“72時間の壁”超え救出…
命をつないだ要因とは トルコ地震
トルコ南部を震源とする地震では228時間ぶりに親子3人が救出されるなど
生存率が急速に下がるとされる「発生から72時間」をこえた後も救出劇が相次いでいる。
家屋倒壊や土砂崩れなどで閉じ込められた際、「発生72時間」が救出の目安とされている。
今回の地震で、72時間の壁を超えて救出された背景にはどんな要素が重なったのか。
兵庫県災害医療センターの災害医療センター長・石原諭医師に「命をつないだ要因」を聞いた。
■大きな外傷がない
がれきの山の中にあって、大きな外傷がないことが生存の前提となる。
軽い切り傷などは含まないそうだが、臓器の損傷や大きな傷から
出血が続く状態でないことが挙げられるという。
■空間の存在
次に「空間」の存在が挙げられる。運良くできたがれきの隙間に
体がおさまり命をつないだケースも多い。
ここでは体に圧力がかからない空間であることが大事で、
体重以上の重さが局所にあたると、救助されたときにクラッシュ症候群が起きてしまう。
クラッシュ症候群は、がれきなど重いものに腰や腕、腿(もも)などが
長時間挟まれ圧迫を受け続けた際に起きるもので、
救出の際に圧迫がなくなるとその箇所から体全体に毒素が回り、死に至ることがある。
また、身動きが取れず長時間寝ているだけでも床ずれなどになるため、
少しは身動きが取れる空間であることが重要だという。
実際に地震発生から6日以上がたった2月12日には
トルコ・ハタイで17歳の少女ががれきの隙間から救助されている。
■水
水はなければ脱水症状になる。長時間、水を飲まないと腎不全などを招くという。
3日間、飲まず食わずでいきなり栄養失調ということにはならないが、
体に水や栄養が入らないと代謝が落ち、
体の機能が低下する「低体温症」を招くことになる。
特に代謝が低い高齢者や乳幼児はさらにリスクが高まる。
■温度や湿度
現地は寒冷な気候で、外気温が体温に影響するなどして低体温症が懸念されるが、
救助された人はがれきの中で何らかの形で回避できた可能性が考えられるという。
近くに寒さをしのぐものがあったなど体温維持ができたかが鍵となる。
発生から10日目となる15日には、トルコ・メルシンで、
がれきの中の空間に187時間閉じ込められていた62歳の男性が救出されている。
手元には1本の水しかなく、水を飲み干したあとは
空になったボトルに用を足してそれを飲み、生き延びたという。
男性はさらに近くにあった敷物で体温の低下を防ぎ、救助を待っていたという。
さらに同じ日、トルコ・ハタイでは、がれきの中で身動きがとれなくなっていた
母親とこども2人が228時間ぶりに救出されている。
石原医師は「1人でいるより複数でいることで
体温維持ができたのかもしれない」と指摘する。
また、湿度も大事で、がれきの中などの閉鎖空間は乾燥し、
脱水症状をまねきやすいという。
■「いろいろな要因がうまくかけ合わさり…」
石原医師はこうした環境の要因に加え、
被災した人に既往症があるかないかも影響すると指摘している。。
「既往症がないことを前提として、
環境のいろいろな要因がうまくかけ合わさり
重篤な状態にならない状態で見つかったのだろう。
何か一つでも当てはまらなければ生還するのは困難だったかもしれない」