バーンスタインのウェスト・サイド・ストーリーの音楽は盗作だった!?
ボクは指揮者バーンスタインが好きなのであんまり信じたくはないですが、こんな噂があったとは。
【その1】玉木宏樹著『贋作・盗作音楽夜話』にはヤヴァい話がたくさん書いてあってびびります。中でも、その143ページ目にはこんなことが。。
「ジョーン・パイザー(※1)の書いたバーンスタインの伝記(文藝春秋、鈴木主税訳)によると、バーンスタインは動きの激しいジャズ的フレーズは大得意としていたが、決してメロディ・ライターではなく、メロディを書くのが苦手だったというのです。
では「マリア」とか「トゥナイト」はどうやって生まれたのか?
パイザーによると、パクリの可能性があるというのです。
バーンスタインの先輩で多大な影響を受けた作曲家にマーク・ブリッツスタイン(Marc Blitzstein,1905-1964)という人がおり、同じスタインというユダヤ姓ということもあり、親友でした。しかし彼はアメリカ共産党員としての政治活動が当局から不興を買い、いわばレッドパージのように扱われ、彼の作品は演奏禁止になってしまいました。さらに不幸なことに、マルティニック島で地元の人間と政治をめぐって諍いになって、殺されてしまいます。バーンスタインは残されたスコアを自由に見る立場になったのですが、それを利用してブリッツスタインのアイデアを盗用したフシがあるというのです。
「マリア」は、ブリッツスタイン、そして有名な「トゥナイト」はブリッツスタインではなく、ベンジャミン・ブリテンの「おやすみ」(※2)からの引用ではないか、と書いています。」
※1 Joan Peyser, 1930–2011 アメリカの音楽学者、作家(女性)
※2 「ルクリーシアの陵辱」 Op.37 の第1幕より?聴いてもパクリなのかどうかわからなかったっす。
【その2】やはりウェスト・サイド・ストーリーに関して、東条碩夫著『伝説のクラシックライヴ』(TOKYO FM出版、面白いです!)の77ページにはこんなことが書いてあって、またもビビりました。
「...当時音楽誌の編集記者をしていた筆者の、バーンスタインに関する冷や汗ものの思い出である。
ニューヨーク・フィルの東京公演の前に、名古屋でレセプションのような記者会見が開かれた。バーンスタインは見るからに不機嫌そうだった。そこで筆者は何を思ったか、こう質問した。
「私の考えでは、作曲家バーンスタインの最高傑作は、今も《ウェスト・サイド・ストーリー》だと思うが、あなたはどうお考えか?」......。現役の作曲家でもあった巨匠に向かって、喧嘩を売るような質問だったと思う。バーンスタインの顔色が変わり、数秒間、身もすくむような鋭い視線が筆者に向けられた......。」
この東条という著者、元エフエム東京のプロデューサーということですが、すごい度胸です。文章を読んだだけで本当に冷や汗ものです。。
【その1】が万が一本当だったとしたら【その2】の質問はちょっとマズかったかも!?
作曲中のバーンスタイン(『芸術生活』1963年11月号より)。盗作していないと自分は信じます!
ジョーン・パイザーなる存在は、このバーンスタインに関する著書でもプライヴェートな事柄を含め様々な点で露悪的な記述にのみ必要以上の力を込めているかのようですが、翻訳は出なかったと思いますがブーレーズの評伝でも同様だったとか。また何かの会見でバーンスタイン自身がこの本について「まだ読んでいないし読むつもりもない。皆さんも読まない方が良いよ。」と語ったと。
またこの翻訳がバーンスタインの最後の来日直前に出版されたこともいささか不快な思い出です。PMFの立ち上げに全力を尽くして体調不良で幾つかの演奏会をキャンセルし、帰国後さほど日を経ずに他界した巨匠を思うと「○○砲」とか自称して悦に入ってる版元に今更ながら怒りを覚えます。その昔、採用試験でハネられたこととは別に(笑)。
> バーンスタインに不躾な質問を投げかけた記事の筆者は東条碩夫氏ではなく、音友やレコ芸の編集者だった近藤憲一氏
あらー、そうですか。今その本は手許にないのですが自分読み間違えましたね。すみません。自分のことなのに「筆者は何を思ったか」など他人事みたいに書いていて少しおかしいなとは思っていました。ご指摘感謝します!
ジョーン・パイザーという人、それに翻訳本の出版元は文○砲系だったんですね。スキャンダルをネタにたくさん売ろうって魂胆ですね。知ってよかったです。盗作疑惑はきっとウソですね。
きょうはバーンスタインの交響曲第2番 「不安の時代」を聴きながら寝ることにします。安心して眠れそうです。