平方録

列車の心地よい揺れに反比例する食い物の恨み

北関東のその町までは各駅停車の鈍行列車で2時間半である。

かつては東京と上野でそれぞれ折り返していた電車が直通運転するようになり、それより前には貨物線を経由して新宿回りの路線が開通したおかげで、時間はそれなりにかかるが乗り換えなしで行くことが可能になったのだ。
おまけにグリーン車が連結されているから1000円足らずの別料金を払えばゆっくりとリクライニングさせて乗っていればいいのだ。

ボクは列車に乗ってレールと車輪が立てる様々な音を耳にしながら、移り変わる窓からの眺めをぼんやりと眺めているのが好きである。
これには大抵、脇にビールとかカップ酒の日本酒を置いておくと、列車の揺れは特別に豊かなものになる。
酒のつまみに土地の駅弁などを手に入れることができれば、もう言うことはない。

窓の外の景色にしたって、風光明媚なところはそれなりに見応えがあり、目を見開いて眺めることが多いが、なんの変哲も無い住宅の密集する町中の光景でさえ、洗濯物の干し方とか、屋根の汚れ具合やら家の傾き加減などを見ながら、そこに暮らす人々を想像したりするから、退屈なことは一つもない。
それに、列車が立てるリズミカルな音と適度な揺れは、なまじの子守唄よりよほどの催眠効果があると言うもので、例え寝入ってしまっても目的地に連れて言ってくれるのだ。

新幹線を使うのも手だが、乗車時間だけ見れば150分に対して片や100分で済むから早いことは早いが、乗り換え時間やら待ち時間を含めたら50分の短縮も実質は30分足らずのことである。
しかも運賃は格段の差があるのだ。
急ぐ旅でないなら、ゆっくりのんびりの方に軍配をあげるのが、今のボクの流儀である。

今回の目的は孫娘に会いに行くことだから、学校から戻って来る頃を見計らって到着すればいいんである。
ちょうど昼前の出発になり、弁当と缶ビールを買い込んでいそいそと乗り込んだ。
こう言う時間帯のグリーン車はガラガラで快適である。
大崎やら渋谷駅周辺の大改造を見ながら弁当のおかずをつまみにして飲むビールもオツなものだ。

でも、この日選んだ弁当はあまりよいチョイスとは言い難かった。
茎わかめの混ぜご飯、小田原産かまぼこ、三浦産ひじきと枝豆とさつま揚げの炒め煮、三崎産マグロのピリ辛煮、横浜名物昔ながらのシウマイなどが入っていますよ〜ぉ、夏季限定ですよ〜ぉ〜と言う触れ込みだったのだが…
2、3年前にも「春限定」ってやつを買って、なんだよ羊頭狗肉だな、とがっかりした覚えがあるのを忘れていた。

これなら定番のシウマイ弁当にしておけばよかったものをと思っても、後の祭りというものである。
つくづく学習能力の欠如を思い知らされた。
食い意地がはっているか、ボケ老人の境地に足を踏み入れているかのどちらかで、いや、両方同時かもしれないのだ。
気をつけなくては。




見た目は変化に飛んでいて美味しそうなんだけどなぁ


四季別に中身を変え、手をかけているつもりなのか930円もするのだ
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