとした時、『全日本ドナー・レシピエント協会』の京谷貴志(キョウヤ)と名乗る男に声を掛けられる。ヤスオは両親にお金を残すために肉体のドナーになることを決意する。だが、病院でたまたま心臓のレシピエントの女の子と出会い、その子とかかわる中で、生の意味をとらえなおせることができ、生きたいと思う中で死ぬという幸せを見つけられる、というちょっと切ないお話。

 2000万円という大金に値するようなすごい作品とは思わないが、日本語の使い方がなっていないとか、台本のようだとか酷評されるには当たらないと思う。ギャグの多用だってキョウヤの脳がヤスオのものということを示すためのものなんだろうし、たとえ苦笑だとしてもちょっとした笑いがあるのは悪くない。

 自殺願望者が自分の体を活かしてもらえるということで自分の人生を再評価できて、その中で死んでいくという着想はおもしろい。本当にこんな団体があったらずいぶん世の中の役に立つのになあ。

齋藤智裕『KAGEROU』(ポプラ社 2010.12)

http://mainichi.jp/photo/news/20101222mog00m200042000c.html