ら く が き ち ょ う

えほんや なずな店主いちみちゃん が
心にうかぶ よしなしごとを 描き散らす since 2005

えほんこのみ 『ごろうのおみせ』

2021年06月06日 | すきなもの

最初は「?」だった。

三度四度と音読するうちに「きらいではない」気持ちがわいてきた。

*****

『ごろうのおみせ』

作 ごろう

絵 死後くん

岩崎書店/1600円+税

「あるひ ごろうは しょうがっこうをやめた」

ショッキングな言葉で、物語が始まる。

学校をやめてどうするのか? ごろうはお店を始める。

空き地で、空中に○をつぎつぎと描いていく。すると、描いていく端から、通りがかりの人が気に入って○を買っていく。(いくらで売れてるのかは、まったくわからないけれども)

どんどん描いて、どんどん売れていく。

ところが○を描いていたはずのごろう、いつのまにか△を描いていた。どうやら、一生分の○を描いてしまったらしい。

ごろうの描く△もまた、つぎつぎ売れていくの。(ファンがついているのかしら)

そして、一生分の△を描きつくし、販売品は◇になった。二度あることは三度ある。◇も売れ行き好調。

一生分の◇を描いてしまったら、ごろうはどうするの?

*****

まぁ、ヒトをくったお話ですわ。

死後くんの絵も、ゆるっとしたマンガ風です。

制作側はナンセンス絵本として作られたわけではないようです。

岩崎書店の「こんな子きらいかな?」シリーズの1冊。

こんな子きらいかな? いいえ、きらいではありません。

わたしが「きらいではない」と感じたのは、学校をやめて商売をはじめるという発想です。

社会に出て、自分のなにか力を試そうと前向きなところ。

それは、一生分の○と△と◇を描くことになるわけですけど。

一生分って、いったいどのくらいの数なんでしょうか? 飽きることなく、とことんとことん描き続ける根気には、憧れと尊敬の念すら覚えます。

(大人は、どこかでなにかをあきらめてきているからね)

死後くん描くごろうは、ポーカーフェイスで、喜怒哀楽をみせないけれど。

ごろうのおみせで、○△◇を買っていった人はにこにこしている。

自分の作り出したなにかしらが、ほかの人をなんとなく「いい感じ」にしていること。

これは、すごくいいことです。

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