しばのずしょりょう

読んだ本などの感想をひたすら書く所。

ブラック・ジャック・キッド

2008-01-31 23:22:22 | 恋愛・青春・友情もの
ブラック・ジャック・キッドブラック・ジャック・キッド
久保寺 健彦

新潮社 2007-11
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久保寺健彦作「ブラック・ジャック・キッド」を読む。

ブラック・ジャック(BJ)の熱烈ファンである小学生の和也は、将来、自分がBJに
なるものと疑わず、普段から黒いマントを着用し、BJになりきっていた。
しかし和也は、クラスの男子と女子の仲が悪化するきっかけを作ってしまい、
ついには全体戦争をすることになって・・・。両親の不和、学校の転校といじめ、
不思議な存在との遭遇、親友との出会いを通して、和也は成長していく・・・
というような話。

日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞を獲った作品らしい。
書店でこの作者の本が平積みにされているのが気になって読んでみた。
でも、この話ってファンタジーではないよなぁ。ファンタジーな要素も
入ってるけど、途中までそんな空気一切なかったような(笑)

それは置いておいて、話自体は面白かった。
私もブラック・ジャックが好きで、全巻集めてしまったクチなので、
何となく想像しながら読めるのが楽しい。
もっと軽い話かと思ってたけど、結構、暗い面もあり意外だった。
ただ、重っ!と感じる話でもない。BJになりきる主人公や、少女マンガを
こよなく愛する親友の男の子のキャラなど、設定が面白くて、話の重さを
吹き飛ばしてしまうようなパワーがある。

こんな小学生がいたら嫌やなぁ・・・と思うけど、これだけ熱中できて、
のめり込めるモノを持っていることは幸せなことだと思う。
単にBJへの憧れだけで動いていた主人公がどんどんと、自我に目覚めていく
様子の描き方が上手いと思った。

マラケシュ心中

2008-01-28 23:42:14 | 恋愛・青春・友情もの
マラケシュ心中 (講談社文庫)マラケシュ心中 (講談社文庫)
中山 可穂

講談社 2005-05
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中山可穂作「マラケシュ心中」を読む。

売れっ子歌人の絢彦は、所属する短歌結社で出会った泉と恋に落ちた。
しかし泉は、絢彦の恩師である薫風の妻であった。禁じられた恋愛に苦しむ
絢彦は、泉を遠ざけようとするが、気持ちを止めることはできなかった。
最果ての地・マラケシュを訪れた2人は・・・というような話。

何とも切ない話だったけど、最後にちょっと救いがあって良かった。
あらすじだけを見ると、陳腐な恋愛話のようだけど、実際読んでみると、
そんな風に感じないのが不思議だ。押さえつけることのできなかった想いが、
砂漠を彷徨い続けているようで、美しさすら感じてしまう。

モロッコのうだるような暑さと猥雑さ、またそれに対する砂漠の荒涼感が、
作品の世界観をよりひきたてていたように思う。
前々から行きたいと思っていたマラケシュが舞台になっているようなので
読み始めたのだが、色んな国が舞台となり登場してきたのも興味深かった。

ブラックペアン1988

2008-01-27 22:59:28 | ミステリ・サスペンス
ブラックペアン1988ブラックペアン1988
海堂 尊

講談社 2007-09-21
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海堂尊作「ブラックペアン1988」を読む。

東城大学付属病院で研修医として働く世良は、総合外科室に配属早々、
院内のゴタゴタに巻き込まれる。総合外科室のドン・佐伯教授、帝華大から
新しい医療機器を携えてやってきた高階、腕はめっぽういいが破天荒な渡海。
一癖も二癖もある医師達に揉まれ、世良が直面する重い医療の真実とは・・・?
というような話。

チーム・バチスタ番外編。20年ほど前の東城大学付属病院が舞台。
今では院長の高階や、まだ若き日の田口・速水、看護士の藤原・猫田・花房など、
オリジナルシリーズでおなじみの面々が登場するのが面白い。
シリーズを読んでなくても大丈夫だけど、読んでいる方が倍楽しめそうな内容。
佐伯教授が使うブラックペアンの意味は、読み進めていくと、すぐに予想が
つくが、医療にかける強い意志と覚悟を感じることができて良かった。

それにしてもこのシリーズ、どこまで話が広がるんだろう・・・。
今まで出てる小説って、全部バチスタから派生していってる話な気がする。
この小説に登場し、今のシリーズには出てこない渡海や世良の行く末の話も
また書かれそうだなぁ。

風に舞いあがるビニールシート

2008-01-25 00:11:04 | その他
風に舞いあがるビニールシート風に舞いあがるビニールシート
森 絵都

文藝春秋 2006-05
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森絵都作「風に舞いあがるビニールシート」を読む。

6つの短編集。

カリスマ・パティシエのヒロミが作るケーキに魅せられた弥生は、彼女の命令で、
クリスマスイブの日、最高の器を求めて岐阜へ行くことになった。それが、
彼氏との溝を深めることになり・・・の「器を探して」

捨て犬のボランティアをしている恵利子は、資金集めの為、水商売のアルバイトを
していた。目下の心配は、家に来て2年になるのに里親が決まらない犬・ビビの
行く末だった・・・の「犬の散歩」

レポートを代筆してくれる女がいるという噂を聞いた裕介は、彼女の元を訪ね、
代筆を頼むが断られる。リベンジをかけて、その一年後、また彼女を訪ねた
裕介に、彼女が教えてくれたことは・・・の「守護神」

仏像に異常な関心を持つ潔は、仏像修復の仕事に携わっていたが、ある寺での
事件がきっかけで、修復師としての道を閉ざしてしまった。25年ぶりに同僚に
再会した潔は、ある真実を告げられる・・・「鐘の音」

通販情報誌で、野田が担当したページの商品にクレームがつき、販売元の社員・
石津と、栃木まで謝罪しに行くことになった。道中、ずっと携帯を放さず、
友達と話し続ける石津に呆れる野田だが・・・の「ジェネレーションX」

UNCHRの職員・里佳は、元夫・エドの死を乗り越えられずにいた。エドは、
現場であるフィールドで1年の大半を過ごし、散っていった。エドの死を通して、
里佳が辿り着いた場所は・・・の「風に舞いあがるビニールシート」


2年くらい前に直木賞をとった作品で、やっと読むことができた。
短編集だけど、どの話も短さを感じさせない奥行きがあって、先を続けて
書けそうな話もいくつかあった。でも、この長さで終わってるからいいのかも。
どの登場人物を大なり小なり、自分なりに譲れない何かを持っていて、
それに向き合い真摯に生きている。確固とした世界観があるけど、それに
圧倒されるというよりは、じわじわと染みてくる感じ。

「鐘の音」以降の3作が心に残った話。

The MANZAI 4

2008-01-24 23:35:53 | 児童書・YA
The MANZAI 4 (4) (カラフル文庫 あ 1-10)The MANZAI 4 (4) (カラフル文庫 あ 1-10)
あさの あつこ 鈴木 びんこ

ジャイブ 2007-12
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あさのあつこ作「The MANZAI 4」を読む。

夏祭りでの漫才後も、歩と貴史のコンビは大人気。そんな状態に辟易する歩だが、
思いを寄せるメグに「恋についての相談がある」と言われてドキドキする。
どうやらロミジュリ実行委員会の森口と高原カップルの間に何かあった様子。
歩の恋心も揺れる第4巻。

面白いんやけど、少し話が脱線しすぎかなぁという気がする。
森口・高原の話がなかなか進まないので、ちょっと読みにくかった。
ただ、いじめられる者の心境とか、友達を信じる気持ちとか、
大切な部分はきちっと描かれているのはさすが。

だらだら進んでた割に、最後にどどーんと急展開があって、またまた先が
気になる。うまいこと次につなげたなぁ・・・。
だんだん大人になっていくのね~と、しみじみおばちゃん視点で読んでしまった。

千年の祈り

2008-01-17 18:19:40 | その他
千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS)千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS)
イーユン・リー 篠森 ゆりこ

新潮社 2007-07
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イーユン・リー作「千年の祈り」を読む。

10の短編集。

誰とも結婚せず、仕事も失くした林ばあさんに持ち込まれた縁談話。
しかし、解消されることのない孤独の道を描いた「あまりもの」

重度の障害を持つ娘と共に暮らす蘇夫妻と友人の方夫妻。
2つの夫妻の関わりから生じる思いとは・・・の「黄昏」

代々宦官を輩出してきた町から、死んだ毛沢東そっくりの男が現れ、
一時的に祭り上げられるが・・・の「不滅」

陽を愛したゲイの伯深と、陽の子を身ごもった薩沙が子どもを堕胎すべく
シカゴへやってきたが・・・の「ネブラスカの姫君」

三三は、親友の旻をアメリカに留学させるため、恋人の土と偽装結婚させるが、
2人が中国へ帰ってくることはなかった。10年後、土が離婚したという話を
聞いた三三は・・・の「市場の約束」

アメリカに帰化したハンは、中国へ里帰りしたが、母と会うことが気重であった。
キリスト教に傾倒している母についての複雑な心境を描いた「息子」

父が長期不在している時に、若蘭と彼女の母親を訪ねてくる炳おじさん。
両親の離婚話が持ち上がり、母親に嫌気がさした若蘭は、炳おじさんを
訪ねるが・・・の「縁組」

核兵器開発の研究所で働く父親の元を離れ、夏と冬の一週間だけ厖夫妻の元で
過ごす主人公。厖夫妻や近所の人々との交流を描く「死を正しく語るには」

ある村で干ばつが起こった。木陰ですることがなく休む村人達は、老大という
男の話を語り始める。それは、息子を殺され、復讐の為、17人殺害し、死刑と
なった男の話だった・・・の「柿たち」

離婚した娘を心配して、渡米した石氏だが、娘との心はすれ違ったままだった。
時折公園で出会うイラン人女性と心を通わす石氏は・・・の「千年の祈り」


海外で数々の賞を受賞してきた作品と聞いて、興味が湧いた。
中国の作家の本を読むのは初めてだったけど、自分が今まで読んできた本とは
毛色が違うなぁと感じた。社会主義を掲げる国家で起こる矛盾と鬱屈が、
新しく感じる部分なのかもしれない。こんなにも自由がない社会なのかと
しみじみ思う。隣の国のことなのに、すごく遠い気がする。

登場する人達は、みんなどこか孤独であり、心の解放を望んでいるけど、
挫折したり、失敗してしまったり、上手くいかない。
だけど、救いがない話になっていないところが素晴らしい。
上手くいかなくても、確実に自分の中では変化していることがあって、
再生されている気がする。だから、読後に嫌悪感がない。

「不滅」「ネブラスカの姫君」「市場の約束」あたりが心に残った話だった。

ダイイング・アイ

2008-01-13 00:56:56 | ミステリ・サスペンス
ダイイング・アイダイイング・アイ
東野 圭吾

光文社 2007-11-20
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東野圭吾作「ダイイング・アイ」を読む。

バーテンダーの慎介は、見知らぬ誰かに頭を殴られ、記憶の一部を消失する。
自分が一年前に起こした交通事故の記憶がなくなっていたのだ。慎介を
殴ったのは、どうやらその事故で死んだ女性の夫らしいが、彼は自殺していた。
自分の記憶を辿っていった慎介が直面した事実とは・・・というような話。

この話って、10年くらい前に書かれた話だったんだねー。
一気に読めるくらい先が気になる話だったけど、めっちゃ面白いと太鼓判を
押せるほどではなかった。ちょっと私は東野作品に期待しすぎてるのかも。

いつもの東野作品と違って、ホラー色が強いように感じた。
マネキンがキーポイントとなって登場するので、それを使って、人造人間とか、
移植とか、お得意の科学系で攻めてくるのかなぁ?と思ったけど、
そういう方向に話が進んでいかなかったのが意外だった。良かったと思う。
終わり方も背筋が凍る感じで、怖かった。

交通事故の刑期が軽いことや、加害者側の罪の意識の低さなど、今、まさに
問題になっているようなことが描かれているのが、すげーなぁと思った。
人殺してるのに、執行猶予はないよなぁ・・・。

ホルモー六景

2008-01-12 18:23:39 | 恋愛・青春・友情もの
ホルモー六景ホルモー六景
万城目 学

角川書店 2007-11
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万城目学作「ホルモー六景」を読む。

前作「鴨川ホルモー」の番外編。
京産大玄武組が誇る黒い嵐・二人静の恋と危機を描いた「鴨川(小)ホルモー」、
京大青龍会の知将・楠木ふみに憧れる高校生の話「ローマ風の休日」、
ホルモーで幹事をするチームの会長に手渡される懐中時計の秘密が描かれた
「もっちゃん」、同志社大学でずっと眠っていた黄竜が目覚める「同志社大学
黄竜譚」、京産大玄武組の元会長・榊原と、龍大朱雀団の元会長・井伊が、
なぜか丸の内の合コン会場で再会する「丸の内サミット」、立命館大学白虎隊
会長・細川が、バイト先で見つけた不思議な長持が繋ぐ縁を描いた「長持の恋」
の6編の短編集。

いやー、面白かったわーー、これ。
「鴨川ホルモー」も大好きなので、期待していたけど、裏切らない内容。
短編なんだけど、ちゃんと他の話とリンクしていて、後でそのつながりに
気づいた時に、すごく楽しめるようになっている。
有名人が出てくるのは、やりすぎやなぁーと思うけど。

同志社大学も入った新たなホルモー続編はあるのだろうか・・・。
是非、読んでみたい!

重力ピエロ

2008-01-10 17:52:26 | ミステリ・サスペンス
重力ピエロ (新潮文庫)重力ピエロ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎

新潮社 2006-06
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伊坂幸太郎作「重力ピエロ」を読む。

泉水と春は、仲の良い兄弟だった。春の出生には、忌まわしい事件が
絡んでいたが、そんなことは関係なしに、家族は皆、仲が良かった。
そんな二人の周りで連続放火事件が起こる。放火される場所の近くに、
必ずグラフィティアートがあることに気づいた春は、泉水と父に相談する。
3人は謎解きをしていくが、そこに隠されたメッセージに気づいた泉水は・・・
というような話。

面白かったー。
取り扱われているテーマはすごく重たいのに、文中の世界観はとても軽快。
登場人物のキャラクターや、兄弟や父が交わす会話が軽妙で、全く重さを
感じさせない。だからと言って、ふわふわ浮ついてるだけの話になって
いないところが凄い。話のダークな部分が余計に切なく感じられる。

話のオチなどは読んでいくと、すぐわかると思うけれど、繰り返される行動、
台詞など、細かく読んでいったら、もっと楽しめそうな本だと思う。
どのジャンルに入れていいかわからなくて、「ミステリ・サスペンス」カテゴリに
入れてしまったけど、あくまで謎解きがメインな話ではないので、
そういうのを期待して読むと違うかも。どっちかって言うと、家族小説かなぁ。

伊坂幸太郎さんが、村上春樹チルドレンって呼ばれているのに、
納得した作品だった。(今まではそれがあんまりピンとこなかったのだが。)

一度も植民地になったことがない日本

2008-01-07 16:57:59 | エッセイ・紀行
一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)
デュラン れい子

講談社 2007-07-20
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デュラン・れい子作「一度も植民地になったことがない日本」を読む。

フツーのヨーロッパ人の間で、日本はどのように映っているのか。
30年以上ヨーロッパで生活する作者が、偏見や誤解も含めた、
ヨーロッパ人が抱く日本像を描いた本。

タイトルがタイトルなので、もうちょっと堅苦しい社会的な本かと思って
読み始めたのだが、一般の会話レベルで交わされている日本を書いた、
砕けた感じの本だったので、拍子抜けした。
海外に長いこと暮らす人のエッセイとしてなら楽しめると思うけど、
そういうのを期待してなかったので、残念だったなぁ。
こんなわかりづらいタイトルをつけないでほしいよ・・・。

でも、子どものしつけの話は、結構面白かったなぁ。
確かに、騒ぐ子どもを放置する親が多すぎて、イラッとすることが多い。
ヨーロッパってそんなに厳しいのかーと意外だった。