夏天故事

日々感じること、考えることを書き連ねていきます。

「福島の人を(皆)西日本に疎開させるべき」という意見について

2011-11-21 13:15:05 | 山形・上山
まず、前提として疎開したい人は疎開すればいいんじゃないと考えていることを明記しておく。
さて、「福島は危険なのだから特に子どもを中心に疎開させるべき」という意見がちらほらある。
しかしこの意見には何点かの問題がある。

1、疎開にいっても(避難しても)結局いじめられて帰ってくる事実が現実にあること。
この点をなんとかしないと、疎開させても意味がない。このいじめを生み出すのは過剰な「福島・東北は汚染されている」という意識だ。

例えば、地震で発生したがれきをどうするかということに対して、反発する自治体が多いと聞くが、反発が正当なほど本当に放射線量が高い物があるのだろうか。ちょっと考えてほしい。

この地図は早川由紀夫氏が作ったもので、氏のブログ(http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-418.html)内にある。http://gunma.zamurai.jp/pub/2011/0911gmap06.jpg
早川氏は、オレからすると過剰な「福島・東北は汚染されている」という意識を持っている方なのでオレとは意見を異にする方であるが、氏作成の地図を見ても、東北よりは関東のほうが汚染されている。

福島からの避難者に対する態度は本当に正当なものなのか。そして、もし不当なものであるなら、その態度に対して効果的な対処まで考えたうえでの「避難すべき論」なのか。
残念ながら「避難すべき」論者にそこまで考慮したうえでの意見はなかったと判断している。

そもそも、本当に避難すべきなのかどうかもしっかり検証すべきことではある。

2、土地に対する捉え方の違いを無視していること。
田舎の人々の(特に年寄り)土地に対する考え方は、都会の人々の土地に対する考え方と全く違う。
それは農業をしていたり身近で農業をみて育ったりした人にとって、まさに土地は「生活の土台」であり、土地の所有は必須(日本の農業従事者は2000年かけて自らの土地所有権を勝ち取ってきた!!)であるのに対し、その土台から得たものから物を作ったり、売ったりして生活している人には土地はなくてもいいものだからである。土地に依って生きてきたことをわかっているから、簡単にその土地を離れることができない。
福島も農業県である。土地に対する考え方は都会の考え方とは違う人が多いだろう。
しかし「避難すべき」論者は、簡単に、しかも何の葛藤もなしに「避難すべき」を押し付ける。
都会のために原発をつくらざるを得ない状況に追いやられ、危険な原発の恩恵は都会の者のみが受け、いざ事故がおこると都会の人々に「その土地は汚れているから捨てろ」と言われる。2000年の闘争の末に勝ち取った土地所有権を、奪い続けてきた者の子孫であると思われる都会の人々に、都会の人々の都合で今また「捨てろ」といわれるわけである。

「避難すべき」論はある点で良心から主張されていることはわかる。しかし良心から主張されているからと言ってなんでも受け入れられるものではない。
「避難すべき」論は、前述の2点に対する考慮がなければ、あまりに上からの発言であると言わざるを得ない。
また「避難すべき」論の中には「西日本に」と限定するものもいるが、なぜ青森・秋田・山形ではダメなのか。安全なところに避難というのであれば、前掲早川氏作成の地図からみても、文化圏の問題からしても青森・秋田・山形で何の支障もないはずである。ここからは東北を下に見る意識がちらほらしている。

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2 コメント

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Unknown (工人)
2011-11-27 09:58:23
>青森・秋田・山形で何の支障もないはずである。ここからは東北を下に見る意識がちらほらしている。

初めまして。
西日本在住です。東北を下に見るというのは穿ちすぎのように感じます。距離や気候を考えると西日本へ避難という考えに私は違和感を感じません。想像ですが財政も苦しい県が多いのではないでしょうか。放射能の場合避難距離(適切な距離かどうかは分かりませんが)は遠い程良いと考えるのは自然だと思います。また、東北にはあまり縁がないので誤解かも知れませんが豪雪地帯と認識しています。避難地は比較的温暖な気候の方が良いとも思います。

「避難すべき」には私は同意しませんが、逃げたい者には容易にそれが選択できるようにして欲しいです。

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Unknown (はぬる)
2011-11-27 19:41:39
工人さん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

さて、
>東北を下に見るというのは穿ちすぎのように感じます。
とのことですが、どうでしょうか。
考えていただきたいことが何点かあります。

まず1点目。
「西日本に避難」という意見には、
「山形、秋田、青森、岩手、宮城の北部」という選択肢(便宜上A案と呼びます)を考えた上でのものなのでしょうか。
「西日本に避難」という意見は、その選択肢を考えた上で、それでもA案を否定した結果のものなのでしょうか。
正直なところ、私には「西日本に避難」という意見を主張する方々からは、そういった考察の痕跡さえ見えてきません。多くの場合、A案ではだめな理由どころか、「西日本に避難」を言う根拠すら付記しない物言いがほとんどだからです。
つまり、はじめに「西日本に避難」ありきなわけです。
その態度はつまるところ、「西日本」には目が行くのに「東北」には目がいかない、「東北」は無視の対象であるということではないでしょうか。

2点目。
福島の原発を中心として、青森の下北半島の最北端までを半径とする円を考えた場合、その円は滋賀県の手前までを範囲に収めます。
西日本がどこを指すのかわかりませんが(「西日本に避難」論はそういった緻密さ、配慮もありません。)早川氏作成の地図をみても、距離的な問題をみても、必ずしも「西日本」でなくてはならないわけではないです。しかし、避難先は無根拠に「西日本」を主張する人が一部にいるわけです。
ここには、どこかで東北を広さを持つ面としてではなく、点としてとらえている視点があるのではないでしょうか。

3点目
私は震災以前から、「東北」の問題を指摘してきました。そのことは拙ブログの所々で触れていますので、参考にしてみてください。「西日本避難論」はそういった問題が表出したものではないかと考えていますが、いかがでしょうか。

「風評」も「差別」もないことにしたい心理
http://blog.goo.ne.jp/hanulgwapada/e/af2390985426bcfa30b990ef4434ef23
白河以北一山百文
http://blog.goo.ne.jp/hanulgwapada/e/b2efd1a34591610cc23c00fef3910ff1
じゃあオレたちは何を食べろというんだよ
http://blog.goo.ne.jp/hanulgwapada/e/5822ca9149c2634f4baffaf4dd0055a3
無理してがんばらんくていいさ~東北
http://blog.goo.ne.jp/hanulgwapada/e/fad69cf550e9636247d861ab7e7220eb
上山合併話に対する意見
http://blog.goo.ne.jp/hanulgwapada/e/f99357365d158186912ec71870e3cebc
千思万考?「一思一考」にタイトルを変えるべきだろ。
http://blog.goo.ne.jp/hanulgwapada/e/f5425999e74beb4530fde7d61bfc9623
"がんばろう日本""がんばろう東北"の呼びかけがウソな理由
http://blog.goo.ne.jp/hanulgwapada/e/11fb3e70cdfb04a50d3a5808507da6e6

日本ってなんですか?~東北の人は自分たちの言葉をどう思っているか~
http://blog.goo.ne.jp/hanulgwapada/e/3471c682e40d3d5a8181d8d392bc49be
日本ってなんですか
http://blog.goo.ne.jp/hanulgwapada/e/0bbd06aecba09fc32d10c3576ebe7e7f

財政に関しては西も東もどこも一緒ですので、あまり説得力はないですね。
また、豪雪地帯というのも福島の人にとってそんなにデメリットにはならないのではないでしょうか。少なくとも生活文化圏が全く違うところに行くデメリットよりは、マイナスではないと思いますよ。(もっといえば福島にだって雪がたくさん降る場所もあればそうでない場所があります。福島も「点」ではないんですよ。そういった感覚こそが「東北」を下に見ているものではないか、という、私にとっての問題意識です。)
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