yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

山 短編11 ショウサイドストーリー3

2015-09-09 18:18:44 | 短編






「櫻井」

「……」

「櫻井」

「はい?」

「もう終わったのかね?」

「あ~終わりました」

「じゃあ休んでいるとこ悪いが職員室に行って
資料をとってきてくれないか?」








この日は、授業に入る前に小テストがあった。


でもそのテストに出された範囲は自分の中で一番得意な分野で
すでに見直しまで終わりぼんやり考え事をしていた。


そこに目をつけられたのかなんなのか
先生が授業で使う資料を忘れたから
今から取って来いという。


って、冗談じゃねえよ。


めんどくせえよ。


しかも職員室って文系側じゃん。


反対側じゃん。


自分で忘れたもの位、自分でとってこいってんだよね。







……なんて、


言えるはずもなく


はいわかりました、と席を立った。










職員室は文系クラス側の建物にある。


文系クラスと自分たちがいる理数系クラスとは
部活などで一緒にならない限り
あまり交流がない。


移動教室などは共有だがすべて一階にあるため
なんとなくお互い移動の時は
一階を使って反対側の建物に移動するのが主だった。


でもその日は授業中だしと
2階の渡り廊下から渡って行くことにした。


もしかしたらあの人の姿が見えるかもしれない。


少しだけ、心の中で


そう思った。







いつもは下から見上げるだけの、その人の顔。


教室で勉強している姿はどんな感じだろう?


窓から外を眺める姿ではない


いつもとは違う、その姿。


ちょっとだけ、興味があった。


渡り廊下を抜け文系クラス側の廊下をゆっくり歩く。









いつもと違う風景。


ドキドキする。


もうすぐあの人のいるクラスだ。


左側の一番端のクラス。


「……」


って、静かだし。


誰もいねえ。


クラスの扉は両方とも開けられたままで


中はシーンとしていた。


移動教室だろうか?










「……!」


一人いた!


誰もいないと思ったその教室の中。


一人の人影が見えた。




あの後ろ姿。




間違えない。


いつも下からしか見たことがなかったけどわかる。


それがその人だと。


いつもその人が立ってる場所に
オオノ サトシ その人がいた。


って、また窓から外見てるし。
よっぽど好きなんだな。
そう思って、思わず笑いそうになった。


しばらくその姿を廊下から眺めていたが
一向に動く気配がない。


どうしよう?


このまま何もなかったように素通りする?


頭の中でぐるぐる考える。





いつも視線が合っていた。


その視線がなんなのかずっと気になっていた。


でもそう思っていたのは自分だけかも知れない。


もしかしたら実は違うところを見ていたって


可能性もある。


そんな思いが頭をよぎり


ドキドキが止まらない。







こんなこと初めて。


そう言えば自分から声をかけるって
今までなかった。


友達とはいつもどちらからともなく
自然に仲良くなっていったし
女の子に関して言えばいつも声をかけてもらうばかりで
自分から声をかけたことはなかった。





でも。


その真っ直ぐに向けられる視線。


その美しい顔。


その存在。


ずっと興味があった。






勇気を出してそっと教室の中に入る。


その人はこちらに気づく気配がない。


驚かせないように。


わざと歩く音を立ててゆっくり近づいていく。


絶対気づいているはずなのに。


その人の視線は窓の外に注がれたまま。








「……」


どうしよう?


このまま戻った方がいいのだろうか?


そんな事を思いながらどうしたらいいものかと


立ち止まって考えていると


その人が突然ぱっとこちらに振り向いた。





「……!」


目が合う。


その人はびっくりした表情を見せる。


当たり前だ。
授業の真っ最中に他のクラスの男がいたら
びっくりするだろう。


「ホントここから外眺めんの好きだね?」


そのまま驚いて呆然と立ち尽くしているその人に
思い切って話しかけ
そして怖がらせないようにそっと優しく微笑んだ。


って、怖がらせないっていうのも変だけど。


でも一度も話したことがないやつから
突然話しかけられたらびっくりするよね。
しかもこんな茶髪でピアスなんかしちゃってるし。


そう思いながらその人を見ると
その人はなんで?って顔をしたまま見つめてくる。
当たり前か。
ええと。こう言う時何て言えばいいんだっけ?


「いや、たまたま荻市に頼まれて通りがかったら
姿が見えたから。
って言っても俺のこと知らねえか」


どっちだ?


どうでる?


緊張で心臓が張り裂けそうな思いでその人を見ると
その人は首を横に振った。


その姿にほっと胸をなで下ろす。


「知ってた? 嬉しいよ。
俺も毎朝見かけてたからつい知ってる人の気分になっちゃってさ。
急に話しかけてごめん。じゃ」


そう思いながら一方的にその人に告げ
その場を去った。










緊張して自分自身なんて言ったか覚えていない。
ドキドキが止まらない。
でも話せたことがすごく嬉しくて
そしてその人の事を思い出すと
顔が、身体が、かっと熱くなる。


一方的に話しただけだけど
でも今も心臓がどきどきして止まらない。


そしてあの綺麗な顔。


びっくりした顔は可愛らしくて
ちょっと伏せがちにした顔は儚くて壊れそうで
守ってあげたくなる感じで。


って。


男の人相手なのにそんな事思うなんて
変かもしれない。








華奢な身体。


でも、それだけじゃない。


アクロバットが得意なだけあって


腕も身体もほどよく筋肉のついた


綺麗な身体をしていた。


それを思い出すだけで


自分の心臓はどうにかなってしまったのではないかと思うほど


ドキドキが止まらない。






そう言えば


声聞いていなかった。


でもまあいいや。


これから仲良くなれれば。


そう思いながら自分自身がどこか心が


ワクワクしているのを感じながら


職員室に向かった。






そして、その日から


普通の高校生活だと思っていた毎日が


普通の日常だと思っていた毎日が


自分の中で大きく


大きく


変わった事を感じていた。















ゆっくり坂を上がっていく。


もう少し。


そう思いながら


ゆっくり顔を上げる。


いつもの場所には


やっぱりその人がいて


視線が重なる。





思い切って


その人に向け





手を振った。










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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (しーな海里)
2015-09-11 19:30:29
とうとう手を振りましたね。
だんだん近づいてくる。
次回期待です!
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ドキドキ♡ (ルクパト)
2015-09-11 22:10:15
「 どっちだ ?」 「 どうでる ?」 にやられました。♡

きらりさんマジック、すごいです!!

翔くんの緊張がピーンと張り詰めて

それが、読んでいて私にも伝わってきて
ゾクゾク・ざわざわ・ドキドキしちゃいました。

続きが楽しみです♪
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しーな海里さんへ (きらり)
2015-09-12 17:09:16
しーな海里さん、コメントありがとうございます。

かなり二人近づいてきましたね。
智バージョンに比べゆっくりでじれったいかもしれませんが
大丈夫でしょうか。
次回期待して下さって嬉しいです。ありがとうございます。


返信する
ルクパトさんへ (きらり)
2015-09-12 17:18:06
ルクパトさん、コメントありがとうございます。

そんな風に言って下さるなんて!嬉しいです。
一緒に緊張してくださったということでしょうか。すごく嬉しいです。

今回は智バージョンが終わってからの翔バージョンなので
期待度も半減かも?とずっと心配してたので楽しみにしてると
言ってくださって本当に嬉しいです。
ありがとございました♪
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Unknown (Unknown)
2015-09-13 06:09:58
字になったのをあらためて読むと、すごくそっけないですね、私の感想!!顔文字の必要性がわかるなあ。

このじわじわが楽しいんですよ!(笑)
あああ、とうとうここまできたぞお!次は?わくわく…
という感じなんです。

補足でした(*^^)v
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しーな海里さんへ (きらり)
2015-09-13 17:29:37
わざわざ戻ってきてくださってありがとうございます。
嬉しいです。
じわじわを楽しんでもらえているのですね!
先が分かっているのでわくわくしてもらえるなんて
本当に思ってなかったのでびっくりなのと嬉しいのとダブルの気持ちなのです。

補足しにきてくださってありがとうございました♪
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