ほんと納得のお顔でしたね。
「似顔絵は和田誠と山藤章二」…
87歳で亡くなったイラストレーターの山藤章二さん=東京都中央区で2014年3月18日
「似顔絵は和田誠と山藤章二」。そう語った作家の丸谷才一さんはモデルを若く描いて本人にも人気が高いのが和田流、年をとらせ内面まで描くのが山藤流と評した
▲落語通の山藤さんは同学年のライバルを古今亭志ん朝、自身を友人の立川談志になぞらえた。週刊文春の洗練された表紙(和田)と週刊朝日巻末に連載した毒のある風刺似顔絵「ブラック・アングル」(山藤)。イラスト界の巨匠2人の「芸風」の違いをよく言い当てている
▲山藤さんが87歳で亡くなった。8歳で終戦を迎え、国家体制や価値観の大転換を体験した。「人間を、国を、政治を……すべてを鳥(ちょう)瞰(かん)的に見るようになった」(自分史ときどき昭和史)という。その観察眼が風刺にも生かされたのだろう
▲ロッキード事件が発覚した1976年に始まったブラック・アングル。思い切った見立ての似顔絵で世相を切り取った。武者小路実篤の色紙をモチーフに田中角栄元首相ら事件の主要人物を野菜のように描いた「仲よき事は美しき哉(かな)」は今も語り継がれる
▲大平正芳元首相を岸田劉生の「麗子像」に模して描き、小泉純一郎元首相は赤いポストに顔を描いた。当初は「面白い顔ではない」と思いながら「汲(く)めどもつきぬ味わい」を見つけたのが小渕恵三元首相という。政治家にもファンは多かったらしい
▲石破茂新内閣が発足した。山藤さんならどこを切り取るか。早期解散への方針転換で孤立しても信念を貫くイメージが早くも揺らぐ。そんな姿が狙われそうである。
山藤章二さんがイラストを描き、1999年に発売された「笑門来福落語切手」。各2枚ずつの10面シートで1シート800円だった。
でした。
谷口 幸璽さんのコメントです。
《似顔絵 (谷口幸璽)
昔、恵比寿から広尾に抜ける通りで、山藤章二さんと擦れ違ったことがあった。「今の、山藤さん?」と言うと、職場の先輩が「彼は才能あふれるイラストレーターだよ」と、私の耳元で囁いた。残念ながら仕事での御縁はなかったが、見事な似顔絵でした。立川談志の顔など、実にどうも‥‥! 私達を楽しませていただきました。きっと独特の人生観を、お持ちだったのでしょう。》