散髪

　暑い日が続く。私にとって初めて迎える夏である。父殿の体質を受け継いだか、私はめっぽう汗かきである。保育園はエアコンを入れてくれているが、それでも寝ていても起きていても汗をかく。日中沐浴をさせてくれるのが実にありがたい。頻繁に着替えさせてもらってようやくしのいでいるこのところである。

　近頃保育園への朝の登園はもっぱら父殿が担当している。朝大抵私は５時頃には目を覚まし、ミルクをもらってもずっと起きてそのあたりを転げまわり、隙さえあれば何でも口に入れてしまうものだから、早い時間に保育園に行ったほうが、危ないものもないし玩具なども豊富であるので、安全上の見地からも好ましいと言える。汗かきの父殿が私を吊り下げて自転車に乗って送っていく。オムツを園の支給のものに取り替え、体温を測ったら、他の子供たちの間でやはり転げまわり、目に付く限りのものに手を伸ばしながら、一日を過ごす。離乳食の量も日増しに増えてきて、ますます発育状況は順調である。

　暑さのためか昼間は余り眠らず、保育士の皆様には大いに面倒をかける。その代わり夕方帰宅し、母殿にお風呂に入れてもらって最後のミルクを飲むとたちまち深い眠りにつく。夜中に時折布団から転げ出てしまったりはするが、概ねは朝まで父殿母殿の手を煩わせることなくよく寝ている。私の生活に合わせ、二人とも早寝早起きの習慣にすっかりなじんでいるのがおかしい。
　一度、水疱瘡にかかった？可能性ありと園の方から言われ、なるほど、多少熱が出て、それらしき発疹なども見られたため、学校から急遽呼び返された母殿に病院に連れて行ってもらったが、様子をみましょう、とのことで薬などもらって飲んでいるうちに数日で症状は治まり、結局何事もなし。もともと何も無くても発疹が出やすい体質ではあり、このところ汗疹なども加わるから、医者にしても何だかよくわからないらしい。

　髪も伸びて、いい加減見苦しくなってきたので、近所の床屋で散髪をしてもらうことになった。前々から、母殿は私の髪で筆を作るのが楽しみだったのだが、折りよく近くにそういった業務の代理店になっている店があり、日曜の午後、３人そろって出かけた。もの馴れたおばあさんの理髪師が、父殿に私を抱っこさせて二人まとめてうまい具合にかけ布でくるみ、バリカンで手際よく刈り込んでくれた。時間も大してはかからず、痛いことも無く、ミルクを飲んだばかりだった私は終始ご機嫌であった。母殿がその模様をビデオと一眼レフのカメラでもって盛んに写した。10分ほどで全て終わり、７ミリの長さを残して頭全体をすっかり刈り込まれて、見た目も涼しい姿となった。
　切った髪は業者に送られ、２ヶ月ほどかかるとのことだが筆になって帰ってくる予定。いったいどんなものができてくるのか、大いに楽しみである。

　間もなく七夕である。保育園でも笹飾りをしたりするらしい。父殿が、私に代わって短冊を書いた。「はやくあるけるようになって　みんなとたのしくあそべたらいいな　みのり　０さい」