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山コンビ大好き。

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きらり

17   vol 4

2012-12-04 16:27:24 | 日記


「あの2年ん時一緒だった吉田と佐藤って憶えてる?
あいつら結婚したんだってよ」
「まじか、はええな」
そんな他愛もない話したりするのが無性に楽しくて
それから時間が合うときはしょっちゅう一緒に飲みに行って話をした。


多分それは話をすることが目的というよりその人に会うことが
一番の目的のような感じだった。
そしてその人も嫌がらず時間が合う時は付き合ってくれた。
そして何回かあっているうちにだんだんお互いの家で飲むようにもなり
また下の名前で呼び合うようにもなっていった。


「結構あの時のこと憶えているんだね」
不思議と彼は高校時代一緒だった2年弱の事を
憶えていた。


その言葉に意外そうな顔を見せる。
「いやだって、あの時…色々大変…だったでしょ?」
衝撃的なことがありすぎてあまり当時のことは
記憶には残ってはいないだろうと思っていた。


「ああ、知ってたんだ。
まあ、あんな時期外れになんて、何かあると思うよね」
納得したように頷く。
「うん、まあね…。
あ、ごめん、話たくはないよね?」
本当は話を聞いてその苦しみを少しでも軽減してあげたら
と思ったが、自分からは聞いてはいけない話だと思った。


「ううん、大丈夫だよ」
まだあれから数年しか経っていないのに
気丈に振舞う彼が無性に愛おしかった。


「本当に?」
「まあ、あれから5年…6年か、経つからね。
大丈夫っていうか。
こう日々はすごく辛いことや悲しいことがあっても
淡々と自然に流れていくもんなんだなって」
まだ数年しか経っていないのに穏やかにそう言って話す彼は
凄く強い人だと思った。


あの時君は17歳だったんだよね。
まだ17だった。17の君には重すぎる出来事だったと思う。
そしてオレは何もしてあげることができなかった。
というより何ををしてあげたらいいかさえわからなかった。


「だけど正直言って最初の3ヶ月くらいは記憶ないんだけどね」
そう言って無邪気な顔で笑う。
「そうか…そうだよね。」
17歳から君が抱えてきたこと。
これからも背負って生きていかなければならないこと。
何かしてあげられることはないのかなと思う。


「あの…おじいちゃんおばあちゃんは元気なの?」
たしか祖父母に引き取られたと聞いていた。
「うん、元気元気。正月も行ってきたんだよ」
そう嬉しそうに話す。
「でも…」
そう言ったかと思うと急に表情が暗くなる。


「その頃は自分のことしか考えられなくて
頭の中真っ白なくせに
何でこのまま東京にいられないんだろうとか、
なんであそこに住まなきゃいけないんだろうとか、
もうほんと訳わかんないことばっかり考えてた。」
そうポツリポツリと静かに話す。


「じいちゃん達も実の息子達がいなくなっちゃったわけだから
本当は凄く辛かったと思うんだけどね。
でもオレを一生懸命守ろう守ろうとしてくれていたんだなあって
じいちゃんの家出てから気がついたんだ…」
そう言ったかと思うと涙が一つこぼれ落ちた。


その華奢な身体に自分では想像できないくらいの
悲しみと苦しみを背負ってきたんだと思うと
胸が締め付けられる思いがした。
と、同時に不謹慎かもしれないがその顔が凄く綺麗だと思った。


気づくと肩に手をやりその唇に自分の唇を合わせていた。


びっくりして涙も引っ込んだのか放心状態になってしまっているその人に
何と言っていいか分からず
「今まで頑張ってきたご褒美……なんちゃって。
…ごめんなさい」
ボーゼンと見つめ、何でって顔をしているその人に
おちゃらけて。で、直ぐに謝った。

「んふっ」
少しの沈黙のあと、思いがけずその人が笑う声が聞こえた。
「え?」
なんでそんな事をしたのかと、怒られると思っていたので
びっくりして思わず顔を見つめる。


「いやほんと高校時代の翔と全く違うから。
高校時代はそんな事言う人じゃなかったし
ましてやこんな事する人じゃなかったからホント信じらんない」
そう言っておかしそうにクスクス笑う。


「オレってどれだけのイメージなんだよ?」
「んー。怖い人、仏頂面で冗談なんて言わない人」
そう言って笑いあった。


「まじか、最悪なイメージだな」
想像はできていたけどいざ本人の口から聞くとちょっと落ち込む。
「だから今こうやってるのが何か信じられない。
だけど…」
「うん?」
「怖かったけど優しさがあった」
気づいてたんだ?それだけで胸がカーっと熱くなる。


「…ずっと好きだったんだ」
その言葉に堪えきれず気がつくと告白してた。
「多分、あの時、初めて見た時から。」
その人はびっくりして何も言えずボーゼンとしている。


「だからずっと気持ちがバレないように。あれは照れ隠しだったんだ」
黙ったまま聞いているだけのその人に思いをぶちまける。
「そうだったんだ。
だからたくさん助けてくれたりしてくれてたのか…
そうなんだ。全然気が付かなかった。」

「でもオレも…オレも翔のこと好きだよ」

「まじでか」
思いがけず出るその人の言葉に胸が踊った。


「多分、今思うと高校の時から。
助けてくれるのが嬉しかったし
見つめられるとドキドキしたし。
3年になってクラスが離れて寂しかったし。
だから今こうやって会えてしかも一緒にいられるのが凄く嬉しかった」


そう言ってにっこり笑う顔がすごく可愛くて
「もう一度ちゃんとしたキスしていい?」
気付いたら言葉が出てた。


「う…うん。いいよ」
その人は恥ずかしそうに答える。




「ずっと好きだった」

そう言ってその華奢な身体をきつくきつく抱きしめた。

そしてゆっくりと唇を近づけ6年分の思いを込めてキスをした。

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