前から読みたいと思っていながら、そのままになっていた、夏樹静子さんの「椅子がこわい」を、ひょんなことから最近読みました。とにかくある日突然腰が痛くなり、どんどんひどくなって、ついに3年間、腰痛で苦しむ様子が書かれている本です。サスペンスの女王らしく、事実を書きながらも、どんどん引きつけられて読んでしまいました。「この本が私の遺書になるかもしれない。」という始まりで、自殺まで考えた痛みと絶望の3年間が書かれています。
とにかく座っていられない。タクシーも後で寝そべらないとダメ。飛行機も2席取って横にならないと乗っていられない。当然、原稿も座って書けないから寝て書く。こういう状態が少しもよくならずに3年も続くわけです。その間、ありとあらゆる治療にかかります。まずはお決まりの整形外科。水泳や水中歩行などを勧められ、夏樹さんはまじめな方ですから忠実に実行します。どこの鍼がいいと聞けば飛んでいき、まじめにやるけど効果なし。作家の森村誠一さんから、自分の腰痛が劇的に治ったといってカイロプラクティックを紹介されるがこれもダメ。当時福岡に住んでいた夏樹さんは、東京まで出てきたわけです。鍼治療もそうです。そして、あの高塚光さんの手かざし療法を受け、あげくの果ては、ついに祈祷まで受けるのですが、やはり痛みは取れませんでした。
ある時から、主治医の整形外科の先生から、心因性ではないかという話をされます。しかし、夏樹さんは、「心の病でこんな腰痛が起こるはずがないし、起こることがあっても、自分が心の病になんかなるはずがない。」と相手にしません。しかし、筋肉や骨の病気なら、何らかの検査結果が出たり、これだけの治療をやっているのだから、少しはよくなる兆候くらいはあってもよさそうなのに、それが全くない。得体の知れない病気で死ぬんだと、自殺まで考えた時に、心療内科の平木先生に出会います。平木先生は、夏樹さんの話をすべて聞くと、その痛みは心因性のものであると断言します。そう断言し、その方面の治療をすすめる平木先生と、そんなことはありえない、断じて認められないという夏樹さんのやり取りがまたおもしろいのですが、納得がいかないながらも、他にやる治療もないので、熱海の病院に入院して平木先生の治療を受けることになります。
最後に夏樹さんを救ったのは、約2週間の絶食療法でした。その間、電話、テレビ、新聞、読書、面会など一切禁止。平木先生は、「作家夏樹静子を完全に捨て去り、夏樹静子のお葬式を出しなさい。完全に夏樹静子と決別し、出光静子(本名)として生きる覚悟をしなさい。」と言われるのです。締め切りと時間に追われ、いいものを書かなくてはというプレッシャーを背負った作家夏樹静子というものが、出光静子をがんじがらめにしていたということなのでしょうか。絶食療法が始まっても、痛みは襲ってきます。そのたびに、「こんな治療法は絶対に無意味です。こんなことをしていて治るはずがないと思います。」と平木先生に食ってかかります。しかし平木先生は、「痛いときは、その痛みを受け止めて、その痛みの中に身を置き、浸りなさい。」といいます。食事すらも絶ち、外界との関係を断ち切り、夏樹静子の日常と完全に決別すると、絶食療法が終る頃には腰の痛みが消えてきたといいます。
原因が心因性である場合、体のどんな場所にどんな痛みや症状が出るかわからないし、どんなことでも起こる可能性がある、と平木先生は言います。夏樹さんの場合は、腰痛だったということで、腰痛の治療では治らないわけです。私も治療にあたる時、その方の自律神経のバランスを、最初に大体把握しておきます。単に筋肉や骨格の問題から出ている痛みなのか、自律神経の乱れが根本にある痛みなのかで、治療方針が変わります。オステオパシーでは、頭(頭蓋骨)を触らせていただくとよくわかりますが、うつ伏せになっていただいた時、背中を上から下まで触れば、大体の状態はわかります。自律神経のバランスがとれている方は、いい弾力を感じますが、バランスを崩している方の背中は、ドロンとハリのない筋肉の感触を受けます。
とにかく座っていられない。タクシーも後で寝そべらないとダメ。飛行機も2席取って横にならないと乗っていられない。当然、原稿も座って書けないから寝て書く。こういう状態が少しもよくならずに3年も続くわけです。その間、ありとあらゆる治療にかかります。まずはお決まりの整形外科。水泳や水中歩行などを勧められ、夏樹さんはまじめな方ですから忠実に実行します。どこの鍼がいいと聞けば飛んでいき、まじめにやるけど効果なし。作家の森村誠一さんから、自分の腰痛が劇的に治ったといってカイロプラクティックを紹介されるがこれもダメ。当時福岡に住んでいた夏樹さんは、東京まで出てきたわけです。鍼治療もそうです。そして、あの高塚光さんの手かざし療法を受け、あげくの果ては、ついに祈祷まで受けるのですが、やはり痛みは取れませんでした。
ある時から、主治医の整形外科の先生から、心因性ではないかという話をされます。しかし、夏樹さんは、「心の病でこんな腰痛が起こるはずがないし、起こることがあっても、自分が心の病になんかなるはずがない。」と相手にしません。しかし、筋肉や骨の病気なら、何らかの検査結果が出たり、これだけの治療をやっているのだから、少しはよくなる兆候くらいはあってもよさそうなのに、それが全くない。得体の知れない病気で死ぬんだと、自殺まで考えた時に、心療内科の平木先生に出会います。平木先生は、夏樹さんの話をすべて聞くと、その痛みは心因性のものであると断言します。そう断言し、その方面の治療をすすめる平木先生と、そんなことはありえない、断じて認められないという夏樹さんのやり取りがまたおもしろいのですが、納得がいかないながらも、他にやる治療もないので、熱海の病院に入院して平木先生の治療を受けることになります。
最後に夏樹さんを救ったのは、約2週間の絶食療法でした。その間、電話、テレビ、新聞、読書、面会など一切禁止。平木先生は、「作家夏樹静子を完全に捨て去り、夏樹静子のお葬式を出しなさい。完全に夏樹静子と決別し、出光静子(本名)として生きる覚悟をしなさい。」と言われるのです。締め切りと時間に追われ、いいものを書かなくてはというプレッシャーを背負った作家夏樹静子というものが、出光静子をがんじがらめにしていたということなのでしょうか。絶食療法が始まっても、痛みは襲ってきます。そのたびに、「こんな治療法は絶対に無意味です。こんなことをしていて治るはずがないと思います。」と平木先生に食ってかかります。しかし平木先生は、「痛いときは、その痛みを受け止めて、その痛みの中に身を置き、浸りなさい。」といいます。食事すらも絶ち、外界との関係を断ち切り、夏樹静子の日常と完全に決別すると、絶食療法が終る頃には腰の痛みが消えてきたといいます。
原因が心因性である場合、体のどんな場所にどんな痛みや症状が出るかわからないし、どんなことでも起こる可能性がある、と平木先生は言います。夏樹さんの場合は、腰痛だったということで、腰痛の治療では治らないわけです。私も治療にあたる時、その方の自律神経のバランスを、最初に大体把握しておきます。単に筋肉や骨格の問題から出ている痛みなのか、自律神経の乱れが根本にある痛みなのかで、治療方針が変わります。オステオパシーでは、頭(頭蓋骨)を触らせていただくとよくわかりますが、うつ伏せになっていただいた時、背中を上から下まで触れば、大体の状態はわかります。自律神経のバランスがとれている方は、いい弾力を感じますが、バランスを崩している方の背中は、ドロンとハリのない筋肉の感触を受けます。