最初は「?」だった。
三度四度と音読するうちに「きらいではない」気持ちがわいてきた。
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『ごろうのおみせ』
作 ごろう
絵 死後くん
岩崎書店/1600円+税
「あるひ ごろうは しょうがっこうをやめた」
ショッキングな言葉で、物語が始まる。
学校をやめてどうするのか? ごろうはお店を始める。
空き地で、空中に○をつぎつぎと描いていく。すると、描いていく端から、通りがかりの人が気に入って○を買っていく。(いくらで売れてるのかは、まったくわからないけれども)
どんどん描いて、どんどん売れていく。
ところが○を描いていたはずのごろう、いつのまにか△を描いていた。どうやら、一生分の○を描いてしまったらしい。
ごろうの描く△もまた、つぎつぎ売れていくの。(ファンがついているのかしら)
そして、一生分の△を描きつくし、販売品は◇になった。二度あることは三度ある。◇も売れ行き好調。
一生分の◇を描いてしまったら、ごろうはどうするの?
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まぁ、ヒトをくったお話ですわ。
死後くんの絵も、ゆるっとしたマンガ風です。
制作側はナンセンス絵本として作られたわけではないようです。
岩崎書店の「こんな子きらいかな?」シリーズの1冊。
こんな子きらいかな? いいえ、きらいではありません。
わたしが「きらいではない」と感じたのは、学校をやめて商売をはじめるという発想です。
社会に出て、自分のなにか力を試そうと前向きなところ。
それは、一生分の○と△と◇を描くことになるわけですけど。
一生分って、いったいどのくらいの数なんでしょうか? 飽きることなく、とことんとことん描き続ける根気には、憧れと尊敬の念すら覚えます。
(大人は、どこかでなにかをあきらめてきているからね)
死後くん描くごろうは、ポーカーフェイスで、喜怒哀楽をみせないけれど。
ごろうのおみせで、○△◇を買っていった人はにこにこしている。
自分の作り出したなにかしらが、ほかの人をなんとなく「いい感じ」にしていること。
これは、すごくいいことです。
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