黒猫チャペルのつぶやき

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湘南新宿ライン

2019年06月01日 | チャペルのつぶやき

 パパさんは通勤で湘南新宿ラインを利用されていますが、ここ最近乗車中に気になる人がいるそうです。それは湘南新宿ラインに乗務されることの多いあるベテランの車掌さんです。何が気になるのかと言うと、とにかくその車内アナウンスが、声のトーンといい抑制の利いた表現といいテンポといいとにかく素晴らしくて、思わず毎度聞き惚れてしまうのだそうです。こう言っては何ですがパパさんにとって、特にJRの社内アナウンスと言えば、ほとんどが滑舌が悪かったり早口で聞き取りにくかったり、かと思えば同じことばかり繰り返してただうるさいだけであったりで、これまで邪魔なものとしか思っていなかったのだとか。それが「あの人」との出会いで全く印象を変えました。

 「あの人」のアナウンスは、何も変わったこと、余計な無駄話があるわけでもないのに、いつも聞いていて耳に心地よく、心にしみ通るのだそうです。それは「あの人」が常に真剣に乗客のことを気づかい、乗客に真心で接しようとしているからだと思われます。例えば、多くの人が降りる主要な駅に近づいた時の、「車内込み合っておりまして、お立ちのお客様には誠にご不便をおかけいたしました。」でありますとか、「網棚の荷物と、座席の周りをもう一度お確かめください(・・・間・・・) お忘れ物、ございませんでしょうか。」ですとか、「この先もどうぞお気をつけて、行ってらっしゃいませ(夕刻であればお帰り下さいませ)」ですとか、いずれも淡々とした語り口ながら、決して口先だけではない思いが込められているのが伝わってくるのです。

 「あの人」の真骨頂が現れるのは人身事故その他でダイヤが乱れているときです。「ただ今、この列車は、〇〇駅で発生した人身事故の影響で、〇分遅れで〇〇駅を出発いたしました。お急ぎのところ、誠に申し訳ございません。」から始まり、「次の〇〇駅には〇時〇分頃、△△駅には〇分頃到着の見込みで・・・」に続いて、「△△から〇〇方面へお急ぎのお客様、〇番線から〇時〇分発車の〇〇行きが先の到着となります」「〇〇線△△駅〇分発車予定の〇〇行きも、〇分遅れの到着となる見込みです。」といった、乗客が最も知りたい情報が、淀みなく、実に適切なタイミング、適切なスピードで提供されるため、ストレスを感じる余地が皆無です。言ってみれば当たり前のことを当たり前にやっていただいているだけ、という見方もできなくはありませんが、実際のところその当たり前のことが行われていないことが多すぎて、何が起きてるのかこの先どうなっているのか知りたいことを何も伝えてもらえずであったり、早すぎたり聞き取りにくかったり、ひたすら同じセリフの繰り返しであったり、俺の知ったことじゃないもんね感満載の投げやりなトーンでただただむかつくだけであったり、という経験ばかり重ねておりましたものですので、「あの人」は貴重なのです。そこへもってきて文法も敬語の用い方も非の打ちどころがない上、声がよく間合いがよく、テンポよく歯切れよくのため耳ざわりが良くて良質なBGMのように心地よいのですから言うことはありません。だめ押しのように、「本日はお急ぎのところ、ご迷惑をおかけし、大変、申し訳ありませんでした・・・」としみじみ謝罪されると、いえいえあなたが悪いんじゃありません、悪いのはむしろ私たち乗客の中に不心得者がいるせいで、こちらこそお手間を取らせて大変申し訳ない、とでも返したくなってきます。

 先日などパパさん、「あの人」だ!と気づいていつも習慣で一番前の車両に乗っていたのですが、一番後ろまで移動いたしまして、初めて「あの人」のご尊顔を拝見いたしました。小柄で、痩身、眼鏡をかけていて、髪の半ば余りは白髪の壮年の男性で、いかにも仕事に厳しそうな表情の方でした。アナウンス以外にも車掌さんの業務は多くありますが、一つ一つの、例えば指差し確認のような動作もビシッとされていて、誰も見ていなくても(いやパパさんが秘かに注視してるんですが)いささかも手を抜く様子はありません。立っていても座っていても、実に居住まいを正しくされている印象の方でした。

 また「あの人」は、多くの車内アナウンスで使用される「JR東日本」という言葉を用いず、いつも決まって「本日も、東日本旅客鉄道をご利用いただき・・・」というフレーズで締めくくられます。この音感もまたパパさんにとっては、折り目正しい「あの人」の人柄を大いに示しているように思われて、いつも秘かににんまりしています。

 

 



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