これまで、庭の生け垣の刈り込みには昔からある鋏を使っていた。多少の運動にもなるし、細かいところまで思うように刈り込めるから時間はかかってもそれに拘ってきた。ところが先月初め、少し高いところのイボタの木の生け垣を刈り込もうとして脚立に乗ったらせいぜい3段くらいなのに足元が心もとない。そういえばかつて従兄弟の一人が脚立から落ちて入院した、という話があった。それを思い出したせいか、急に怖くなってもうこれからはこんなに高い生け垣は手に負えないと思い、30センチほど低くしようと決めた。
しかし単に枝葉を整えるのならともかく、高さを低くしようとするのであれば鋏では到底太刀打ちできない。そこで近くのホームセンターに行ってみると電動の「ヘッジトリマー」が売ってあった。早速その一つを買ってきて使ってみると新しいせいか切れ味が良くてあまり苦労もせずに目的を達成することが出来た。これまでの鋏でかかった時間の半分もかからず。こういう便利なものがあるのならもっと前に買っておくべきだったと思うくらいだった。
その生け垣もひと月ほど経って枝の伸びが気になりだした。歩道の方にまで飛び出しているものもある。普段は歩行者も結構通る道なのだが、日曜の午前中であれば人通りも少ないだろうと思い、先月買ったそのヘッジトリマーを持ち出して刈り込んでみた。順調に作業が進んでいたと思っていたら半分くらい来たところで急に動かなくなってしまった。何度か電源を入れてみたが全く反応がない。これは不良品だったに違いないと思い、買ったホームセンターに電話をしてみると9時から営業開始だから持ってきてくれ、という。この機械を箱に入れて保証書と一緒にそのホームセンターへ。
事情を話すと応対してくれた店員は、自分は受付だけ、専門の技術者がもう少しで来るからその人に見てもらうことになる。もし不良品なら交換ということになるが、使い方を間違ったのであれば有償の修理になるかも、と。とりあえず預けて置いて結果を連絡してもらうことにしてその店を出て、自宅に向かっていたら携帯に電話が。車を路肩に止めて電話に出てみると、さっきの店員から「今、試してみたら問題なく動いている。どうしてもというのならメーカーに送ってみるが、異常は見当たらない・・・」という。さっきは確かに全く動かなかったのに狐につままれたような気分になったものの、問題なく動いているというのなら、それ以上のことをする必要はない。それではこれから取りに行く、と言って、今来た道を戻ると、メーカーのロゴの入ったツナギを着たいかにもそれらしい技術者?が待っていて、特に問題はありませんでした。ほら、このように動くでしょう、と実演して見せる。何事もなかったように動いて確かに問題もなさそうだ。それではとりあえず持って帰ってみてまた調子が悪くなるようであれば、その時にはということに。
果たして生け垣の刈り込みを再開してみると全く問題ない。生け垣は1時間もしないうちにすっかりきれいになった。いったいどういったわけなのだろう。一時的に何か安全装置でも働いてしばらくしたら復活したのか。まるで、調子の悪いパソコンをいったん強制終了してしばらく待ってから改めて電源を入れると元通りに戻るかのように。この機械はパソコンのような複雑・精密な機械でもないと思うのだが。ともあれ、もう脚立の最上段に上る必要もなく、落下の危険性もなくなったし、通りから見る生け垣は、散髪したすぐ後の頭のようにすっきりとして見えた。
たった一つの機械に振り回された今日の午前。使い終わって物置にしまおうとして箱とカバーを見てみるとそこには「スルドイ 異次元の切れ味」というキャッチフレーズが。突然動かなくなって、しばらくしたら蘇るとは、確かに「異次元」の機械なのか・・・