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現代社会の授業用ブログ

憲法改正と米軍再編問題

2005-11-03 00:27:54 | 政治問題
10月28日、自民党は「新憲法草案」を決定して発表した。やはり、憲法改正の焦点は第9条であるが、第1項の「戦争放棄」の条文はそのまま残し、第2項で「自衛軍」を明記し、海外での武力行使も可能なものとした。(ほかにも気になる部分があるが、とりあえずは新聞の記事を読んでほしい)


自民、新憲法草案を決定 (sankei 051029)

 自民党は二十八日の総務会で、新憲法起草委員会(委員長・森喜朗元首相)がまとめた新憲法草案を党議決定した。草案のうち「前文」については、森委員長や小泉純一郎首相らの協議で、中曽根康弘元首相が中心にまとめた原案から、日本の歴史や伝統、風土といった保守色を抜き去った。このため、起草委総会では不満の声が多数出された。

 草案は十一月二十二日の立党五十年党大会で報告されるが、中曽根原案も付記する異例の措置をとることになった。

 草案は前文と十章百五条で構成される。戦争放棄をうたった現九条一項は維持、交戦権否認の現九条二項は削除し、国防と国際協力、災害派遣など公共の秩序維持を任務とする自衛軍の保持を明記した。集団的自衛権の行使と海外での武力行使を容認した。

 国のかたちについて草案は一条で象徴天皇と国民主権を堅持。前文で国民が「国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務」を持つとした。国に環境保全の責務を課し、プライバシー権を創設した。改正案の国会発議(提案)の要件を衆参各院の過半数の賛成へ緩和している。

                   ◇

 ■「集団的自衛権」の行使容認、範囲・発動要件先送り

 憲法改正の核心である九条について、自民党の新憲法草案は「わが国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため」として「自衛軍の保持」を明記した。自衛隊を軍隊と位置付けるという、当たり前のことながら長年、放置されていた課題に着手した意味は大きい。また「自衛軍」に集団的自衛権の行使や海外での武力行使を認める考え方を盛り込んだが、行使の範囲や発動の要件について自民党はほとんど議論しておらず、問題を先送りした格好だ。

 草案は「自衛軍」の概念に「自分の国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力で阻止する」権利である集団的自衛権の行使も含まれるとして、条文では直接、記述しなかった。

 このため、二十八日開かれた党新憲法起草委員会総会では、出席者の一人から「集団的自衛権の行使を新憲法にはっきりと書き込まないで、将来、どんな政府ができても解釈は変わらないのか」といったストレートな疑問もぶつけられた。

 自民党は新憲法の付属法制として「安全保障」「国際協力」両基本法を制定し、集団的自衛権の行使、海外での武力行使のあり方、範囲を定める考えだ。それに向けて、新憲法草案と並行して国防部会や「安全保障」小委員会(委員長・福田康夫元官房長官)で両基本法の概要を検討し、セットで公表することを目指していた。

 しかし解散・総選挙で議論がストップ。「安保」小委は今月十九日の会合で、新憲法草案策定前の結論を断念した。これが、草案発表の段階でも核心部分に対する基本的な疑問が出た原因だ。

 自衛軍は将来、どういう多国籍軍に参加していかなる国際協力活動を行うのか。武力行使はどんな時に許されるのか。自民党議員にもさまざまな意見が渦巻いている。起草委事務総長の与謝野馨政調会長は「無制限の行使はありえない」として、国際協力活動や日本周辺での米軍との共同行動などに限定される考えを示しているが、草案の輪郭を明確にする議論はこれから本番を迎える。


9条に『自衛軍』を明記
新憲法草案自民が決定 (tokyosinbun)

自民党は二十八日午後、新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)の全体会議を党本部で開き、新憲法草案を決定した。焦点の九条は、自衛軍の保持を明記するとともに、海外での武力行使容認に踏み込んだ。一方で、前文は、当初検討した愛国心への言及を見送り、保守色を抑制した内容になった。

 草案は現行憲法の補則を除く九十九条に対応する形で構成されている。最後まで調整が残っていた九条と前文は、小泉純一郎首相と森氏が協議し、首相が最終判断した。

 九条は、草案づくりのたたき台の段階では、現行の条文を全面的に書き換えていたが、最終的には、戦争放棄を定めた一項を現行条文通り維持。「戦力不保持」をうたった二項は削除し「自衛軍の保持」を書き込んだ。

 戦争放棄条項をそのまま残すことで、九条改正に対する国民の不安を和らげる狙いがあるとみられる。

 自衛軍の任務は、自国の防衛や緊急事態への対応に加え、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」とし、海外での武力行使も可能とした。

 集団的自衛権は明文化を見送ったものの、行使を容認。具体的には「安全保障基本法」(仮称)を制定して行使を規定することにした。

 前文には、現行にはない象徴天皇制の維持を盛り込み、国民主権などの基本原則は継承した。「国を愛する国民の努力によって国の独立を守る」との表現を盛り込むことも検討したが、最終的には見送った。

 日本の歴史、文化、伝統に関する「情緒的記述」(起草委幹部)も盛り込まず、現行憲法の前文よりも簡素な内容となった。

 現行憲法に明文規定のない「新しい権利」として環境権、知る権利、プライバシー権を追加。一方で「国民の責務」という条文を設け「公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」と権利の乱用をいさめた。

 改憲発議要件は、衆参両院の総議員の「三分の二以上」の賛成としているのを、「過半数」に緩和した。



この自民党の憲法改正案に前後して、米軍の再編をめぐる新たな展開が明らかになってきたニュースが出ている。憲法改正は内政問題ではあるが、アメリカの軍事的な世界戦略の動きと無関係ではない。これらがどのように結びついているのか考えておこう。まずは、横須賀に原子力空母が配備されるという記事である。


米軍、横須賀に原子力空母配備へ 08年から

2005年10月28日11時08分(asahi.com)

米海軍は27日夜(日本時間28日午前)、神奈川県の横須賀基地を事実上の母港としている通常型空母キティホークを08年に退役させ、原子力空母を後継艦にすると発表した。キティホークが老朽化したのに伴う通常の交代と説明しているが、在日米軍の再編協議がまとまったことなどを受けて踏み切ったとみられる。日本政府は28日午前、「我が国の安全に寄与する」などとして評価する考えを明らかにしたが、地元横須賀市は反対の姿勢を示した。今後の展開によっては、神奈川県内の米軍再編にも影響を及ぼしそうだ。

 米海軍の発表によると、後継艦は「9隻あるニミッツ級の空母」としているだけで、具体的な艦名は明らかにしていない。「西太平洋地域の安保環境は、最も能力の高い艦船の前方展開を日増しに必要としている」と説明。さらに「こうした態勢は、海軍や統合部隊の即応を可能にし、高度な攻撃力や作戦能力を発揮させることになる」などと必要性を強調した。

 米海軍は長期計画で、前方展開している老朽艦をより新しく能力の高い艦船に順次交代させており、西太平洋地域の安保環境を考えた場合、61年就役の通常型空母のキティホークをより新しい原子力空母に代えるのは必然だと説明。空母を代えても艦載機部隊の配備に変化はないとしている。

 日本では原子力空母への抵抗感が強いことに配慮して、発表文は「64年以来、原子力推進の米海軍艦船は1200回以上、日本に寄港している」と指摘。そのうえで「当初から米政府は日本の港を安全に使用することを日本政府に約束しており、米国内の港に接岸する際にとっている安全措置や手続きを、外国の港でも厳密に順守することを確認している。この約束は引き続き守る」と強調している。
<引用おわり>


もうひとつは、米軍再編に関する「中間報告」が発表されたことである。


自衛隊の役割を拡大 米軍再編「中間報告」発表

2005年10月29日23時50分(asahi.com)

外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が29日、ワシントンで開かれ、在日米軍再編に関する「中間報告」を発表した。「同盟の能力向上」を掲げ、在日米軍と自衛隊による司令部間の連携強化や基地の共同使用などを打ち出した。自衛隊の役割を拡大し、米軍との「融合」を進める。沖縄の普天間飛行場(宜野湾市)の移設先など基地再配置の方針も明記し、「地元に与える負担を軽減する」こともうたった。日本政府は、普天間移設先ヘリポートの工期は5年をめどとしている。事業費は数千億円を見込んでいるという。

 2プラス2は大野防衛庁長官、町村外相、ラムズフェルド米国防長官、ライス米国務長官が出席。来年3月までに「最終報告」をまとめ、再編の実施計画を決めることで合意した。町村外相は記者会見で「来年3月まで難しい仕事を日本政府を挙げてやっていかないといけない」と語った。

 中間報告は、普天間飛行場の移設先について「沖縄県内でなければならない」と結論づけ、沖縄県名護市の「キャンプ・シュワブ海岸線の区域と近接する大浦湾の海域」に長さ1800メートルのヘリポートを造ることを盛り込んだ。県内移設を選んだ理由には、米海兵隊の緊急事態への対応能力の維持を挙げた。

 一方、負担軽減策として沖縄に駐留する海兵隊の半数に当たる7000人の削減も明記した。キャンプ・コートニーにある第3海兵遠征軍司令部の要員を中心にグアムなどへ移転させる。ただ、第12海兵連隊(砲兵)など実戦部隊は削減対象外。国外移転の経費は「日本政府が、適切な資金的な措置を見いだす検討を行う」と、日本側が負担することを示した。

 中間報告は今年2月の「日米共通戦略目標」に基づき、日本有事や周辺事態、国際協力の各場面で「日米の役割・任務の分担」を定めている。

 日本有事や周辺事態では米軍に対する「切れ目のない支援」を約束。イラクのような復興支援や国際救援活動についても「二国間協力が、同盟の重要な要素」とした。

 協力を強化する分野としては、(1)無人偵察機による情報収集(2)警戒監視レーダーで弾道ミサイル関連の情報共有(3)高速輸送艦などによる輸送協力――などをあげている。

 日本有事などを想定した「共同作戦計画」作成を進める方針も示した。

 また、キャンプ座間(神奈川県)に米陸軍第1軍団司令部を改編した「統合作戦司令部」を受け入れ、陸自の機動運用部隊などを統括する中央即応集団(新設)と「共存」させる。米軍横田基地(東京都)にも、空自航空総隊司令部(同)を移転させ、弾道ミサイルに共同対処する「共同統合運用調整所」を設ける。

 米海軍厚木基地の空母艦載機部隊(約60機)を岩国基地(山口県)に移転させ、岩国へ移転予定だった普天間飛行場の空中給油機を海自鹿屋基地(鹿児島県)へ移す。

◇中間報告の骨子

●日米同盟の能力を向上させ、地元負担を軽減

●司令部間の連携強化や基地の共同使用、共同訓練の拡大による能力向上

●キャンプ座間に米陸軍第1軍団司令部を改編した統合作戦司令部と、陸自中央即応集団司令部を設置

●米軍横田基地に空自航空総隊司令部を移し、共同統合運用調整所を設置

●米軍厚木基地の空母艦載機部隊を岩国基地に

●米軍普天間飛行場をキャンプ・シュワブ沿岸に

●在沖海兵隊7000人を削減、グアムなどに移す
<引用おわり>



 キャンプ座間に米軍の「統合作戦司令部」がアメリカ本土から移転し、横田基地にも空自と共同で「共同統合運用調整所」が設置されるというものである。(沖縄の海兵隊の削減は事実上米軍基地縮小には結びつかないものだそうだ)
 
 こうした米軍再編の背景をまとめると、次のようになる。
①世界的な米軍兵力の再配置とハイテク化によって兵力の削減を図る。
②東アジアから中東にかけて、米軍の機動的な展開を可能にするために日本の基地を強化する。
③日本の自衛隊との連携を強化し、削減された米軍兵力の補完勢力とする。

 というようなことが見えてくる。すでに新ガイドライン以後、周辺事態法などで米軍再編に合わせて自衛隊の位置づけを変更してきている。その総仕上げが憲法改正なのであろう。しかし、自民党の改正案は、基本的に9条の「戦争放棄」をそのまま維持し、自衛隊の現状を追認するだけのものであるという人もいる。憲法改正によって何が変わるのかよく検討してみたい。

設問1)憲法改正と米軍再編がどうして結びつくのか?

設問2)自民党の改正案では「集団的自衛権」について、どのような解釈になっているのか?

設問3)自民党の改正案が成立したら、どのような変化が起こると考えられるか?

靖国問題と国連改革

2005-10-20 09:05:31 | 政治問題
今回は、首相の靖国神社参拝問題のニュースを中心にフォローしておきたい。
まず、ニューヨーク・タイムズ紙から

米NYタイムズ紙、靖国参拝は「無意味な挑発」
2005年10月19日11時14分

 米紙ニューヨーク・タイムズは18日付の社説で「東京の無意味な挑発」と題し、小泉首相が靖国神社参拝によって「日本の軍国主義の最悪の伝統を容認した」と厳しく批判した。

 同紙はこの社説で、参拝は「日本の戦争犯罪によって犠牲になった人々の子孫に対する計算ずくの侮辱だ」と述べた。「日本が帝国主義的な征服の道に再び向かうとは誰も懸念していない」としつつも、日中の経済的結びつきなどを挙げて「現在は隣国での悪夢を呼び覚ますのには最悪の時期だ」と分析。「日本は誉れある21世紀を迎えられるよう、今こそ20世紀の歴史に向き合うべきだ」と結論づけた。

 米国の知日派はもちろん、ブッシュ政権内でも小泉首相の靖国神社参拝を評価する意見は皆無といっていい。何の戦略もなしに日中、日韓関係をいたずらに悪化させることは東アジアを不安定にし、6者協議などに悪影響を与えかねず、米国の国益をも損なうからだ。国務省も「対話を通じた解決を」(マコーマック報道官)と日本を含めた関係国に呼びかけている。ニューヨーク・タイムズ紙は日本の歴史認識問題に厳しい態度をとってきたが、この日の社説はこうした米国内の見方を代弁したものと言える。(朝日新聞の記事から)


 小泉首相の靖国参拝をアメリカは歓迎していないというような解説であるが、はたしてどうだろうか?日中・日韓の間がギクシャクすることはアメリカの国益に適うはずだ。むしろ日中韓が政治的・経済的に結びつきを強めることは、東アジアからアメリカが締め出されることにつながると考えるから、むしろ日中韓の反目は歓迎すべきことのはずだ。しかし、6カ国協議でのアメリカの北朝鮮に対する妥協的な姿勢を見ると、当面、東アジアでの政治的混乱は歓迎しないというメッセージと取れなくもない。

 一方で、小泉首相が何の戦略もなしに、批判を承知で、たんに「心の問題」で靖国参拝を強行したとは考えられないことだ。日中関係を悪化させる戦略的な目的があるとしたら、憲法第9条の改正問題であろう。つまり憲法改正問題を政治課題にするためには、中国や朝鮮半島との関係が不安定であることが必須条件であるからだ。
 客観情勢はどう見ても北朝鮮や中国による(日本に対する)軍事的な危険性は急迫していない。北や中国の軍事的脅威を力説するのが憲法改正派の常套手段だから、すくなくとも6カ国合意によって、北朝鮮をめぐる当面の緊張は解消に向かったわけだから、ここで巻き返しが必要だったということであろう。(胡錦濤主席は日本との対話路線に転換して過激化する反日デモを鎮静化したいのだが、小泉政権はその思惑に乗らず、対中国強硬路線にシフトしていることに気づいたはずである。靖国参拝は中国に対してそういうメッセージなのである。)

※靖国神社

 靖国神社は、戊辰戦争から太平洋戦争(大東亜戦争)までの日本人、台湾人、韓国人の戦死者や「日本の国家のために殉じた人々」が「護国の英霊」として祀られており、戦死者の遺族をはじめ様々な人々が参拝する。ただし、慰霊される対象はは軍人・軍属であった人で、「先の大戦の犠牲者」すべてが慰霊されているわけではない。(また、当然ながら西郷隆盛など反政府の立場で戦死した人は慰霊されていない)

 政教分離の問題以外に、戦前の一時期に軍国主義の立場から利用されていた事があると、国会答弁でも指摘されたことのある靖国神社が、極東国際軍事裁判(東京裁判)で判決を受けた14名のA級戦犯を祭神として合祀しており、「国策を誤り、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人びとに対して多大の損害と苦痛を与えた」とした1995年(平成7年)8月15日の社会党の村山富市首相談話に基づいた政府見解に反するものになるとして問題視する意見もある。




 首相の靖国参拝と憲法との関係では、先月末に大阪高裁が違憲判決を出した。


台湾人靖国訴訟で違憲判断 大阪高裁
2005年 9月30日 (金) 11:23


 小泉純一郎首相の靖国神社参拝は政教分離を定めた憲法に違反し、精神的苦痛を受けたとして、台湾先住民ら188人が国と首相、靖国神社に1人当たり1万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は参拝を「公的」とした上で「憲法の禁止する宗教的活動に当たる」として違憲と認定した。

参拝の公私の別について「公に明確にすべきだ」と指摘。その上で「思想や信教の自由を侵害していない」として賠償請求は退け、控訴を棄却した。

小泉首相の靖国参拝を「違憲」としたのは昨年4月の福岡地裁に続き2例目で、高裁では初めて。靖国神社をめぐる国の姿勢にも大きな影響を与えそうだ。

判決理由で大谷正治裁判長は、首相の参拝について(1)公用車を使用し秘書官を伴った(2)首相就任前の公約として実行した(3)私的参拝と明言せず、公的参拝を否定してない(4)目的が政治的-などから、首相の職務に関連し「公的性格」を持つと認定。
(共同通信ニュースから)

※日本国憲法第20条の信教の自由、政教分離

 一、信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国か ら特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
 二、何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されな  い。
 三、国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

 主に第1項および第3項に基づいた問題点が賛否両面から指摘されている



もうひとつは、国連改革と分担金をめぐる動きである。


   日本分担金削減を要求 小沢大使国連演説

 【ニューヨーク=長戸雅子】日本国連代表部の小沢俊朗大使は十七日、国連総会第五委員会(行政・予算)で国連の通常予算分担率について演説し、「日本は安全保障理事会常任理事国五カ国のうち四カ国の負担の合計をはるかに超える負担を課されている」と、国連内の地位に比べて分担率が重過ぎると主張した。
 小沢大使は、「国連は日本の貢献を正当に評価していない」という不満の声が日本国内で高まっていることを指摘。日本が常任理事国四カ国よりも大きな負担を強いられている現状を訴えた。
(産経新聞) - 10月18日15時20分更新


<常任理入り>日本の分担金削減に理解 ボルトン米国連大使

 ボルトン米国連大使は18日、上院外交委員会の公聴会で証言し、日本が国連常任理事国入りできない場合、国連分担金を削減する考えを示していることについて、「19%という分担率を維持できないかもしれないとの主張には相応の理由がある」と理解を示した。分担金のあり方について研究が必要との認識を示した。
(毎日新聞) - 10月19日13時42分更新


  日本の国連分担金削減提案 中国は反対、米理解

 【ニューヨーク=長戸雅子】中国の王光亜国連大使は十八日、日本が国連予算の分担率見直しを提案していることに対し、「分担率の決定は総会に任されている。加盟国は加盟国間の合意に従って分担金を支払うべきで、日本の『脅し』は加盟国に対する政治的圧力だ」と強く反対する姿勢を示した。産経新聞の質問に答えた。
 王大使は、分担率の算定に「地位と責任」を反映させるべきだとする日本の主張に「分担率と安全保障理事会での地位は何の関係もない。中国の分担率は支払い能力の原則に基づき、全加盟国の間で合意された条件によって承認されたものだ」と反論した。
 中国の代表はこの日開かれた総会第五委員会(行政・予算)で、分担率の変更や負担増に反対する演説を行った。
 一方、米国のボルトン国連大使は同日、上院外交委員会の公聴会で分担率問題に言及。日本の分担率が米国以外の四常任理事国の合計を上回っていることを指摘し、「常任理事国入りが実現しない場合、19%の高い分担率を維持できないという主張が出てくることには相応の理由がある」と理解を示した。
(産経新聞) - 10月20日2時42分更新

さて、この分担金をめぐる争いはどちらの言い分に分があると思いますか?


設問1)日本は国連の分担金削減を要求すべきだと思いますか?

設問2)なぜ、小泉政権は対中国強硬路線にシフトしたのか?

設問3)日本は国連常任理事国入りを希望する一方で、靖国問題など近隣諸国との外交的な摩擦が起きているが、どちらを優先する方が国益に適っていると考えるか?


IAEA事務局長にノーベル平和賞

2005-10-11 23:47:55 | 政治問題
 ちょうど「核問題」のところでNPT(核不拡散条約)とIAEA(国際原子力機関)の役割の話をしたばかりですが、タイミングよく、ノーベル平和賞決定の報道です。

 ノーベル平和賞、IAEAとエルバラダイ事務局長に決定

2005.10.07
Web posted at: 18:30 JST
- CNN

オスロ――ノルウェーのノーベル賞委員会は7日、2005年のノーベル平和賞を、国際原子力機関(IAEA)とエルバラダイ事務局長(63)に授与する、と発表した。

授与の理由として、核の軍事利用防止と、核エネルギーの安全な平和利用の実現などでの努力を評価。非核への国際的な努力に出口が見えず、核兵器が国家やテロ勢力に流出する危機に直面している時、IAEAの業務は重大な意味を持つと強調。より広範な、出来る限り可能な国際協力を持ってこの危機に立ち向かわなければならない中で、IAEAや事務局長の仕事にその努力が表れていると結論付けた。

また、エルバラダイ事務局長を、核不拡散体制を強化するため新たな方法を追求する傑出した指導者として称賛している。

エジプトの外交官出身のエルバラダイ氏は1997年、事務局長に選ばれ、今年6月には3選された。2003年3月の対イラク戦争の「大義」とされた大量破壊兵器の存在を否定、米国の不興を買ったこともある。3選で米国は一時、新たな候補者を選出する動きを見せてもいた。

ノーベル賞委員会は、今回の選出結果は米国への間接的批判であると受け止めて欲しくない、とも指摘した。

国連関連機関のIAEAは1957年、核エネルギー成長の時代に合わせて創設された。その後は核拡散防止条約(NPT)体制を守る取り組みに貢献、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、イラクの大量破壊兵器開発問題などで査察官を派遣するなどしている。北朝鮮からは2002年12月、査察官が追放されている。

パキスタンのカーン博士が中心人物とされる「核の闇市場」解明にも努力している。

授賞式は12月10日、オスロで開かれる。賞金は1000万スウェーデン・クローナ(約1億5000万円)で同機関と事務局長が等分する。(CNNの記事から)



 ノルウェーのノーベル賞委員会は7日、05年のノーベル平和賞を、国連の専門機関である国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)とモハメド・エルバラダイ事務局長(63)に授与すると発表した。委員会は、核査察など地道な活動を行ってきたIAEAの活動を高く評価する一方、北朝鮮やイランなど、国際社会に広がる核拡散の動きに警鐘を鳴らした。また、核軍縮に背を向ける核保有国に対して核廃絶に向けた努力を改めて求めた。

 ノーベル賞委員会は授賞理由で、核不拡散条約(NPT)体制を管理する立場のIAEAの活動実績について、「核エネルギーの軍事利用を防ぎ、平和利用を可能なかぎり確実にしてきた」と評価。「軍縮の努力が行き詰まり、核兵器が(核保有を求める)国々やテロリストの手に渡る恐れがある中で、IAEAの任務は計り知れないほど重要だ」と、将来、IAEAが核拡散防止に果たす役割の重要性も強調した。

 エルバラダイ事務局長については、「(NPT体制の)ひるまぬ擁護者」と表現。核査察の強制力を高める「追加議定書」の策定に踏み切るなど、核拡散を防ぐための功績を高く評価した。

 ノーベル賞委員会は、「我々は、(軍縮分野では)核兵器廃絶を視野に入れ、国際政治で核兵器の有用性を減らすための戦いに焦点をあてて選考を行ってきたが、核軍縮の進展はほとんどない。核兵器反対の活動が今日、一層重要になってきている」と授賞の背景を説明している。

 ダンボルト・ミョス委員長は記者団に対し「これは核廃絶のために可能なことをせよという世界の人々へのメッセージだ」と述べた。

 IAEAは、原発や核研究施設を対象に査察を実施するほか、平和利用のための研究開発や専門家の訓練などを支援する。査察などの任務遂行の権限を持つ理事会は35カ国で構成しており、日本の核施設も査察を受けている。

 ノーベル賞委員会は、ノルウェー議会が任命した学識経験者ら5人で構成。今年の平和賞は、全世界から推薦された約200件の団体、人物の中から選ばれた。

 授賞式は12月10日、オスロで開かれる。賞金は1千万スウェーデンクローナ(約1億5千万円)。(朝日新聞の記事から)


CNNの記事は、あっさりしたものでまるでエルバラダイ氏の受賞を喜んでいないかのような反応であるのに対して、朝日の記事は、ノーベル賞委員会の発言を加えて、氏の受賞が「核廃絶」へのメッセージであると伝えている。


同じく、読売の記事にもノーベル賞委員会の委員長のコメントを伝えている。

 ミュース委員長は発表後の記者会見で、「原爆の犠牲になった日本の人々が核廃絶に向け、尽力してきたこともよく認識している」と述べ、今年が広島と長崎への原爆投下から60年となる“節目の年”であることも選考要因となったことを示唆した。
(2005年10月8日0時28分 読売新聞)

また、毎日新聞には次のような解説が載せられた。

◇核軍縮を巡る現状に苦悩の表れ=解説
 1896年に亡くなったノーベル賞の創始者アルフレッド・ノーベルは「常備軍の廃止・削減」の功績者こそ平和賞の趣旨に最もふさわしいとの遺志を残した。戦後60年の節目に核管理・軍縮に努力する国際機関に平和賞が贈られることになったのは、同賞委員会が賞の原点に立ち返り、核拡散の危機が高まる現状に強い警告を発したものといえる。
 ノーベル賞委員会は10年おきに核廃絶運動への貢献者を平和賞に選んできた。原水爆に反対したソ連の「水爆の父」サハロフ博士(75年)、核戦争防止国際医師の会(85年)、パグウォッシュ会議とロートブラット会長(95年)、そして今年のIAEAとエルバラダイ事務局長。裏返せば核廃絶が遅々として進まない反映であり、節目ごとに核軍縮を巡る現状に警告を発し続けなければならない同賞委員会の苦悩の表れでもある。
 今年の平和賞の候補にはIAEAの他に広島、長崎の被爆者でつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)、旧ソ連の核兵器処理に尽力したルーガー、ナン現元米上院議員も挙がっていた。IAEAが選ばれたのはイラン、北朝鮮など当面する核危機の回避が国際社会の最優先課題であり、それを交渉で解決しようとするIAEAへの高い評価があったからだろう。
 イラク戦争前に大量破壊兵器の査察継続を主張したエルバラダイ氏はイラク侵攻に踏み切った米英を強く批判してきた。核をはじめとする大量破壊兵器廃絶には国際社会の合意形成への粘り強い努力が必要であるとのメッセージが今回の授賞には込められている。【欧州総局長 小松浩】


どうやら日本の被団協も平和賞の有力候補だったらしい。他を抑えてIAEAとエルバラダイ事務局長が選出された背景には、いっこうに進まない核軍縮に対する激励という政治的メッセージがこめられたということのようだ。(ちなみに、日本の佐藤栄作首相が「非核三原則」を表明したことでノーベル平和賞を受賞している)
たしかに、現状において核軍縮と核廃絶への取り組みの道は限られている。そもそもNPT体制自体が既存の核保有国を優遇するもので差別的だと批判して条約を批准しない国もある。インド・パキスタン・イスラエルはNPTに加わらず、核保有国になっている。また、北朝鮮はNPTを脱退し、IAEAの査察官を追放して核開発に向かった。IAEAは査察以外に具体的な強制力も持っていない。現在NPTに参加していない国も含めた新しい枠組み作りが求められているが、その作業も難航している。それでも、このNPTとIAEAの取り組みが、現状においては核廃絶への唯一の選択肢であるということなだろう。

設問1)これまで核軍縮に関してどのような取り組みが行われてきたか。

設問2)IAEA(国際原子力機関)の具体的な仕事と目的を述べなさい。



国際情勢と北朝鮮問題

2005-09-27 10:07:25 | 政治問題
9月19日、北朝鮮の核兵器疑惑をめぐる6カ国協議が合意に達し、共同声明が発表された。 その内容は次の通りである。

6カ国協議 共同声明での合意事項(全文)

一、6カ国は平和的な方法による、検証可能な朝鮮半島の非核化が6カ国協議の目標であると重ねて表明した。
 北朝鮮は、すべての核兵器及び現在の核計画を放棄し、一日も早く「核拡散防止条約」(NPT)に復帰するとともに、「国際原子力機関」(IAEA)の保障・監督下に戻ると確約した。
 米国は、米国が朝鮮半島に核兵器を持っておらず、核兵器や通常兵器によって北朝鮮を攻撃する意図はないと確認した。
 韓国は、92年の「南北非核化共同宣言」に基づき、核兵器を持ち込まない、配備しないとの確約を重ねて表明するとともに、韓国領土には核兵器がないことを確認した。92年の「南北非核化共同宣言」は順守・実行されるべきである。
 北朝鮮は、核エネルギーの平和利用の権利を擁することを声明した。その他各国はこれを尊重すると表明するとともに、適当な時期に北朝鮮に軽水炉を供与する問題を討論することで合意した。
二、6カ国は「国連憲章」の趣旨、原則並びに国際関係について認められた規範を順守することを確約した。
 北朝鮮と米国は、相互の主権を尊重し、平和共存し、2国間関係に関するそれぞれの政策に基づき、国交正常化を実現するための措置をとることを確約した。
 北朝鮮と日本は、「日朝平壌宣言」に基づき、不幸な過去を清算し、懸案事項を適切に解決することを基礎として、国交正常化のための措置を取ることを確約した。
三、6カ国は、2国間及び多国間で、エネルギー、貿易及び投資分野での経済協力を促進することを確約した。
 中国、日本、韓国、ロシア、米国は、北朝鮮にエネルギー支援の意向を表明した。
 韓国は、北朝鮮に対する200万キロワットの電力供給に関する05年7月12日の提案を再確認した。
四、6カ国は、北東アジア地域の恒久平和と安定のため共に力を尽くすことを約束した。直接の当事国は、朝鮮半島の恒久的な平和メカニズムの確立について別途、交渉していく。
 6カ国は北東アジアの安全保障協力を促進するための方策を探求することで合意した。
五、6カ国は、「約束対約束、行動対行動」の原則に基づき、協調的で一致したステップを取り、上記の共通認識を段階的に実行に移していくことで合意した。
六、6カ国は05年11月上旬、北京で第5回6カ国協議を開催することで合意した。具体的な日程は別途話し合う。
(毎日新聞) - 9月20日


この共同声明では、北朝鮮が核兵器開発をやめる代わりに、アメリカなど他の5カ国が、兵器開発に使えない軽水炉型の原子炉を北朝鮮に供与することが含まれている。だが声明には、北朝鮮がいつまでに核開発を放棄するのか、他の国々がそれをどのように検証するのか、軽水炉の供与はどのタイミングで行われるのか、北朝鮮の核放棄とどちらが先なのか、といった具体的な日程に関する表現がない。
 いちおう合意には達したが、ほんとうに北朝鮮は核開発を放棄する気があるのか、合意事項がきちんと履行されるのか危惧する声もある。

それでは、この6カ国合意の目的はなんだったのか?共同声明の内容を読むと、北朝鮮に有利で大幅にアメリカが譲歩した内容である。特に、アメリカが朝鮮半島の非核化を認め、核攻撃を行わないこと文言化したことである。これは北朝鮮がアメリカに求めてきた「不可侵宣言」にあたる。

なぜ、ブッシュ政権は北朝鮮に譲歩してまで6カ国合意をまとめようとしたのか。そのわけは、混迷するイラク情勢とイランの核開発疑惑問題があると指摘されている。イランも北朝鮮と同様に核兵器開発の疑惑が起こっていたが、IAEA(国際原子力機関)の報告書によるとその可能性は低い。しかし、ブッシュ政権はイラク侵攻と同様の手法でイランを国連安保理で追及し、軍事侵攻も計画しているのではないかと言われている。

ブッシュ政権が中東情勢に注力するためには、東アジアの安定化、とりわけ不安定要因である北朝鮮問題を解決しておきたいということなのだろう。(それも中国を使って合意させたのだから、問題が起きたら中国の責任ということになり、中国はいやでも東アジアの安定化に腐心せざるえなくなる。)

日本は、この共同声明では何も得るものがなかった。「日朝平壌宣言」に基づく国交正常化が盛り込まれたが、拉致問題については触れられていない。
けっきょく、今回の交渉でも日本は協議のらち外におかれたと言っていいだろう。


設問1)6カ国協議の目的は何であったか。

設問2)6カ国共同声明は米国が北朝鮮に譲歩した内容だというのはなぜか。

設問3)日本が主張している「拉致問題」について、共同声明ではどういう扱いになっているのか。

設問4)日本が北朝鮮に対して「経済制裁」を発動した場合、どのような外交的・軍事的リスクが発生すると考えられるか。



衆議院選挙のマニフェスト比較

2005-09-05 01:03:30 | 政治問題
9月11日に衆議院選挙の投票が行われる。郵政民営化法案が参議院で否決されたことを契機に、衆議院が解散されて今回の総選挙となった。与党自民党の造反派(民営化反対派)を非公認にし、反対派の選挙区に対立候補を立てるという異例の選挙となった。
今回の選挙は有権者の関心も高いが、まだ選挙権がない高校生でも関心が持てそうな選挙であるとも言えるかもしれない。せっかくだから、有権者になったつもりでどの政党・候補に投票するか検討してみるのもいいだろう。
そこで、各政党の政権公約(マニフェスト)の比較をしながら、政策や政治方針にどのようなちがいがあるか考えてみよう。

政党マニフェスト比較がヤフーのサイトに掲載されている。

この中の主な項目の要約だけを並べてみると、次のとおりである。
◆郵政民営化
自民党 ◆次期国会で法案を成立
民主党 ◆郵貯・簡保の規模縮小
公明党 ◆次期国会での法案成立に万全を期す
共産党 ◆民営化に反対
社民党 ◆公社を維持、郵政三事業のユニバーサルサービス維持
◆年金制度
自民党 ◆公務員とサラリーマンの年金制度の統合
民主党 ◆すべての年金の一元化 
公明党 ◆議員年金制度の廃止
共産党 ◆全額国負担の最低保証年金
社民党 ◆年金制度の一元化、基礎部分を税金で確保
◆税・財政改革
自民党 ◆2007年度に消費税含む税制抜本改革
民主党 ◆国の直轄公共事業を抜本的に見直し 
公明党 ◆事業仕分けによる歳出削減に着手
共産党 ◆大増税に反対 
社民党 ◆政府税調の個人所得増税に反対
◆外交問題
自民党 ◆自衛隊法の改正 ◆防衛庁を防衛省に ◆北朝鮮拉致問題の解決に全力
民主党 ◆国立追悼施設の建立 ◆自衛隊のイラク撤退を12月までに ◆日中関係再構築、日韓関係強化
公明党 ◆アジア各国との連携協定を推進 ◆イラクの人道・復興支援の継続 ◆北朝鮮の拉致・核問題の解決に尽力
共産党 ◆憲法改正に反対、9条の遵守 ◆6カ国協議での北東アジア諸問題の解決 ◆あらゆる海外派兵に反対
社民党 ◆自衛隊の縮小・再編 ◆イラクからの自衛隊の早期撤退 

設問1)各政党とくに自民党と民主党の政策の違いを各項目ごとにまとめなさい。
設問2)各政党の政策についての問題点を指摘しなさい。

参考 「各党マニフェストを読む」(朝日新聞)