黒猫チャペルのつぶやき

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サンライズ出雲で行く山陰の旅①

2012年04月02日 | みのりのつぶやき-旅行
 3月27日、待ちに待った旅行に出発。初めて体験する、寝台特急の旅である。仕事を終えて帰宅した父殿をせかして、準備万端整えたリュックを背負っていざ東京駅へ。途中で夕食を摂り、余裕を見て発車時刻の一時間前には到着して車内で食べるおむすびやお菓子、飲み物など買い整え、ホームで入線を待つ。22時の丁度10分前、輝かしくサンライズ・エクスプレスが入線、早速乗り込む。私たちが乗るのは後ろ半分のサンライズ出雲号11号車、廊下を歩いていって階段を少し下る、1階部分にあたるサンライズ・ツインと称するところの個室である。動くビジネスホテルというキャッチフレーズそのままに、毛布と枕、浴衣まで備えられたベッドがふたつ、進行方向と平行して並んでいる。窓からはホームを行きかう人々の足元を見上げる格好で、何とも珍しい眺めである。

 旅装を解いて寛ぐ間に、定刻通りに列車は動き出した。思いのほか揺れも少なく、快適である。早速持ち込んだビールやジュースを手に、乾杯。車掌さんが検札にやってくる。シャワーを使う予定はなかったが記念にとサンライズ号オリジナルのタオルセットを所望したところ早くも売り切れとのこと、ただ「もう一人の車掌が持っているかもしれないから・・・」と確かめていただけることになり、後から実際に部屋まで届けてくださった。ご親切に感謝である。落ち着いたところで、車内を探検に行く。シングルの個室が数多く並ぶほか、シングルツインという上下2段のベッドがある部屋、団体旅行か大勢の子どもが乗車している「のびのび座席」の車両、流れる夜景をゆっくり眺められるラウンジやシャワールームなどを見学して再び部屋でくつろぐ。品川を過ぎ、多摩川を渡り、横浜を過ぎ、熱海を過ぎても、闇の中にきらめく町の光が面白くて飽かず、日付が変わってもなかなか眠る気になれず窓外を眺め続けていた。

        

 朝6時半過ぎに列車は岡山駅に到着。少し前から早くも起きていた私はホームに駆け出して、サンライズ瀬戸号と切り離すところを見物する。切り離しを終えた瀬戸号は、一足先に四国は高松へと走り去る。朝日の中瀬戸大橋を渡るというこちらの列車にもいつか必ず乗ってみたい、と思った。部屋に戻って、夕べ買いこんだおむすびをパクつく。朝の山里のさわやかな眺めを楽しみながら食べる朝食は、すこぶる美味。食べ終えて、ラウンジに行ってみると、のびのび座席の方にいたお兄ちゃんが相手になってくれて、一緒に車内をほうぼう歩きまわって遊ぶ。車掌さんから、思い出きっぷというグッズを何種類も頂戴し、余り眠ってもいないのに、いよいよご機嫌である。そうするうちに時間は瞬く間に過ぎ、美しい谷川の流れを見せながら列車は山間を抜け、岡山県から鳥取県に入り、米子の駅も過ぎて、9時30分松江に到着。名残は惜しいが、ここでサンライズ号とはお別れである。在来線に乗り換えて、10時19分、宿のある玉造温泉駅に降り立つ。車窓からも、静かにたたずむ宍道湖の湖面の輝きとともに、2泊を過ごす予定の玉造国際ホテルの姿は目に入ってきた。

 駅から湖畔に向かって静かな街並みを歩いて、ほどなく宿に着く。雄大な宍道湖のすぐほとりに佇む、古びてはいるが広々とした造りの荘重なホテルである。大きな荷物だけひとまず預けて、駅にとって返す途中、湯町窯という窯元に立ち寄り、落ち着いた色調と造作の心地よい作品を見せていただく。母殿がぐい呑みを一つ購われて、外で写真など撮っているとご主人自ら外に出てこられ、昔風の屋根の造りなど解説をしてくださったが、一体にこの地方の男性はとっつきは悪いが、実際のところ心情が細やかで親切な方が多いのをこの後も幾度も感じた。一方女性はというと、機転がよく回り旅行者の求めているところをよく察して、決して押しつけがましくはなくマニュアル的ではない情のこもったサービス心に長けていて、旅の間中実にいい気持にさせてもらったものである。さてそうしているうちに、乗ろうと思っていた山陰本線の普通列車が目の前で出てしまって、1時間以上待つのもつまらないので、自由席特急券を買って次にやってきたスーパーおき号で出雲市に向かう。流石に特急列車は早くて、先の普通列車を追い越し、予定より早く出雲市駅に到着。出雲大社まではバスに乗る手もあるが、父殿母殿そろって電車好きであるので、一畑鉄道の乗り継ぎをとって大社前に向かった。

        

 駅から松並木の参道を歩き、大鳥居をくぐると、名高いとてつもなく大きな社が聳えるのを見はるかすが、あいにく今は平成の大遷宮とやらの真っ最中で、本殿は作業用の囲いで覆われていて姿は見えない。広い境内の石畳を進み、手水を使って、たどりつくのは仮拝殿であるが、それにしても巨大なしめ縄といい、豪壮なものである。二礼、四拍手、一礼の作法通りにお参りし、平安を祈る。

        

 参詣を終えて、門前近くのお蕎麦屋さんで昼食。名物の割子蕎麦をいただく。一段づつ、薬味の異なるお蕎麦の味わいが、分量も丁度良くて興趣があり、すこぶる美味である。三段のを食べたが、五段にしておけばよかった、とやや悔やまれたくらいである。

        

 一畑鉄道の駅に後返って、今度は松江しんじ湖温泉行きの電車に乗る。来たときとは逆に、宍道湖の北岸を東に向かって走るわけで、これで広大な湖を丁度一周する勘定になる。天気もよく、風は暖かで、春のこの上無くのどかな風景を眺めているうちに昨夜の寝不足もあってすっかり眠くなり、終点まで心地よく眠った。温泉駅から湖岸を歩き、島根県立美術館を訪う。間近で見る湖水は水も澄んでいて、都会に住む身にとっては、さながら物語の中の別天地のようであり、古来多くの文人墨客に愛された土地であるということが実感され、このような静かな町に住んでみたいとしみじみ思った。美術館では屋外の湖岸に建てられたオブジェに這い上って遊び、時を忘れた。ここはまた、宍道湖に沈む夕日の絶好のビューポイントでもあるという。

        

 レイクラインなるバスで松江駅に出て、早めの夕食を済ませ、JRで玉造温泉に戻り、宿に帰る。既に預けた荷物も運びこまれている部屋に通される。目の前に宍道湖の眺めの広がるベランダのついた、すこぶる上等な部屋である。十畳敷きの和室であるが、畳一枚にしろ都会のものよりずっと大きいので、それよりずっと広い印象である。三人分の布団がのべられている横にテーブルと別に置き炬燵も据えられていて、なおかつ広々としている。部屋毎に浴室があって、その湯もまたかけ流しの源泉であるというのも大いに贅沢に感じられる。階下には、これは近年増設されたばかりの、これまた宍道湖の眺望を存分に味わえる無論源泉かけ流しの立派な展望風呂があるが、温泉に関してはこの宿はさらなる魅力がある。玉造温泉街の中でも屈指の人気の、老舗である長楽園と姉妹館であるので、宿泊客は長楽園の名だたる広大な露天風呂を(午後7時以降限定であるが)無料で利用できる特典がついているのである。長楽園では立ち寄り湯の利用はできないそうだから、この特典はなかなかのお値打ちと言える。

 そこで、早速支度をして、フロントで入浴券をいただき、温泉街に向かう。温泉街はホテルとは駅の反対側、山側にあって、2.5キロほどの道のりであるが、ゆっくり歩いて40分ばかり、丁度良い散歩コースである。日の暮れかかる道を、桜並木の川沿いに歩く。つぼみがふくらんできていて、1週間と待たず一斉に開花を迎えそうな様子である。咲きそろったら、さぞかし見事であろうと思われる。温泉街に入って、丁度真ん中のあたりに長楽園はあった。玄関で用向きを述べると、すぐ「龍宮の湯」なる露天風呂に案内していただけた。入口は男女それぞれ別だが、中は一つの広大な露天風呂である。女性の側の脱衣場には、体を覆える「巻き布」というタオル地の被布が用意されていて、それを着けたまま入浴できるので、混浴も気にならない配慮がされている。さて私たちが入ってみると、何と私たち以外誰も入浴客はおらず、120坪というプールのように広い湯が実質貸し切り状態であった。湯けむりが立ち上り、風に乗って湯の表でわだかまり、吹きわたる風に形を変えながら流れるのが照明の光の中で何とも風情がある。空を見上げれば星が都会にいるのと全く異なる大きさで輝く。泳いでも、潜っても、どこからも文句はこない。家族三人、思う存分、歴史ある名湯を満喫できた。

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