ドイツの偉大なピアニスト、ヴィルヘルム・ケンプ(Wilhelm Kempff, 1895-1991)が昭和29年(1954年)に2度目の来日を果たしました。初来日は昭和11年(1936年)ですから18年ぶりということになります。
その時の、ケンプを囲んだ座談会の様子が「音楽之友」昭和30年1月号に載っています。
その中で一番おもしろかったのは、座談会開始前の雑談。
「金沢に行ってホテルに泊まった時に、そばの劇場でストリップ・ショーをやっていた。福井さん(通訳)が見に行こうと思ったがケンプさんに見せたくなかったので黙って行った。ところが、いつの間にかケンプさんが先に行っていた。まあ女性も見ていることだし、大丈夫だと思ったが、ダンサーが林檎を持って踊っていた。その林檎を切ったんでしょうか、一片の林檎をケンプさんのところへ持ってきた。。。ケンプさんはホテルに帰ったら早速そのことを奥さんに話した。(笑い声)」
ダンサーや、周りの客はまさかその外人が世界的なピアニストだとは気がつかなかったでしょうね。
ジャケット写真や、ベートーヴェンをいかにもドイツ人って感じで弾くケンプの動画を見るとクソ真面目で気難しいイメージしか湧きませんが、実は普通にやさしいオジサンだったのかもしれません。下の写真の笑顔もいいですね。