久しぶりに会った子役の男の子は
びっくりする位身長が伸びていて
声変わりまでしていた。
「怪物さ~ん。ちょっと並んで~並んで~」
なぜか妙に嬉しくなって←
そう言って智くんを立ちあがせると
並んでもらうように促した。
智くんは何とも言えない表情をしながら
その男の子の横に立ち、促されるまま背比べをする。
そして身長が追い抜かされてしまった事を知ると
また何とも言えない表情になり苦笑いをうかべた。
「ただいま~。あれ? 智くんの方が先だったんだ?」
そう言いながら部屋に入る。
「…うん。ちょっと前に」
智くんは膝を抱えてソファに座ったまま小さな声で答えた。
“あれ? もしかして元気ない?”
「取りあえずシャワーだけ浴びてくるね」
元気のなさが気になったが取りあえず汗だけでも流しておきたくて
そう言ってバスルームに向かった。
シャワーを終えリビングに戻ると
相変わらず智くんは膝を抱えた状態のまま
テレビを見ている。
“この体勢、かわいいんだよね~”
「……子供って、すぐ大きくなるね」
智くんが座っているソファの隣に腰を下ろし
タオルで髪の毛を拭いていたら、智くんがテレビを見つめながら
小さくつぶやいた。
「……?」
あ~今日の収録?
確かにあんなに小さかった男の子がたった数年で自分の身長を
追い抜いているだなんてホント衝撃的だよね~なんてことを
思いながら智くんの顔を見る。
“あれ? もしかしてショック受けてる?”
「ほんと、びっくりだよね」
数年前に会った時はまだまだ小っちゃくて
いかにも子供って感じだったのに。
このわずか数年の間にこんなに成長してしまうなんて
育ちざかりとはいえ、いざ目の当たりにすると
感慨深いものがあるよねぇ、何てことを思いながら返事をする。
「……みんなどんどん抜かしていくんだもんなぁ」
智くんはちょっと考えるような表情をすると
そう小さくつぶやいた。
「……」
その言葉に何と言っていいか分からなくて
その綺麗な顔を見つめる。
「翔くんもそうだし」
テレビから目を離したと思ったらこちらの顔を見てそう言った。
その突然出てきた自分の名前にびっくりして見つめ返す。
「えっ? 俺?」
思わず聞き返した。
「そうだよ。最初会った時は本当に小っちゃくって
俺の胸くらいしかなかったはずなのにさ」
そう言ってその可愛らしい口を尖らせた。
“かわいい”
「それが、いつのまにか抜かされてたんだもん」
そう言って頬を膨らませる。
“可愛すぎる”
まさかそこから自分につながるとは夢にも思わず
可愛らしく頬を膨らませている智くんの顔を呆然と見つめた。
「いや、まあ、それはそうだけどさ」
「ちぇっ、何だよなあ」
「……うーん。そうだなぁ」
何と言っていいかわからず、ただその顔を見つめる事しかできない。
実際問題、やわらかくて優しく可愛らしい顔立ちをしている
智くんにはこの位の身長が似合ってると思う。
でも、それを言ったところで本人が納得するとは到底思えなかった。
「俺にとっては、丁度いい感じなんだけどね…」
ついついそんな言葉が口から出てしまう。
「丁度いい感じって?」
不満そうな表情を浮かべそう聞いてくる。
「いや、何ていうかさ…」
“丁度いいサイズ感というか”
その身体を抱きしめるにも。
その肩を抱くにも。
そしてちゅってするにも。
自分には丁度いいサイズなんだよね~。
でも、そんな事を言ったらやっぱり怒ってしまいそうで
とても言えなかった。
「何ていうか、何?」
口を尖らせながら可愛らしい顔で聞いてくる。
「いや、智くんってよくソファで寝ちゃうじゃん。
そんな時抱っこして運んであがられるしさ」
苦し紛れにそう言った。
「……」
智くんは納得できないのか不満そうな表情を浮かべたまま無言で見つめる。
本人としてはもしかしたら気にしてるかもしれないけど、
自分としてはその位の身長の方が智くんらしくて好きなんだけどね~。
まあ、もちろんどんな身長でも変わらず好きだったと思うけど。
でもやっぱりこの位のサイズ感が智くんらしくてイイんだよね~。
そうは思ったがそんな事とても本人には言える雰囲気ではない。
「ね、ほら、もう遅いから寝よ。連れてってあげるから」
まだ不満そうな表情を浮かべる智くんを
ベッドルームまで連れて行こうと抱え上げようとした。
「いい。自分で歩ける」
やっぱり不満に思っているのか智くんは珍しく拒否する。
「いいからいいから」
本気では嫌がってない事が分かるので
そのまま抱え上げるとベッドまで運んだ。
“やっぱりこの位が丁度いいんだよね~”
そう思いながら心の中で笑ってしまう。
そしてそのままベッドに優しく横たえる。
そして不満そうな表情をうかべる智くんに気にもせず
(どんな智くんも)好きだよ、と言って唇にちゅっとキスをした。