
今日、東京電力の株主総会があって、過去最長の6時間もの総会となったという。総会の中継がされなかったので、フリージャーナリストの岩上安身氏が、休憩抜きで連続ツイート。氏のツイッターのフォロワーが一日で3千人も増えたとのこと。
一方東電は、かなり強引な議事運営で、総会を何とか乗り切ったとは言え、大きな瑕疵を残したのは間違いない。佐野氏はかつて、“夜の女”として売春をした末、殺害された『東電OL殺人事件』を取材している際に、東電広報部の慇懃無礼な懐柔策に辟易したエピソードを紹介している(P.215)。
その担当者は、聞きもしないのに「月300万円もの交際費が自由に使える」と嬉しそうに話し、“東電OL”を表に出さないようにあの手この手で迫ってきたというのだ。
慇懃無礼で、隠蔽体質。それは、今回の原発事故に始まったことではなく、東電という会社に深くしみ込んだものだってことが、この本を読むとよく分かる。

本書は、前半の約60ページを津波に割き、震災後、手術後の身体をおして、三陸に飛び、かつての新宿ゴールデン街の名物おかまママ“キン子”に会いに行き、取材の最終日には、共産党の元文化部長で、津波研究で知られる山下文男氏に取材を申し込む。
87歳の引退した幹部とは言え、現役の共産党員だ(2011年3月20日(日)「しんぶん赤旗」)。よく取材OKが出たものだけど、津波の取材はもちろん、救助してくれた自衛隊に心から感謝しているとか、原発を全面的には否定しない・・・って発言まで引き出している。
「原発からの撤退」を現在の運動方針(6月13日)を掲げてる党と違ったことを言っても良いのだろうか・・・って気もするけれども、理詰めで優等生的な党幹部と違う人間味が感じられて僕には好ましく思ったりする。
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後半の原発に関しては、原発労働者や、被災者になったさまざまな人たちに取材を試みる。そこには、紋切り型ではない生の声が集められ、そして、“福島のチベット”とさえいわれた<不毛の地>に、なぜ原発が受け入れられていったのかが、豊富な資料の裏付けで補強されて分かるようになっている。
確かに、原発で街は潤った。そして、そこには利権の暗躍もあった。反対派は徹底して監視の対象になった。佐高信氏の言うような、当時の東電社長、木川田一隆氏のキレイごとで済ませられるようなものではない、人間の“業”のようなものを、僕は読んでいて感じた。
このまま、双葉町は、“核のゴミ捨て場”になるのだろうか。机上の空論から、警戒・避難区域の縮小を表明する担当大臣の会見を、誰も信じてはいない。
(1500円+税、講談社 11.6)
