耽美な伝奇モノ。
「美剣士」という言葉にはロマンがあります。
このお話の主人公・紅丸は、少女と見まごう美少年。
しかも、武神に愛され、鬼神に見込まれた、類まれな剣士。
人の血を求める妖刀の主に選ばれて、刀鍛冶の里から乱世の戦場へ。
その刀は人を切れば切るほど、次の犠牲を求めて赤く輝くのでした。
いつも思うのですが、しいらさんの描かれる受け青年には、自らの性癖に対する迷いとか衒いとかが少ないですね。
受け入れることに抵抗がないというか。
時代設定が戦国時代なので余計にそうなのかもですが。
紅丸も、命がけで彼を守ろうとする幼馴染の宗司も、とてもまっすぐで誠実で。
とても芯が太い感じ。
必死に生き抜こうとする意志がまざまざと感じられて、好きでした。
お話も面白かったですv
弱小弁護士事務所に勤める弁護士の真琴は、自らの性癖を隠している。
けれど、優秀なのに骨惜しみせず、真摯に仕事をする男前の新人・公平になつかれて、気持ちはどんどん惹かれていく。
そんなとき、尊敬する先輩・宗近に口説かれて。
真琴のような人が好きです。
淡白でソフトなようでいて、芯はとても強くて。
逆に言えば、ちょっとだけ頑な。
恋する自分の心まで否定して、見ないふりをしようとします。
宗近先輩はずるくてやさしい大人。
きっと本当は余裕が無かったりするんでしょうけど、それを気づかせない強さも持っています。
公平は大型犬そのものですね。
尻尾を千切れそうに振ってみたり、耳がしゅんとたれたり、そんな感じが目に見えるようでした。
弁護士事務所の様子、裁判の推移などリアルで、臨場感が感じられる程度に書き込まれていて、おもしろかったです。
会社をリストラされ、就活中の藤咲が訪ねたのは下町のレトロな印刷所。
見るからにその筋の人間のような社長・黒川に気に入られ、働くことになってしまいます。
任侠道を地で行くような黒川。
強面だけど、本当はとても人情味のある、昔ながらの極道だったりします。
藤咲は弱腰。
不器用で要領も悪いけど、与えられた仕事を誠実にこなそうと一生懸命。
自分のことよりまず人のことを考えてしまうお人よしなところが、なんともいとおしい人でも有って。
黒川が、色事には手馴れているようでいて、藤咲には振り回されっぱなしなのが楽しいですv
あと、
手下社員の二人の掛け合いが面白くて、おなかを抱えて笑っちゃいました。
ピンチも試練も有って、山あり谷あり。
はらはらする場面も。
最後にはちょっとしんみりしちゃいました。
黒川と藤咲と印刷所のみんなと。
ずっとずっと幸せだといいと思いました。
家族の愛情に恵まれずに育ち、さらわれるようにして囲われた「恋人」のDVにさらされてきた智紘。
初めて優しくしてくれた高藤に恋をして、でもその思いは絶対に知られてはいけないと自分を律して。
幸せに慣れていない彼のぎこちなさが切なく、痛い。
余裕綽々の大人ように見える高藤の、激しく強い思い。
DVの恋人の狂気のような執着。
とてもドラマティックで、でも降る雪に真っ白に埋め尽くされたような、恋のお話。
胸が熱くなりました。
10センチバトンの後で読んだので、とてもタイムリーでした(笑)
大雑把で無口で芸術が爆発している男・伏木野と、几帳面で口うるさいツンデレ青年・雪見。
伏木野の本気に雪見がほだされていく様子が面白かったですv
ドールハウスっていいなー。
そして、伏木野がきれいなお姉さんにモテるのが、なんとなくわかるような気がしました。