つきなみな備忘録

個人的な備忘録です

『太陽の季節』を読んだ

2011-01-20 15:47:02 | 
新潮文庫から復刊したので読んでみた。芥川賞受賞の作品だし、石原慎太郎さんは芥川賞の選考員としていつもご立派なことをおっしゃっているので、どんな作品を書いているのか興味があったからだ。

いや、何というか。時代のせいなのか、なんなのか、主人公が子どもっぽいのにビックリした。50年前はこういうのが斬新でかっこよく見えたのかしらん。

主人公の竜哉は大学生。昭和初期の大学生って、今よりもエリートでまじめだと思っていたのだが、そうでもないんだなあ。まあ、人によるか。別荘やらヨットやら持っているので、いいとこの坊ちゃんのようだけど、いやむしろそのせいでか、ごろつきというか不愉快な人物です。

ナンパで知り合った女性との恋の駆け引きのあげくに自分の方に引き寄せることに成功したが、そのとたん縛りがちになる彼女に嫌気がさし、兄に譲ると言う。その後、妊娠が分かり彼女をやきもきさせた後中絶を申しつける。彼女はそれが元で死んでしまう。

作者はこれで何を描きたかったのだろう。傍若無人でワガママ、甘えとも見える主人公の若さだろうか。

石原慎太郎『太陽の季節』(新潮文庫 昭32.8)

『シューマンの指』を読んだ

2011-01-19 16:34:08 | 
語り手は、里橋優という49歳の医者。子どもの頃からピアノを習い、音楽大を目指すところで永嶺修人に出会う。「音楽はすでにある。楽譜も演奏もその一部の表れでしかない。」という永嶺に里橋はすっかり心酔する。

女子高生の殺人事件を経て、音楽と縁を切った里橋は、30年前の記憶をたどり始める。・・・


音楽論とシューマン論と女子高生の殺人事件を巡る一連のサスペンスが話の中身。


医者だから冷静で論理的でしっかりしているはずだ、という先入観で、すっかりだまされてしまった。
読者を裏切ってくれるのが小説を読む喜びだなあ。しかも2回も。

ただ、シューマンについての話がちょっと長かったかなあ。音楽の知識についてはあまり詳しくないのでつらかったかも。電子BOOKなんかで、シューマンの音楽を流すことができるといいかもしれませんね。

奥泉 光 『シューマンの指』(講談社 2010.7)