5月11~13日の日程で、2016年春のJapan IT Weekが東京ビッグサイトで開催されました。Web & デジタルマーケティングEXPOのセミナーでは、クックパッド株式会社の中村耕史氏が、同社運営のお料理レシピサイト「cookpad」のデータ活用について講演。ハロウィンと餃子の皮の関係や「一汁三菜」から変化する日本の食卓をcookpadの検索データで分析しました。【高橋慧】
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cookpadのデータからみる生活者の食生活とcookpadのデータ活用について話をする。cookpadは料理を中心としたコミュニティサイト。レシピは約230万品あり、月に延べ6000万人ほどに利用されている。スマホからのアクセスが7割だ。海外にも積極的に展開している。
cookpadはレシピサイトなので、いかにして探したいレシピに出会ってもらえるかに対してデータ活用を取り組んでいる。例えば、「簡単 とりのみぞれ煮」をテキストで見た場合、鶏肉を使った料理なのか、メインの料理なのかなどを自動的に機械学習で分類して検索に反映するなどのデータ活用を行っている。
「餃子の皮」を切り抜いて、オバケに
月6000万人の利用データから、「日本の食卓」がある程度見えてくると考えている。この情報は我々だけが持つのではなく、メーカーや生産者、流通などにもデータを提供している。
検索されるワードは圧倒的に「簡単」が多い。また、メニュー名の検索よりも材料名で検索されることの方が多い。このような検索データをマーケティングデータとして提供している。始めたばかりだが、価格を大幅に落として「メディア」(たべみるニュース)として提供していくこともやっている。
簡単に説明すると、データサービス「たべみる」は、検索データなどの情報がウェブ上で閲覧できる。例えば、「ハロウィン」の検索ワードに対して「餃子の皮」が組み合わせて検索されるケースが伸びてきていることを手元でみることができる。
(実際に)レシピを見れば、実は餃子の皮は(ハロウィンの)おばけに切り抜いて使われることなどが分かってくる。これが分かると、今まで売らなかった商材を売るなどさまざまな売り場で一緒になってハロウィンを盛り上げていくことができるようになる。
日本の食卓はどのように変わってきているのか。「材料」と「メニュー」で検索される割合はだいたい6:4。検索は材料とメニュー以外で検索される割合が年々高くなってきている。このほかのキーワードは「簡単」「ハロウィン」「運動会」といったようなワードで検索されている。
女性は「素材」、男性は「メニュー」で検索
特徴として、平日は素材名で検索される割合が高く、かつ女性の方が多い。女性が多いのは料理頻度と関係があり、料理頻度が高ければ高いほど素材から献立を考える。冷蔵庫に残っているものやスーパーで安くなっているもので作ろうという志向が強くなってくる。
男性は、休日にアクセスして「男の料理」と呼ばれるようなローストビーフやカレーなどメニュー起点で検索することが多い傾向がある。
このようなデータ分析を進めるにあたり、キーワードの意味づけを進めている。例えば親子丼と豚丼は両方とも「どんぶりもの」というタグ情報をつける。かつ「どんぶりもの」は「主食」「和食」といったメタ的な情報を拡充することを進めている。
これによってどういうメニューが検索されているかが分かった。メニューは「主食」が一番多く37%。「主菜」は30%、「副菜」は21%、「汁もの」9%、「鍋もの」3%という割合になっている。検索なので、副菜や主食の方が割合が高いと考えていたが、主食ばかり、副菜ばかりを検索しているのではなく、幅広いメニューが検索されている。
オムライスは「とろとろ」「ふわふわ」 → 「とろふわ」
トレンドをみると、副菜と汁ものが大きく伸びているのが特徴。主食は他と比べると伸びが少ないが、細かくみると特徴がある。主食は、丼ものや炊き込みご飯、混ぜご飯、麺類が非常に大きく伸びている。逆にパンの検索はマイナスになっている。
単品でご飯になるようなものの検索が顕著に増えている。具体的には「おにぎらず」や「ちぎりパン」「うどん」「炊き込みご飯」「オムライス」。
オムライスは検索の組み合わせをみると面白い傾向がある。もともと「とろとろ」が「ふわふわ」に比べると少し多かったが、最近は「ふわふわ」の検索が伸びてきた。両方を合わせた「とろふわ」が上がってくるなど生活者がメニューに対してどういう欲求を持っているか、どういう材料を使おうとしているのか、どういう文脈で食べようとしているのかを垣間見ることができる。
オムライスをどう食べているのかはまだ見切れていないが、例えばこういう食べられ方をしているのではないか。オムライスと具が多いスープと副菜。汁ものの人気のレシピをみると具が多い。これは、野菜をしっかり取りたい、残り物を使いたいという文脈と相性が良い。副菜が伸びている背景も同じで、野菜が献立のキーになっている。
一方で、野菜をうまく副菜やスープで摂る代わりに、品数が一汁三菜から一汁二彩、一汁一食に徐々にシフトしているのがいまの状況と考えている。単身なら主食と、副菜もしくは汁物。二人暮らしなら主食に、品数を増やさなくてもメニューとして成立するお肉系のメニューと副菜もしくは汁物。
お子さんがいると一品増えたりお魚が出るようになり、品数が徐々に増えていくのが今の食卓の状況だ。実際に、魚の検索は徐々に減っていて、お肉の検索が増えている傾向がある。
スマホの普及によって、献立や買い物の意思決定がより材料起点で検索されるようになった。さらに、気分やイベントなどの「コト」とともに検索して決めることが増えている。今の生活者のニーズは、少ない品数でも野菜が取れて献立として成立するメニューに商機があることがみえてくる。(終)
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