いわき市議会2月定例会は本日終了。本日追加提案された人事案件も含め77件の議案すべてが議決され閉会しました。また、市民から提出された請願2件のうち、「重粒子線がん治療専門機関をいわき市へ誘致することを求める請願」及び、議員提出の意見書5件が全会一致で採択されました。「災害公営住宅の市独自の家賃減免制度をさらに充実させることを求める請願書」は、産業建設常任委員会で多数決の結果、継続審議となり、本会議でも共産党市議団といわき市議会創世会が継続審議に反対しましたが、多数で継続審議とされることになりました。
提案された議案のうち、日本共産党市議団は9議案に反対し、討論には私が立ちました。以下が討論全文ですが、今議会、途中でなんか疲れが出てしまって、討論のまとめが遅れた結果、1回目の案文ができたのが今朝9時位。そこから案文の整理を始めて、だいたい整理されたと思ったものの、やっぱりこの程度では文章整理が不十分でした。かつ、委員長報告を聞きながら、漏れた論点を書き加えたりしたものだから、分量的にも多すぎる討論になったようで、最後、ほぼ原稿用紙1枚分程度、討論をカットする結果になりました。
持ち時間は30分です。残り時間2分の表示が出た時、時間終了のブザーに指をかける事務局員の姿が脳裏に浮かび、どこを飛ばすかと焦りながら読み続けました。以下の討論の緑の部分が読み飛ばした原稿です。話はつながったのだろうか・・。
反対討論
10番、日本共産党いわき市議団の伊藤浩之です。
私は、
議案第8号、議案第14号、議案第15号、議案第32号、議案第38号、議案第39号、議案第41号、議案第70号、及び議案第71号、
以上9議案に反対する立場から討論いたします。
■民間も含め生涯賃金の引き下げになりかねない
まず、議案第8号、いわき市職員の退職手当に関する条例等の改正について申し上げます。
本案は、国家公務員退職手当法により、国会公務員の退職手当が引き下げられたことから、本市職員の退職手当について引き下げる内容となっています。
退職手当の引き下げは、2013年・平成25年2月の条例改定に続くもので、前回の退職手当の引き下げでは、3年にわたって段階的に引き下げが実施され、最終的な引き下げ額は約385万円になりました。今回これに加え調整額を100分の87から100分の83.7に引き下げることで、約75万円の引き下げ額となることにより、退職金は5年前に比べ、約460万円もの引き下げがされることになります。連続する退職手当の削減は、職員の生涯にわたる生活に大きな負の影響を及ぼしかねない問題があります。
2つ目に、国家公務員と地方公務員の退職金引き下げが民間労働者の退職金引き下げに連動し、労働者全体の生涯賃金引き下げにつながりかねず、消費者に消費を手控えさせる結果、国の経済にも地域の経済にも否定的な影響を与えかねないものとなりかねないという問題があります。
提案の前提となった国家公務員退職手当法の衆議院内閣委員会の審議では、「国家公務員の退職手当は『後払いの賃金』であり、労働条件の一部ではないか」という質問について、人事院の給与局長は、「退職後の生活設計を支える勤務条件的な性格を有している」と、退職手当の労働条件的な性格を認める答弁をしています。
一方、内閣人事局の人事政策統括官は、退職手当は「労働条件」ではなく、「長期勤続・功労に対する報奨」だとしています。
今回の国家公務員の退職手当は、人事院の勧告にもとづくものではなく、人事院が国の依頼に基づいて実施した調査に基づくもので、労働条件である民間の退職手当と、労働条件ではない単に努力に報いるご褒美にすぎない「功労に対する報奨」を比較して、その官民格差を論じることそのものに問題があります。また、先の統括官は、退職金の官民比較は法律に基づく勧告ではないとして、今回の引き下げの根拠となった官民比較には法的根拠がないことを明らかにしました。
人事院の官民比較調査は、民間にはあり、公務員にはない、雇用保険の有無さえ調査対象にしないなど、限定的で不透明なものとなっています。
官民の均衡の確保といいながら、根拠もあいまい、かつ退職後も守秘義務が課せられ、雇用保険の適用もされない公務員の特殊性を無視した法改定には問題があり、これを前提とした、今回の退職金引き下げには問題があるものと考えます。
■公益性を考えれば火葬場使用料には問題あり
次に、議案第14号いわき市火葬場条例の改正について申し上げます。
本案は、いわき市勿来火葬場が老朽化したことにともない実施された施設の改築に合わせ、名称を変更するとともに、施設利用にかかる使用料の額を定めるために提案されたものです。
その内容は、同火葬場の場合、現行は、本市住民が無料となっている使用料を、改定後は、市民のうち、大人は1体1万円、12歳未満の小人は同じく6,000円、妊娠4月以上の死亡した胎児の場合4,000円とするとなっています。
これはすでに有料化されている「いわき清苑」と同額に、使用料を設定するものですが、このいわき清苑を有料化する提案がなされた際、私は、これに反対する討論に立ちました。
この討論では、有料化の問題点として第1に、いわき清苑の有料化が、第5次いわき市行財政改革の一環として、受益者負担の考え方に導かれながら火葬場を有料化する点にあることをあげました。
火葬場における受益者負担がなぜ問題なのか。その一つには、我が国における火葬の普及が、開国した後に伝染病が流行したことにともない明治政府が推奨したことによるものであることから、伝染病を防ぐ防疫という観点からみると、その利益は埋葬される故人ではなく社会全体にあることをあげました。
また、二つには、施設の改築に伴ってこれまでにないサービスの提供を通じて利益を受けるのは、収骨室や待合室を利用する葬儀出席者であるにも関わらず、使用料設定は、大人、12歳未満、死亡した胎児と、故人の体格に着目していること、すなわち使用料が故人に着目した受益による設定となっており、仮に使用料を是とした場合でも、その料金設定に矛盾があることをあげました。
この時の指摘は、現在でも基本的に変わらないものと思います。
今議会の質疑では、収骨室の整備や待合室の充実が図られるなど、いわき清苑と同様のサービス提供が可能となり、かつ中核市の状況を勘案しながらいわき清苑の使用料と同額としたことが答弁されました。また、県内の火葬場で設置している自治体は広域事務組合を含め22団体あり、使用料を徴収している団体は、本市を含め17団体になっていることが答弁されました。
しかし、他自治体の例に学ぶことも大事ですが、ここは右倣えでなく市の独自性も必要だと思います。この世における故人の最後を飾り、遺族にとっては最後の別れをする時間を、どんな市民も心安らかに過ごすことができるようにするべきです。そのために、市民の火葬については南部火葬場を引き続き無料とし、いわき清苑では市民の料金設定を破棄して無料とすることで市の独自性を発揮するべきと考えます。
また、本会議の質疑では使用料に関して、いわき清苑において実施しているアンケート調査の結果では、市民から使用料に関する意見や不満は聞かれず、一方、施設や職員の対応については概ね好評を得ているため、サービス向上に伴う一定の負担は、市民から一定の理解を得ていると答弁されました。
しかし、仮に使用料がかからないとなったならば、市民はこれをどう受け取るでしょうか。大いに歓迎されることは間違いないところと思います。
以上、本案には問題がありますので、反対とすべきです。
■医療費抑制ねらう国保都道府県化には問題あり
次に、議案第15号、いわき市国民健康保険条例の改正について申し上げます。これには議案第39号、平成30年度いわき市国民健康保険事業特別会計予算について、及び議案第71号、いわき市国民健康保険税条例の改正についても関連しておりますので、一括して討論いたします。
議案第15号は、国の法改定にともない、都道府県が国民健康保険事業の財政運営の責任主体となり、その運営の中心的な役割を担うことにともなう改定であり、
議案第71号は、国民健康保険の財政の責任主体が都道府県になることから、国の法改定を受け、国民健康保険税の課税の根拠に関する規定があらためられることなどから市の課税根拠についてもあらためるものであり、
さらに、議案第39号は、これらの条例改定にともない、本市が福島県に対して行う納付金を、歳出第3款、国民健康保険事業費納付金において予算化するものとなっており、いずれも、国民健康保険制度の都道府県単位化に伴うものとして問題があると考えます。
国の国民健康保険の都道府県単位化は、医療費が国を亡ぼすとした医療費亡国論が唱えられて以降に国がとった医療費抑制路線の荒波をかぶり高騰した国保税をはじめ、社会保障費の抑制という政治路線の下で拡大してきた国民健康保険制度の問題点を、制度の運営を市町村単位から都道府県単位に拡大することによって是正しようとしたものですが、その是正が住民負担の増嵩と給付の抑制につながりかねない問題点を抱えています。
もともと、国保の都道府県単位化は、市町村を通じて医療費の抑制を図ることに狙いがあるとみられます。
実際に、厚労省は新年度には総額1000億円規模で本格実施する保険者努力支援制度の積極的な活用を打ち出しています。
これは、加入者一人当たりの医療費が低かったり、メタボリック症候群の該当者を減らしたりした自治体に、報償としてお金を配ることで医療費の抑制と住民の健康づくりを促すことをねらうとされています。
しかし、危惧されるのは、こうした仕組みが行き過ぎた医療費抑制対策を招き、加入者の受診抑制につながりかねないのではないか、ということです。
同時に、国保の都道府県単位化に伴って、都道府県が市町村に標準徴収率や課税標準額を示す仕組みが作られました。
本市の場合、新年度に県から示された課税標準額は、現行の国保税率より低いものでしたが、この課税標準額は、時々の国保をめぐる環境に左右されて決定されますので、環境によっては今以上に高い国保税に市町村の税額をしばりかねない懸念もあります。
これまでの質問等では、県が示す課税標準額等はあくまで参考にすぎず、市町村が独自に保険税率を決めることになるとしています。しかし、課税標準額とは別の税額を市町村が定めた時に、もし、都道府県の納付額が賄えないといった事態が発生すると、この課税標準額が市町村の税額の決定をしばりかねない懸念があります。
同時に、標準徴収率も同様、徴収目標値として徴収率向上の圧力になりかねないという懸念もあります。
国保の赤字が膨らむ引き鉄(がね)は、国保に対する負担率を国が削減したところでひかれました。であるならば、国保の危機打開は、必要な資金を国がきちんと負担をするというところで図るべきと考えます。
また、議案39号には、加入者の受診抑制につながり、いのちと健康に悪影響となりかねない被保険者資格証発行のための経費が含まれており、この点の是正も必要です。
以上、議案15号、議案第39号、議案第71号には問題があると考えます。
■災害公営住宅の割増賃金前提に問題あり
次に、議案第38号、平成30年度いわき市一般会計予算について申し上げます。
本案の問題点の第1は、歳入13款使用料及び手数料の1項使用料、7目土木使用料、4節住宅使用料のうち公営住宅使用料、
及びこの歳入を前提とした歳出8款土木費、6項住宅費、1目住宅管理費、25節積立金のうち市営住宅管理基金積立金に、
災害公営住宅の家賃にかかわり、家賃軽減の充実を求める被災者の声がある中で、近傍同種家賃に引き上げる激変緩和措置を前提にした予算措置がとられている点です。
本件については、今議会に被災地の区長等から請願が提出されており、その請願では、本市独自の減免制度の終了にともない、収入が入居基準を超過する世帯については、近傍同種家賃と呼ばれる割増家賃が適用され、居住の継続が困難であるという訴えとともに、この負担が、経済的にも、心理的にも、負担になること、またこれらの世帯が地域に定着できないことによるコミュニティの活力低下などが懸念され、かつ、他の被災自治体で高い家賃への長期間にわたる対応策を打ち出していることをあげ、本市でも被災者に対する市独自の家賃減免制度を、被災者の生活の再生と安定、自立に寄与できるよう抜本的に拡充することや収入超過世帯の家賃を近傍同種家賃にしないことを求めています。
これに対し、本市は、段階的に家賃を引き上げながら、収入区分で収入が最も多い8階層で3年目、7階層では4年目に、近傍同種家賃にする激変緩和措置をとることにしました。
しかし、こうした本市の措置が被災した住民の願いから離れていることは、請願の願意からも明らかです。
来年度の予算案のうち歳入の公営住宅使用料には、災害公営住宅の管理開始から5年間にわたり実施する、市独自の家賃減免制度の期限が到来することにともなう、収入超過者に対する激変緩和措置を前提とする収入が見込まれ、また歳出の市営住宅管理基金積立金には、この収入分を見込んだ予算額が計上されました。
確かに、激変緩和措置によって、負担の仕方が従前より緩やかになるという点はありますが、そもそも近傍同種家賃とされる家賃額に、大いに問題があると考えます。
近傍同種家賃は、災害公営住宅と同規模、同程度の構造物を立てた場合の家賃を想定した額で、近傍の民間の貸し物件の家賃を反映したものとはなっていません。
委員会の質疑では、災害公営住宅近在の家賃を調べた経過があるのかという質問に対して、正式な調査はしていないものの、目に入った範囲では建築後の経過年数の違いという条件の違いはあるものの、沼ノ内で6万円から7万円程度という物件があるという説明がありました。
こうした実態から考えた時に、災害公営住宅である
久之浜東団地戸建で17万7,400円、
内郷砂子田団地で8万3,600円、
豊間団地で11万6,600円、
四沢団地で15万7,400円
などとなる近傍同種家賃は、現実からかけ離れた高い家賃と言わざるを得ないと思います。
今回、激変緩和措置をとることによって、本来、近傍同種家賃となる世帯の家賃が、来年度は圧縮されることになる部分については、一定評価できます。しかし、それが、2年ないし3年の間に、あまりにも高額な近傍同種家賃となることは、被災者の生活再建、また被災地のコミュニティの復活・維持という観点から考えた時に、とても認めることはできない内容です。
また、今回、市がとることにしている激変緩和措置は、一般財源に対する影響はないものとなっています。
執行部は、今回の措置の影響額が3,300万円余になり、基金の積立金にはこの部分を含んで予算化しているとしています。
そして、この3,300万円については、震災復興特別交付税の申請をすることにしているものの、これが認められるどうかは不透明だとしており、仮に、認められない場合であっても、この3,300万円を別財源で補てんすることはなく、災害公営住宅関連の収入から必要な支出を除いた部分について基金に積み立てることを明らかにしています。
つまり、今回の市の軽減策によって、他の財源に影響を与えることはなく、影響があるとすれば、積み立てる基金の額が減額するという部分だということになります。
基金は将来の改修等に備えるものですが、積立金の減額が、その備えに大きな影響を与えるとは考えにくい内容です。
他の被災自治体の例を見ると、岩手県では近傍同種家賃を安い金額に抑えるための措置をとり、相馬市では長期間、近傍同種家賃としない措置をとることにしています。
被災地復興区画整理事業による宅地の引き渡しは進みますが、現実にここに住宅を建てるためには、その費用負担も含めて被災者の準備が十分に整っている状況とはいいがたいと思います。その中で、被災地におけるコミュニティ維持のためにも、本市の激変緩和措置を見直し、被災者の被災地での暮らしの復興に結び付ける制度に改善をしていくことが求められています。
従って、市が新たに決めた激変緩和措置を前提とした、予算措置には問題があるものと考えます。
■個人情報漏洩の危険あり。個人番号制度
問題点の第2は、歳出の2款、総務費、1項、総務管理費、7目、企画費に個人番号に係わる情報セキュリテイのための負担金が含まれ、同じく3項、戸籍住民基本台帳費、1目、戸籍住民基本台帳費に個人番号カード交付や同カードによるコンビニでの証明書交付事業費など、個人番号制度、いわゆるマイナンバー制度にかかわる予算が含まれている点です。
これには議案第32号、いわき市介護保険特別会計補正予算・第3号で、マイナンバー制度にかかわって読み込める項目を増やすシステム改修が含まれ、かかわっていますので、一括して討論いたします。
マイナンバー制度については、これまでもたびたび討論してまいりましたが、個人情報の流出のほか、番号流出や個人番号カードの不正使用による犯罪の被害者を生み出しかねないなどの問題があることを指摘してきました。
昨年2月に、静岡県湖西市で、前年にふるさと納税をした1992人について、別人のマイナンバーを記載して、寄付者が住む自治体に控除の通知していたことが明らかになっています。マイナンバー法で定められた「重大な事態」にあたると考えられています。
意図的ではないにしろ、こうしたヒューマンエラーの危険性は、今後も発生することが想定されるほか、マイナンバーや同カード等を使った民間サービスの提供の検討が続いている現実から見れば、この制度の問題点はいっそう拡大する方向にあると言わざるを得ません。
こうしたマイナンバー制度は廃止にすることこそ求められ、本市は制度の活用の中止を決断すべきと考えます。
■安保法制のもとでの入隊激励に疑問あり
問題点の第3は、2款、総務費、1項、総務管理費、14目諸費に含まれる自衛官募集事務費で、海外での武力行使を前提とするよう作り替えられた自衛隊に入隊する新自衛隊員の激励会を開催するための費用が含まれている点です。
この問題については、昨年12月定例会の討論でものべていますが、安全保障関連法、いわゆる戦争法によって、自衛隊の性格がゆがめられ、憲法違反と多くの専門家からも指摘を受ける海外での武力行使の任務を負った自衛隊への入隊を激励することには問題があります。
自衛隊は、戦後、日本の統治にあたっていた米軍が朝鮮戦争に動員される中で、米軍の要請で、1950年、昭和25年に警察予備隊令によって日本の治安を守る組織の警察予備隊として発足し、2年後に保安庁法により保安隊に改編され、さらにその2年後の54年、昭和29年に自衛隊法により自衛隊に再改編されたという歴史を持っています。
この歴史の中で、歴代内閣がとってきた姿勢は、現憲法の下では個別的自衛権は認められているが、集団的自衛権は認められないというものでした。
ところが、安倍政権のもとで、一内閣の見解として、現憲法の下で集団的自衛権が認められると、それまで一貫していた憲法解釈を変更してしまいました。
そして安保法制のもと、2016年、平成28年12月から翌17年5月まで、武力行使を前提とした駆け付け警護の任務などを付与した部隊を南スーダンのPKO活動に派遣しました。幸い戦闘に直接巻き込まれることなく帰還することができましたが、隊員たちにどれだけの心労となったかははかり知ることができません。
実際、駆け付け警護等が付与される前の2016年5月から12月に派遣されていた部隊では、隊員の6人に1人が精神的不安に襲われ、宿営地の医務室で受診していました。当時は国連が「ジュバ・クライシス」すなわち「首都の危機」とよぶほどの激しい戦闘状況で、自衛隊の宿営地に複数の砲弾が落下するなど、危機的な状況でした。
同部隊が現地に着任した5月22日から7月9日まで、医務室を訪れた35人に、「精神・行動障害」の症状はゼロだったものが、戦闘が激化した「7月10日から16日」の週から受診者が57人に増加し、いずれも「精神・行動障害」の症状で、多くは「不眠」を訴えたといいます。
派遣隊員の一人は帰国後、関係者に「自分たちもいつ殺し、殺されることになってもおかしくないと実感した」と極度の緊張と不安に襲われていたことを伝えていた、と報道されています。
こうしたことを考えた時に、海外の戦争に武器を持ってはせ参じる安保法制をそのままにしておくことが、本当に妥当なのかどうか。良く検討されなければならないと思います。
しかし、事態は逆の方向に進んでいます。自衛隊の装備品に、海外で作戦を展開できるものを加える動きが進んでいます。
最近、報道されただけでも、射程5,000Km(誤りでした。実際は900㎞。訂正します。北朝鮮のミサイルと記憶が混同してしまったようです)の巡航ミサイルの導入や、艦首から艦尾まで平らな全通甲板を持つ護衛艦「いずも」を、空母に改修する検討まですすんでいます。
そして「いずも」は2000年代後半の基本設計の段階から空母への転換が想定されていたと、当時の海上自衛隊の幹部が証言しています。中国の海洋進出が進む南西諸島周辺の防衛が念頭にあったといいますが、海は世界につながるわけで、出撃範囲が南西諸島にとどまる保証はどこにもありません。
いずもに搭載するために垂直に離着陸できる能力を備えた戦闘機F35Bの導入も検討されるほか、中期防衛力整備計画にはオスプレイの配備や水陸両用車など、上陸作戦や敵地深くで作戦を展開できるようにするための兵器まで導入する計画となっているのです。
私は今議会の代表質問で、次のようなことをのべました。
あの東日本大震災で、救援、復旧の活動に携わった自衛隊を見るなどして醸成された信頼をことごとく壊してきたのは、世界のどこでも米軍と自衛隊が軍事行動をとれるように、これまでの憲法解釈を次々と破壊してきた安倍政権ではないでしょうか。ある意味、自衛隊をかわいそうな立場に追い込んできたのは、安倍政権だといわざるを得ないのです。
実際、この間の政府の動きは、自衛隊の必要性を認めてきた人たちまで含めて、自衛隊の違憲性を言わざるをえない状況に作ってきたと言えます。
自衛隊を職業として選択することは当然ありえます。しかし、その職業としての意味を変質させ、自衛隊をかわいそうな立場に追い込んできた安倍政権こそ、職業選択の自由を狭めてきたのです。
自衛隊を少なくとも安保法制以前にもどすことは、現憲法が求めることです。安保法制のもとでの激励会は、自衛隊入隊者を海外の戦場での武力行使に送り出すことも含んでいるということになりかねず、また、恒久平和を願う本市の非核平和都市宣言の精神からも問題があるものと思います。
■フッ化物応用の強制にならないか
問題点の4つ目は、10款、教育費、1項、教育総務費、2目小学校費に含まれるフッ化物洗口事業費についてです。
一昨年の「いわき市歯と口腔の健康づくり推進条例の制定について」の議案について、私は、市の基本的施策として子どもに対するフッ化物の応用が明記され、条例第3条に位置づけられた市の責務という観点でこの施策を進めることになれば、結果的にフッ化物の応用を市民に押し付ける結果になりかねない懸念を指摘してきました。
今回の提案でフッ化物の応用は、幼稚園、保育所では拡大する一方、小学校では昨年に続きモデル校1校で実施する計画になっています。
ここには、少なくとも小学校の段階ではフッ化物の応用に理解が広がっていない実態をみることができます。結果として、条例でのフッ化物の応用及び市の責務という規定が、モデル事業を続ける原動力となり、理解が広がらない学校現場に2年連続で同様の事業を持ち込む動機になっているものと推察されます。
そして、フッ化物による洗口事業を学校等で行うことには、教師の多忙化の問題の解決に向けた取り組みがこれから本格的に始めるという時期にもかかわらず、モデル事業で負担感がないとされるとはいえ多忙化の問題の解決が図られないままに洗口という業務を増やすという点でも問題があると考えます。
新年度予算では、フッ化物洗口のモデル事業の実施ではなく、学校の多忙化の改善にこそ、まず力を注ぐべきと考えます。
■介護保険料値上げは市民生活に影響大きい
次に、第41号、平成30年度いわき市介護保険特別会計予算について申し上げます。これには議案第70号、いわき市介護保険条例の改正についてもかかわりますので、一括して討論いたします。
議案第70号は、市高齢者保健福祉計画を見直すこと等にともない、介護保険の65歳以上の加入者である1号被保険者の介護保険料を基準となる第5段階で3,300円引き上げるもので、
議案第41号は、この引き上げを前提として歳入で第1号被保険者保険料が増額することなどを内容としています。
介護保険は介護の社会化や家族介護の負担軽減をうたいながら2000年4月から実施されてきました。
しかし、全国的には老々介護などの果てに介護を理由とした不幸な事件が発生するなど、当初の目的が達成したと言える状況はほとんどないと言える一方、介護サービスでは、特別養護老人ホームの入所者は原則として要介護度3以上に限定されたり、施設に入所している低所得者への補助であった補足給付の対象が縮小されたりしました。また、要支援1と2の介護サービスは保険給付から外されて市の総合事業へ移行されています。
一定の所得がある利用者の利用料は、1割負担から2割負担に増額されました。
こうした見直しは、高齢者の尊厳を守り、その人らしい生活を大切にする介護保険制度にするという点から疑問を感じざるを得ません。
こうした中で、3年に1度行われ、これまで6回実施された高齢者保健福祉計画の見直しでは5回にわたる介護保険料の引き上げが行われ、第1期に年額で3万200円だった保険料は、第7期で7万2,800円と実に2.4倍もの引き上げになっています。
介護保険料について執行部は、前回、第6期介護保険料の見直しの際、一般質問で、介護保険料は「制度施行当初より上昇を続けている」との現状認識を示し、市民福祉常任委員会の質疑では、介護保険料の負担が厳しいということを自覚し、市長会等を通じて国庫負担を拡大することなどを要望しており、今後も強く要望していくとの発言がされておりました。
今議会では、今回の引き上げが、市民生活に与える影響について、「所得や物価、経済の状況にも左右されることから、一概にお答えすることは困難」としました。貧困化が進んでいると言われる中で、こうした認識でいていいのかが問われていると思います。
この制度の持続可能性のために引き上げはやむを得ないとして、これを認めた結果、加入者の生活の持続可能性が低まることになれば、本末転倒と言わざるを得ないのです。
市は一方で、全国市長会等を通して、全ての国民が安心して介護が受けられるよう、必要な財源を確保した上で、将来にわたって国民が安心して享受できる持続可能な介護保険制度とするため、公費の負担割合の見直し等で、保険料の上昇を抑える対策を講じるなどの制度の見直しを提言していると、答弁しました。
ここには、今の介護の仕組みでは、全ての市民が安心して介護を受けられないという市の危機意識があると考えられます。それはとりも直さず介護における市民生活の危機を反映しているものととらえざるを得ません。
こうした中で提案された今回の介護保険料の引き上げは、到底承服できるものではありません。従って本提案に反対し、見直しを求めるべきと考えます。
以上、議案第8号、議案第14号、議案第15号、議案第32号、議案第38号、議案第39号、議案第41号、議案第70号、及び議案第71号、以上9議案に反対する立場から討論してまいりましたが、満場のみな様のご賛同を心からお願いして、討論を終わります。
提案された議案のうち、日本共産党市議団は9議案に反対し、討論には私が立ちました。以下が討論全文ですが、今議会、途中でなんか疲れが出てしまって、討論のまとめが遅れた結果、1回目の案文ができたのが今朝9時位。そこから案文の整理を始めて、だいたい整理されたと思ったものの、やっぱりこの程度では文章整理が不十分でした。かつ、委員長報告を聞きながら、漏れた論点を書き加えたりしたものだから、分量的にも多すぎる討論になったようで、最後、ほぼ原稿用紙1枚分程度、討論をカットする結果になりました。
持ち時間は30分です。残り時間2分の表示が出た時、時間終了のブザーに指をかける事務局員の姿が脳裏に浮かび、どこを飛ばすかと焦りながら読み続けました。以下の討論の緑の部分が読み飛ばした原稿です。話はつながったのだろうか・・。
反対討論
10番、日本共産党いわき市議団の伊藤浩之です。
私は、
議案第8号、議案第14号、議案第15号、議案第32号、議案第38号、議案第39号、議案第41号、議案第70号、及び議案第71号、
以上9議案に反対する立場から討論いたします。
■民間も含め生涯賃金の引き下げになりかねない
まず、議案第8号、いわき市職員の退職手当に関する条例等の改正について申し上げます。
本案は、国家公務員退職手当法により、国会公務員の退職手当が引き下げられたことから、本市職員の退職手当について引き下げる内容となっています。
退職手当の引き下げは、2013年・平成25年2月の条例改定に続くもので、前回の退職手当の引き下げでは、3年にわたって段階的に引き下げが実施され、最終的な引き下げ額は約385万円になりました。今回これに加え調整額を100分の87から100分の83.7に引き下げることで、約75万円の引き下げ額となることにより、退職金は5年前に比べ、約460万円もの引き下げがされることになります。連続する退職手当の削減は、職員の生涯にわたる生活に大きな負の影響を及ぼしかねない問題があります。
2つ目に、国家公務員と地方公務員の退職金引き下げが民間労働者の退職金引き下げに連動し、労働者全体の生涯賃金引き下げにつながりかねず、消費者に消費を手控えさせる結果、国の経済にも地域の経済にも否定的な影響を与えかねないものとなりかねないという問題があります。
提案の前提となった国家公務員退職手当法の衆議院内閣委員会の審議では、「国家公務員の退職手当は『後払いの賃金』であり、労働条件の一部ではないか」という質問について、人事院の給与局長は、「退職後の生活設計を支える勤務条件的な性格を有している」と、退職手当の労働条件的な性格を認める答弁をしています。
一方、内閣人事局の人事政策統括官は、退職手当は「労働条件」ではなく、「長期勤続・功労に対する報奨」だとしています。
今回の国家公務員の退職手当は、人事院の勧告にもとづくものではなく、人事院が国の依頼に基づいて実施した調査に基づくもので、労働条件である民間の退職手当と、労働条件ではない単に努力に報いるご褒美にすぎない「功労に対する報奨」を比較して、その官民格差を論じることそのものに問題があります。また、先の統括官は、退職金の官民比較は法律に基づく勧告ではないとして、今回の引き下げの根拠となった官民比較には法的根拠がないことを明らかにしました。
人事院の官民比較調査は、民間にはあり、公務員にはない、雇用保険の有無さえ調査対象にしないなど、限定的で不透明なものとなっています。
官民の均衡の確保といいながら、根拠もあいまい、かつ退職後も守秘義務が課せられ、雇用保険の適用もされない公務員の特殊性を無視した法改定には問題があり、これを前提とした、今回の退職金引き下げには問題があるものと考えます。
■公益性を考えれば火葬場使用料には問題あり
次に、議案第14号いわき市火葬場条例の改正について申し上げます。
本案は、いわき市勿来火葬場が老朽化したことにともない実施された施設の改築に合わせ、名称を変更するとともに、施設利用にかかる使用料の額を定めるために提案されたものです。
その内容は、同火葬場の場合、現行は、本市住民が無料となっている使用料を、改定後は、市民のうち、大人は1体1万円、12歳未満の小人は同じく6,000円、妊娠4月以上の死亡した胎児の場合4,000円とするとなっています。
これはすでに有料化されている「いわき清苑」と同額に、使用料を設定するものですが、このいわき清苑を有料化する提案がなされた際、私は、これに反対する討論に立ちました。
この討論では、有料化の問題点として第1に、いわき清苑の有料化が、第5次いわき市行財政改革の一環として、受益者負担の考え方に導かれながら火葬場を有料化する点にあることをあげました。
火葬場における受益者負担がなぜ問題なのか。その一つには、我が国における火葬の普及が、開国した後に伝染病が流行したことにともない明治政府が推奨したことによるものであることから、伝染病を防ぐ防疫という観点からみると、その利益は埋葬される故人ではなく社会全体にあることをあげました。
また、二つには、施設の改築に伴ってこれまでにないサービスの提供を通じて利益を受けるのは、収骨室や待合室を利用する葬儀出席者であるにも関わらず、使用料設定は、大人、12歳未満、死亡した胎児と、故人の体格に着目していること、すなわち使用料が故人に着目した受益による設定となっており、仮に使用料を是とした場合でも、その料金設定に矛盾があることをあげました。
この時の指摘は、現在でも基本的に変わらないものと思います。
今議会の質疑では、収骨室の整備や待合室の充実が図られるなど、いわき清苑と同様のサービス提供が可能となり、かつ中核市の状況を勘案しながらいわき清苑の使用料と同額としたことが答弁されました。また、県内の火葬場で設置している自治体は広域事務組合を含め22団体あり、使用料を徴収している団体は、本市を含め17団体になっていることが答弁されました。
しかし、他自治体の例に学ぶことも大事ですが、ここは右倣えでなく市の独自性も必要だと思います。この世における故人の最後を飾り、遺族にとっては最後の別れをする時間を、どんな市民も心安らかに過ごすことができるようにするべきです。そのために、市民の火葬については南部火葬場を引き続き無料とし、いわき清苑では市民の料金設定を破棄して無料とすることで市の独自性を発揮するべきと考えます。
また、本会議の質疑では使用料に関して、いわき清苑において実施しているアンケート調査の結果では、市民から使用料に関する意見や不満は聞かれず、一方、施設や職員の対応については概ね好評を得ているため、サービス向上に伴う一定の負担は、市民から一定の理解を得ていると答弁されました。
しかし、仮に使用料がかからないとなったならば、市民はこれをどう受け取るでしょうか。大いに歓迎されることは間違いないところと思います。
以上、本案には問題がありますので、反対とすべきです。
■医療費抑制ねらう国保都道府県化には問題あり
次に、議案第15号、いわき市国民健康保険条例の改正について申し上げます。これには議案第39号、平成30年度いわき市国民健康保険事業特別会計予算について、及び議案第71号、いわき市国民健康保険税条例の改正についても関連しておりますので、一括して討論いたします。
議案第15号は、国の法改定にともない、都道府県が国民健康保険事業の財政運営の責任主体となり、その運営の中心的な役割を担うことにともなう改定であり、
議案第71号は、国民健康保険の財政の責任主体が都道府県になることから、国の法改定を受け、国民健康保険税の課税の根拠に関する規定があらためられることなどから市の課税根拠についてもあらためるものであり、
さらに、議案第39号は、これらの条例改定にともない、本市が福島県に対して行う納付金を、歳出第3款、国民健康保険事業費納付金において予算化するものとなっており、いずれも、国民健康保険制度の都道府県単位化に伴うものとして問題があると考えます。
国の国民健康保険の都道府県単位化は、医療費が国を亡ぼすとした医療費亡国論が唱えられて以降に国がとった医療費抑制路線の荒波をかぶり高騰した国保税をはじめ、社会保障費の抑制という政治路線の下で拡大してきた国民健康保険制度の問題点を、制度の運営を市町村単位から都道府県単位に拡大することによって是正しようとしたものですが、その是正が住民負担の増嵩と給付の抑制につながりかねない問題点を抱えています。
もともと、国保の都道府県単位化は、市町村を通じて医療費の抑制を図ることに狙いがあるとみられます。
実際に、厚労省は新年度には総額1000億円規模で本格実施する保険者努力支援制度の積極的な活用を打ち出しています。
これは、加入者一人当たりの医療費が低かったり、メタボリック症候群の該当者を減らしたりした自治体に、報償としてお金を配ることで医療費の抑制と住民の健康づくりを促すことをねらうとされています。
しかし、危惧されるのは、こうした仕組みが行き過ぎた医療費抑制対策を招き、加入者の受診抑制につながりかねないのではないか、ということです。
同時に、国保の都道府県単位化に伴って、都道府県が市町村に標準徴収率や課税標準額を示す仕組みが作られました。
本市の場合、新年度に県から示された課税標準額は、現行の国保税率より低いものでしたが、この課税標準額は、時々の国保をめぐる環境に左右されて決定されますので、環境によっては今以上に高い国保税に市町村の税額をしばりかねない懸念もあります。
これまでの質問等では、県が示す課税標準額等はあくまで参考にすぎず、市町村が独自に保険税率を決めることになるとしています。しかし、課税標準額とは別の税額を市町村が定めた時に、もし、都道府県の納付額が賄えないといった事態が発生すると、この課税標準額が市町村の税額の決定をしばりかねない懸念があります。
同時に、標準徴収率も同様、徴収目標値として徴収率向上の圧力になりかねないという懸念もあります。
国保の赤字が膨らむ引き鉄(がね)は、国保に対する負担率を国が削減したところでひかれました。であるならば、国保の危機打開は、必要な資金を国がきちんと負担をするというところで図るべきと考えます。
また、議案39号には、加入者の受診抑制につながり、いのちと健康に悪影響となりかねない被保険者資格証発行のための経費が含まれており、この点の是正も必要です。
以上、議案15号、議案第39号、議案第71号には問題があると考えます。
■災害公営住宅の割増賃金前提に問題あり
次に、議案第38号、平成30年度いわき市一般会計予算について申し上げます。
本案の問題点の第1は、歳入13款使用料及び手数料の1項使用料、7目土木使用料、4節住宅使用料のうち公営住宅使用料、
及びこの歳入を前提とした歳出8款土木費、6項住宅費、1目住宅管理費、25節積立金のうち市営住宅管理基金積立金に、
災害公営住宅の家賃にかかわり、家賃軽減の充実を求める被災者の声がある中で、近傍同種家賃に引き上げる激変緩和措置を前提にした予算措置がとられている点です。
本件については、今議会に被災地の区長等から請願が提出されており、その請願では、本市独自の減免制度の終了にともない、収入が入居基準を超過する世帯については、近傍同種家賃と呼ばれる割増家賃が適用され、居住の継続が困難であるという訴えとともに、この負担が、経済的にも、心理的にも、負担になること、またこれらの世帯が地域に定着できないことによるコミュニティの活力低下などが懸念され、かつ、他の被災自治体で高い家賃への長期間にわたる対応策を打ち出していることをあげ、本市でも被災者に対する市独自の家賃減免制度を、被災者の生活の再生と安定、自立に寄与できるよう抜本的に拡充することや収入超過世帯の家賃を近傍同種家賃にしないことを求めています。
これに対し、本市は、段階的に家賃を引き上げながら、収入区分で収入が最も多い8階層で3年目、7階層では4年目に、近傍同種家賃にする激変緩和措置をとることにしました。
しかし、こうした本市の措置が被災した住民の願いから離れていることは、請願の願意からも明らかです。
来年度の予算案のうち歳入の公営住宅使用料には、災害公営住宅の管理開始から5年間にわたり実施する、市独自の家賃減免制度の期限が到来することにともなう、収入超過者に対する激変緩和措置を前提とする収入が見込まれ、また歳出の市営住宅管理基金積立金には、この収入分を見込んだ予算額が計上されました。
確かに、激変緩和措置によって、負担の仕方が従前より緩やかになるという点はありますが、そもそも近傍同種家賃とされる家賃額に、大いに問題があると考えます。
近傍同種家賃は、災害公営住宅と同規模、同程度の構造物を立てた場合の家賃を想定した額で、近傍の民間の貸し物件の家賃を反映したものとはなっていません。
委員会の質疑では、災害公営住宅近在の家賃を調べた経過があるのかという質問に対して、正式な調査はしていないものの、目に入った範囲では建築後の経過年数の違いという条件の違いはあるものの、沼ノ内で6万円から7万円程度という物件があるという説明がありました。
こうした実態から考えた時に、災害公営住宅である
久之浜東団地戸建で17万7,400円、
内郷砂子田団地で8万3,600円、
豊間団地で11万6,600円、
四沢団地で15万7,400円
などとなる近傍同種家賃は、現実からかけ離れた高い家賃と言わざるを得ないと思います。
今回、激変緩和措置をとることによって、本来、近傍同種家賃となる世帯の家賃が、来年度は圧縮されることになる部分については、一定評価できます。しかし、それが、2年ないし3年の間に、あまりにも高額な近傍同種家賃となることは、被災者の生活再建、また被災地のコミュニティの復活・維持という観点から考えた時に、とても認めることはできない内容です。
また、今回、市がとることにしている激変緩和措置は、一般財源に対する影響はないものとなっています。
執行部は、今回の措置の影響額が3,300万円余になり、基金の積立金にはこの部分を含んで予算化しているとしています。
そして、この3,300万円については、震災復興特別交付税の申請をすることにしているものの、これが認められるどうかは不透明だとしており、仮に、認められない場合であっても、この3,300万円を別財源で補てんすることはなく、災害公営住宅関連の収入から必要な支出を除いた部分について基金に積み立てることを明らかにしています。
つまり、今回の市の軽減策によって、他の財源に影響を与えることはなく、影響があるとすれば、積み立てる基金の額が減額するという部分だということになります。
基金は将来の改修等に備えるものですが、積立金の減額が、その備えに大きな影響を与えるとは考えにくい内容です。
他の被災自治体の例を見ると、岩手県では近傍同種家賃を安い金額に抑えるための措置をとり、相馬市では長期間、近傍同種家賃としない措置をとることにしています。
被災地復興区画整理事業による宅地の引き渡しは進みますが、現実にここに住宅を建てるためには、その費用負担も含めて被災者の準備が十分に整っている状況とはいいがたいと思います。その中で、被災地におけるコミュニティ維持のためにも、本市の激変緩和措置を見直し、被災者の被災地での暮らしの復興に結び付ける制度に改善をしていくことが求められています。
従って、市が新たに決めた激変緩和措置を前提とした、予算措置には問題があるものと考えます。
■個人情報漏洩の危険あり。個人番号制度
問題点の第2は、歳出の2款、総務費、1項、総務管理費、7目、企画費に個人番号に係わる情報セキュリテイのための負担金が含まれ、同じく3項、戸籍住民基本台帳費、1目、戸籍住民基本台帳費に個人番号カード交付や同カードによるコンビニでの証明書交付事業費など、個人番号制度、いわゆるマイナンバー制度にかかわる予算が含まれている点です。
これには議案第32号、いわき市介護保険特別会計補正予算・第3号で、マイナンバー制度にかかわって読み込める項目を増やすシステム改修が含まれ、かかわっていますので、一括して討論いたします。
マイナンバー制度については、これまでもたびたび討論してまいりましたが、個人情報の流出のほか、番号流出や個人番号カードの不正使用による犯罪の被害者を生み出しかねないなどの問題があることを指摘してきました。
昨年2月に、静岡県湖西市で、前年にふるさと納税をした1992人について、別人のマイナンバーを記載して、寄付者が住む自治体に控除の通知していたことが明らかになっています。マイナンバー法で定められた「重大な事態」にあたると考えられています。
意図的ではないにしろ、こうしたヒューマンエラーの危険性は、今後も発生することが想定されるほか、マイナンバーや同カード等を使った民間サービスの提供の検討が続いている現実から見れば、この制度の問題点はいっそう拡大する方向にあると言わざるを得ません。
こうしたマイナンバー制度は廃止にすることこそ求められ、本市は制度の活用の中止を決断すべきと考えます。
■安保法制のもとでの入隊激励に疑問あり
問題点の第3は、2款、総務費、1項、総務管理費、14目諸費に含まれる自衛官募集事務費で、海外での武力行使を前提とするよう作り替えられた自衛隊に入隊する新自衛隊員の激励会を開催するための費用が含まれている点です。
この問題については、昨年12月定例会の討論でものべていますが、安全保障関連法、いわゆる戦争法によって、自衛隊の性格がゆがめられ、憲法違反と多くの専門家からも指摘を受ける海外での武力行使の任務を負った自衛隊への入隊を激励することには問題があります。
自衛隊は、戦後、日本の統治にあたっていた米軍が朝鮮戦争に動員される中で、米軍の要請で、1950年、昭和25年に警察予備隊令によって日本の治安を守る組織の警察予備隊として発足し、2年後に保安庁法により保安隊に改編され、さらにその2年後の54年、昭和29年に自衛隊法により自衛隊に再改編されたという歴史を持っています。
この歴史の中で、歴代内閣がとってきた姿勢は、現憲法の下では個別的自衛権は認められているが、集団的自衛権は認められないというものでした。
ところが、安倍政権のもとで、一内閣の見解として、現憲法の下で集団的自衛権が認められると、それまで一貫していた憲法解釈を変更してしまいました。
そして安保法制のもと、2016年、平成28年12月から翌17年5月まで、武力行使を前提とした駆け付け警護の任務などを付与した部隊を南スーダンのPKO活動に派遣しました。幸い戦闘に直接巻き込まれることなく帰還することができましたが、隊員たちにどれだけの心労となったかははかり知ることができません。
実際、駆け付け警護等が付与される前の2016年5月から12月に派遣されていた部隊では、隊員の6人に1人が精神的不安に襲われ、宿営地の医務室で受診していました。当時は国連が「ジュバ・クライシス」すなわち「首都の危機」とよぶほどの激しい戦闘状況で、自衛隊の宿営地に複数の砲弾が落下するなど、危機的な状況でした。
同部隊が現地に着任した5月22日から7月9日まで、医務室を訪れた35人に、「精神・行動障害」の症状はゼロだったものが、戦闘が激化した「7月10日から16日」の週から受診者が57人に増加し、いずれも「精神・行動障害」の症状で、多くは「不眠」を訴えたといいます。
派遣隊員の一人は帰国後、関係者に「自分たちもいつ殺し、殺されることになってもおかしくないと実感した」と極度の緊張と不安に襲われていたことを伝えていた、と報道されています。
こうしたことを考えた時に、海外の戦争に武器を持ってはせ参じる安保法制をそのままにしておくことが、本当に妥当なのかどうか。良く検討されなければならないと思います。
しかし、事態は逆の方向に進んでいます。自衛隊の装備品に、海外で作戦を展開できるものを加える動きが進んでいます。
最近、報道されただけでも、射程5,000Km(誤りでした。実際は900㎞。訂正します。北朝鮮のミサイルと記憶が混同してしまったようです)の巡航ミサイルの導入や、艦首から艦尾まで平らな全通甲板を持つ護衛艦「いずも」を、空母に改修する検討まですすんでいます。
そして「いずも」は2000年代後半の基本設計の段階から空母への転換が想定されていたと、当時の海上自衛隊の幹部が証言しています。中国の海洋進出が進む南西諸島周辺の防衛が念頭にあったといいますが、海は世界につながるわけで、出撃範囲が南西諸島にとどまる保証はどこにもありません。
いずもに搭載するために垂直に離着陸できる能力を備えた戦闘機F35Bの導入も検討されるほか、中期防衛力整備計画にはオスプレイの配備や水陸両用車など、上陸作戦や敵地深くで作戦を展開できるようにするための兵器まで導入する計画となっているのです。
私は今議会の代表質問で、次のようなことをのべました。
あの東日本大震災で、救援、復旧の活動に携わった自衛隊を見るなどして醸成された信頼をことごとく壊してきたのは、世界のどこでも米軍と自衛隊が軍事行動をとれるように、これまでの憲法解釈を次々と破壊してきた安倍政権ではないでしょうか。ある意味、自衛隊をかわいそうな立場に追い込んできたのは、安倍政権だといわざるを得ないのです。
実際、この間の政府の動きは、自衛隊の必要性を認めてきた人たちまで含めて、自衛隊の違憲性を言わざるをえない状況に作ってきたと言えます。
自衛隊を職業として選択することは当然ありえます。しかし、その職業としての意味を変質させ、自衛隊をかわいそうな立場に追い込んできた安倍政権こそ、職業選択の自由を狭めてきたのです。
自衛隊を少なくとも安保法制以前にもどすことは、現憲法が求めることです。安保法制のもとでの激励会は、自衛隊入隊者を海外の戦場での武力行使に送り出すことも含んでいるということになりかねず、また、恒久平和を願う本市の非核平和都市宣言の精神からも問題があるものと思います。
■フッ化物応用の強制にならないか
問題点の4つ目は、10款、教育費、1項、教育総務費、2目小学校費に含まれるフッ化物洗口事業費についてです。
一昨年の「いわき市歯と口腔の健康づくり推進条例の制定について」の議案について、私は、市の基本的施策として子どもに対するフッ化物の応用が明記され、条例第3条に位置づけられた市の責務という観点でこの施策を進めることになれば、結果的にフッ化物の応用を市民に押し付ける結果になりかねない懸念を指摘してきました。
今回の提案でフッ化物の応用は、幼稚園、保育所では拡大する一方、小学校では昨年に続きモデル校1校で実施する計画になっています。
ここには、少なくとも小学校の段階ではフッ化物の応用に理解が広がっていない実態をみることができます。結果として、条例でのフッ化物の応用及び市の責務という規定が、モデル事業を続ける原動力となり、理解が広がらない学校現場に2年連続で同様の事業を持ち込む動機になっているものと推察されます。
そして、フッ化物による洗口事業を学校等で行うことには、教師の多忙化の問題の解決に向けた取り組みがこれから本格的に始めるという時期にもかかわらず、モデル事業で負担感がないとされるとはいえ多忙化の問題の解決が図られないままに洗口という業務を増やすという点でも問題があると考えます。
新年度予算では、フッ化物洗口のモデル事業の実施ではなく、学校の多忙化の改善にこそ、まず力を注ぐべきと考えます。
■介護保険料値上げは市民生活に影響大きい
次に、第41号、平成30年度いわき市介護保険特別会計予算について申し上げます。これには議案第70号、いわき市介護保険条例の改正についてもかかわりますので、一括して討論いたします。
議案第70号は、市高齢者保健福祉計画を見直すこと等にともない、介護保険の65歳以上の加入者である1号被保険者の介護保険料を基準となる第5段階で3,300円引き上げるもので、
議案第41号は、この引き上げを前提として歳入で第1号被保険者保険料が増額することなどを内容としています。
介護保険は介護の社会化や家族介護の負担軽減をうたいながら2000年4月から実施されてきました。
しかし、全国的には老々介護などの果てに介護を理由とした不幸な事件が発生するなど、当初の目的が達成したと言える状況はほとんどないと言える一方、介護サービスでは、特別養護老人ホームの入所者は原則として要介護度3以上に限定されたり、施設に入所している低所得者への補助であった補足給付の対象が縮小されたりしました。また、要支援1と2の介護サービスは保険給付から外されて市の総合事業へ移行されています。
一定の所得がある利用者の利用料は、1割負担から2割負担に増額されました。
こうした見直しは、高齢者の尊厳を守り、その人らしい生活を大切にする介護保険制度にするという点から疑問を感じざるを得ません。
こうした中で、3年に1度行われ、これまで6回実施された高齢者保健福祉計画の見直しでは5回にわたる介護保険料の引き上げが行われ、第1期に年額で3万200円だった保険料は、第7期で7万2,800円と実に2.4倍もの引き上げになっています。
介護保険料について執行部は、前回、第6期介護保険料の見直しの際、一般質問で、介護保険料は「制度施行当初より上昇を続けている」との現状認識を示し、市民福祉常任委員会の質疑では、介護保険料の負担が厳しいということを自覚し、市長会等を通じて国庫負担を拡大することなどを要望しており、今後も強く要望していくとの発言がされておりました。
今議会では、今回の引き上げが、市民生活に与える影響について、「所得や物価、経済の状況にも左右されることから、一概にお答えすることは困難」としました。貧困化が進んでいると言われる中で、こうした認識でいていいのかが問われていると思います。
この制度の持続可能性のために引き上げはやむを得ないとして、これを認めた結果、加入者の生活の持続可能性が低まることになれば、本末転倒と言わざるを得ないのです。
市は一方で、全国市長会等を通して、全ての国民が安心して介護が受けられるよう、必要な財源を確保した上で、将来にわたって国民が安心して享受できる持続可能な介護保険制度とするため、公費の負担割合の見直し等で、保険料の上昇を抑える対策を講じるなどの制度の見直しを提言していると、答弁しました。
ここには、今の介護の仕組みでは、全ての市民が安心して介護を受けられないという市の危機意識があると考えられます。それはとりも直さず介護における市民生活の危機を反映しているものととらえざるを得ません。
こうした中で提案された今回の介護保険料の引き上げは、到底承服できるものではありません。従って本提案に反対し、見直しを求めるべきと考えます。
以上、議案第8号、議案第14号、議案第15号、議案第32号、議案第38号、議案第39号、議案第41号、議案第70号、及び議案第71号、以上9議案に反対する立場から討論してまいりましたが、満場のみな様のご賛同を心からお願いして、討論を終わります。
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