しばのずしょりょう

読んだ本などの感想をひたすら書く所。

月の裏側

2008-03-26 02:19:40 | SF・ファンタジー
月の裏側 (幻冬舎文庫)月の裏側 (幻冬舎文庫)
恩田 陸

幻冬舎 2002-08
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恩田陸「月の裏側」を読む。

九州の水郷都市・箭納倉で、掘割に面した家の住人が相次いで失踪する事件が
起こっていた。しかし、不思議なことに行方不明になった者は、その間の記憶を
失ってはいるものの、ひょっこり戻ってくるのだ。事件に興味を抱いた元大学
教授の協一郎は、教え子の奇人・多聞と娘の藍子、新聞記者の高安と共に、
事件の謎に迫るが・・・というような話。

ミステリかと思って読み始めたら、SFホラーだった。
恩田さんって、いつもながら作品の幅が広いよなぁ・・・。

じめじめとした何かが、始終、身体にまとわりついているようないやーな感じが
作品内に漂っている。「水」がキーワードとなる本なのだが、水路を流れる水や、
雨、水たまりなど、登場する水が、粘度が高い感じ。
そういう湿度や粘度の高さが、この話を、より得体の知れない不気味なものに
するのに一役買っているような気がする。

みんなと同じでありたい感覚と、個性を大切にしたいという相反する感覚が
交錯し、極限状態に追い込まれていく様子が恐ろしかった。
誰もいない町って、想像しただけでも怖い・・・。