連休目前の4月25日(月)夜19時から光が丘区民センター多目的ホールで地区計画の公聴会が開催された。
会場は300人定員の大きなホールだったが、公述人は4人、傍聴人は22人に過ぎなかった。大震災があったにもかかわらず、区が公聴会のスケジュールを優先したからだろう。
議長は練馬区都市計画審議会の委員だったが、公聴人は都市整備部長代理、都市計画課長、まちづくり推進調整課長、つまり相手方当事者の3人だった。
撮影が許されなかったので、配置を書いておく。傍聴人からみて、正面に議長席、右手に公聴人の発言席、左手に3人の公聴人席、さらにその後ろに事務局が座っていた。
公述人の持ち時間は1人15分ずつで、区の職員が厳密に時間を2人計測していた。

●Nさん(光が丘3丁目)
地区計画原案に反対する。まず区が説明する「計画の目標」(理由)に妥当性や一貫性がない。昨年2月当初、住環境の維持、小学校跡施設の有効活用、建て替え時への対応の3つを挙げたが、前二者は「『一団地の住宅施設』の都市計画の一部変更」(以下、一部変更と記す)で対応できるし、建替えは40―50年先の話だ。その後、区は、「デイサービス等の福祉施設や地域の人が集える喫茶室」などへの柔軟な施設転用、バリアフリーのための低層棟への外付けエレベータ増設、コンビニ開設などを追加した。しかし詳しい説明を求めると、いずれも一部変更の場合と結果は同じであるという結論になった。 区が地区計画に変更する理由は、4つの小学校跡施設を産業振興に使いたい、という理由以外にはない。
また光が丘住民からほとんど賛同を得られていない。これは学校跡施設活用会議のときから同じだった。
最後に、昨年1月以降の都市計画見直しに関する説明で、区は不正確な説明をし続けた。「地区計画制定は国や都の方針」「小規模施設の計画変更は1年以上かかる」との説明があった。しかし住民が東京都の担当セクションに問い合わせると、区の説明が事実ではないことが判明した。区に懇談会の場での訂正を求めたが、いまだに実現していない。
また、「かわら版」や議会答弁で、区の恣意的な引用や解釈が多数みられる。たとえば説明会の参加者を議会で住民の数%と答えた。しかし根拠を質すと住民25500人中(重複出席を除くと)200人前後であり、せいぜい1%に過ぎない。都市計画審議会の委員は、意見書や公述書を読むとき区が要約したものは正確さを欠いていることが多いので、原文を読むように、ぜひお願いしたい。
●Yさん(光が丘2丁目)
区は、地区計画への変更の参考として品川区の八潮団地の事例(2009年公告)を示した。八潮の「地区計画の目標」には「地区住民のニーズに合わせる」という文言がある。しかし光が丘の場合、これに類する基本的目標が示されておらず、納得できない。
都市計画のあり方の基本を示している国土交通省作成の「都市計画の運用指針」(以下「指針」)では「当該地区における地域的連帯感、地域社会の形成状況等からみた当該地区の特性に十分配慮」することを求めている。しかし今回の計画書には、都市計画を変更する目標につながる考え一つすら、まったく表現されていない。
また「指針」が依拠すべきとしている都市計画マスタープランや「練馬区福祉のまちづくり推進条例」はバリアフリーの推進を強調しているのに、この計画書には「一定水準のバリアフリーが実現している」と書かれており修正が必要だ。
さらに、現状の容積率や建ぺい率については、一部地域の一部しか発表していないが、これは全地域のすべての項目について発表すべきであり、その後住民の意見を聞く場を設けるべきである。
また、都市計画法と「指針」では、容積率と建ぺい率の制限は、地区整備計画で定めることになっているが、区の計画書では別の場所に記しており、これは違法であり、効力はないことになる。
加えて、2月16日以降6回の説明会の議事録が公表されていない。この問題は早急に解消すべきである。
今回の原案は不備や違反もあるので、区はいったん白紙撤回し、区側の考えを検討し直しし、改めて住民との協議の場を持つことが必要である。
●Sさん(光が丘3丁目)
地区計画原案は、大きな前提条件としての光が丘団地の少子化問題の解決になんらつながらない。主管のまちづくり推進調整課は少子化の真の原因を究明すべきだ。光が丘団地の少子化は一般論としての少子化と異なる。説明会で若いお母さんが切々と訴えていたが、原因はURの家賃が高すぎることにある。高家賃は団地開設時からの大きな問題だったが、当初10年は家賃補助するスライド家賃制度を導入したので、やっと子育て世代が入居できるようになった。昨今の厳しい経済情勢の下、若年層の収入が減少し入居したくても家賃が高くて入居できない団地になっていることを区は直視すべきだ。地元責任者として、子育て世代を支援する役割を果たさないURや公社、東京都の住宅政策を大きな問題にすべきだ。とりわけURについては国から住宅補助を年間1000億の予算が受けているのだから、区はURに、家賃引き下げと若年層の優先入居を直ちに実施するよう要求すべきだ。原案にある、少子化対策としての遊休施設活用はまったく的外れの方針である。
第二に、住民の大多数は最高の生活環境を守る「一団地の都市計画」のしばりをはずすことに納得していない。学校跡施設の活用なら「一部変更」で可能なことが明らかになったので、都市計画廃止の根拠は不十分である。
第三に、地区計画は、全国で3000件の実績があり住民合意手法に特徴がある。ところがまちづくり協議会も設置しない区のやり方は前代未聞だ。
この三点の理由から区の原案に反対する。
●Kさん(田柄5丁目)
わたしは岩波区長の時代に、都市計画マスタープランの全体構想や光が丘を含む第4地域の地域別指針の策定に携わった。都市計画の変更をするときには地域住民の本当の福祉向上に資するものでないといけない。また3.11大震災以降の経験をもとに計画を立て直す必要がある。そして、資源の地産地消や、他地域に負荷をかける地域からの脱却をめざさないといけないのに、光が丘地域の財産であるゴミ処理施設にこの地区計画原案は一言も触れていない。驚いた。
マスタープランのキャッチフレーズは「コミュニティを大切にする」である。住民参加と自立した地域運営という趣旨を徹底すべきだ。その点、この原案は稚拙であり、住民が反対するのはもっともなことだ。いまこそ、スクラップアンドビルドを繰り返す失業対策の産業振興計画から、歴史とコミュニティを大切にする計画への転換を図るべきである。
このように4人の公述人すべてが、反対意見を表明した。
これまでの説明会で表明された意見と同じ趣旨のものが多い。しかし説明会と異なり15分の時間があったので、それぞれの方の論理展開がよくわかった。
なおここで紹介した意見は、全文の一割以下に短縮している。Nさん、Yさんの原稿はこの会でも保有しているので、下記のリンクをクリックし全文を読んでいただけると幸いである。
Nさんの原稿
Yさんの原稿
(Click here to start download from MediaFireをワンクリックし、「開く」を押すと読むことができる)
舞台は練馬区都市計画審議会の場に移る。区議会議員選挙があったので委員の入れ替えもあり、審議されるのは6月以降と予想される。
多面体
会場は300人定員の大きなホールだったが、公述人は4人、傍聴人は22人に過ぎなかった。大震災があったにもかかわらず、区が公聴会のスケジュールを優先したからだろう。
議長は練馬区都市計画審議会の委員だったが、公聴人は都市整備部長代理、都市計画課長、まちづくり推進調整課長、つまり相手方当事者の3人だった。
撮影が許されなかったので、配置を書いておく。傍聴人からみて、正面に議長席、右手に公聴人の発言席、左手に3人の公聴人席、さらにその後ろに事務局が座っていた。
公述人の持ち時間は1人15分ずつで、区の職員が厳密に時間を2人計測していた。

●Nさん(光が丘3丁目)
地区計画原案に反対する。まず区が説明する「計画の目標」(理由)に妥当性や一貫性がない。昨年2月当初、住環境の維持、小学校跡施設の有効活用、建て替え時への対応の3つを挙げたが、前二者は「『一団地の住宅施設』の都市計画の一部変更」(以下、一部変更と記す)で対応できるし、建替えは40―50年先の話だ。その後、区は、「デイサービス等の福祉施設や地域の人が集える喫茶室」などへの柔軟な施設転用、バリアフリーのための低層棟への外付けエレベータ増設、コンビニ開設などを追加した。しかし詳しい説明を求めると、いずれも一部変更の場合と結果は同じであるという結論になった。 区が地区計画に変更する理由は、4つの小学校跡施設を産業振興に使いたい、という理由以外にはない。
また光が丘住民からほとんど賛同を得られていない。これは学校跡施設活用会議のときから同じだった。
最後に、昨年1月以降の都市計画見直しに関する説明で、区は不正確な説明をし続けた。「地区計画制定は国や都の方針」「小規模施設の計画変更は1年以上かかる」との説明があった。しかし住民が東京都の担当セクションに問い合わせると、区の説明が事実ではないことが判明した。区に懇談会の場での訂正を求めたが、いまだに実現していない。
また、「かわら版」や議会答弁で、区の恣意的な引用や解釈が多数みられる。たとえば説明会の参加者を議会で住民の数%と答えた。しかし根拠を質すと住民25500人中(重複出席を除くと)200人前後であり、せいぜい1%に過ぎない。都市計画審議会の委員は、意見書や公述書を読むとき区が要約したものは正確さを欠いていることが多いので、原文を読むように、ぜひお願いしたい。
●Yさん(光が丘2丁目)
区は、地区計画への変更の参考として品川区の八潮団地の事例(2009年公告)を示した。八潮の「地区計画の目標」には「地区住民のニーズに合わせる」という文言がある。しかし光が丘の場合、これに類する基本的目標が示されておらず、納得できない。
都市計画のあり方の基本を示している国土交通省作成の「都市計画の運用指針」(以下「指針」)では「当該地区における地域的連帯感、地域社会の形成状況等からみた当該地区の特性に十分配慮」することを求めている。しかし今回の計画書には、都市計画を変更する目標につながる考え一つすら、まったく表現されていない。
また「指針」が依拠すべきとしている都市計画マスタープランや「練馬区福祉のまちづくり推進条例」はバリアフリーの推進を強調しているのに、この計画書には「一定水準のバリアフリーが実現している」と書かれており修正が必要だ。
さらに、現状の容積率や建ぺい率については、一部地域の一部しか発表していないが、これは全地域のすべての項目について発表すべきであり、その後住民の意見を聞く場を設けるべきである。
また、都市計画法と「指針」では、容積率と建ぺい率の制限は、地区整備計画で定めることになっているが、区の計画書では別の場所に記しており、これは違法であり、効力はないことになる。
加えて、2月16日以降6回の説明会の議事録が公表されていない。この問題は早急に解消すべきである。
今回の原案は不備や違反もあるので、区はいったん白紙撤回し、区側の考えを検討し直しし、改めて住民との協議の場を持つことが必要である。
●Sさん(光が丘3丁目)
地区計画原案は、大きな前提条件としての光が丘団地の少子化問題の解決になんらつながらない。主管のまちづくり推進調整課は少子化の真の原因を究明すべきだ。光が丘団地の少子化は一般論としての少子化と異なる。説明会で若いお母さんが切々と訴えていたが、原因はURの家賃が高すぎることにある。高家賃は団地開設時からの大きな問題だったが、当初10年は家賃補助するスライド家賃制度を導入したので、やっと子育て世代が入居できるようになった。昨今の厳しい経済情勢の下、若年層の収入が減少し入居したくても家賃が高くて入居できない団地になっていることを区は直視すべきだ。地元責任者として、子育て世代を支援する役割を果たさないURや公社、東京都の住宅政策を大きな問題にすべきだ。とりわけURについては国から住宅補助を年間1000億の予算が受けているのだから、区はURに、家賃引き下げと若年層の優先入居を直ちに実施するよう要求すべきだ。原案にある、少子化対策としての遊休施設活用はまったく的外れの方針である。
第二に、住民の大多数は最高の生活環境を守る「一団地の都市計画」のしばりをはずすことに納得していない。学校跡施設の活用なら「一部変更」で可能なことが明らかになったので、都市計画廃止の根拠は不十分である。
第三に、地区計画は、全国で3000件の実績があり住民合意手法に特徴がある。ところがまちづくり協議会も設置しない区のやり方は前代未聞だ。
この三点の理由から区の原案に反対する。
●Kさん(田柄5丁目)
わたしは岩波区長の時代に、都市計画マスタープランの全体構想や光が丘を含む第4地域の地域別指針の策定に携わった。都市計画の変更をするときには地域住民の本当の福祉向上に資するものでないといけない。また3.11大震災以降の経験をもとに計画を立て直す必要がある。そして、資源の地産地消や、他地域に負荷をかける地域からの脱却をめざさないといけないのに、光が丘地域の財産であるゴミ処理施設にこの地区計画原案は一言も触れていない。驚いた。
マスタープランのキャッチフレーズは「コミュニティを大切にする」である。住民参加と自立した地域運営という趣旨を徹底すべきだ。その点、この原案は稚拙であり、住民が反対するのはもっともなことだ。いまこそ、スクラップアンドビルドを繰り返す失業対策の産業振興計画から、歴史とコミュニティを大切にする計画への転換を図るべきである。
このように4人の公述人すべてが、反対意見を表明した。
これまでの説明会で表明された意見と同じ趣旨のものが多い。しかし説明会と異なり15分の時間があったので、それぞれの方の論理展開がよくわかった。
なおここで紹介した意見は、全文の一割以下に短縮している。Nさん、Yさんの原稿はこの会でも保有しているので、下記のリンクをクリックし全文を読んでいただけると幸いである。
Nさんの原稿
Yさんの原稿
(Click here to start download from MediaFireをワンクリックし、「開く」を押すと読むことができる)
舞台は練馬区都市計画審議会の場に移る。区議会議員選挙があったので委員の入れ替えもあり、審議されるのは6月以降と予想される。
多面体