goo blog サービス終了のお知らせ 

時々刻々現社的学習2

現代社会の授業用ブログ

記述問題の解答と解説

2006-03-08 23:32:06 | Weblog
期末考査の第9問の解答と解説をここに掲載しておきます。


(設問1)日本の社会で格差が拡大しているというのは、具体的にどういう現象に現れているのか。
<解答例>
意識調査で自分を中流とする割合が減り、上流と下流の割合が増えている。最近ではデパートの売り上げが回復し、高額品の売り上げが伸びた。その一方で、ユニクロや100円ショップの売り上げも堅調である。30代で都心の高級マンションに住む者もいれば、ホームレスは依然として減少しない。生活保護世帯が増加し、健康保険料が払えない者、年金保険料が未納の者も増大している。
<解説>
ニートやフリーターの増加をあげている者が多いが、これらは格差拡大の現象かどうか。ニートはたしかに(収入がないという意味では)生活的には下流層を形成するかもしれないが、ニートそれ自体が格差の拡大を表しているわけではない。具体的に所得格差が現れている現象を答えることがポイント。

(設問2)日本で格差の拡大がなぜ起こっているのか。また、格差拡大はどうして問題なのか。
<解答例>
長期の不況や規制緩和による競争激化で企業がリストラしたり、雇用削減をした結果、失業者が増加した。また、雇用調整によりパート・バイトや派遣社員といった非正規雇用を拡大した。その結果、正社員と非正規雇用との間の所得格差が拡大し、二極分化が進んだためと考えられる。所得格差が拡大し、生活に困窮する下流層が増大すると、生活保護などの社会保障支出が増大し、財政を圧迫する。「小さな政府」をめざしたはずが、政府の社会保障支出が増大するという皮肉な結果になってしまう。
<解説>
格差拡大の原因に「成果主義賃金」をあげる者もいた。成果主義を導入すると、たしかに同じ企業の従業員の中でも所得格差は起こるが、それ以上に正社員と非正規雇用者との間の所得格差の方が大きい。社会全体でみれば非正規雇用の拡大の方が格差拡大に影響していると考える。

(設問3)「ニート」とフリーターはどうちがうのか。また、ニートの増大はなぜ問題なのか。
<解答例>
「ニート」は、学校に行かず、働いていないし、職業訓練を受けているわけでない者を意味する。34歳までの若年層がその対象になっている。フリーターは、定職につかずアルバイトなどの短期雇用で職を転々している者のことである。どちらも意識的にそのスタイルを貫いている者もいるが、その多くは正規採用されないために一時的に失業状態である場合が含まれている。ニートは就職せず年金未納者も多いから、将来無年金者の増大につながりかねない。ニートの増大は将来の社会保障支出の増大要因である。
<解説>
「ニート」は働く意欲がない者とかひきこもりとかばかりではない。本来は働ける状態にあるのに希望にあう職業が見つからないといった理由で就職しない人たちである。背景には企業側の新規採用の抑制といったことがある。若年層の失業率の高さは日本だけでなくヨーロッパでも深刻である。

(設問4)日本の医療保険制度の問題点を二つあげなさい。
<解答例>
高齢化の進行と医療の高度化の影響で医療保険支出が増大し、健保財政は赤字が拡大している。そのために患者の自己負担割合を拡大してきたがこれ以上の負担増は困難である。また、国保の保険料未納者が増加し、保険資格を失ったために適切な治療が受けられないという事態も起きている。
<解説>
年金とちがい医療保険の未加入者は少ないが、非正規雇用の場合、自分で保険料を支払う国民健康保険加入者が多く、未納者が増加する要因となっている。患者の自己負担割合が拡大しているから、公的医療保険だけでは安心できないという層も増えている。

(設問5)日本の年金制度の問題点を二つあげなさい。
<解答例>
国民年金と厚生年金・共済年金では年金の給付額に格差がある。そのために年金制度を一元化することが求められているが、現在まで実現していない。また、日本の年金制度は修正積立方式であるが、実際的には賦課方式のように現役世代の保険料に依存している。保険料未納者が増大したり、少子高齢化が進めば現行の年金制度を将来も維持していけるかどうか不明確である。
<解説>
年金未納者の問題をあげる者が多かったが、説明不足なものも多い。年金未納が増えると老人の年金が減るというようなことはないし、年金制度がすぐに成り立たなくなるというものではない。しかし、将来もいまの制度が継続できるかという保証はない。いちばん大きな問題は全員加入が義務付けられている国民年金(基礎年金)の給付だけでは老後の保障が十分ではないという点である。だから未納者が増加し、無年金者が増えるという悪循環になっている。

ディベート課題 「青少年健全育成条例について」

2006-02-07 10:20:40 | Weblog
最近、青少年をめぐる話題にこういうのがありました。
大阪府で16歳未満の青少年の門限を午後8時にするというものです。詳細は、

Watch!:府青少年健全育成条例改正 「大人の責任」強調 /大阪

 ◇子どもの“門限”8時、親に努力義務
 カラオケボックスなど深夜営業店に対し、16歳未満の青少年の立ち入りを夜7時までに制限するなど、全国で最も厳しい府の改正青少年健全育成条例が1日、施行された。保護者に16歳未満の子どもを夜8時以降外出させない努力義務も科しており、「大人の責任」を強調する内容になっている。一方、当の子どもからは不満の声も上がっている。【大場弘行】
 ◇深夜営業店に不公平感、女子高生「束縛うっとうしい」
 府によると、府内で04年に深夜はいかいで補導された青少年は約16万6000人。00年の約2・4倍に上り、中学生が罪を犯すケースも多い。深夜でも青少年への入店規制のない店の増加も背景にあることから、ゲームセンター▽カラオケボックス▽インターネットカフェ▽マンガ喫茶▽ボウリング場に、夜7時以降(保護者同伴や部活動などの場合と、16歳以上18歳未満は同10時以降)の立ち入りを禁じた。
 また、保護者には、通勤通学など正当な理由がない限り、子どもを夜8時以降(16歳以上18歳未満は夜11時以降)外出させない努力義務も盛り込んだ。
 しかし、違反した親や子は罰せられないのに、店側は30万円以下の罰金が科されることもあり、不公平感や売り上げへの影響を懸念する声も多い。府子ども青少年課は「条例で、法律に先行して保護者を罰するのは難しい。青少年を支え、導くのは社会全体の責務として理解してほしい」と強調する。
 行動を制限される子どもからは不満の声も。条例施行前夜の先月31日のミナミ。友人2人と夜8時を過ぎても制服姿で遊んでいた女子高生(15)は「親には夜10時半までに帰ってくればいいと言われている」とし、「別に悪いことをしているわけじゃないし、勝手に束縛されるのは、何となくうっとうしい」と話した。
 ミナミの戎橋に立ち、夜9時から11時過ぎまで制服姿の子どもを数えた。2~5人の十数組が通り、大半は雑貨店や洋服店に立ち寄ったが、中には風俗店が入る雑居ビルから出てきた女子高生もいた。条例を「迷惑」と言い放った別の女子高生(15)に「犯罪に巻き込まれない自信はあるか」と聞くと、一瞬迷い、「ないかも……」と力無く答えた。

2月6日朝刊
(毎日新聞) - 2月6日13時3分更新

カラオケは7時まで」 門限条例施行

 カラオケボックスやボウリング場など夜間営業施設について16歳未満の出入りを原則午後7時までとする大阪府の改正青少年健全育成条例が1日、施行された。
 府によると、同様の条例を持つ43都道府県は午後10時-11時以降の出入りを禁止しており「全国で最も厳しい内容」という。違反した場合、出入りを認めた施設経営者に30万円以下の罰金が科せられる。
 ただし、保護者同伴ならゲームセンターを除いて午後10時までは立ち入り自由。府は当初、保護者同伴でも午後7時以降の出入りを認めないとする案を検討したが、府民に意見を公募したところ「厳しすぎる」「家族のだんらんを奪うのか」などと反対意見が殺到したため、撤回した。
(共同通信) - 2月1日12時46分更新


■高校一年ならまだ16歳未満の人がいるかもしれませんが、16歳以上でも午後10時までとかの規制があるようです。
じつは、東京都にも同じような「青少年健全育成条例」があり、午後11時以降の18歳未満の青少年の深夜外出が制限されています。


東京都青少年の健全な育成に関する条例     H17改正

<抜粋>

(着用済み下着等の買受け等の禁止)
第15条の2 何人も、青少年から着用済み下着等(青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しくはふん尿をいい、青少年がこれらに該当すると称した下着、だ液又はふん尿を含む。以下この条において同じ。)を買い受け、売却の委託を受け、又は着用済み下着等の売却の相手方を青少年に紹介してはならない。
2 何人も、前項に規定する行為が行われることを知つて、その場所を提供してはならない。
 
(青少年への勧誘行為の禁止)
第15条の3 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為を行つてはならない。
一 青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しくはふん尿を売却するように勧誘すること。
二 性風俗関連特殊営業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号。以下「風適法」という。)第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業をいう。)において客に接する業務に従事するように勧誘すること。
三 接待飲食等営業(風適法第2条第4項に規定する接待飲食等営業のうち、同条第1項第2号に該当する営業をいう。)の客となるように勧誘すること。
 
(深夜外出の制限)
第15条の4 保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後11時から翌日午前4時までの時間をいう。以下同じ。)に青少年を外出させないように努めなければならない。
2 何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。
3 何人も、深夜に外出している青少年に対しては、その保護及び善導に努めなければならない。ただし、青少年が保護者から深夜外出の承諾を得ていることが明らかである場合は、この限りでない。
4 深夜に営業を営む事業者及びその代理人、使用人、その他の従業者は、当該時間帯に、当該営業に係る施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すように努めなければならない。
 
(深夜における興行場等への立入りの制限等)
第16条 次に掲げる施設を経営する者及びその代理人、使用人その他の従業者は、深夜においては、当該施設に青少年を立ち入らせてはならない。
一 興行場
二 設備を設けて客にボウリング、スケート又は水泳を行わせる施設
三 個室を設けて当該個室において客に専用装置による伴奏音楽に合わせて歌唱を行わせる施設
四 設備を設けて客に主に図書類の閲覧若しくは観覧又は電気通信設備によるインターネットの利用を行わせる施設(図書館法(昭和25年法律第118号)第2条第1項に規定する図書館を除く。)
2 前項各号に掲げる施設を経営する者は、深夜において営業を営む場合は、当該営業の場所の入口の見やすいところに、東京都規則で定める様式による掲示をしておかなければならない。
 


■さて、今回考えてもらいたいのは、こうした深夜外出の制限などはこども(青少年)の基本的人権(自由権)の侵害と言えるのかどうかということです。
それでは、みなさんは次のどの考え・立場かを決めて、立論してください。


1、青少年の健全育成という目的から、この程度の規制は人権侵害にはあたらないという考え。(その理由)

2、青少年の健全育成が目的でも、条例による規制は個人の自由権の侵害にあたるという考え(その理由)

3、青少年の健全育成という目的で自由の制限は認められるが、外出禁止や門限などは行き過ぎであるという考え。(その理由)


憲法改正と人権擁護法案

2005-11-09 11:42:03 | Weblog
自民党の憲法改正案には第9条以外にも、いくつか改正点がありますが、新たに条文が加わったのが「新しい人権」に関するものです。具体的には(1)名誉権(2)プライバシー権(3)肖像権(4)知る権利(5)犯罪被害者の権利などがあげられています。
いままでの基本的人権に加えるかたちで「新しい人権」が条文に規定されることはいいことだとは思います。しかし、(それぞれの「人権」について)その必要があるのかどうかは別に検討しなければならないでしょう。

たとえば、いま国会で物議をかもしている「人権擁護法」という法案がある。その名もずばり「人権」を擁護するための法律ということだが、とんでもない人権を抑圧する法案だという人もいる。


人権擁護法(じんけんようごほう)は日本の法律案(2005年11月現在)。日本国憲法第14条には「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とあるものの、被差別者の人権を守る実効的な法律が無い日本では初の人権擁護を目的とする法律案である。

この法案は、2002年の第154回国会に提出され、2003年の衆議院解散の際に廃案となった法案だが、2005年2月、突然政府・与党が一部修正を加えた上で再提出する方針を固めた。しかし、自民党内で反対意見が噴出。自民党執行部は、2005年7月に第162回通常国会での法案提出を断念した。だが、自民党の中川秀直国対委員長は2005年9月18日に放送されたサンデープロジェクトで法案が再提出されるであろうと言う見通しを示し、同年9月29日の参議院本会議では民主党の神本美恵子議員の人権侵害の問題に関する質問に対して、小泉純一郎総理が「人権擁護法案を、出来るだけ早期に、提出出来るように努めて参ります」と答弁して法案成立に意欲を見せた。

この法律案により設置される行政機関である人権委員会(仮称、以下同じ)に対して、その権限の大きさ、委員の選出過程の不透明さなどが批判の対象となっている。これについては国連人権小委員会より提案された国内人権機構の地位に関する原則に沿ったものとなることが求められている。

(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用)

<法案の抜粋>
第三条
何人も、他人に対し、次に掲げる行為その他の人権侵害をしてはならない。

 一 次に掲げる不当な差別的取扱い

  イ 国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱い

  ロ 業として対価を得て物品、不動産、権利又は役務を提供する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱い

  ハ 事業主としての立場において労働者の採用又は労働条件その他労働関係に関する事項について人種等を理由としてする不当な差別的取扱い(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
    (昭和四十七年法律第百十三号)第八条第二項に規定する定めに基づく不当な差別的取扱い及び同条第三項に規定する理由に基づく解雇を含む。)

 二 次に掲げる不当な差別的言動等

  イ 特定の者に対し、その者の有する人種等の属性を理由としてする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動

  ロ 特定の者に対し、職務上の地位を利用し、その者の意に反してする性的な言動

 三 特定の者に対して有する優越的な立場においてその者に対してする虐待

2 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

 一 人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として
 前項第一号に規定する不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為

 二 人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として
    前項第一号に規定する不当な差別的取扱いをする意思を広告、掲示その他これらに類する方法で公然と表示する行為

(引用終わり)



さて、この法案のどこが問題なのか考えてほしい。とくに、「差別的言動」に対する措置はどのような人権上の問題を含むことになるのか。(つまり、差別用語を使っただけで処罰される、というのは問題ないのか?)


新規開設

2005-05-13 09:20:39 | Weblog
現代社会の授業用としてふたつ目のブログになります。使い勝手を考えて、こちらのブログも活用します。