yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

山 短編8 スピンオフ2

2014-08-05 16:58:57 | 短編




夏で。


イヤ


夏に関わらずですが


すみません。


お詫びに甘甘な話を


なーんちゃって。







山 短編8 スピンオフ2←








兄のシェアハウスの相手の人は


とても綺麗な顔をしていた。


初めてその顔を見た時


息をする事も忘れ


ただただその顔を見つめた。






「ねぇ、来月大野さんのお姉さん戻ってくるんでしょ?」

「そうみたいだね」

「じゃあ、兄ちゃん帰ってくるの?」

「それはないみたいよ」

「何で?」

「よく知らないけど、そのままあの家で暮らすらしいよ」

「何で?」

「知らない。気になるなら直接お兄ちゃんに聞いてみたら?」

「……」




兄ちゃんはこの夏から大野さんとシェアハウス
生活をしている。


それは大野さんのご両親が相次いで亡くなり
たった一人の身内であるお姉さんも海外生活をしているため
大野さんが一人になってしまわないようにと
なぜか兄と一緒に暮らすことになった。





でも最初は


最初は大学生の男の人なのに一人で暮らせないって
どういう事なんだろうって不思議に思ってた。


でもその姿を見て何だか分かった気がした。


その綺麗な顔
華奢な身体
5歳上だけどなぜか守ってあげたくなるような
そんな風に思ってしまう不思議な存在。


今まで出会ったことがない。
同じ学校にも
街を歩いていても、どこにもいない。


妙に惹きつけられて
そして目を奪う。








「何? ホントに行くの?」

「うん」

「前行った時、あんなにめんどくさがってたのに?」

「別にいいじゃん。姉ちゃんは行かないんでしょ?」

「そうだけど……」






日曜日。


兄に連絡してあのシェアハウスに行くことにした。
お母さんはまたたくさんの料理を作っている。
何だかすごく嬉しそうだ。


一人で電車に乗ってそれを持っていくのは
ちょっと重くって大変だけど何だかワクワクしている。


何でだろう?


大野さんと会ってから大野さんの事ばかりを考えている。
大野さんの顔

そして綺麗な手


あの日は緊張して全然話せなかったし
目を見て話すなんてとてもできなかったけど
でもどうしてもまた会って
そして確かめたかった。












「あれ? 今日も来てんの?」

「お邪魔してマース」

「お邪魔してマースじゃねえよ。中学生は忙しんじゃねえの?」

「今日は部活休みだもん。それに大野さんに宿題見てもらってたんだもん」

「……」





兄ちゃんはそう文句を言いながら部屋に入ってくる。
でもどんなに兄ちゃんに言われたって平気。
だって大きな声では言えないけど大野さんに会いに
来てるようなもんだもん。







あれから


用事のない日は毎週のようにここに通っている。
大野さんはいつも優しくしてくれて
最初は緊張して何も話せなかったけど
徐々に話せるようになって
今では兄ちゃんがいなくても二人で普通に過ごしている。
それがなんだか嬉しい。


それに最近では顔を見ると緊張はするけど
目を見て話せるようにもなった。
大野さんは大人で
優しくて綺麗で
大好き。


もうクラスメートなんて子供にしか見えない。

















「今日、ここに泊まりたい」

「はぁ? 何言ってんだよ」

「いいじゃん。明日も祭日で休みなんだし」

「そんなこと言っても寝る場所ねぇよ」

「ここのソファでもいい」

「ソファ?」





最近弟はなぜかよくこの家に遊びに来るようになった。
しかも智くんといつも仲良く話なんかしていて
それがなんだか少し面白くない。


しかも今日は泊まりたいとか言ってくるし。
一体何を考えているのやら。


つってもソファじゃあね。
かと言って弟と一緒のベッドに寝るなんて考えらんないしなぁ。
子供のころはあったけど、今は何だかでけぇし。
しかも智くんはどうする?


もう毎日一緒に寝るのが日課みたいになってるから
一緒に寝ないなんてとても考えられない。
かと言って智くんと一緒に寝て
修也が智くんのベッドに寝るなんて変だし
それに教育上も良くない気がする。


「なんなら、俺、大野さんと一緒に寝てもいいなぁ」

「はっ? なにいっちゃってんの、もう。布団もないし帰れよ」

「何で? いいでしょ~?」

「よくない。それにみんな心配するでしょ」

「兄ちゃんとこ泊まるのに?」

「いいから。ほら送ってったげるから」

「え~泊まりたい」

「また今度な」

「今度っていつ?」

「今度」

「……」


本当に何を考えているのやら。








「智くん、ごめんね~」

「え~?」

「何か最近毎週来てんなあいつ。邪魔でしょ?」

「そんな事ないよ。かわいいよ」

「かわいい?」

「うん、翔くんの中学時代を見てる感じで」

「いや俺はあんな感じじゃなかったけどね」

「んふふっどんな感じ?」

「もっとしっかりしてたし」

「修也くんもしっかりしてるじゃん」

「いやいや末っ子の甘えっ子ですよ」

「ひでぇ」


そんな話をしながら二人で笑いあった。











あの日


キスしていいですかって言ったら


智くんが思いがけずいいですよって言ってくれたから


思わずしてしまった。




でも


自分の中では


自分で言い出したことなのに


少しの戸惑いと


躊躇いがあった。






好きだけど


でも、男の人だし。


こんなこと今までなかったから


わからない。





だからあれから


キスはおろか


一緒にベッドで寝ていてもほとんど身体は


触れないようにしていた。







そしてあの日。


智くんから


好きと言ってちゅっとキスをしてくれた。


すごく可愛くて


愛おしくて


めちゃくちゃ嬉しかったけど


でも戸惑いもあった。






好きだけど


すごく好きだけど


ちょっとだけ怖い気もする。


智くんの事を弟にも嫉妬してしまうくらい好きになりすぎて


そんな自分が怖い。


男の人なのに。





かと言ってほかの子を見ても


とても智くん以上に好きになれそうもない気がする。








まだ自分自身の気持ちに戸惑いはあるけども


躊躇いはあるけど


どうなってしまうのかすごく怖いけど


乗りかかった船


このまま流れに身を任せて


乗ってしまおうか。






そんな事を思いながら


身体を起こし上から智くんのその綺麗な顔を見つめると
智くんもまっすぐな目で見つめてくる。


「ね、迷ってる?」

「……」

「……」

「何かよくわかんないんだよね」

「……?」

「女の人とも何人か付き合ったけど。
今でも男の人とって考えられないけど。
でも智くんは別、みたいな」

「……うん」

「何でだろうね?」

「わかんない。でも、俺も、翔くんだけ別だよ」

「ふふっそうなんだ?」

「うん、そう」

「……」

「ね、キスしよっか」

「……うん」


智くんがそう言ってきたからゆっくりと顔を近づけていって
ちゅっとキスをする。


「……」

「……」

「キスしたくなるのも智くんだけなんだよな」

「ふふっ」

「なんでだろ?」

「ね?」

「何かもう、これから先智くんが一緒じゃないとダメな気がする」

「んふふっ」

「何でだろうね?」

「わかんない」

「俺バカみたいにそればっか言ってんな」

「ふふっ」


もうこの身体が智くんなしじゃダメな気がする。
身体が憶えてしまって
視覚が
嗅覚が
聴覚が
触覚が


智くんに支配されて
智くんなしじゃ眠れない身体になってしまっている。





この先


智くんなしで生きていくなんて


とても無理なんじゃないかと


そんな風に思いながら


その綺麗な顔を見つめた。




顔をゆっくり近づけていくと
ゆっくり目が閉じられる
唇に唇を重ねると
顔が
身体が
熱くなる。


唇を離すと智くんの綺麗な手が伸びてきて
両頬を包み込む。


「翔くんの頬熱い」

「何でだろうね?」

「翔くんそればっかり」

「ふふっ」



本当に何でだろうね?
もうこの人以外にこんなに熱く
なれない気がする。


「もう一回してイ?」


声が掠れている。
智くんはまっすぐ見つめたまま、うんと頷く。
そのまま角度を変え唇を重ねると
そのまま深いキスをする。


智くんの腕が背中に回ってくる。
そのままお互いきつく抱きしめ合って
それから少し顔を離すと目が合う。


そしてお互いにふふって笑って
そしてまたちゅっと触れるだけのキスをした。











隣ですうすうと眠る智くんの顔を見つめる。
その寝顔を見てそしてその寝息を聞きながら
やがてそれは深い眠りへと誘う。






深い眠りに落ちていく中


やっぱりもう


この身体は


智くんなしでは


ダメだと








そう思った。