しばのずしょりょう

読んだ本などの感想をひたすら書く所。

斜陽

2008-02-22 23:33:53 | 恋愛・青春・友情もの
斜陽 (角川文庫クラシックス)斜陽 (角川文庫クラシックス)
太宰 治

角川書店 1950-08
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太宰治作「斜陽」を読む。

父親が亡くなり、東京の家を捨て、母と2人で伊豆で暮らすことになった
出戻り娘のかず子。穏やかな時が過ぎていくも、母は結核にかかってしまう。
弟の直治が戦争から帰ってきたが、精神は不安定なままであった。
没落していく貴族の一家の行く末は・・・というような話。

図書館で働いてるのに、太宰治を読んだことがなかった。
(結構そういうのが多い私は、まだまだ修業不足・・・・・・)
太宰作品って、すごく暗そうで、気が滅入りそうだなぁという勝手なイメージが
あった。今はまだマシになったけど、基本的にネガティブ思考なので、心が鬱々と
なりそうなものを読むのが怖いというのもあって敬遠してたんだけど、
読後は、読んで良かったなぁと思えた。今の年で読んだのが良かったのかも。
キライじゃないなぁ、こういう世界観。

貴族にも庶民にもなりけれず、自分の居場所が見つからなくて自殺してしまう
弟の遺書が、とても切ない。そんなどーでもええことで自殺すんなよ・・・と、ある
意味、能天気な坊ちゃんだと思ってしまうけれど、自殺という答えを出すまでに、
何とかして生きよう、生きたいという渇望のようなもの、鬼気迫るものを感じた。
主人公のかず子の生き方にしてもそう思うのだが・・・。
彼女は、生きることを選んだだけで。

最初、現代仮名に改められたものを読んで、途中から原文のままの仮名遣いで
書かれた本を読んだのだが、原文のままの方が、文章の流れが美しいなぁと
思ったし、没落していくものの儚さや虚しさがより伝わってくるような気がした。