【パリ=阿部健吾】日本が土壇場の大逆転劇で2大会ぶりの金メダルを手にした。6種目合計259・594点で、中国を0・532点上回った。

各種目5選手中3人が演技して合計得点で競う中、2種目目のあん馬で東京五輪2冠のエース橋本大輝(22)が落下。同組で回った中国に続くつり輪で3・133点差をつけられて主導権を握られると、挽回を期した3種目目の跳馬では、谷川航の大技が難度認定されずに得点を伸ばせなかった

土俵際に追い込まれて迎えた最終6種目目の鉄棒でまさかの展開が待っていた。中国の2人目が2回の落下で大きく減点された。5種目目までに3点以上ついていた差を逆転し、迎えたのは日本の3人目は橋本。ここまでチームに貢献できていなかったが、巡ってきた起死回生のチャンス。見事な演技で14・566点を出し、6種目合計259・594点として勝利をたぐり寄せた。

「Make New History!」。6月、5人の代表が決まり、初めて都内での強化合宿が始まった夜。パリへ向けたスローガンが決まった。「新しい歴史を作る」。込められた思いは、“内村以後”へのそれぞれの向き合い方の集約だった。

エースで東京五輪2冠の橋本大輝(22)は言う。「僕たちは僕たち。伝統ある日本の体操を継承していくことも大切ですが、一番大事なのは、次世代に自分たちの体操を見せていくこと」と力を込める。偉大なるアイコンとして君臨し続けた内村航平さんが不在の五輪は5大会ぶりになる。敬意も込めながら、「新たな」世代として強さを証明したかった。

2大会連続出場の萱和磨(27=ともにセントラルスポーツ)はこうも言った。「悔しさを知る3人もいますが、初(代表)の2人もいる。強要する事もない。5人でどうしたいかが重要」。0・103点差で銀メダルに終わった東京の団体総合経験者は3人いるが、初代表の2人にとっては、パリこそが全て。「新しさ」というキーワードを一緒に作り上げる事で、視線を共有した。

27日の予選ではエース橋本が不振にあえいだ。負傷明けの3カ月ぶりの実戦で着地が乱れ続けた。「みんなが頑張って声を出してて申し訳ないと思った。団体決勝で良い演技をして、金メダルを取る。それが恩返し。その気持ちだけは忘れずに」とうつむいた顔を上げた。萱はその言葉に「大丈夫かな(笑い)たぶん、今日だけですよ。明日になればケロッとしている。うるさいと思う(笑い)。あと決勝まで2日間ある。問題ない。やってくれるでしょう」と笑い飛ばした。信頼感と連帯感が、その笑顔に詰まっていた。

5人で作ったLINEグループの名前は「団体総合金メダル取りました」。5月のNHK杯で代表が決まると、常に金メダルを意識させるために作成した。

それから2カ月、頂点を目指して5人は一丸となって戦い抜いた。

でした。

 

 

西 逈さんのコメントです。

一法を修すれば万法に通ず (西 逈)

 体操もスケボーも大逆転! オリンピックに学ぶことは多い。なかでも、巴投げという一つの技によって金メダルに輝いた角田さんに敬意を表したい。彼女には確固とした信念があったのだろう。私たちは様々な情報を仕入れ、種々の事柄に心を移して、あまりに多くのことを知ることによって、かえって迷いを深くしているのではないか? 多くのことを知らなくても、ただ一つの神髄を極めることの大切さを、彼女に教えられました。》