しばのずしょりょう

読んだ本などの感想をひたすら書く所。

匂いをかがれるかぐや姫

2007-10-31 23:59:59 | その他
匂いをかがれる かぐや姫 ~日本昔話 Remix~匂いをかがれる かぐや姫 ~日本昔話 Remix~
原 倫太郎 原 游

マガジンハウス 2006-11-22
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原倫太郎作「匂いをかがれるかぐや姫」を読む。

「一寸法師」「かぐや姫」「桃太郎」の誰でも知っている3話の昔話を
翻訳ソフトを使って英訳し、その英訳文をソフトを使って、さらに日本語に
再翻訳したものを掲載した本。

いやー、くだらない。いやー、面白い。
めっちゃふざけてる本やねんけど、目のつけ所が素晴らしい。
ネットをしてて、たまに翻訳ソフトを使うことがあるけど、使うたびに
何でこんな意味不明な文章やねんやろう・・・と思うことが度々あった。
こんな面白い遊び方があるなんて思ってもみなかった。

一寸法師→少量法律助言者、かぐや姫→匂いをかがれるとすぐに、プリンセス、
桃太郎→桃タロイモって!!これを見てるだけでも、笑えてくる。
特に「かぐや姫」が面白かったかな。満月が何故か尻に訳されているので、
何だかとんでもないことになっていた。

ちゃんと翻訳されてるはずなのに、再翻訳すると全く違う意味になっているのが
面白い。擬音(どんぶらこ・・・とか)の訳され方も笑える。
聞き飽きた昔話が新鮮に感じるなぁ。

藩校早春賦

2007-10-30 22:18:57 | 歴史・時代小説
藩校早春賦 (集英社文庫)藩校早春賦 (集英社文庫)
宮本 昌孝

集英社 2002-07
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宮本昌孝作「藩校早春賦」を読む。

江戸時代、東海の小藩に藩校が設立されることになった。剣の才能はあるが、
後は人並みな新吾、学問は苦手、剣術が大の得意の太郎左衛門、優しいが、
なよなよしていて女っぽい仙之助の3人も、入学することになった。
身分が高くない新吾や太郎左衛門は、時折差別に合うこともあるが、
それに負けず、戦いながら、成長していく。その頃、藩の中で不穏な動きがあり、
時に巻き込まれる3人だが・・・というような話。

前々から気になっていた時代小説。
個性の違う3人の友情がとても清々しくて、面白かった。
友情だけでなく、ほんのり恋愛も出てきたり、とにかく青春な感じなのがいい。
大人と子どもの間にいる少年達が、大人の世界で起こるきな臭い事件と
直面することで、どんどん成長していく様子が、とても良かった。

続編があるらしいので是非読んでみたい。

顔なし子

2007-10-26 21:54:50 | ミステリ・サスペンス
顔なし子顔なし子
高田 侑

幻冬舎 2007-08
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高田侑作「顔なし子」を読む。

修司が中学生の時、母が亡くなって一年もしない内に、父が再婚相手を連れて
きた。美しい女・セリとその息子の桐也だった。しかし小さな村で、2人が
歓迎されることはなく、ある日事件は起こった・・・。
成長し、故郷を離れた修司だったが、年老いた父と同居するため、
家族を連れて帰郷した。それを待っていたかのように、次々と怪事件が起こる。
中学生の時のあの事件と関係しているのか・・・?というような話。

たまたま見てた「週刊ブックレビュー」で、角田光代さんが紹介していた本。
面白そうだったので読んでみた。
本のオビに「ホラーサスペンス大賞」と書いていたので、怪談っぽい話なのかなと
思って読み始めたけど、そういう感じではなかったので意外だった。

人間の嫌な面がよく描かれていて、一番怖いのは人間かもしれないと思った。
人の作り出す悪意のイメージが勝手に膨らみ続け、架空の怪物を作り出している
感じがした。最後にある登場人物が再登場するのだが、個人的には出さないで
いた方が、怪談っぽくなって良かったかなぁと思う。もしくは、全て裏で手を
引いてるかも・・・と想像する余地も生まれるから、色々と考えられたのでは。

ラストはあっさりしてるけど、なかなか面白かった。

三月、七日。 ~その後のハナシ~

2007-10-23 18:16:33 | 児童書・YA
三月、七日。―その後のハナシ (ファミ通文庫)三月、七日。―その後のハナシ (ファミ通文庫)
森橋 ビンゴ

エンターブレイン 2004-12
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森橋ビンゴ作「三月、七日。 ~その後のハナシ~」を読む。

半年前、実の妹と知らずにお互いを好きになってしまった三月と七日。
急に家族になってしまった2人だが、特に三月は七日に対する恋心を捨てられずに
いた。自分に好意を持っている真希と友人以上恋人未満の関係を続けるも、
心ここにあらずで、どんどん孤独さが募っていく。七日は、ひょんなことから
知り合った赤坂から告白され、それを聞いた三月は・・・というような話。

前に読んだ「三月、七日。」の続編。
韓国ドラマのようなベタな展開で終わった話だったけど、すっきりしない感じ
だったので、ここでちゃんと完結してくれているのは良かったと思う。
まぁ、悲恋のまま終わってるからこそ、心に残るっていう人もいるだろうけどね。

今回は、恋心をどう家族愛に変えていくか・・・というのか主題。
っていうか、こんなに人間の心っていうのは、あっさり変わってしまうもの
なんですかね。三月、節操ねーな・・・とツッコミたくなることがしばしば。
だけど、いつまでも過去に囚われず、未来へ進んでいく終わり方だったのが、
良かったかな。

ランナー

2007-10-22 00:20:04 | 恋愛・青春・友情もの
ランナーランナー
あさの あつこ

幻冬舎 2007-06
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あさのあつこ作「ランナー」を読む。

有望な長距離走者である高一の碧李は、期待されたレースで惨敗してしまう。
その頃、家庭内で複雑な立場にあった妹の杏樹のことを案じた碧李は、
陸上部を辞めることにした。しかし、それはレースが怖くなり、走ることから
逃げたくなった自分への言い訳であることに気づく。
もう一度、走る決心をした碧李だが・・・というような話。

これまたあさの節炸裂な話。
この前読んだ「晩夏のプレイボール」同様、これまたスポーツの内容自体に
重きを置いた作品ではなく、それに関わる少年や、周囲の人々の心の揺らぎを
描いた話だ。だから、陸上の爽やかな小説と思って、読み始めると、
肩透かしを食らうと思う。

愛と憎悪の間で揺れ動く母親、虐待を受ける妹が登場し、家庭問題的な側面の
強い話で、ちょっと読み進めるのが辛くなることがあった。
薄い氷の上を歩いているような、いつ壊れてもおかしくない緊張感が、
張りつめていて、息苦しい。この辺りの心情表現の描写は流石といった感じ。

ラストがすごいかけ足だったのが残念。ページ数が足らんかったのかなぁ。
最後の方を読んでて、どんどんページ数が少なくなっていくので、
これどうやって終わらせるんやろう・・・と少し心配になってしまった。
うまいことまとまってはいたけど、もう少し丁寧に描いてほしかった気もする。

白馬山荘殺人事件

2007-10-21 23:59:59 | ミステリ・サスペンス
白馬山荘殺人事件 (光文社文庫)白馬山荘殺人事件 (光文社文庫)
東野 圭吾

光文社 1990-04
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東野圭吾作「白馬山荘殺人事件」を読む。

一年前の冬、白馬のペンション「まざあぐうす」で自殺した兄の死を不審に
思ったナオコは、親友のマコトと、死の真相を確かめるため、白馬へ行く。
ペンションの宿泊客は、常連の客で占められており、去年と同じ顔ぶれだった。
ペンションの名前になっている通り、各部屋にはマザーグースの歌が書かれた
壁掛けがあった。どうやら兄は、このペンションに隠された暗号を解こうと
していたようだったことに気づいた2人だが・・・というような話。

「マザーグース」を使ったミステリというと、クリスティの「そして誰もいなく
なった」を連想するので、そういう話なのかなぁ?と思ったけれど、
また一味違う作品であった。

犯人までは予測することができたけど、その後のエピソードでのどんでん返しは、
予想外。東野作品のこういうところが好きなので、キタキタキタという感じ。
最近の作品では、こういう本格推理っぽい話が少ないので、何となく寂しい。
こんな感じの話はもう書いてくれないのかなぁ。

震える岩

2007-10-18 00:17:22 | 歴史・時代小説
震える岩―霊験お初捕物控 (講談社文庫)震える岩―霊験お初捕物控 (講談社文庫)
宮部 みゆき

講談社 1997-09
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宮部みゆき作「震える岩」を読む。

お初は、超能力を持っていた。時折、霊を見ることができるのだ。
その不思議な能力が気に入られ、南町奉行の根岸肥前守と親しくしていた。
その肥前守から、どことなく頼りない古沢右京ノ介と、深川で起こった
死人憑き事件を調べるように依頼される。その頃、幼い子どもが殺される事件も
発生する。その2つの事件は、100年前に起こった赤穂浪士の討ち入り事件と
関係があると気づいた2人だが・・・というような話。

なかなか面白かった。
宮部さんの本を久しぶりに読んだのだが(しかも宮部さんの時代モノは初)、
テンポがいいので、ぐいぐいと話に引き込まれる。
超能力が絡んでくるので、普通の時代小説より、くだけた感じで読みやすい。
かと言って、江戸の情景がおろそかに描かれているわけではないので、
上手いなぁと想った。

この話のキーポイントとなる忠臣蔵については、ドラマのイメージしか
なかったので、意外な感じだった。(話中のエピソードが史実かどうかは
わからないけど。今度、忠臣蔵関連の本で調べてみるか・・・)

登場人物も、主人公のお初を始め、右京ノ介、兄の六蔵など、
色々と魅力的な人物達が出てくるので、飽きない。

続編と「かまいたち」に前日譚となる短編が載っているようなので、
それも読んでみたいな。

晩夏のプレイボール

2007-10-17 00:17:57 | 恋愛・青春・友情もの
晩夏のプレイボール晩夏のプレイボール
あさの あつこ

毎日新聞社 2007-07-20
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あさのあつこ作「晩夏のプレイボール」を読む。
高校野球にまつわる10話の短編集。忘れないために、あらすじメモ。

中学から一緒に野球をやってきた真郷と律。肩を壊し野手転向をよぎなくされた
真郷。飄々としていて闘争心の少ないピッチャー律。2人は、甲子園の地区予選
準決勝で、後1アウトの所まで追い込まれていた・・・の「練習球Ⅰ・Ⅱ」

野球好きだった加奈は、少年野球チームに入っていたが、中学入学を機に、
男のスポーツである野球から離れざるを得なくなる。チームメイトだった美倉と
高校で再会した加奈は・・・の「驟雨の後に」

英斗は久しぶりに故郷へ戻る。甲子園出場を果たした血のつながらない兄を
誇りに思っていたことを思い出す。今は高校の野球部の監督を務める兄が
英斗に告げた真実とは・・・の「梅香る街」

中学校の野球部で知りあった彰浩・信吾・有一。高校でも甲子園を一緒に目指した
かったが、様々な事情で、廃校になる予定の高校に通うことになった。甲子園に
行くことを夢見ることもできない微妙な心境を綴った「このグラウンドで」

野球好きな息子を幼い頃に事故で失った夫婦。それから何十年も経ち、夫は
死の淵に立っていた。病院で高校野球を見ていると、息子と同姓同名の
選手が出てきて・・・の「空が見える」

甲子園で見事優勝したピッチャーの優流。しかし、その先の目標が見えず、
不安を感じていた。久しぶりに実家に帰った優流は、体調の悪い親友・健斗を
見舞うが・・・の「街の風景」

平凡であることに悩んでいた一登は、河原で素振りをしている少年を見かける。
その後も、その少年が気になった一登は、河原へ通うようになり、
野球に興味を持ち始める・・・の「雨上がり」

才能はないけど、野球に魅せられた嘉人は、高校で野球部に入りキャッチャーを
していた。レギュラーになることもなく卒業しようとしていたが、中学生の頃から
屈指の左腕として注目集めてきたチームメイトの雄大に、球を受けてほしいと
頼まれる・・・の「ランニング」

病魔に冒された順平は、久々に帰った故郷で彰信と再会する。彰信は、高校の
野球部でバッテリーを組んできた女房役だった。「なんで諦めるんだ」と
本気で怒られたことを思い出す順平は・・・の「東藤倉商店街」


この前読んだ「大延長」に引き続き、高校野球の本。
同じ高校野球を扱っていても、全然毛色が違うので、読み比べると面白い。

あさのさんの野球モノは、ゲームの進行や結果よりも、それに携わる人達の
心情の揺れや、微妙な人間関係を描いている。だから、野球モノを読んでると
いう気分には余りならない。あくまで野球は、人間を描くためのエッセンスの
一つといった感じ。

この中だと、「梅香る街」と「雨上がり」が好きかなぁ。

大延長

2007-10-13 10:50:29 | 恋愛・青春・友情もの
大延長大延長
堂場 瞬一

実業之日本社 2007-07-20
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堂場瞬一作「大延長」を読む。

甲子園初出場の公立新潟海浜高校と、甲子園常連の私立恒星学園が戦った
決勝戦は、延長15回で決着がつかず、再試合となった。
海浜のエース牛木、キャプテンの春名、恒星の四番・久保は、リトルリーグ時代の
チームメートであり、両校の監督は大学時代バッテリーを組んでおり、因縁のある
対決となっていた。怪我、喫煙騒動、監督移籍の噂など、両校共、様々な問題に
直面するが、優勝をかけて再試合が始まる・・・というような話。

テレビで紹介されていて気になっていたので読んだ。
生の甲子園の試合は、いつも見たり見なかったりなのだが、本やマンガの
高校野球の世界はドラマがあって、すごく好きなのだ。

プロローグで、牛木と久保が高校野球の監督となって、県予選の決勝を戦ってる
シーンから始まり、そこですでに15年前の試合の結果が明かされており、
えええ???と思ったのだが、エピローグを読んで少し納得した。
だけど、あれは試合の文中の最後に持ってきてほしかったなぁ。その方が
どちらが勝つかわからないから、ドキドキして読めるのに・・・。

次々と色んな人の視点から試合が描かれるので、その切り替えについていくのは、
慣れるまでしんどいけど、試合が立体的に描き出されるので、良かったと思う。
爽やかなだけの高校野球を描いていないのも面白かった。

続 氷点

2007-10-11 13:34:39 | 家族もの
氷点 (続 上) (角川文庫 (5072))氷点 (続 上) (角川文庫 (5072))
三浦 綾子

角川書店 1982-03
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三浦綾子作「続 氷点」上下巻を読む。

自分の出生を知り、自殺を図ったが、何とか命をつなぎとめた陽子。
しかし、それは誤解であることがわかったのだが、自分が望んで生まれた子では
なかったことを知り、悩み苦しむ。一方、陽子の義理の兄・徹は、陽子の実母・
恵子に接触をするが、新たな波紋を呼ぶことになる・・・というような話。

「氷点」の続編。
続編でも、人間の奥底に潜む嫌な部分がたくさん描かれている。
人間とは、何と罪深い存在であるものか・・・。
「赦す」ことの難しさも、読み進めるにつれ、色濃く感じられる。

話の展開を見ると、まさしく小説の世界という感じで、あり得ないことが
次々と起こる。特にラストの方で起こる事件は、ちょっと可哀相。
そこまでやるかー・・・という感じ。
しかし、そのことが陽子を一回り大きい人間へと成長させるので、
心に残るラストになっていると思う。