ひとりぐらし

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能ある鷹はなんとやら

2012年08月05日 18時40分28秒 | 初野晴
『初恋ソムリエ(初野晴)』読了。
廃部寸前の弱小吹奏楽部を立て直し、普門館を目指す高校2年生の穂村チカと上条ハルタ。吹奏楽経験者達に関係した謎を解決し、彼らを入部させることに成功していた2人だったが、音楽エリートでありアンチ吹奏楽者である芹澤直子には断られ続けていた。
(以下ネタバレ)















『スプリングラフィ』・・・何者かが吹奏楽部員よりはやい時間に登校し、音楽室に侵入している痕跡をみつけたチカは、友人から音楽室の窓に人影が写った証拠写真を手に入れる。
侵入していたのは音楽エリートの芹澤直子で、彼女は音楽室で紛失した補聴器を探していた。彼女は難聴である、と語り手のチカが気づいた瞬間、伏線のほとんどが回収されるという技術のスマートさに惚れる、惚れた。

『周波数は77.4MHz』・・・「街のどこかにあるローカルラジオ局"FMはごろも"」、「地学研究会の不可解な行動」、そしてプロローグでもあった『スプリングラフィ』からの「不登校の打楽器奏者」というそれぞれの謎が収束する。地学研究会はブルー・トパーズの鉱石の埋蔵場所を発見したが、そこは不登校の打楽器奏者・檜山界雄による無認可の老人介護施設だった。そしてその老人介護施設こそが"FMはごろも"、彼らにとって唯一の、世界へ向けた窓であったのだ。

『アスモデウスの視線』・・・タイトルが気になって、「アスモデウス」について読む前に調べてみた。→こんな感じ この時点でかなりオチが見えてきてしまったが、「席替えの理由」から「担任教師が謹慎に至った理由」が解き明かされる様は絶妙。

『初恋ソムリエ』・・・前作に登場した「オモイデマクラ」ばりのトンデモ設定ながらも、幻想的なエピソードから推理されるブラックな結末は衝撃的。思い出から再現されたものと記憶の中での「おにぎりの塩の味の違い」と、思い出の登場人物が相次いで癌で亡くなっていることから、おにぎりに使われたのはその時代で唯一の食塩ではなく工業塩であったという結論が導き出される。登場人物の正体はエスペラント語で暗示されていた。渾名した本人「ベンジャント(復習者)」が仲間(テロゲリ活動をしていた?)を全滅させるため、おにぎりに工業塩を使用していたのだ。

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