香港に来てから間もないころに香港人の英語力について、英語力の国際比較でよく使われているTOEFLの平均スコアをもとに日本人との英語力の比較を行いました。
<以前の記事>
香港人の英語力
http://blog.goo.ne.jp/hitofumi11/e/e4070e4489eb86fb61fbb1b511eae137
その後、香港に住んで香港の社会や生の香港人を目にして、いろいろ考えたことがありましたので、改めて、書いてみたいと思います。
まず香港には日常生活の中で普通に目にするところに多く英語があります。歴史的な背景(香港は英国の植民地であった)から、地名はすべて英語(に中国語が付け加えられている感じ)です。そのほか、標識や広告、何かの申請用紙などなど、必ず英語と中国語の両方があります。
テレビも無料の地上波チャンネルは中国語(広東語)と英語のものがあり、一日中英語のチャンネルを見ようと思えば可能です。
これらはあくまでも受身の部分であり、そうだからと言って英語ができるようになるわけはありませんが、香港人にとっての英語とはただ学校で教科書で勉強するだけではなく、日常の生活の中で使われる言語のひとつという位置づけになっているという点が日本と香港の大きな違いの1つだと感じます。
もう1つの大きな違いは、香港の中学校は基本的にすべての授業が英語で教えられます。(実際は教えられていましたと言う方が「正解」ですが。。)教科書もすべて英語、先生も授業は英語で教えます。ちなみに大学に入る試験もすべて英語で問題が書かれています。当然子供たちも最初は先生が何を言っているか、教科書に何が書いてあるかはわかりませんが、だんだんと慣れてきます。この段階で英語というのは香港の人たちにとって必要な1つの言語となるということだと思います。
大学に入るには英語ができなければまず入れません。英語が授業もわからなければ、テストもできないことになります。ある種英語の能力が大学にいけるかどうかの境界線になっているような印象をうけます。
一方で、母国語である広東語には日本語のカタカナ英語と同様に多くの発音を似せた外来語が存在します。日本語と違ってすべて感じなので一見わからないのですが、よくよく発音を聞くともともと英語の単語だったことがわかります。また、それら以外にも香港人は日常会話の中で多くの英語の単語を使います。それは決して外国かぶれとかいうわけではなく、本当に普通に使われています。これは香港以外の広東語圏の地域(マカオなど)にはない習慣だそうです。
このような習慣は日本のカタカナ英語も同じですが、明らかに香港人の英語能力を落としている原因と思われます。発音も文法も違う英語を英語として話している香港人は香港人の間では通じたとしても、他国の人々には通じにくいと思われます。私自身も香港人の英語の発音はわかりにくいと思うことがあります。
ただ、それでも大学まで進学した香港人を比較すると、日本人と香港人との英語能力の差は歴然としています。香港人は少なくとも英語で外国人とコミュニケーションをすることはできますし、それは当たり前の状況です。多くの日本人の大学生のことを思い浮かべると、そういう状況はまずありえないでしょう。
さてこの香港人の英語教育ですが、1997年に中国に返還された後、少し様子がかわってきました。政府は母国語教育に関する新たな教育政策を発表し、その中でこれまで英語で教育が行われてきた中学校に関して、英語の代わりに中国語で教育をすることにしました。ただし、例外としてその中学校の英語による指導のレベルが高い学校については、これまで同様に英語で教育してもよいということになりました。そのため、結果として香港には「英語の中学校」と「中国語の中学校」という2種類の中学校が存在することになりました。この政策は翌年の1998年から即施行されています。
「中国語の中学校」でも当然英語は教えますし、教育のカリキュラム自体に大きな違いはないですが、教育に使用する言語が違うというこの状況で、最近中文大學から興味深い調査結果が発表されました。
政府の母国語政策が施行された1998年および翌年の1999年に中国語または英語の中学校に入った生徒を対象に、その後の学力の進捗について比較をしたのです。その結果、中国語の中学校の生徒の学力が英語の中学校の生徒の学力より低いことがわかり、また英語の能力に関しても中国語の中学校の生徒がかなり低いことがわかりました。
教育に使用する言語を英語から中国語に変更した目的は、母国語による教育の方が生徒の理解を促進するということだったようですが、結果として英語以外の成績まで悪くなってしまいました。
この調査結果についてはいろいろな味方があり、政府の政策自体が正しかったかどうかの評価も今の段階では難しいと思いますが、少なくとも香港人の英語能力については1つのターニングポイントになるのかもしれません。
<参考>
中中生「轉台」英文助升大學 (星島)
http://hk.news.yahoo.com/080314/60/2qn7h.html
Weak link in mother-tongue lessons (the Standard)
http://www.thestandard.com.hk/news_detail.asp?we_cat=16&art_id=63415&sid=18199466&con_type=1&d_str=&fc=4
<以前の記事>
香港人の英語力
http://blog.goo.ne.jp/hitofumi11/e/e4070e4489eb86fb61fbb1b511eae137
その後、香港に住んで香港の社会や生の香港人を目にして、いろいろ考えたことがありましたので、改めて、書いてみたいと思います。
まず香港には日常生活の中で普通に目にするところに多く英語があります。歴史的な背景(香港は英国の植民地であった)から、地名はすべて英語(に中国語が付け加えられている感じ)です。そのほか、標識や広告、何かの申請用紙などなど、必ず英語と中国語の両方があります。
テレビも無料の地上波チャンネルは中国語(広東語)と英語のものがあり、一日中英語のチャンネルを見ようと思えば可能です。
これらはあくまでも受身の部分であり、そうだからと言って英語ができるようになるわけはありませんが、香港人にとっての英語とはただ学校で教科書で勉強するだけではなく、日常の生活の中で使われる言語のひとつという位置づけになっているという点が日本と香港の大きな違いの1つだと感じます。
もう1つの大きな違いは、香港の中学校は基本的にすべての授業が英語で教えられます。(実際は教えられていましたと言う方が「正解」ですが。。)教科書もすべて英語、先生も授業は英語で教えます。ちなみに大学に入る試験もすべて英語で問題が書かれています。当然子供たちも最初は先生が何を言っているか、教科書に何が書いてあるかはわかりませんが、だんだんと慣れてきます。この段階で英語というのは香港の人たちにとって必要な1つの言語となるということだと思います。
大学に入るには英語ができなければまず入れません。英語が授業もわからなければ、テストもできないことになります。ある種英語の能力が大学にいけるかどうかの境界線になっているような印象をうけます。
一方で、母国語である広東語には日本語のカタカナ英語と同様に多くの発音を似せた外来語が存在します。日本語と違ってすべて感じなので一見わからないのですが、よくよく発音を聞くともともと英語の単語だったことがわかります。また、それら以外にも香港人は日常会話の中で多くの英語の単語を使います。それは決して外国かぶれとかいうわけではなく、本当に普通に使われています。これは香港以外の広東語圏の地域(マカオなど)にはない習慣だそうです。
このような習慣は日本のカタカナ英語も同じですが、明らかに香港人の英語能力を落としている原因と思われます。発音も文法も違う英語を英語として話している香港人は香港人の間では通じたとしても、他国の人々には通じにくいと思われます。私自身も香港人の英語の発音はわかりにくいと思うことがあります。
ただ、それでも大学まで進学した香港人を比較すると、日本人と香港人との英語能力の差は歴然としています。香港人は少なくとも英語で外国人とコミュニケーションをすることはできますし、それは当たり前の状況です。多くの日本人の大学生のことを思い浮かべると、そういう状況はまずありえないでしょう。
さてこの香港人の英語教育ですが、1997年に中国に返還された後、少し様子がかわってきました。政府は母国語教育に関する新たな教育政策を発表し、その中でこれまで英語で教育が行われてきた中学校に関して、英語の代わりに中国語で教育をすることにしました。ただし、例外としてその中学校の英語による指導のレベルが高い学校については、これまで同様に英語で教育してもよいということになりました。そのため、結果として香港には「英語の中学校」と「中国語の中学校」という2種類の中学校が存在することになりました。この政策は翌年の1998年から即施行されています。
「中国語の中学校」でも当然英語は教えますし、教育のカリキュラム自体に大きな違いはないですが、教育に使用する言語が違うというこの状況で、最近中文大學から興味深い調査結果が発表されました。
政府の母国語政策が施行された1998年および翌年の1999年に中国語または英語の中学校に入った生徒を対象に、その後の学力の進捗について比較をしたのです。その結果、中国語の中学校の生徒の学力が英語の中学校の生徒の学力より低いことがわかり、また英語の能力に関しても中国語の中学校の生徒がかなり低いことがわかりました。
教育に使用する言語を英語から中国語に変更した目的は、母国語による教育の方が生徒の理解を促進するということだったようですが、結果として英語以外の成績まで悪くなってしまいました。
この調査結果についてはいろいろな味方があり、政府の政策自体が正しかったかどうかの評価も今の段階では難しいと思いますが、少なくとも香港人の英語能力については1つのターニングポイントになるのかもしれません。
<参考>
中中生「轉台」英文助升大學 (星島)
http://hk.news.yahoo.com/080314/60/2qn7h.html
Weak link in mother-tongue lessons (the Standard)
http://www.thestandard.com.hk/news_detail.asp?we_cat=16&art_id=63415&sid=18199466&con_type=1&d_str=&fc=4