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クレドと企業理念、6つの違い

2009-01-04 17:17:04 | ビジネス・コラム
最近、クレドというものが、会社経営に役立つと言われ、我々の研修の中でも「クレドづくり」をお薦めしたりしている。

クレドとは、ラテン語のCredoが語源で、日本語に訳すると「信条」、そして、そこから「企業理念」や「社是・社訓」と訳されるものである。

では、クレドと我々の会社でも掲げられている「企業理念」「社是・社訓」は、同じものなのだろうか?

答えは否。

日本で唯一、クレド導入を専門にするコンサルティング会社、日本クレド株式会社の吉田誠一郎氏が、この両者の違いを以下6つのポイントでまとめているのでここでご紹介したい。

<クレドと企業理念、6つの違い>

クレドは全社員がつくる
企業理念の多くは、創業者や中興の祖と言われる名経営者が自分の商いに対する思いを社員にわかってもらうためにつくったものが多いように思う。私が以前在籍していた会社でも、創業者がつくった経営理念を毎朝全員で唱和していた。これに対してクレドとは、そんな創業者の思いも考慮しつつ、社員全員がその作成に関わるべきものであるとされている。いくら有能な経営者がつくった理念であっても、その理念の作成に社員自身がかかわっていないと、それは単に人から“与えられたもの”であって、社員が自らの行動の拠り所として、それを受け入れることは難しくなる。よって、クレドはそれに関わる者全員がその作成に関与していなければならない。

クレドは社員から挑戦を受ける
クレドを60年以上も実践しているアメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンでは、定期的に“クレド・チャレンジ・ミーティング”というものを実施しているそうである。日本語で「クレドに挑戦する会議」という意味のこの会議では、社員から「ここに書いてある文言は、今の時代にそぐわないのではないか?」「ここに新しい文言を追加してみたほうが良いのではないか?」といった意見を出し合い、議論する。対して、企業理念、社是・社訓ではこのように社員が自分達の意見をぶつけるなんてことはほとんどありえないだろうと思う。よって、クレドとは、常にこれを行動の拠り所とする社員と正々堂々と向き合い、時代時代に応じたクレドの更新をも許容する度量を有していなければならないものなのである。

クレドは“戦う武器”である
「業績の達成とクレド、どちらを優先すべきか?」
吉田誠一郎氏は、クライアント企業の方からよくこんな質問を受けるという。
答えは「クレドに書かれたことを実践して、業績の達成ができないのであれば、それは即ちクレドが間違っている」ということになる。
しかし、だからといって何でもありの勝ちを許容するクレドであって良い訳ではない。クレドでは、お客様、社員、社会、株主など関わるすべてのステークホルダーに対し“誠実”な姿勢を取りつつ、自らの発展が可能なものにしていくことが求められるのである。

クレドは毎年更新する
企業理念は、創業者や中興の名経営者の商いに対する思いが文面化されたもの。これを更新するなどということは、これまでは考えられなかっただろうと思う。
しかし、クレドはそれ自体が行動の拠り所として陳腐化しているのであればその更新を許容するものでなければならない。実際にクレドを導入している企業では、一年か二年に一回、文言の見直しや追加を議論しているという。かといって、必ず修正しなければならないということではない。議論の結果、きちんとクレドが活用できているという結論に至れば、それはそのままでいいのである。
何か、このような話を聞いていると日本における憲法改定の問題とよく似ている。

クレドがカリスマになる
偉大なカリスマ経営者がつくった経営理念は、後世の人にとって、その人の分身のようなものになってしまい、カリスマ経営者=経営理念という認識に陥ってしまいがちである。
しかし、カリスマ経営者の時代には正しかったことも、時代の移り変わりにより、それが違ってくるということもよくある話である。
よって、クレドは偉大なカリスマ経営者の分身であってはならず、クレドそのものがカリスマとして、人々を導いていくべきものでなければならないのである。

「お客様第一」だけではない
経営理念に「お客様第一」を掲げる会社は多い。お客様に商品やサービスを提供する会社にとって、この考えは100%正しいものだと私は思う。
しかし、経営理念に「お客様第一」を掲げる会社が、お客様と社員、お客様と株主、お客様と地域社会、どっちが大切と社員に聞かれたらどう答えるのだろうか?
「お客様第一」という言葉。これ自体に間違いはないと思うのだが、ことクレドとしては、これだけでは言葉足らずなのである。
クレドは、これに関わる人たちにとって“行動の拠り所”とならねばならない。
仮に「お客様第一」という文言をクレドに用いるにしても、先の「お客様と社員、お客様と株主、お客様と地域社会、どっちが大切」という問いに、きっちり答えられるべきものを用意しておかなければ、クレドとしては不十分ということになってしまうのである。

言葉そのものの意味するところは同じでも、クレドと従来の企業理念にはこのような違いがあるのである。

(参考)
クレドが「考えて動く」社員を育てる!
吉田 誠一郎
日本実業出版社

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