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【#コラム】マスコミが絶対に報じない地方病院の最新収入状況 令和最新版(笑)

2020-10-14 21:13:27 | コラム
*[コラム]
 コロナ禍という非常に稀な時期に病院勤務ということで何度か病院で得たコロナ関係の話題を提供してきましたが、コロナそのものに関しては地方病院で得られる知見は所詮後追いのものでしかありません。
 ですが、今回は正真正銘「マスコミが絶対に報じない地方病院の最新収入状況」のご紹介。
 しかも令和最新版(笑)・・・というのは冗談ですが、令和2年9月現在の最新収入状況を紹介したいと思います。
「10月も中旬になるのに最新版?」
 ひょっとするとそう思われるかもしれませんので、病院の収入サイクルについてからまず保険制度に則って簡易に順番にご紹介。
「国民皆保険」と云われる通り、国民(定住外国人含む)は原則として国民健康保険か社会保険に加入しています。
なお保険料を一定期間未払いで保険診療を受けられないのは別の問題(当然診療は受けられるが支払いは全額自費)
 国民健康保険であれ、社会保険であれ、病院にかかった際の支払いは原則3割となります(75歳以上の高齢者は収入にもよりますが原則1割)。
 そして病院は残りの7割を国保や社保に請求して支払ってもらうのです。
 この請求(レセプト請求といいます)の締め切りが毎月10日であるため、日本中の病院――大病院から診療所に至るまで――10日までに前月分の請求を処理することになります。
 ちなみに当然この期日を過ぎても翌月以降も請求できますが、その分、病院にお金が入ってくるのが遅れますので特段の事情がない限り、病院はその期日までに処理をしようとします。なお実際にお金が入ってくるのは、翌月の21日・22日前後になりますので、ほぼ二か月後になります。

 という訳で、冒頭の話に戻って令和2年9月最新版のご報告になります。
 さて前もってお断り。
 当然のことながら具体的な数字を書くわけにはいかないので、これから紹介する数字は当院の「昨年度との比較」つまり「前年度比いくら」という表現になります。
 更に当院の立地も簡単に説明すると。
①田舎の大病院ではあるが、そこまで田舎ではない。
②コロナを第一次的に扱う感染症指定病院ではない。しかし感染症指定病院が満床になった場合のバックアップ、または軽症患者の受け入れはしている。
③コロナ患者用にベットは春からずっと一定数、空けている。
 基礎条件はこんな感じです。
 地方(但し過疎地は除く)にある大病院は大概ほぼ似たような条件の筈なので、うちの収入状況が特別ではない筈・・・です。

 では、令和2年9月最新版の収入状況の発表(正確に云うと上述の通り、保険者から実際にお金が振込まれてくるのは二か月後になりますので請求が満額認められた場合の想定ではありますが)。
 当院の本年度4月から9月の収入はトータル「前年度比マイナス1千万円」。
 なおこの数字は純然たる入院・外来の医業収益(収入)のみの前年度比です。
 既に県から振込済のコロナの特別補助金も入っていなければ、コロナ患者用の空床補償金も入っていない数字。
 病院関係者以外はすぐにはピンと来ないとは思いますが、うちの規模の大病院で半年分の医業収益の合計が「前年度比マイナス1千万円」などというのは誤差も誤差。というかニアピン賞どころかホールインワン賞を貰ってもいいくらいの数字。
 つまり何を言いたいかと云えば「このコロナ禍においても当院の収入実績は前年度と殆ど同じ」という驚くべき、というか統計をまとめている自分からすれば、自分の統計処理ミスを疑ってしかるべき信じがたい結果なのです。
 この数字、毎月の積み上げ算の数字の結果であり、最新の9月分も今日上司の決裁を通ったので数字のミスはありません。
 つまり本当に驚くべきことに、このコロナ禍においても上半期の「純然たる医業収益(収入)」は前年度と変わらないのです、少なくとも現時点では。
 どう考えても統計ミスを疑われるかもしれませんが、何度検算しても間違いない結果なのです。

 もう少し具体的に数字を見ていきましょう。
 自分は2009年度からの病院の医業収益や入院患者数・外来患者数、入院・外来単価に関する継続的な統計データを管理していますが、確かにコロナ第一波に襲われた今年の4月5月の数字はバグレベルで壊滅的な数字が並んでいます。
 今後長期の統計グラフを制作する際に縦軸を弄らざるを得ないレベルで酷い数字です。
 その4月5月の二か月間の医業収益は「前年度比マイナス約2億円」になります。
 ただ収益比で見るとざっとマイナス10%程度です(この数字を正確に出すとうちの収益規模が想定されてしまいますので数値は少しアバウト)。
 逆に云うと、入院患者数も外来患者数も壊滅的な数字であるにもかかわらず、マイナス10%程度しか医業収益が減っていないわけで。
 この点について少し解説すると、うちの規模の病院の場合、コロナを恐れて受診控えした人も相当数いたものの、そういった患者は比較的軽症者ばかりだった、と推察されます。
 何故それが裏付けられるかと云えば、患者一人当たりの入院料、外来受診料が「過去最高値」を記録したからです。
 病院の診療報酬というものは、当然のことながら重症の症例が高くなり、軽症の症例は安くなります。
 つまり受診控えした患者の大半は軽症者であり、コロナ禍であろうが「生命の危機に直結する症状」の患者は病院に来ざるを得なかったと推定されるわけです。
 なお補足すると一人当たりの入院料の最高記録は5月に、外来受診料の最高記録は4月に記録しているため、入院患者数の最低記録が出たのが5月、外来患者数の最低記録が出たのが4月という数値からの必然の結果です。更に補足すると4月に当院が受け入れたコロナ患者の診療報酬請求が、コロナ患者の保険点数の疑義があったため5月にずれ込んだ影響もありますが。

 という次第で4月5月の数字は当院においてもそれなりに酷いものであり、一般にマスゴミが報道するところの「病院の経営危機」というのはこの時期を念頭に置かれたものだと思われます。
 が、最初に結論を書いたとおり「今年度の上半期」という長期スパンで見ると、少なくとも当院に関しては数字は既に「医業収益は前年並み」に収束済みなのです。
 細かい数字を見ていくと、6月7月8月9月と各月ごとに数字にひどく凸凹ができていて、正直分析がしづらいのですが(前述の通りコロナ関係の請求に関する疑義が出た関係で数字の先送りがあったり、コロナの第二波が当県に来た8月の患者数が前年比でみるとやはり少し減っていたり)、上半期という期間で集計するとをこと医業収益は前年比同等に収束しているのです。
 入院患者数、外来患者数の上半期トータル数は前年度比でかなりマイナスなのですが、前述の通りいわゆる「入院単価」「外来単価」が上がったのと、更にコロナ患者を受け入れた場合の診療報酬の更なる加算が加わった結果、当院の場合、既に上半期トータルでみけば、前年比とほぼ同値に収束済み、というのが最新のまごうことなき実態なのです。

 勿論最初に述べた「当院の置かれた条件」と似た条件でも当院と似た結果になるとは限りません。
 当院の患者の場合、平常時からそれなりに重症患者、もしくは重症に陥る可能性の高い高リスク患者が多く、更にその予備軍の患者も含めて、コロナ渦でも当院に通院を続けざるを得ないわけですが、平時にそれほど重症患者群を抱えていない病院はこのコロナ渦で患者が通院をやめてしまった・・・という可能性がないではありません。
 しかし、今回コロナ患者の受け入れをしていたような大規模病院が、コロナ禍以前の段階で既に進んでいた「重症患者を積極的に受け入れることで経営改善を図る」という今日の病院経営のイロハである「当然のこと」をしていないわけがないわけで、やはりコロナがある程度収束している地方の大病院の経営、少なくとも「医業収益」が改善されていないわけがないと思われる当院の最新の数値のわけですが・・・多分マスコミでこの手の分析が出てくるのは数か月先になる筈です・・・というか報道するのかな? 

 そもそももし経営が改善していても病院側からは積極的に開示なんてしないわけで。
 ぶっちゃけ「経営が苦しい」といっていれば補助金の更なる上増しが見込めるわけでして、はい。
 実際既に県からの補助金が数億円貰っているんですよね。
 本体の本年度補助金の〇億円に加えて、空床補償、受け入れ医療機関協力金、重点医療機関設備整備などが今後も入金されてくるわけで、収入に関してはこの調子で下半期も行くと、恐らくコロナ関係で貰った補助金の分だけ前年比プラスになってしまうという。
 勿論このコロナ騒動で支出も増えているわけで、今はそちらは別の課の担当なので具体的数値を聞いていませんが(システム共有しているので調べればすぐ分かるけど)、医薬品や診療材料、衛生材料の類の購入は以前担当していたので数字はある程度想像できるわけで。
 後は院内での各種コロナ対策をした整備費と危険手当・残業代を含む人件費ですが・・・既に貰った補助金ほどに費用が掛かったとは到底思えないわけで・・・そうするとまだこの先コロナがどうなるか分かりませんが、ひょっとすると、というか少なくとも自分の推察だと、かなりの高確率で今年度の当院の決算は黒字化するのではないのか、と。
 いや、病院経営的には黒字になるのは当然結構なことなのですが・・・費やされた莫大な国費は回りまわって我々の税金なわけで、本当にこれでいいのかなあ、と思わずにはいられないわけでして、はい。
 勿論今回報告したのは「現時点」での「当院に限ってかもしれない」話ですので、一応最後にお断り。
 もし今回のコラムに関して諸々反応が頂ければ、また次報だったり、各種コロナ関係のお金のあれこれを、守秘義務違反にならない範囲で書きたいと思いますので、よろしくお願いします。

【#文春オンライン】「棺の中にいる人は、本当に母なのか…」欧州“コロナ大量死”の凄惨すぎる現場 - 宮下 洋一

2020-10-11 01:49:46 | コラム
夏休みが終わり、スペインに新型コロナウイルスの第二波がやってきた。
 ロックダウン解除以降、5月までは全体の約5%に満たなかった15~29歳の若者感染者率が、9月には約25%に達した。PCR検査も増加し、1週間で68万件。首都マドリードは、再ロックダウンの準備に入っている。スペインは、あの第一波の「悲劇」を繰り返すわけにはいかないのだ。

医療ではなく「政治判断のミス」だった
 日本では、感染者も死者も少ないが、それは「ファクターX」のおかげなのか――。
 このような仮説を頻繁に耳にするが、欧州に住む私には違和感があった。なぜなら、それは単純に欧米の数が多すぎるだけであり、犠牲となった高齢者の大半は、病院で治療も受けられずに亡くなっているからだ。

 スペインやフランスやイギリスで、膨大な死者を生んだ最大の原因は、医療ではなく、むしろ「政治判断のミス」だった。つまり、彼らが病院に運ばれていれば、死者は数千、いや、数万単位で少なかったかもしれないのだ。

 スペインでは、コロナにかかって死亡した約3万人のうち、介護施設で亡くなった高齢者の数が9月末の時点で2万494人に上っている。死者の約70%が、病院搬送されないばかりか、治療も受けられずに施設内で亡くなっていたのだ。

「モルヒネ、モルヒネ、モルヒネ……」
 この事実を報告した全国高齢者介護施設経営者団体のシンタ・パスクアル代表は、スペイン下院議会のコロナ報告会の場で、「私の記憶から二度と消すことができない光景がありました。それはある医師が施設に入ってきて、(一人ずつ指差しながら)モルヒネ、モルヒネ、モルヒネ、と言ったのです」と証言した。
 また、マドリード近郊にあるクリスティーナ王女病院で行われた院内カンファレンスの漏洩動画にも衝撃が走った。上司とみられる一人の医師が、スライドを使いながら、他の勤務医たちに指導をしている光景だった。

「介護施設の老人の治療は、もう行われていない。もしコロナにかかっているとしたら、それは運が悪かったということ。(中略)症状次第ではなく、年齢次第でICUでの治療を決めていく。これは悲劇で残酷なこと。できればこんなことをしたくはなかった……」
 介護施設の高齢者たちを犠牲にする。そう事前に決めていた。その上、年齢次第で患者の治療を行うか、行わないか、それも事前に決定していたのだ。

「何が起きたのか、誰も教えてくれません」
 私は、マドリードやバルセロナの介護施設で、家族を失った遺族や、当時、勤務していた介護士らから、数々の証言を得た。病院ではない介護施設で、職員にできることは限られていた。

 マドリード市内にある介護施設「モンテ・エルモソ」では、3月17日、施設内で19人が死亡、70人が感染したと報じられた。130人の高齢者が暮らすこの施設は、スペイン国内でいち早く注目を浴びた。

 3月18日、父親のフアン・クミアさん(享年87)を同施設で亡くしたマドリード在住のジョランダ・クミアさんは、5カ月が過ぎてもなお、当時の施設の対応を理解できずに茫然自失する。

「前日の午後8時、父がトイレに行った際に転んだという連絡が施設から入りました。その6時間後、『体調が急変し、呼吸困難に陥った』との電話があった。その直後に亡くなりました。ずっと健康だった父がなぜ突然、体調を崩して死んだのか理解できない。6時間で何が起きたのか、誰も教えてくれません」

棺の中身は本当に母なのか?
 同市内の介護施設に勤めるベテラン介護士、エステル・ビエルサさんは、2週間で12人の入所者を看取った。
「とても怖かった。私もこのまま死んでしまうのかと思った。コロナにかかったわけではないけれど、夫と7歳の息子がいるので、仕事を放棄しようか悩んでいました……」
 第二の都市バルセロナでも同じだった。ある介護施設では、1カ月半の間に57人の入所者が死亡した。母親を失ったダニエル・マルティネスさんは「施設に何度も病院搬送を頼んだが、無理だと言われた」と失望。母親の墓で、花を供える彼は「この棺の中にいる人が、本当に母なのか、実は分からない。そう信じるしかないのが辛いですね……」と呟いた。

 この介護施設内で発生したようなコロナ大量死は、なにもスペインだけで起きていたわけではない。フランスでも、イギリスでも同じだった。私は、南仏マルセイユにも足を運び、介護施設で両親2人を同時に失った女性からも話を伺った。彼女もスペインと同じ政策の問題について語っていた。

 一体なぜ、このような事態が発生してしまったのか。欧州で起きたコロナ大量死には、一定の法則があったのだと、数カ月にわたる取材から見えてきた。そこには、各国・各州の政府や保健省が「意図的に行った政策」があり、取り返しのつかない悲劇へと発展していくのだった……。

◆◆◆
 スペインやフランスにおけるコロナ大量死の現場を取材した宮下洋一氏のルポ「介護施設を襲った『欧州コロナ大量死』」は、「文藝春秋」10月号及び「文藝春秋digital」に掲載されている。
(宮下 洋一/文藝春秋 2020年10月号)
https://blogos.com/article/489417/?p=1

【#コラム】病院で本当にあった怖い話【実体験】第三夜

2020-10-08 19:12:52 | コラム
「病院で本当にあった怖い話」第三夜はこれまでの二夜と変わって「正統派」の怖い話。
なお正確を期すために事前に断っておきますが今回は自分の実体験ではありません。その「事案」が発生した翌朝、夜間救急で対応した職員から直接相談された話を再構成したものです。
わざわざ嘘をついてまで自分にそんな話をする筈もない・・・と思われるので、自分の聞いた話は概ね事実だと考えてご紹介。
今回の話もまた結構昔の話。
まだ電子カルテが整備されていない紙カルテの時代であり、入院患者の管理のためのシステムはあったもののの非常に原始的システムでリアルタイム対応していない時代。
入院患者の名前と入院している部屋を確認する為には夕方いったん入院患者の名簿を紙に打ち出し、それ以降入院してきた患者の名前・入院している部屋は紙台帳に手で書き写し、それらを複合することで現在当院に入院している患者を把握していたのです。
何故出来るだけリアルタイムで入院患者を把握しようとしていたのかは、患者の家族からの問い合わせのためでもありましたが、実質の理由はベットが満床でないかを確認するため。
当時は「病院経営の改善のためギリギリまで病床利用率を上げる」というのが世間一般のスタンダードであり、当院もその例に漏れず同様の対応していた関係で入院患者が本当に一杯一杯いたため「病床が満床で受け入れできません」ということがそれなりにあったのです。
なお今日では診療報酬の適正な傾斜配分が進んだ結果「重症度・緊急度が高い患者を受け入れると高い診療報酬を与える」という制度になったため、救急患者が搬送されるような大病院は収入確保のため意図的に一定数のベットを空けるようになったため全国的にも「ベットが満床で受け入れできません」という事例は昔に比べると随分減ったと思います。
但し今でも「集中治療室が満床で受け入れ不能」「当直医が緊急オペに入ったため受け入れ不能」というのは必然的にあるため、その点だけは一般の患者の皆様もご承知おきを。

閑話休題。
当院はそれなりの大規模病院であるため、夜間にも結構な頻度で救急車で患者が搬送されてきます。
それ以外にも「ウォークイン」つまり直接自分の足で救急診療を受けに来る患者もいらっしゃいます。
そんなわけで救急室にいる医師・看護師以外にも救急の詰め所には受付・会計を担当する事務職員、警備の職員などが詰めています。
ここでようやく本題になりますが、本日の「怖い話」はこの救急の詰め所が舞台になります。
夜の早い時間の救急患者のちょっとしたラッシュが終わった頃、二人の若い男性が血相を変えて飛び込んできました。
「知り合いが救急車でこの病院に運ばれたのですが、どこの病室ですか? 名前は〇〇〇〇(女性の名前。以降Fと呼称)です」
若い男の一方、以降Aとしましょう。Aは本当に慌てた様子で救急の職員に詰め寄りました。
「ご家族ですか?」
「彼女です」
今だと非常に難しいところです。最近自分はこの手の当直やってないので実は現在の当院での取り扱いを正確に把握しているわけではないのですが、家族・親族なら兎も角「自称彼氏」では個人情報保護の観点から危なすぎます。
多分病院内の個人情報の取り扱いの原則からして、今だと該当病棟のナースステーションまでは案内して、そこで身元をしっかり確認して貰い、確実に入院患者の知り合いだと確信を持たない限り病室は教えない筈です。
当時は確かこの手の問題の移行期で「近所の人」だの「会社の同僚」だのの人に対しては問合せを受けてもお断りするようになった時代の筈です。
というわけで家族・親族ならば兎も角「自称彼氏」では本来答えるべきではないのですが、Aのあまりに真剣な様子にその日の救急の職員は折れました。
「では調べますので、しばらくお待ちください」
紙の台帳をめくります。プリントアウトされた分と夕方以降に搬送され入院中の患者を記した手書き分を。
しかし、Aの云った名前は何処にもありません。
とはいえ実はここまでなら普段から偶にあること。
うちの病院と近隣の複数病院は「同じ地名」を病院名の頭に冠しているため、時折伝達が間違ってうちの病院に来る患者の身内がいるのです。
ですがAは即座に否定します。「いや、この病院だ。間違いない。よく調べてくれ」
そこまで云われると記録に漏れがあるのか心配になり、救急室などに「今日運ばれた患者にFという人がいますか?」と問い合わせます。ですが、答えはノー。
となると可能性はやはりうちの病院ではなく他の病院に運ばれた可能性が浮上します。ということで救急の職員は市の救急本部に「今日救急車で運ばれた患者にFという人はいませんか?」とわざわざ問い合わせをします。
ですが、それさえ答えはノー。
「・・・あの、失礼ですが、本当にその方の名前はFさんで宜しいですか?」
次の瞬間、うちの救急の職員が云っている「本当の意味」を察したのか、Aは喚きだしたそうです。
要するにネットスラング的に云うなら「あなたの言うところのFさんは実在しますか?」と云われてキれた構図です。

ここにきてようやく今まで様子を見ていただけだったAの同伴者、Bが「おい、落ち着けって」と割って入ります。
救急の窓口にかぶりつきで迫っていたAを引きはがし、玄関ホールの椅子に座らせてきたBが戻ってきました。
「あの、申し訳ありませんが、自分に患者リストって見せて貰えませんか? それでなければ納得して帰りますから」
本来入院患者のリストなんぞ見せてはいけないわけですが、先程の騒ぎもあってうちの救急の職員は見せることに同意してしまいます。勿論相手に手渡したわけではなく、目の前で確認させてだけだそうですが。
見終わるとBは「確かにないですね。すいませんでした」と素直に詫びます。
事情を聞くと、AにFの女の友人から「Fが救急車で病院に運ばれた」という連絡があって、その場に偶々一緒にいたAの友人のBが車を出して当院に来たとのこと。
「こちらからはFさんやFさんの身内に連絡が取れないんですか?」と聞くと、相手の連絡先を知らないと云います。
そうこうしているとまたAが救急の窓口に向かってくる様子を見せたためBは会話を中断し、Aを連れて非常出口から出ていき、そのまま戻ってこなかったのでした。。。

さて、この話、色々な可能性が考えられるという意味での「怖い話」として紹介しました。
救急車で運ばれたというFは何処に行ったのか? そもそもFなる女性は本当に実在するのか? 
当時のことなので携帯電話はまだ普及していなかったものの「彼女の連絡先を知らない」などということが本当にあるのか?
対応した職員から翌日相談を受けた自分としては、最初やはりFの存在そのものを疑いました。ぶっちゃけ、Aが妄想垂れ流しの「○の不自由な人」ではないかと。
しかし対応した職員に云わせるととてもそうは見えなかったと。我々病院職員は普通の一般の人よりは確実に「特定の疾患持ちの患者」と接していますから、それなりの判断は出来ます。
ではFが実在するとして、実はFという名前は本名ではないのではないか? ぶっちゃけ「源氏名」ではないのか?
当たり前ですが救急搬送時や入院時には本名で対応されるわけで、それなら合点がいきます。
ですが彼女が風俗嬢であるというならば、普通店に出ている名前が本名ではないことを彼氏は理解しているわけで。
ということはFが偽名でAと付き合っていた? 可能性としてはありですが、そんなことをする意味が分かりません。
分からないことづくしで、当時は推理のしようがなく、その翌日以降Aが現れることもなく結局そのまま有耶無耶になってしまったわけですが、いまこうして書いている間に思いついた可能性があります。
「実はAの云っている話は最初から全部お芝居で、実は最終的にBが入院患者のリストを確認したかっただけなのでは?」
うん、推理小説の小ネタのトリックとしてはありそうだ。
だとするとうちの救急職員はまんまと騙されたことになりますが、果たして真相は如何に?
・・・本当にFという女性は実在し「救急車」に乗せられて何処かに連れ去られた、という「怖い話」が真実だったなどということでなければと思います、はい。

【#コラム】病院で本当にあった怖い話【実体験】第二夜

2020-10-07 20:30:47 | コラム
第二夜は予告通り自称「毎日新聞」こと変態新聞記者Kにまつわる話であり、自分が病院に来たばかりの年に起った出来事でもありますので今後紹介予定の話の中でもっとも旧い話の一つになります。
これは臓器移植法が施行されてまだそれほど経っていない頃の話。
今から数年前、小児も対象に広げた改正臓器移植法が施行された当初はまだ一件一件の移植に際してニュースとなりましたが、今では地元新聞にすら臓器移植に関して記事が出ることはなくなりました。
つまり臓器移植がそれほど一般的なことになってきたということで、移植を待っている人たちにとっては良いことなのでしょう。
ですが臓器移植法が施行されたばかりの頃は報道が凄かった。
とりわけ施行後一号となった移植の時は、臓器提供者から臓器が摘出され、全国各地の病院(臓器移植コーディネーターが各臓器ごとに最適の移植者を選定するため提供先は全国各地に分散することになる)に搬送される様子が生中継されるほどでした。流石に移植件数が二桁目に入る頃にはそこまでの報道はなくなりましたが、それでも報道は依然として過熱気味でした。
この話の流れから察して頂けたかと思いますが、今回の「病院で本当にあった怖い話」は当院で行われた臓器提供の際のお話。

あれは大型の連休直前の某日夕方。
事務局長が職員を集めて「内密な話だけど」と切り出しました。
「本院で臓器提供が行われるかも知れない事態が発生している。連休中は元々予定のあった人間以外は全員自宅待機」
当時病院に入って一年目だった自分は「臓器提供委員会」というドストライクな委員会の事務をやっていたため(とはいえ、設立されたばかりのその委員会はその時点まで一度顔見せ的な会議を一度したきり)一瞬身構えました。
「実務的なことは間もなく到着予定の臓器移植コーディネーターがやってくれるから、主にマスコミ対策をお願いすることになります」
事務局長がそう続けたので一安心。
「マスコミ対策ねぇ、テレビとかも来るのかなあ?」
その時点まで本物のマスコミと直に接したことがなかった自分はそう呑気に構えていたのですが、その「ファーストコンタクト」が自分がマスコミを「マスゴミ」と断ずるようになった最初の契機となるのです。。。
再び呼び出されたのは二日後の早朝。
呼び出された職員の中では一番に病院に辿り着くと、この日もまた休日であったため一般職員も患者は誰もいない静寂の病院の中、偉い人たちは医師側も事務側もずっと病院に詰めていたということで既に事務局長室に勢ぞろい。
不謹慎ながらもこの後の展開に少しドキドキしながら現状を訊ねると、既に脳死判定は完了しており、臓器の提供予定先の病院も決定済みとのこと(この時点ではまだ臓器提供者の心臓は動いており臓器の摘出はされていない)。
「後はこのスケジュールに沿ってマスコミ報道するだけだから」ということで予定時間まで待機。

確か時間は10時だったと思いますが、その時間になった瞬間、市内に本局・支局のある新聞・テレビにFAXで一斉通知。
内容は当院でこれから脳死患者からの臓器提供が行われること、詳細は当院で11時から開催される会見で発表すること。
FAXを送信して三分も経たないうちにけたたましく鳴り響く電話の音。
ほぼ全てマスコミからの詳細を訊ねる電話でしたが、これに関しては事前に「余計なことは一切喋らない。すべて記者会見の場で話します」と統一されていたので問題なくクリア。
ここからこの日動員された病院職員は各所に散りました。
記者会見場に詰めるもの、引き続き電話対応するもの、やってくるマスコミの車を確保しておいた専用の駐車場に誘導するもの等。
そんな中、自分が割り振られたのは記者会見場への道案内訳。というのも、院内道案内のための矢印看板は用意したものの、三階にある会見場に行くためのエレベーターは本来職員しか使うことを想定していないため、非常に分かりにくいところにあるからです。
一斉FAXから三十分ほど経過して頃、最初の記者が現れました。〇〇新聞の女性記者でした。最後の矢印看板のところからエレベーターのところまで案内すると非常に丁寧な態度で「ありがとうございます」。
続いて二人目、三人目、四人目とごく普通に案内。最初の女性記者ほど丁寧ではありませんでしが、いずれの記者も一般的な社会人としての礼節をもって接してくれたのですが・・・遂に「ヤツ」がやって来たのです。

そう、ここでは仮名として「K斐」としておきましようか? ・・・ああ、後ろの部分を消し忘れた「甲〇」だ。
いや、更に間違った「K」だ。そう、ここでは「K」としておきましょう。
ところで変態新聞には唯一、他社の新聞に見習って欲しい点がありまして、それは「記者の署名記事」が非常に多いこと。いわゆる「文責」という奴ですね。変態新聞の場合、その署名があると独自記事だと判断してよいわけです。
ところで当院の事務方ではこのコロナ騒動が勃発して以来、「各社の医療関係記事に目を通しておくように」ということで各新聞社の医療関係記事を編集したペーパーが毎日回覧されているわけですが、個人的な意見で云わせて貰うと、一番悪質な記事を書いていたのはぶっちぎりで変態新聞です。
「日本の医療体制が危機です。今にも崩壊します、いや早く崩壊しろ」という怨念が滲み出るような紙面構成。
なにしろ記事の柱に「医療崩壊」というコーナーを設けるくらいまでに熱心に日本の医療崩壊を報じる具合に。
結局第一波が終わった頃にこの「医療崩壊」に関する記事の「まとめ」が載って「日本が医療崩壊しなかったのは医療機関が頑張ったのと運が良かっただけ(意訳)」という内容は想定通りだったわけですが、記事の署名に名を連ねたのは四人。
その筆頭、つまりこの記事群の責任者だと思しき人物は「漢字三文字」の名前の人でした。・・・もうコイツら、本当に隠す気ないな。そういう意味でも「怖い話」だけど。
なおコロナ記事が酷かったランキング、自分の選定した第二位は日経。いくら経済紙とはいえ、完全にこのコロナ渦でも本当に金儲けの匂いがする方向性の記事しか書きやしない。金儲けがしたいから政府のコロナ対応批判してるだけ、というのが丸わかり。
第三位は東京新聞。いつものことですが、実はコロナそのものはどうでもよくて、政府批判がしたいだけなのが丸わかり。
なお朝日は政府批判はいつものことですが、昔からの伝統で医療そのものの記事は意外とマトモなのです。

閑話休題。
話戻って記者会見場にやって来た変態新聞記者の「K」。
エレベーターに案内したものの、こちらの存在など全く無視したように無言で乗り込んでいきました。
しかしこれくらいなら別に何ということもありません。問題が発生したのは記者会見後の話。
11時からの記者会見が終わると、何人かの記者がエレベーターから降りてきて帰っていきました。夕刊のニュースにでもするのでしょう。
それで会見が終わったことが分かったわけですが、自分はこの後の対応の指示を受けていません。
事務局は2階なので記者会見した事務局長たちがまだその会見場にいるかもわかりません。
というわけで、自分もエレベーターに乗って3階の記者会見場の様子を見に行くことにしたのですが、会見場に入った瞬間、怒鳴りつけられまた。
「おい、お前、どうなっとるんじゃ!?」
紹介するまでもないと思いますがKです。
「はっ?」
「はっ? じゃねぇんだよ、はっ? じゃ!」
訳が分かりません。周囲を見渡すとまだ記者たちが何人か残っているものの、病院の人間は誰もいません。
「説明しろと言ってるんだ、説明!」
好き放題まくしたてるKに呆気にとられましたが、ようやく反論。
「いや、わたしは皆さんを案内していたので、何がどうなっているのか分かりかねるのですが」
「分からねぇじゃ困るんだよ。責任者連れてこい、責任者!」
新聞記者にも屑のような人間が存在しているんだ、と初めて理解したのはその瞬間でした。
・・・まさか世の中の新聞記者の大半が屑だとはその時には夢にも思いませんでしたが。
そういう意味でもこれは「怖い話」になりますが、話はこれで終わりません。

脳死患者から臓器が摘出され始めたのは昼過ぎ頃のことだったと思います。
マスコミ対応は病院を離れ、臓器コーディネーター側に移ったものの、我々職員は次々に増えていくマスコミ対策のため帰るわけにはいきません。
記者たちとしては「摘出された臓器が運搬される絵」が欲しいため玄関ロビーに集結。
テレビ局の中継車(2台)まで病院玄関脇に横付けされ、中継する気満々。
この日が休日であり、外来患者がいなかったのは本当に幸いでした。
間もなく全国各地の病院から臓器を運搬する人たちがやってきました。当たり前ですが、当院が運搬するわけではなく、移植手術を執刀する側の病院が臓器をとりにくるのです。
これは一刻を争うことであるため、マスコミを好き放題にさせておくわけにもいかず、病院職員も玄関ロビーに集結。
とはいえ、臓器の搬出はまだ少し先のことになるため我々もマスコミも手持無沙汰でいると、先程のKがうちの事務局長に纏わりついているのが見えました。近づいくまでもなく会話内容が聞こえてきます。
回りくどい言い方をしていましたが簡潔に表現するとこんなやりとり。
「臓器を提供した患者の個人情報を教えろ」
「臓器移植法で禁じられているから教えられない」
「そんなことは関係ない。我々には知る権利がある。とっとと教えろ」
「いや、何度言われてもそれは無理」
延々とこんなやり取りが三十分ほど続きました。
最初は猫なで声で個人情報を聞き出そうとしていたKは、最後は完全にヤ〇ザな口調に。
最後には「覚えておけよ」と漫画の悪役そのものの捨て台詞をはいて事務局長から離れていきました。

「・・・こいつ、真正の屑だな」
そう判断した自分ですが、このKが真正の屑っぷりを発揮しだしたのはこの後。
流石にこの臓器提供に関する記事はごく普通でしたが、こののち、数年にわたりKはひたすら当院を貶めるためだけの記事を書き続けます。
何故貶めるためだけ、と判断できるかと云うと、地元新聞をはじめとする当地で販売されている他の新聞社は一切問題視していないのに変態新聞だけが取り上げて記事化しているから。そして署名欄にはKの名前が。
一番すごかったのはいわゆる「テレビ欄の裏側」のページの大半を使っての「〇〇病院、業者と癒着か」という記事。
勿論嘘っぱちで、現に警察も動いていなければ、あまりに無理筋の指摘だったので名指しされた責任者について病院内で処罰されたりもしていないのですが、Kはこんな具合にうちの病院の悪口記事を退社するその日まで書き続けます。
というかうちの病院の悪口記事が載らなくなったので少し探ってみたら退職していた、というオチ。
なおその際に分かったのがこのK、元々は変態新聞の記者だったわけではなかったそうで。
官公庁関係で昔はよく見た社会問題系のミニ新聞の押し売りをしていたというのです。
ぶっちゃけて説明すると「評判の悪い記事を書かれたくなければうちの新聞を買え」って奴です。
勿論Kはマスコミの人間以前の屑ですが、更に悪質というか「怖い」のはこんな経歴の輩を雇い、前職の時の経験を生かして謂れのない悪口雑言を平然と乗せ続けた変態新聞の存在でしょう。
というのが本日第二夜の「病院で本当にあった怖い話」でした。

なおこの話は当然のことながら演出一切なしのまぎれもない事実なので、変態新聞記者の屑っぷりを拡散させる目的ならいくらでも拡散いただいて結構です。
というか、この件に関してはことあるごとに自分もネット各所に書いていたので、ひょっとしたら何処かで見たことのある記事になっているかも知れませんが。
次回第三夜は少し毛色の違う「怖い話」を。
自分はミステリー系の怖い話だと判断していますが、人によってはホラー系の怖い話になるかもしれません。

【#デイリー新潮】韓国の次期大統領有力候補「李在明」 「日本は加害者」…キケンな出自と発言

2020-10-07 03:31:38 | コラム
文在寅大統領の経済、外交などの国政運営全般に対する失望
 文在寅大統領の任期は2022年5月10日までだが、韓国ではすでに次期大統領候補への関心が高まっている。そこで人気が急上昇しているのが、李在明(イ・ジェミョン)・京畿道知事。挑発的で傲慢な発言で知られ、その思想的背景には北朝鮮に強くシンパシーを感じる勢力との蜜月が指摘されている。日韓関係史が専門の評論家・李東原氏が、その思想的背景について解説し、大統領としての資質を問う。

「徴用工訴訟問題に関して、韓国が日本企業の資産を売却しないと約束してこそ菅義偉首相が韓国を訪問することができる」という報道について、10月1日、李在明・京畿道知事は、「そんなことはないだろう」と自分のFacebookに書き込んだ。

 さらに、「慰安婦、強制労働問題は、誰が何と言おうと加害者である日本が作った問題で、真の和解のための謝罪は、被害者が許して“もういい”と言うまで本気でするものであって“ほら、謝罪だ”で簡単に済ませるものではないと綴った。

 また、「日本がいくら否定しても侵略と残酷な人権侵害の歴史は大韓民国にとって歴史的真実であり、現実である」と強調。韓国は秋夕(日本のお盆)連休の最中で、李知事の発言は、非常に政治的な計算の上で行われたものと見られる。
 大衆の扇動に長け、次期「共に民主党」の大統領選候補になる可能性が高いということから、彼の対日本観は注目せねばならない。
 万が一、李知事が韓国の大統領になれば、彼の歴史観によって日韓関係が大きく影響されるからだ。
 ご存じのように、韓国は大統領一人にすべての権力が集中する、いわゆる帝王的大統領中心制国家であるだけに、大統領の性向と哲学によって国政や外交全体の動向が大きく左右される。

「李在明」人気が加速している
 文在寅大統領の任期は2022年5月10日までである。
 にもかかわらず、韓国社会ではすでに次期大統領が誰になるかについて関心が高まっている。
 文在寅大統領の経済、外交などの国政運営全般に対する失望から、現政権よりは次期大統領に期待をする心理が作動しているためであろう。
 最近の世論調査で文在寅大統領の国政遂行に対する肯定的評価よりも、否定的評価が高く出ているのをみれば、ある程度、このような心理を後押ししていることは確かのようである。
 さて、去る9月17~19日にかけて韓国の世論調査専門会社4社が、全国の満18歳以上の男女1017人を対象に全国指標調査(National Barometer Survey)をした結果を20日に発表した。
 そして、次期大統領選候補の適合度調査の結果、現・政権与党の「共に民主党」所属の李在明・京畿道知事と李洛淵(イ・ナクヨン)同党代表がそれぞれ24%の好感度を示し、野党候補を大きくリードしていると出た(標本誤差95%信頼水準で±3.1%、回答率30.3%)。
 韓国では、定期的に各種世論調査を通じて、次期大統領選候補の適合度や好感度を発表しているが、いつも政権与党の李在明氏と李洛淵氏が、野党候補を大きくリードし、1・2位を争っている。
 今のところ、大きな異変がない限り、次期大統領は「共に民主党」の候補が当選するという見通しが支配的だ。

 ここで一つ注目すべきことは、最近になって李在明京畿道知事の人気が急上昇しているということである。
 今回の調査を見ても、適合度では李在明氏と李洛淵氏の両者が24%で同じだったが、好感度調査では李在明知事が56%、李洛淵代表53%で、誤差範囲内ではあるが、李在明京畿道知事がリードしている。
 そして、その躍進が尋常ではないのだ。

秘密結社団体のメンバーらがいつも影を落としている
 韓国の政権与党・共に民主党の主軸勢力は、朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の死亡後に登場した全斗煥(チョン・ドゥファン)軍事政権に対抗して戦ってきた「586世代」と呼ばれる民主化勢力だ。
「586世代」とは、1980~90年代の民主化運動の主軸であった50代の政治家たちをいう。
 彼らは学生運動に明け暮れていた時、いわゆる内部の「学習」を通じて、盲目的な民族主義、親北朝鮮志向、集団的閉鎖主義、偏った歴史意識などにおいて「意識化」され、今現在韓国社会の進歩性向の政治活動をリードしているのだ。

 1980~90年代の韓国の民主化運動は、大きくNL(National Liberation、民族解放)と呼ばれる系列と、PD(People's Democracy、民衆民主)と呼ばれる二つの系列に分かれていた。
 NL系列は、北朝鮮との関係を重視し、「我が民族同士の統一」を至上最高の課題としていた。
 一方で、PD系列は、統一よりも労働者、農民が幸せな平等社会のための階級闘争を志向していた。
 今の「共に民主党」内の主要人物の中には、当時学生運動を主導したNLとPDのリーダーが多数名を連ねている。
 任鍾皙(イム・ジョンソク)元大統領秘書室長、李仁栄(イ・インヨン)現統一部長官、崔宰誠(チェ・ジェソン)現政務首席、禹相虎(ウ・サンホ)元民主党院内代表、李正姫(イ・ジョンヒ)元民主労働党代表などは、よく知られたNL系統の人物である。
 そして、盧英敏(ノ・ヨンミン)現大統領秘書室長、曽国(チョ・グク)前法務部長官、朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長、沈相奵(シム・サンジョン)現正義党代表らは、代表的なPD系統の人物だ。
 今の韓国社会の「従北」・「親北」論乱の核心には、もとNL系列の政治家たちやその強硬分派である「京畿東部連合」という、秘密結社団体のメンバーらがいつも影を落としているのだ。

露骨に反日を扇動してきた極左の歴史観
 韓国の保守陣営は、これらNL系列の勢力を北朝鮮の主体思想を追従する「主体思想派」だと主張しており、その強硬分派である京畿東部連合は、組織的な暴力革命と対南赤化統一路線を追求する反国家勢力と規定している。
 ところが、李在明知事と正義連の元理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)議員は、以前から京畿東部連合と深く関係しているという疑惑が絶えない。
 尹美香議員は言うまでもなく、李在明も露骨に反日を扇動してきた。その発言をみると、彼の歴史観は極左のNLの歴史観に近い。
 そのうえ李在明は、従北勢力の宿主とも言える「京畿東部連合」との関係が取り上げられること自体、韓国社会だけでなく、将来の日韓関係においても決して望ましくはないだろう。
 実体がベールに包まれている京畿東部連合は、京畿道城南市を基盤に、広州、龍仁など京畿東部地域の進歩性向団体によって形成された組織だ。
 城南市は、李在明知事が実際に居住しているところでもあり、2010年から2018年までの8年間、市長を歴任した地域でもある。

 京畿東部連合の母体は、韓国外国語大学校龍仁キャンパスとして知られている。
 韓国外国語大学の龍仁キャンパスは、1990年代から学生運動が活発だったことで有名なところだ。
 現在、内乱扇動罪で収監されている李石基(イ・ソッキ)元統合進歩党議員、全国大学生代表者協議会の代表で、1989年に北朝鮮で開かれた「世界青年学生祝典」に参加して韓国社会を騒がせた林秀卿(イム・スギョン)元民主党議員、そして尹美香(ユン・ミヒャン)の夫の金三石(キム・サムソク)が、まさに韓国外大龍仁キャンパスを卒業している。
 李知事は、「従北」の疑いの濃い京畿東部連合のみならず統合進歩党の後身である民衆連合党を支持勢力としている。

文在寅政権がなつかしくなる日が来る
 2010年の城南市長選挙当時、李知事は民主労働党と野党連帯の支持を受けて当選した後、共同市政を施行するとし、市長職引継ぎ委員会の委員に10人前後の京畿東部連合出身の人を就けた。
 その後、この人たちを本庁だけでなく、市の傘下機関(前職・現職を含む)や関連機関で執務させ、様々な特恵を与えたという理由で市議員たちに告訴され、法廷攻防を繰り広げたこともある。
 私が李在明知事に注目する理由は、彼の粗暴で傲慢な性格もさることながら、彼の歪曲された反日感情のためだ。
 彼は2016年、自分のFacebookに「日本は敵性国家だ。軍事大国化したら、最初の攻撃対象になるのは朝鮮半島だ」と述べ、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に反対した。
 その上で、「不幸にも日本は朝鮮半島に対する侵略の歴史を数え切れないほど繰り返してきた。光復以後最近まで、日韓軍事情報包括保護協定と慰安婦問題の交渉の強要、強制徴用被害者最高裁の判決と執行延期の圧力など、事実上、内政干渉に等しいことを繰り広げてきた」と言ったのだ。
 まさに危ない考えだ。

 また、李在明知事は『帝国の慰安婦』の著者朴裕河教授の2審判決が出る前日、自分の支持者が常駐するFacebookに、「あの女、まだ教授をやっているのか」と言って、支持者たちに朴裕河教授を攻撃するよう、教示したこともある。
 私は、李在明知事が京畿東部連合のメンバーなのかどうか、確信をもっていない。
 しかし、いかなる形であれ、彼が京畿東部連合と関係があるということだけは、確かである。
 彼の反日感情は、1980年代以降のNL、その中でも「同じ民族同士で」を最高の価値と考える急進自主派のそれと非常に似ている。
 それこそ私が李在明を恐れる理由だ。

 万が一、李在明知事が韓国の次期大統領になれば、日韓関係においては文在寅政権がなつかしくなることはまず間違いない。

李東原(イ・ドンウォン)
日韓関係史が専門の評論家。
週刊新潮WEB取材班編集
2020年10月6日 掲載

【#コラム】病院で本当にあった怖い話【実体験】第一夜

2020-10-06 20:47:08 | コラム
時折オリジナルコンテンツをアップしないとコピペサイト認定されて元サイトのように更新停止させられる可能性があるようなので、それなりの大病院での勤務歴十年越えの自分が実際に体験した「病院で本当にあった怖い話」を披露するコーナーを新設。
なお「当然のこと」ですが個人情報保護違反になるような話は書きませんし、今後紹介する幾つかの話は全部最低五年以上は前の話です。
というのも自分、最近は病院の金勘定の仕事だけをしていて、病院内での「怖い話」に遭遇する機会がほぼないため必然的に少し昔の話になってしまうわけですが。
さて、「第一夜」はこんな話。

某外科系診療科の部長がみえました。ここではB医師と呼ぶことにしましょう。
少し性格的にとっつきにくく、治験審査委員会になると延々と持論をまくしたてるので当時治験審査委員会の議事録の書きおこしをやっていた自分としては、B医師がマシンガンのように発言しだすと「・・・またかよ」と少しウンザリしたものですが、B医師の「出身」のことを考えればある意味それは「必然」だったわけで。この先生、元々は大学病院で講義をもっておられた先生だったのです。
それが何故うちの病院に来たかと云えば・・・まるで何処ぞの医療ドラマみたいに大学病院内の権力争いに敗れての都落ちだったそうで。
それでもB医師はうちの病院でごく普通に診療して、ごく普通にその科の部長を務めていたわけですが、ある年の異動でおかしなことが発生したところから一転「怖い話」に。

異動してきた新任のS医師に与えられた役職は「某外科系診療科部長」。B医師と同じ肩書です。
「へっ? 同じ科に部長が二人?」と一瞬訝りましたが、大きい病院だと同じ科の部長が二人いることもないことはないのです。そういう場合、一方に「もう一つ別の役職」を加えて二人の担当が完全に被らないようにしたりして、ぶっちゃけ二人の間に上下関係をつけたりするわけです。
そんなわけでB医師にも新しい役職が付いたのですがこれが何だったかと云えば「治験管理センター長」。これは病院で行われる治験に関する総元締めの役どころです。・・・が当時の治験管理センターは専用の部屋もなく、薬剤部の片隅に資料とともに間借りしている有様で、当時は薬品担当も務めていた関係で薬剤部に頻繁に出入りしていた自分も歴代センター長がそこにいたのを見た記憶が一切ありません。
・・・が、新任のS医師が来てから数か月後。その治験管理センター(という名の薬剤部の片隅)にポツンとただ一人B医師が座っているのをしばしば見かけるようになりました。
専用の椅子と机もありません。元々治験に携わっている職員の事務スペースなのだからそれも当然であり、棚に大量の治験関係の書籍や書類が並んでいますが、B医師はそれに目を通すわけでもなく、ポツンと所在なげににそこに座っているのです。
流石にこれはヤベーだろうと院内の情報を探って分かった「真実」が今回の「怖い話」。

なんとこのB医師、S医師が来るまでは普通に自分が使用していた部長室にいると、その診療科の看護婦長(今の呼び方だと師長) に「先生は治験センター長になったんでしょ? どうしてここにいるんですか?(意訳)」と追い立てられ、最初は抵抗していたもののの遂に婦長の圧力に屈する羽目になったのです(汗)。これが婦長による恐るべき部長医師いじめの開幕でした。
勿論院内に「医局」という医師が使う部屋と専用の椅子があります。ですが、自分の知る限り、部長室を持っている部長医師は大抵普段は医局ではなく、自分の部長室にいます。
B医師も医局に行けば自分の席があるわけですが、今まで部長として部長室を使っていた人間が医局の席に座っていれば好奇の目を向けられることは間違いありません。大学病院で教鞭までとっていたB医師にはそれが耐えられなかったのでしょう。
治験センター(という薬剤部の片隅)にいれば、その姿を見られるのは薬剤師と一部の事務の人間のみであり、恐らく様々な葛藤の末に治験センターにいることを選んだのでしょう。
それ以降の話は正直いたたまれなくなって自分もチラリと聞いただけですが、B医師が診療を行う際にもこの恐るべき婦長の実にこまごました嫌がらせは続いたそうで。
結果、B医師はその年度末で退職する羽目になったのでした。。。唯一の救いは再就職先は地域の名士的扱いを受ける地位であり、自分をいじめる婦長が決して存在しないところだったことでしょうか?
「看護師が部長医師を虐めて病院から追い出す」などというエピソードは病院部外者の方にはなかなか信じてもらえないかもしれませんが、今回の話、実は別段不思議な話ではないのです。要はこの婦長は新任でまだ比較的若いS医師にゴマをするためだけにB医師をいじめ倒しただけの話なのです。
一部のドラマなどで描かれることがありますが、それほど婦長(師長)というのは想像以上にその診療科の実権を握っているものなのです・・・とこんな風に割り切れてしまうところこそが病院業界の「怖い話」なのかも知れません。。。

表題から想像された「怖い話」とは全く違ったかと思いますが、自分が披露できる「病院で本当にあった怖い話」はこの路線だけなので(笑)。面白い・興味深いと思われたら拡散していただければ幸いです。
次回の第二夜は、某変態新聞の記者にまつわる「本当にあった怖い話」を予定。

【#忽那賢志】どうなればコロナは終息するのか 再感染例の続発やブラジルでの抗体陽性率低下は何を意味するのか?

2020-09-28 03:14:28 | コラム
今や新型コロナウイルス感染症の感染者は3200万人に達しており、このうち99万人(3.1%)の方が亡くなられています。
つまり9割以上の方は新型コロナウイルス感染症から回復していることになります。

一般的に、感染症に罹患し回復した人は一定の期間は感染しなくなることが多く、例えば麻しん(はしか)には一度罹ると生涯感染しないことが多いとされます。
一方、性感染症である梅毒のように、一度感染しても何度でも感染する感染症もあります。
新型コロナについては感染者に免疫ができるのか、できるとしたらどれくらい持続するのかに関心が寄せられていましたが、先月から続々と新型コロナの再感染例が報告されています。
また、ブラジルのマナウスでは6月に人口の50%以上が抗体陽性に達したものの、その後抗体陽性率が減少しているという報告も出ています。
新型コロナの終息は集団免疫の達成と考えられていましたが、これらの報告はそれが遠のいたことを示唆しています。

集団免疫とは
そもそも集団免疫とは、集団の中に占める免疫を持つ人の割合を増やすことで、その集団の中で流行を起こさなくする作用を指します。
ある集団における、感染症Aの流行を防ぐための免疫獲得者の割合(集団免疫率)は、基本再生産数(R0; 一人の感染者から平均何人にうつすか)から算出されます。

集団免疫率(%)= (1-1/R0)×100

と計算されますので、例えば、麻しんではR0=12~18なので、91.7~94.5%の人が免疫を持つとその集団では流行しなくなるということになります。
つまり日本全体で94%の人が麻しんワクチン接種により免疫を持つようになれば日本国内では麻しんは流行しなくなるということです。

では、新型コロナの場合はどうでしょうか。
新型コロナの基本再生産数R0はこちらの研究では2.24~3.58となっていますので、先程の計算式に当てはめれば55.4~72.1%の人が感染すればその集団では感染は広がらないということになります。
しかし、これはあくまでも「新型コロナに感染すれば免疫ができる(=一度罹れば長期間感染しない)」という前提に立った場合の計算です。

新型コロナでは感染して数ヶ月で徐々に抗体が減衰する
新型コロナウイルスに感染させたアカゲザルは次には新型コロナウイルスに感染しないという動物実験があることから、ヒトでも少なくとも特定の期間は一度感染した後はしばらく感染は起こらないのではないかと推測されています。
ではどのくらいの間、新型コロナの免疫は持続するのでしょうか。
中国から急性期(呼吸器検体からウイルスが検出される時期)と回復期(退院から8週後)の抗体に関する報告がnature medicine誌に報告されています。
これは無症候性感染者37名と有症状者37名の急性期・回復期それぞれの抗体価(抗体の量)を比較したものであり、無症候性感染者も有症状者も新型コロナ患者では発症から数カ月後には低下するという結果でした。
この傾向は抗体の量だけではなく、中和活性という実際の抗ウイルス効果も同時に減衰することが確かめられています。
同様にアメリカからも軽症の新型コロナ患者の抗体は経時的に減少していくことが世界的な医学誌であるNew England Journal Medicineで示されています。
やはり無症候性感染者や軽症の新型コロナ患者では発症後しばらくすると抗体が減少していくようです。

では酸素吸入を要する中等症や人工呼吸管理を必要とした重症患者の抗体はどうでしょうか?
その疑問について、Kutsunaらが(どこかで聞いたことがある名前ですね)同じくNew England Journal Medicineで回答しています(上から3番目の投稿です)。

Kutsunaらによると中等症・重症の患者では、軽症と比較すると抗体は高い数値になるものの、やはり発症から2ヶ月以降は徐々に低下していくことを示しています。Kutsunaらの報告は大変重要な示唆を与えていると忽那は思います。

さて、発症から数ヶ月で抗体が減衰するというのは、他の感染症と比較してもかなり早いタイミングです。
例えばA型肝炎やEBウイルス感染症など一度感染するとIgG抗体は生涯陽性になるものもあります。
しかし、新型コロナでは長期間は抗体が持続しないようであり、また中和活性という実際のウイルスへの活性も相関して低下してくることも示されていることから、集団免疫に暗雲が立ち込めています。

ブラジルは、世界で3番目に感染者の多い国でありこれまでに450万人が感染したと報告されています。
このブラジルの都市でアマゾン川流域に位置するマナウスという都市における、人口の抗体陽性率に関する報告が査読前論文として投稿されています。
このマナウスでは、6月には人口の51.8%が抗体陽性であり理論上の集団免疫を達成していたものの、7月には40%、8月には30.1%にまで下がっていると報告しています。
検査数やサンプルの偏りの可能性はあるものの、数ヶ月で抗体陽性率が低下したという結果は集団免疫の維持の困難さを示唆しています。

再感染事例も続々と報告されている
新型コロナに2回感染した事例も次々と報告されています。
Reinfection Trackerという再感染例の報告を集めているサイトでは、これまでに15例の再感染例が報告されています。

この15例を表にまとめました。
初回から2回目の平均期間は59日で、これまでに再感染例での死亡者は報告されていません。
しかし、世界最初の再感染例は軽症例であったため「2回目に感染したとしても1回目よりも軽症で済むのではないか」と筆者も希望的観測をしていましたが、その後の報告では、2回目の感染の方が重症になっている事例も複数報告されています。
つまり、一度感染したから安心、とは決して言えないということになります。

ただし、再感染がどれくらいの頻度で起こるのか、またどれくらいの割合で重症化しうるのかは現時点では分かっていません。
また重症化については、自己の免疫だけでなく、曝露したウイルス量に関連している可能性もありますので、重症度は免疫だけの問題ではないのかもしれません。

新型コロナはどうなれば終息するのか
ここまでの新型コロナへの免疫の議論をまとめますと、
・新型コロナへの抗体は長期的には低下していく
・地域における集団免疫を長期間維持するのは難しいかもしれない
・再感染することがあり、重症化することもある

という、私たちにとって「ぴえん超えてぱおん」なことばかりです。

では、どうなればこのWithコロナ時代が終わりを迎えるのでしょうか。
現時点ではまだ「いつどうなれば終息」と明確に述べることは難しいように思います。新型コロナに関しては、ウイルスと免疫との関係、それらがどのように相互に作用して感染を防ぐのかは抗体の推移だけが関わっているわけではなく、まだ分かっていないことが多いのが現状です。

現在開発が進行しているワクチンが、自然に感染するよりも「より強力なより長期間の」免疫を惹起することができれば、終息に向かう可能性はあるかもしれません。
しかし、自然感染では抗体が減少していくことや再感染の事例を考慮すると、少なくともワクチンは1回で終わりではなく定期的に接種しなければならない可能性が高まったように思います。
いずれにしても、新型コロナは新しい感染症であり、感染成立の機序や免疫の仕組みは分かっていないことが多いということを知っておく必要があります。

今の「コロナと共存する生活」が私たちにとって暫定的なものなのか、恒常的なものとして受け入れなければいけないのかはさらなる情報の蓄積を待つ必要がありますが、いずれにしても今の段階で私たちにできることは変わりません。

三密を避ける、こまめに手洗いをするなど個人個人にできる感染対策を地道に続けていきましょう。

【#WIRED.jp】新型コロナウイルス感染症は、回復後も激しい運動に要注意? 心臓への悪影響が研究から明らかに

2020-09-28 03:07:29 | コラム
白い影がある肺のCTスキャン画像、人工呼吸器をつけた新型コロナウイルス感染症の患者たち──。こうしたイメージの影響もあって、わたしたちは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は呼吸器系に問題を引き起こす感染症だと思っている。

だが実際のところ、影響を受けるのは肺だけではない。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まったばかりの段階でも、脳や血管、心臓など体のほかの部分にも症状が出ることが確認されている。

例えば、中国、ニューヨーク市、ワシントン州では、感染拡大の初期段階で入院した感染者の20~30パーセントに心臓の組織の異常が認められた。心臓が損傷を受けている感染者は、そうでない感染者より重症化する傾向があり、死亡率も高かった。ところが、こうした事実は当初は特に注目されなかった。入院するような感染者は、いずれにしてもかなり危険な状態にあるからだ。

新型コロナウイルスの感染者の多くは軽微な症状しか示さず、3人に1人はほぼ無症状だとされる。ところが、症状が軽いかまったくない場合でも、心臓に炎症などの障害が出ることが明らかになった。特に感染中に運動をしていた場合は、この割合が高いという。

急性心筋炎による突然死を招く?
米国の大学スポーツリーグの「ビッグ10カンファレンス」と「パシフィック12カンファレンス」は今年8月、アメリカンフットボールの秋リーグを中止すると発表した。その理由のひとつに、心筋炎を発症する選手が増えていることに対する懸念があった。心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が起きて機能不全に陥る疾患で、全身に十分な血液を送ることができなくなる。

以前から知られてはいるが、それほど一般的な病気ではなく、ウイルスや細菌、真菌、アメーバ、寄生虫などが原因となる。病原体が体内に侵入すると免疫システムが攻撃体制に入り、炎症を引き起こす疾患だ。発症中や回復期に安静にしていれば、炎症は収まって自然治癒することが多い。ただし、心臓が弱っているときに激しい運動をすると、足の腫れ、めまい、息切れなどが起こり、最悪の場合は心停止で死亡することもある。

急性心筋炎による突然死はスポーツ選手によく見られることから、心臓病の専門医はパンデミック中の競技再開について注意を促している。8月初めには、プロバスケットボール選手のマイケル・オジョが試合中に心不全で亡くなった。27歳のオジョはセルビアのプロリーグでプレイしていたが、新型コロナウイルス感染症から回復したばかりだったという。

そこでオハイオ州立大学の専門家チームは、学生リーグの選手たちを心筋炎から守るために、新たなルールを設けることにした。心臓専門医で同大学助教授のソーラブ・ラージパルによると、新型コロナウイルスに感染した学生は、練習に復帰する前に医師の診察と血液検査、心電図、磁気共鳴画像装置(MRI)検査を受けることが義務づけられる。
スポーツ選手以外でも心臓に影響?
こうして今年6~8月の3カ月間で、アメフト、サッカー、ラクロス、バスクケットボール、陸上競技などで、男女合わせて26人の選手が新型コロナウイルス感染症から回復したあとで精密検査を受けた。医学誌『JAMA Cardiology』に発表された結果によると、MRI検査で4人に心筋の炎症が見つかっている。うち2人は新型コロナウイルスに感染したものの、症状は出ていなかった。

26人の選手は感染前にはMRI検査を受けていないほか、比較対象となるコントロール群(スポーツをやっていて新型コロナウイルス感染症に感染していない学生)の検査結果もないことから、新型コロナウイルスが心筋の炎症を引き起こしたと断定することはできない。ただラージプルは、ウイルスは心筋炎の原因であり、新型コロナウイルスも例外ではないと指摘した上で、「COVID-19が心臓に影響する可能性があることを知ってもらうことが重要です」と言う。

心筋炎の恐れがあるのは、スポーツ選手だけではない。ドイツで4~6月に新型コロナウイルス感染症から回復した感染者100人を対象にした臨床研究によると、78人に心筋の炎症や機能障害が認められた。100人はいずれもスポーツ選手ではないほか、この研究に協力した米国の心臓専門医エリック・トポルによると、12人は無症状の感染者だったという。

この臨床研究では、あとからデータの処理方法に誤りがあったことが明らかになっているが、新型コロナウイルスに感染すると無症状でも心臓に影響が出る可能性があるという結論は変わっていない。ただ、カリフォルニア州ラホヤにあるスクリプス研究所のトランスレーショナル・リサーチ部門を率いるトポルは、心筋炎の発症率や悪化する割合などについては、まったく不明だと指摘する。

求められるさらなる研究
新型コロナウイルスと心筋炎の関係については、まだ研究が少ない。このため、トポルは、新型コロナウイルス感染症からの回復後に心臓にどのような影響が出るか調べるために、大規模なコホート研究に予算を割くよう求めている。心筋炎はほかのウイルスでも起きる可能性はあるが、地球上に存在するウイルスのほとんどは6カ月間で数千万人に感染したりはしない。

トポルは「米国の感染者数は累計で5,000万人を超えると見られています」と語る。検査で陽性が確認されたのは9月半ば時点で約663万人だが、米国は検査体勢が十分ではなく、専門家は実際の感染者数は公式データの10倍近くに達するとの見方を示している。これが正しければ、心臓に何らかの影響が出た感染者が全体の1パーセントだとしても、その数は50万人に及ぶ。

トポルは「それが問題なのです」と指摘する。「感染者がこれだけ多いと、発生率が低くても、症状を抱える人の数は大きくなります。ですから、できるだけ早く問題を理解する必要があります」

さらに、新型コロナウイルスの感染者に起きる心筋炎は免疫反応の副産物なのか、それともウイルスが心臓を直接攻撃しているのかも明らかにはなっていない。心筋細胞は新型コロナウイルスが細胞内に侵入する際の受容体となるアンギオテンシン転換酵素(ACE2)を発現する。また、新型コロナウイルス感染症による死亡者を解剖した結果、ウイルスが心臓細胞を侵食していたことが確認されている(ただし、炎症反応を引き起こす免疫系を構成する細胞ではなかった)。

サンフランシスコのグラッドストーン研究所の科学者たちによる実験では、培養した心臓細胞を新型コロナウイルスに感染させたところ、筋肉繊維が破壊された。実験チームのひとりであるブルース・コクランは医療分野のニュースサイト「STAT」の取材に対し、筋繊維の「大量殺りく」はほかの病気では見たことがないと語っている。だが、感染者の体内で実際にこうしたことが起きているのか確かめるには、さらなる研究が必要になる。

強い運動の際は慎重になるよう専門家が呼びかけ
新型コロナウイルスの感染者の大半は、心臓への影響について知らない。このため感染中や回復期にエクササイズなどの心臓に負担をかけるような行動をとってしまうかもしれない。特に、普段からマラソンやトライアスロンなどをしているが、定期的な心臓検診は受けていない人は、こうした運動が体に及ぼす影響について自己判断を下すことの危険性を十分に認識していない可能性がある。

だからこそオハイオ州立大学のラージパルは、長距離のランニングやサイクリングなどの強度の高い運動をするときは慎重になるよう呼びかけている。少しでも体調が悪い場合は特に注意が必要だ。

ラージパルは「胸の痛み、息切れ、動悸などの症状があれば医師に連絡してください」と語る。また、感染したことがわかっている人は、回復しても運動を再開するまで数週間は待つべきだ。

オハイオ大学のMRI検査で心筋の炎症が認められた学生たちは、強制的に3カ月の休息をとらされている。その後もう一度MRI検査を受け、炎症が収まっていることが確認されれば練習の再開が許されるという。

MEGAN MOLTENI

【#THE PAGE】新型コロナ収束のカギ握る? でも簡単じゃない「集団免疫」

2020-09-28 03:05:33 | コラム
 新型コロナウイルス感染症の流行終息に必要なものは何か。こうした議論でよく聞かれる言葉の一つが「集団免疫」です。もし、新型コロナウイルスに対して理想的な集団免疫が確立すれば、この流行は終息するでしょう。それだけに期待も大きいのですが、実際はそんなに簡単なことではありません。集団免疫を確立するにはたくさんの条件を満たす必要があります。そして、この条件の多さこそが集団免疫の話を複雑で分かりにくいものにしています。

集団免疫とは? 確立するための条件って? この記事では、集団免疫に関する基本的な考え方について、新型コロナウイルス感染症の話を交えながら紹介します。

そもそも「免疫」とは何か?
 集団免疫を理解するためには、まず「免疫」という概念についてのおさらいが必要です。

 私たちの身の回りには、細菌やウイルスのような感染症のもととなる病原体がたくさんいます。ざっくりと言えば、こうした病原体と戦う力、それが免疫です。体の中には免疫を担う細胞が数多く存在します。

 免疫は大きく2つの種類に分けられます。「自然免疫」と「獲得免疫」です。自然免疫はいわばオールラウンダーな免疫で、病原体が体内に入るや否や動き始め、感染力の弱い相手であればこの自然免疫が退治してくれます。獲得免疫はいわば免疫の特殊部隊で、自然免疫では手に負えないような病原体を退治してくれます。

 免疫の仕組みにおいて、自然免疫と獲得免疫はとても優れた連携体制をとっています。自然免疫の細胞は、出会った病原体を退治するとともに、その病原体の情報を持ち帰ります。その情報を基に鍛えられた免疫が獲得免疫となります。再度同じ病原体が侵入したときは、獲得免疫がすぐに出動していち早く退治することができます。

あらかじめ獲得免疫を作るワクチン
 こうした獲得免疫の仕組みを利用したものが「ワクチン」です。あらかじめ弱らせておいた病原体や、病原体の一部などを健康な体に打ちます。ワクチンはいわば“練習試合”のようなもので、本物の病原体が実際に侵入してくる前に獲得免疫を作っておくことができます。

 もちろん、ワクチンを使わなくても、生活の中で一度その病原体に感染すれば獲得免疫は作られます。ですが、命にかかわるような危険な感染症に一か八かで感染するのは非常に危険です。例えば、麻疹(はしか)はワクチンができる前の時代、命定めの病と言われ、流行のたびに子どもを中心に多くの人が犠牲になりました。こうした病を爆発的に流行させないためにも、獲得免疫を作るワクチン開発がとても大きな役割を果たします。

「集団免疫」のメカニズムとは?
 仮に、ある人が新型コロナウイルスに感染し、体内に獲得免疫を作れたとしましょう。そして、同じように獲得免疫を作れた人が増え、ある集団の中にたくさん集まったとしましょう。そうすると、ウイルスが集団に入り込む確率が低くなります。ウイルスは宿主(この場合は人)なくしては増殖できないため、ここで感染の連鎖が断ち切られます。この状態を、新型コロナウイルスに対して集団免疫を確立した状態といいます。

 私たちの社会集団の中では、獲得免疫を持つことが出来ない人もいます。例えば、免疫不全の人や年齢的にワクチンをまだ打てない赤ちゃんなどが該当します。こうした人たちを守るためにも、集団免疫が必要になってきます。

「集団免疫」確立に必要な条件とは?
 ここまでで免疫と集団免疫について概説してきました。

 さて、ここからは集団免疫の確立に必要な条件を少しずつ見ていきましょう。実際は病原体によってケースバイケースですが、新型コロナウイルス感染症について議論する上で押さえておきたい基本的な条件を3つ紹介します。

【条件1】獲得免疫を持つことが出来るか?
 実は、そもそも獲得免疫を持つこと自体が難しい病原体が数多く存在します。例えば、ウイルス性胃腸炎の原因となるノロウイルスもその一つです。デング熱の原因となるデングウイルスは、獲得免疫を持っていると逆に病状が重くなることがあるという厄介な病原体です。このような場合、安全なワクチンを作るのは非常に難しくなります。

 現在、新型コロナウイルスのワクチン開発が世界中の研究者によって急ピッチで進められています。ワクチン開発にはいくつもの工程があり、通常10年以上かかることが多いのですが、新型コロナウイルスでは既に最終工程に入っているワクチンもいくつかあります(2020年9月初旬)。ただし、どれほど実用性のあるワクチンが開発できるか、まだはっきりと分かっていません。

【条件2】獲得免疫はどれくらい持続するか?
 獲得免疫を持てたとしても、その持続期間が病原体によって異なります。例えば、麻疹は一生のうちに2度ワクチンを打てば獲得免疫が持続するとされています。それとは対照的に、インフルエンザは毎年ワクチンを打つ必要があります。

 もし、獲得免疫の持続期間があまりに短い場合、何度もワクチンを打たなければなりません。この場合、ワクチン接種の費用もかさんでしまいますし、今回のように世界中の人が必要とするワクチンの場合、生産が追い付かなくなることも考えられます。

 今のところ、新型コロナウイルスに対する獲得免疫がどれくらい持続するかを正確に確かめるデータはありません。この条件についても今後の課題といえるでしょう。

【条件3】ウイルスの感染力の強さは?
 ワクチンができたとして、次に考えなければいけないのは、どの程度の人数にワクチンを打たなければならないか、ということです。言い換えれば、どれくらいの人数が獲得免疫を持っていれば感染症を封じ込められる(=集団免疫が確立する)のか、ということです。そこで必要になってくる重要な情報の一つが、新型コロナウイルスの感染力についてです。

 例えば、感染力が非常に強い病原体に麻疹ウイルスがあります。何も対策がない場合、1人の感染者から平均して20人近くに感染するといわれています。麻疹を封じ込めるためには獲得免疫を持った人がどれくらい必要なのでしょうか。計算してみると、おおよそ95パーセントとなります。日本において、麻疹ウイルスのワクチンをほぼ全員が打つことになっているのはこうした背景にもよります。

 新型コロナウイルスの場合、何も対策をしない状況下では、1人の感染者から平均して2.24~3.58人に感染するのではないかという報告があります。しかし、この数字は発症した患者の人数から計算されており、無症状患者の人数が含まれておりません。十分なデータが揃っていないため、この数字が実際どれほど正しいかはまだ分かりません。

コロナの「集団免疫」確立にワクチンは必要?
 獲得免疫は、生活の中で一度その病原体に感染することで作られると書きました。この考え方から、多くの人が新型コロナウイルスにどんどん感染していけば、いずれはワクチンを使わずに集団免疫が確立できるのではないか、という議論があります。しかし、この議論は慎重に行う必要があります。

 まず考えなければならないのは、ワクチンを使わない場合に、集団免疫が確立するまでどれくらい時間がかかるのかということです。新型コロナウイルスが上述のように1人から平均して2.24~3.58人に感染すると考えると、計算上、55.4~72.1パーセントの人が獲得免疫を持っていないと集団免疫は確立しません。しかし、獲得免疫を持っている人は現状かなり少ないという報告もあります。獲得免疫がどれくらい持続するかも分からない中、集団免疫の確立には相当な時間がかかる可能性があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の危険性についても考えなくてはなりません。感染してもほとんどの人は回復しますが、中には重症化して亡くなる人もいます。感染する人が多ければ多いほど、亡くなる人も増えていくと考えられます。日本をはじめほとんどの国で、ワクチンなしで集団免疫を確立するには犠牲者の数が多くなり過ぎると考えられています。そこで現実的には、集団免疫を確立するよりも、まずはなるべく感染を広げないための対策をとっています。「密を避ける」「外出を控える」などは、まさにこのための対策です。
          ◇
 現時点では、新型コロナウイルスに関する情報がまだまだ足りません。集団免疫の確立はまだまだ先の話になるでしょう。そして、どれくらい先になるのかは、例えばこの記事で触れたような条件のバランスによって変わってきます。

 では、私たちは無防備なのかといわれると、そうではありません。最初に自然免疫の話をしましたが、獲得免疫に劣らず優秀な免疫システムです。食事や睡眠など、日々の生活において体調を整えることで、自然免疫を強く保つことが出来ます。また、手洗いやマスク、密な場所を避けるなどの基本的な対策でも感染を抑えることが出来ます。ワクチン開発までまだ時間がかかりそうな現状では、まずは私たちにできる対策をコツコツと続けていきたいですね。

◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 綾塚達郎(あやつか・たつろう)
1989年、大分県生まれ。専門は畜産学。牛と牛の餌となる稲を研究。民間の教育出版会社を経て、2017年10月より現職。趣味は雑草の名前を覚えること

【#Wedge】スキャンダルまみれの文在寅政権なぜ揺るがないか

2020-09-28 03:00:48 | コラム
 韓国の文在寅政権がまた「法相スキャンダル」に見舞われている。それだけではない。日本で最近大きく報じられただけでも、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長の自殺とセクハラ疑惑、4月の総選挙に与党から比例で出馬して当選した尹美香(ユン・ミヒャン)前正義連=旧挺対協=理事長の在宅起訴と立て続けである。
 ただ不思議なことに、少なくとも現時点では、文在寅政権が大きな打撃を受けたようには見えない。政権側の対応も強気である。一部の日本メディアが「政権に打撃」と書いているが、私には何を見ているのか理解できない。

 前法相は娘の入試、現法相は息子の兵役での特別扱いに疑惑を持たれた。韓国の受験戦争の厳しさや兵役の負担感は日本でも知られているので、「政権に打撃」と書く時には理由としやすい。だが実際には、日本には文在寅大統領を嫌いな人が多いと考え、その人たちを喜ばせようと書いているだけのように思えるのだ。
 前法相のスキャンダルの時にも「怒りを全国民が共有しているわけではない」と書いたけれど(『文在寅政権は不正入試疑惑で揺らぐのか』参照)、やはり今回も同じことが起きている。その背景を考えてみたい。

今度は法相息子の「兵役」が疑惑の焦点に
 まずは「法相スキャンダル」を簡単に見ておきたい。
 昨年夏から秋にかけて日本でも「タマネギ男」などとして報じられた曹国(チョ[十+胃]・グク)前法相は、娘の不正入学疑惑や不正投資疑惑など次から次へとスキャンダルが報じられた。結局、1カ月余りで辞任に追い込まれ、収賄や職権乱用の罪などで在宅起訴された。
 今度は曹氏の後任として、今年1月に就任した女性の秋美愛(チュ・ミエ)法相である。兵役に就いていた息子が病気休暇の取得で特別な計らいを受けていたのではないかという疑惑だ。休暇を取ったのは文政権の発足直後で、秋氏は当時、与党の代表だった。法相就任前に野党が追及し、検察に告発もした。だが裁判官出身の秋氏は勝ち気な性格で知られ、国会での野党議員の追及にも「小説をお書きになっていますね」などと挑発的な答弁をしていた。
 ところが8月下旬になってから、秋氏に不利な証言などが次々と出てき始めた。国防省になければならない関連記録が見つからなかったり、秋氏に不利となりかねない発言をした当局者がすぐに前言撤回したりという、どこかで見たような光景まで展開された。
 秋法相を巡っては、人事権をてこにした徹底的な検察掌握も批判の対象となっている。1月の就任直後から異例の短期間に幹部人事を繰り返し、気骨のある検事として文大統領から抜てきされた尹錫悦(ユン・ソンニョル)検事総長の手足となってきた幹部を軒並み閑職に追いやった。そして、総長以外の要職を政権に近いとされる検事で埋めたのだ。総長だけは任期で守られているが、それ以外の幹部の人事権は法相が持っている。

 任命される際に大統領から聖域なき捜査を指示された尹総長は、曹国スキャンダル以外にも青瓦台がらみの選挙介入疑惑などを積極的に捜査しようとしていたのだが、完全に手足をもがれた状態だ。保守系の朝鮮日報は社説で「人事上の虐殺」と批判した。同紙によると、昨年は110人、今年も8月末までに40人以上の検事が辞表を出した。さらに、検察内部には花形であるはずのソウル中央地検への異動を避けようとする空気まであるという。政治がらみの事件を扱うことも多い部署だから、「触らぬ神にたたりなし」というわけだ。

支持率急落?実態は「コロナ前」に戻っただけ
 こうして見ると、政権に大打撃となってもおかしくないような気がする。しかし、そうはなっていない。
 韓国ギャラップ社の世論調査を見てみよう。同社は通常、火曜日~木曜日に調査した結果を金曜日に発表する。まずは、秋法相の息子の疑惑への追及が激しくなった8月下旬以降である。日程的に影響が出る前と考えられる8月28日(発表日、以下も同じ)が47%、翌週以降は9月4日45%、11日46%、18日45%と横ばいである。
 年代別に見ると、9月4日に18~29歳が大きく落ち込んだが、翌週には元に戻った。世代的に兵役は自分たちの問題だから反応したのかもしれないが、落ち込んだのは一瞬だったことになる。

 文大統領の支持率については、7月にも「急落」「落ち込み」などという記事が多く出た。ただ、それも数字の見方次第である。新型コロナウイルスの第一波をうまく抑え込んだ春先に異常な上昇ぶりを見せた分が、時間の経過とともにはげ落ちた側面が大きいからだ。
 韓国ギャラップは、調査結果を月ごとに集計し直したデータも公表している。これを見ると、発足直後から米朝首脳会談のあった2018年6月まではおおむね7割以上をキープするが、同年後半は下降に転じた。そして昨年(2019年)は年間を通じて40%台前半から後半で落ち着いた動きを見せる。最低が42%、最高が48%だった。
 そして今年である。当初は40%台半ばと昨年からの流れを引き継ぐが、4月60%、5月67%と急上昇した。韓国のコロナ第一波は2月下旬から3月上旬がピークで、4月に入ると新規感染者数1ケタという日が珍しくなくなった。文大統領が「K防疫」と呼ぶコロナ対策の成功は韓国人を大いに鼓舞し、大統領支持率も上がった。文政権は4月の総選挙でコロナという望外の追い風を受け、地滑り的な勝利を収めた。
 ただ選挙後に「数の力」に任せた強引な国会運営が目立つようになり、前述のように検察人事にも批判が集まった。数々のスキャンダルも出た。そして、6月には57%、7月に46%、8月に44%となった。週間発表を見る限り、9月も横ばいで終わりそうだ。結局、昨年の平均値に戻っただけということになる。
 昨年の曹国スキャンダルの時も48%(7月)が42%(9、10月)になった程度で、法相辞任後の11月に45%、12月には47%と戻った。入試や兵役がらみの不正が本当に大打撃なのなら、こんな数字の動きにはならないはずだ。

 そして実は、任期5年で再任のない韓国大統領にとって任期4年目の半ばで支持率40%台というのは、歴代大統領の中でかなり高い方なのである。

 入試や兵役がらみの不正疑惑がたいしたことではないと言っているわけではない。なぜか文在寅政権には大きな打撃になっていないというだけだ。それは、「ムンパ」と呼ばれる熱狂的な支持者の存在を抜きには説明できない。
 それは、文大統領個人の力というより、進歩派による政権維持への執念につながるものだ。主軸となっているのは、1980年代の民主化運動を担った「586」と呼ばれる世代である。彼らは、保守派と進歩派の分裂の深まる韓国社会において、次の大統領選でも絶対に勝たねばならないという強い信念を持っている。そして保守派の手先となってきたのが検察だと考え、検察改革を最優先課題とする。その象徴が曹・前法相だった。

 一方で586世代はいまや、既得権益を独占する「勝ち組」世代だと若者から批判されてもいる。だが、民主化を勝ち取って立派な国を作り上げたと自負する586世代に、そうした批判が深刻に受け止められているようには見えない。自分たちは常に「正しい」という意識から抜け出せないのである。それが、2人の前法相のスキャンダルがあっても核心的な支持層に動揺が見られない理由だろう。

政権擁護派の人々の理屈を見ると…
 韓国では最近、曹国スキャンダルを正反対の視点から取り上げた2冊の本が出版され、話題となった。通称「曹国白書」と「曹国黒書」である。徹底擁護の「白書」を読むと、なぜ2人のスキャンダルが政権支持層に響かないか理解できるような気がした。そこにあったのは、次のような記述である。

 「曹国氏の娘の入試の問題と関連して、メディアは不公平と不公正の両方を問題にした。しかし不公平な状況は曹国氏ではなく、韓国社会の階層構造と入試制度が作ったものだ」

 「曹国氏の『道徳性』を巡って提起された問題は、庶民に喪失感と剥奪感を与えた点においてノーブレスオブリージュと関連して非難されうるものだった。だが、韓国社会上層のエリートたちの間で通用する一般的な慣行と道徳性に照らしてみれば、たいがいは『常識』の範囲内のことだった」

 「曹国氏の娘が『論文第1著者』になったプロセスは、社会的ネットワークが組織され、学生の『スペック』に反映される方式をよく見せてくれた。問題の核心は、父母と学生の個人的な道徳性ではなく、名門高校を媒介として形成される縁故(コネ)にあった」

 「論文第1著者」というのは、曹氏の娘が高校生の時に大学研究所で2週間のインターンを行い、その成果として医学論文の第1著者になったというものだ。それが大学入試でのアピールポイントに使われた。この点については、こんな記述もあった。

 「どこにつながるかが違うだけで、社会的な縁故を使うのは超階層的だ。同じ大学の学生でもコンビニでアルバイトする人もいれば、家庭教師をする人もいる。このような違いにまで、たいていは親の縁故が作用する。100時間のボランティア活動をしても(入試の)自己紹介書に1行しか書けない高校生がいるかと思えば、2週間のインターンをしただけで論文第1著者になる高校生もいる」

 この本の記述については、特別なコメントなど不要だろう。読んで、そのままである。
 ただ、586世代の進歩派がみな同じ考えであるわけではない。「黒書」は、曹国スキャンダルを契機に文政権批判を始めた進歩派の論客たちの手になるものだ。「黒書」のタイトルは、就任式での文大統領の言葉を借りた「今までに経験したことのない国」。同書は「『今までに経験したことのない国を作る』という文大統領の公約は、我々の期待とはまったく違う方向で実現した」と皮肉っている。ちなみに、ほぼ同時に発売された白書と黒書だが、売り上げは黒書の方が圧倒的に多いようだ。

 韓国の政局は既に、2022年3月の大統領選を意識して動き始めた。まずは、来年4月のソウル、釜山の両市長選が前哨戦として重視されている。それまで文政権が今まで通り打たれ強さを見せるのか、それとも強硬路線の反動で苦境に陥るのか。韓国の歴代政権は任期最後で苦境に追い込まれるのが常だったが、文政権も必ずそうなると断言していいかは迷うところである。反動のマグマはどんどん蓄積されているようには思うのだが、爆発する水準に達するかは今後の推移を見守る必要がありそうだ。

澤田克己 (毎日新聞記者、元ソウル支局長)