ソフトバンクに注目! 大型買収、すべてが想定内
2012.10.23
http://www.zakzak.co.jp/economy/investment/news/20121023/inv1210230712000-n1.htm
連載:戦略的 グローバル投資
『ソフトバンク』(東1・9984)が、米携帯通信3位のスプリント・ネクステルへの大型買収でまたまた賭けに出た。
実は6年以上前の本欄で、当時2兆円でボーダフォンを買収した同社株に高い評価をつけていた。
当初は、「無謀な賭け」との市場の評価が優勢で、株価も一時、下げていた。
その後、携帯事業がうまくいって時価総額も回復した。
今回の大型買収に対しても、評価は真二つに割れている。
リスクを取った成長戦略を期待する声がある一方、前回同様に財務リスクを心配する声もある。
結局は、携帯事業がうまくいくかどうか次第だが、ここではそれほど財務リスクは高くなく、
魅力的な買収取引であることを強調したい。
今回、スプリント社のバランスシートを連結するに際し、自己資本比率は当然大きく下がることになる。
連結とは手持ち資産と買収先の資本を相殺させる行為なので、ソフトバンクの自己資本が増えない一方、
総資産は2倍近く増えるからだ。
しかし、ボーダフォン買収時より格段に高い自己資本率を維持できそうだ。
さらに、重要なのはバランスシートにおける有利子負債の比率で、
ソフトバンク自身の2011年3月期並みにしか悪くならない計算。
また、有利子負債の調達は節税効果分だけ企業価値を高めるという法則がある。
次にスプリントが赤字垂れ流し状態で、400億ドル(約3・2兆円)もの累積赤字を懸念する声もある。
しかし、スプリントはもともと資本が厚かったので債務超過ではない。
この累損で打撃を受けたのは、既存のスプリント株主だ。
ソフトバンクは累損のおかげで、劇的に安く買収できたと見るべきだ。
何しろ5年前には10兆円の資産と5兆円近い簿価だったスプリントを、わずか1・6兆円で買うことができた。
巨額の過去の赤字と、安値での買収費用が相殺され、買収時点では損も得もない話に過ぎない。
そしてスプリントの業績はiPhone効果により上向き中で、アナリスト平均予想によると、14年に黒字転換が見込まれている。
結局、ソフトバンクは良いタイミングで安く買い、財務もボーダフォン買収時より悪化度合いはかなり低いといえる。
ただし、今期のスプリントは巨額赤字がほぼ確定している。業績好調で来たソフトバンクの利益をむしばむでしょう。
これが明らかになれば再び懸念が台頭し、株価も下がる可能性がある。
しかし、これらは全てが想定内。CMにある想定外ではない。
あくまで2年後の業績効果をにらんだ投資目線が必要だ。
(株式アナリスト・松井宗則)
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